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言わずと知れた昔の花街。
ここ数年で吉原、鳩の町、福生に行った。
行くたびによそ者の私には緊張感が走る場所だ。
どんな人がどんな想いで生活しているかわからない場所。

でも、当事者ではない地域の人たちは
腫れものにさわるように避けたがる。
以前『立石散策劇場』で
立石のスナック街が花街だった当時の話をママから聞いた。
涙なしには聞けない女性の物語があった。
もちろん、立石で生まれ育った私が露も知らなかった事実ばかり。
その話を94歳の祖母にしたら、
昔東北の農家から立石のお店に売られ、
逃げてきた女性にこっそり針仕事を教え、
雇ったことがあったと聞いた。

「この話は誰にもしなかったんだよ」と言っていた。

玉の井の地名は、「東向島」になっている。
でも、町の至る所に痕跡は見られる。

駅名は「旧玉ノ井」。
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駅前にあった地図の掲示板。
「東向島駅」がはがされ、さらに「玉の井駅」が目立っている。
はがした人はどんな気分で剥がしたのだろうか。
いやいや、酔っぱらった若者が
調子に乗ってはがしてしまっただけかもしれないが。

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玉ノ井は永井荷風が書いた『墨東奇譚』の舞台でも有名な場所だ。
漫画家滝田ゆうの出身地である。
「抜けられます」の表示はさすがになかった。

いまはうらびれたスナック街の風情。
自転車で買い物をする主婦や、
路地で遊んでいる子どもたちともふつうにすれ違う。

その一方で、花街の象徴でもある
アールデコ調の建築物や入り組んだ路地もある。

夕闇せまる町をしずしずと歩かせてもらった。

墨東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)
墨東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)


ぬけられますか    私漫画家 滝田ゆう
ぬけられますか 私漫画家 滝田ゆう