最近は話題になる事も少なくなった高橋克彦さんですが、読めばやっぱり相当な書き手です。
この本は短編集で、モティーフはほとんど一緒。1人の男性が、東北の山間の奥地に行き、怪異と出会うというモノです。
ストーリー構成は、最初に日常から離れる旅の描写があり、資料館やら図書館、博物館に行き、美しい女性と出会って、怪異体験、です。
見事な程のワンパターン構成なんですが、それぞれの短編には違う味わいがあり、読み処となっています。
物語の神話体系。
なんて事も思いました。
一番印象に残ったのは短編集の題名にもなっている「星の塔」かな。
塔から眺める描写が圧倒的でしたね。
「蛍の女」の悲しみと抒情も素晴らしかった。
「花嫁」はラストのオチは見えてしまいました。
でもSFとしての価値は落ちない。
良い出来だと思います。
「子とろ子とろ」は、蟠桃が怖かったですね。
ホントの話かとネットで検索してしまいました。
まあ、昔って現代より怖いよね。
昔の貧しさ故の、それでも助かりたい人間の欲望が突っ走って行く果てって怖い。
「寝るなの座敷」は民話怪談の現代版。
「猫屋敷」はラストで救われた。
「首継ぎ御領」は、「黄昏は死にふさわしい美しい時間だ」というセリフがカッコイイ。
なんか漱石とか川端辺りが書いていそうな文章でした。
出版社のみなさんには、昔の作家も忘れないでやって下さいって思いましたね。
諸々、営業事情もあると思いますが、基本、オモシロイ本を読ませれば、読者は付いて来ますよ。
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