2008年に亡くなられた筑紫哲也さん。

本書を読むと当たり前なのですが、まさに筑紫さんが語りかけてくるような感じで、もう亡くなられているのが信じられなくなってきます。

筑紫さんの性格は一言で言うと『お節介』だと思います。

私も少なからず、そういうところがあり、何となく気持ちがわかる部分もあります。

親しくなればなるほど、一言アドバイスしたくなるもの。

余計なお世話と分かっていながら、一言いわずにはいられない。

筑紫さんはそんな性格かな~と思います。

本書はそんな筑紫さんの愛情に満ちたお節介を存分に感じられる、筑紫さんの性格が滲み出た一冊となっています。

印象的だったのが、コロンビア大学というジャーナリズムの先頭を行く大学で、新入生に先生がまずする話し。

「きみは、戦争を報道するために従軍記者として戦場に出かけたとする。取材をしているすぐそばで、一緒に行った兵士が撃たれて倒れた。その時君はどうするか?」

この質問、だいたい8:2で助けるという意見が出るそうです。

そしたら、その後にこんな話しをします。

日本人記者の沢田さんの話しです。

沢田さんがベトナム戦争で撮った写真に『安全への逃避』という作品があります。

これは、ベトナムの母親が川のなかを、子どもを抱えながら逃げようとしている写真です。

沢田さんはのちにカンボジアで取材中に銃弾に倒れてしまいますが、『安全への逃避』は世界中の世論を盛り上げ、ベトナム戦争が終わるのを少なくとも2年は早めたと言われています。

このような話しを聞いた後はだいたい8:2で取材を続けるに意見がまったく逆転してしまうそうです。

この質問は何が正しいかではなく、人間として助けるのかジャーナリストとして続けるのか、どちらを選んでも、捨てた方の十字架を背負わなければいけない。

それほどの覚悟が必要という話です。

この話もそうですが、本書の中には正しいとか間違ってるとか、そういう単純なもんじゃないというメッセージが多くのエピソードに散りばめられています。

コインの裏表です。

例えば、9・11ではブッシュはアルカイダを悪の巣窟扱いしますが、アルカイダからすればアメリカこそが悪の巣窟でしょう。

ちゃんと、コインの裏も見る目を持ちなさいよと。

筑紫さんらしいですね。