なんとまぁ、実に今から50年近く前の映画になりまして、たぶん、1980年前半の夏休みに、テレビで昼間に見たのが初めてのはずです。以後、テレビ再放送のたびに見ておって、のちに大学生くらいになって原作のクライトン「アンドロメダ病原体」を読んだという流れ。ちょどあの頃、「ジュラシック・パーク」をはじめ、軽いクライトンブームがあったのですね。そこで、「緊急の場合は」「ターミナルマン」「アンドロメダ病原体」「スフィア」「北人伝説」等々、一番脂が乗っていた時期で、手を替え品を替え、我々読者を楽しませてくれました。そして今回のコロナ禍のいろいろなまずい社会情勢を鑑み、わざわざブルーレイディスクを買ってあらためて「今ここ」目線で、「科学がもたらす危機と科学がもたらす解決」を見直そうと思った次第です。
 徹底的に合理的な隔離施設、サイエンスに基づいた科学者達の研究手順、非情なまでの軍事的社会背景等、今でも十分見ごたえのある映画であり、読み応えのある原作なのですが、いまさら私が何か言うまでもないほどの有名作なので、話の流れは適当にネットで検索してください。

 今回私が注目したのは絵作りというか、ロバート・ワイズの映像センスですね。
 ブラウン管の黒い画面に浮かぶ蛍光テキストや図表、シンプルでミニマムな研究室のデザイン、CGを模した(当時としては最先端の)ベクタスキャン、さまざまな情報を伝える文字のフォントはもちろん、カギの形にまでこだわっている。原作には研究室の合理的描写はあるものの、このあたりは「え? 『ウェスト・サイド・ストーリー』『サウンド・オブ・ミュージック』のロバート・ワイズ?」でありますな。「なんとなくサイエンティフィックでなんとなく合理的に見えるデザイン」が今でも十分通じていて、シンプルにかっこいいい。ロバート・ワイズというと、なんとなくミュージカル映画という先入観があるのですが、本作やのちに「スター・トレック」(劇場版第1作)を監督したりしていて、ゴリッゴリにイケてる映像クリエイターなのです。もっとも「地球の静止する日」や「キャット・ピープルの呪い」など、元はといえば、「そちら」畑の人間だったのかもしれず、「ミュージカル映画」なんてメシの種と思っていたのかもしれません。
 またデザインだけでなく、スプリット・フォーカスや画面内画面など、ちょっともうこのお父さんは、映像センスとかデザイン云々以上に、映画バカとか撮影オタクとかいう尊称の方がお似合いなのかもしれませんね。

 2時間たっぷりの映画のわりにはテンポが良いですし、シンプルな未来的デザインはちょっとしたサイケデリックな雰囲気もありまして、なんかもう映像ドラックといった塩梅。何言ってんだ、今日の俺は疲れているのか?w
 もっとも科学者が、自分でマニュピレータを操作したり、樹脂で固めた資料からプレパラート用切片を切り出したりするなどはちょっと現実離れはしており、本当に「危機に対処する専門チーム」なのであれば、彼らは考え続ける頭脳でなければならず、直接実験室で作業してしまうのはオペレーションとしてはまずいのかもしれません。
 また、これは昔から思っていたのですが、最終的に明らかになるアンドロメダ病原体の真の能力からして、前半、壊滅した街から帰還後、紫外線照射(?)で除菌を行う工程で特に何も無かったのは、少々矛盾を孕む場面だったかもしれません。

 そうは言っても、「科学者が合理的思考に基づいて最適な行動を取り」「試行錯誤の果てにギリギリのタイミングで謎を解明し」「合理的な解決を果たす」なんて話、面白くないわけないじゃないですか。まだ見てない人はほんと見てくれ。この映画が、後日、様々な映像や小説にパクられリスペクトされまくった事を知って欲しいものです。

 小説「アンドロメダ病原体」がなぜ映画の邦題が「アンドロメダ…」になったのかというと、劇場公開の宣伝にあたり「病原体」という文字がいささか問題アリとプロモーションサイドが勝手に忖度したため、という都市伝説がありますが・・・。どうなんですかね?

アンドロメダ・・・ [Blu-ray]
アーサー・ヒル
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2015-10-21