星の塔 (文春文庫)
高橋 克彦
文藝春秋
2012-09-20

最近は話題になる事も少なくなった高橋克彦さんですが、読めばやっぱり相当な書き手です。

この本は短編集で、モティーフはほとんど一緒。

1人の男性が、東北の山間の奥地に行き、怪異と出会うというモノです。

 

ストーリー構成は、最初に日常から離れる旅の描写があり、資料館やら図書館、博物館に行き、美しい女性と出会って、怪異体験、です。

見事な程のワンパターン構成なんですが、それぞれの短編には違う味わいがあり、読み処となっています。

物語の神話体系。

なんて事も思いました。

一番印象に残ったのは短編集の題名にもなっている「星の塔」かな。

塔から眺める描写が圧倒的でしたね。

蛍の女」の悲しみと抒情も素晴らしかった。

花嫁」はラストのオチは見えてしまいました。

でもSFとしての価値は落ちない。

良い出来だと思います。

子とろ子とろ」は、蟠桃が怖かったですね。

ホントの話かとネットで検索してしまいました。

まあ、昔って現代より怖いよね。

昔の貧しさ故の、それでも助かりたい人間の欲望が突っ走って行く果てって怖い。

寝るなの座敷」は民話怪談の現代版。

猫屋敷」はラストで救われた。

首継ぎ御領」は、「黄昏は死にふさわしい美しい時間だ」というセリフがカッコイイ。

なんか漱石とか川端辺りが書いていそうな文章でした。

 

出版社のみなさんには、昔の作家も忘れないでやって下さいって思いましたね。

諸々、営業事情もあると思いますが、基本、オモシロイ本を読ませれば、読者は付いて来ますよ。