ライブドアの時間外取引は、真珠湾攻撃に良く例えられる。
良く似ているのは、真珠湾攻撃では、日本の外務省の不手際で宣戦布告が攻撃開始後になったことをとらまえて、アメリカが日本の奇襲攻撃を「騙し討ち」として避難した。そして「リメンバーパールハーバー」をスローガンに国民が一致団結し日本相手の戦争を戦い抜いたのである。
一方ライブドアのニッポン放送株の時間外取引は、企業買収の一般的な手法であるTOBをとらなかったことからフジテレビが「違法あるいはそれに近い取引」だと主張し、フジサンケイグループの結束を固め、ライブドアとの戦争を戦い抜いたのである。

ライブドアの時間外取引自体は、裁判でも明らかなとおり違法なものではなく、その点フジテレビの主張は誤っているといえよう。
ただ、株取得による会社の買収については、株主の利益と市場の健全性を保つためにTOBの制度があるのであり、一種の脱法的行為でTOBを回避して行うのは、例え法的には問題ないとしても非難されるべきではないかというフジテレビの主張は、一定の支持を得ていた。特に、フジテレビに近い一部政治家及び経営者からなる反ライブドア派にとっては、大きな大儀名分となっていた。結果として多少はライブドアに不利に働いたことは否めない。

そこで一つの疑問が生じるのである。
作戦としてライブドア側に、時間外取引でなく、ニッポン放送株を堂々とTOBで買付する選択肢は無かったのかということである。
もし、TOBでニッポン放送株を取得できれば、フジテレビ及び反ライブドア派に大儀名分が無くなり、ライブドア側の「市場のルールに則った株主の権利の行使」という主張はより強く世間に浸透したであろう。逆に、次々と繰り出されるフジ側の対抗策は、「経営者の地位の確保のために、株主の利益が損なわれている」という印象を一層強く世論に植えつけただろう。フジとしては、正々堂々とTOBでこられた方が戦いにくかったであろう。

で、問題なのは、果たしてライブドアは、TOBでニッポン放送株の過半数を取得できたかということである。
あくまで仮定の話となるが、とても取得できたとは思えない。
村上ファンドに脅威を感じたフジテレビは、既にニッポン放送株のTOBを開始しており、ライブドアとしてはそれより高値でTOBを買い付けせざるを得ない。実際のフジテレビのTOBを見ても、フジ側は多少値段が市場やライブドアの価格より低くても売却に応じてくれる企業があるのに対し、ライブドアは価格だけが勝負である。フジ側が再び価格を上げてくれば対抗して価格を上げざるを得ない。そうすると資金繰りに窮しライブドアの株価が下降し、実際の和解直前と同じ状況となる。また市場価格がTOBの価格を大きく上回った場合、手の施しようがなくなる。
よって、ライブドアがフジテレビの支配権を得ようとすれば、「時間外取引でニッポン放送株を取得する」というのは必要不可欠な作戦である。

その代わり、冒頭、述べたとおり、フジテレビ及び反ライブドア派の方々から強烈な非難を浴びせられたのは覚悟しなければならない。そのため、ライブドアは、プロ野球再編問題で人気を得た堀江社長を頻繁にテレビに出演させ、「時間外取引は違法ではない」「目的は業務提携で話し合う用意はある」「会社は経営者のものでなく株主のものである」等、ライブドアに有利な主張を繰り返し、この時期フジ側が沈黙していたこともあって、時間外取引に対する非難の緩和に一定の成果であげた。この世論対策が後に、フジテレビを和解の交渉のテーブルにつけさせることに効いてくるのである。

それにしても、奇襲攻撃後、フジ側はなぜ沈黙していたのであろうか。フジの全メディアあげて「時間外取引違法キャンペーン」をやっていれば多少世論をフジ側に引きつけられたかもしれない。自らがマスコミであるが故に軽々しく自社メディアを使うのに躊躇したのであろうか。それはマスコミの見識としては評価するが、戦い方としては失格かもしれない。それともやはり突然の奇襲攻撃ですぐに有効な対策が取れなかったのだろうか。もしそうなら、そういう意味でもこの時間外取引という奇襲攻撃はライブドアとして成功だったといえよう。

次回は、ライブドアVSフジサンケイ総括 「遠すぎた判決」 ニッポン放送の新株予約権の是非 です。


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