この恋、婚外恋愛につき。



彼と会えるタイミングが一気に減った日々。
スペースが空くと、他のものが入ってくるのだろうか、一気にいろいろな男性から誘いを受けるようになった。

その誘いの奥に潜んでいるものを感じ取りながらも、悪い気はしない。


いつまでも女性として見られること、そして大切に扱われることは、私のアイデンティティを確認する術のひとつなのかもしれない。

他の男性とのやりとりでも主導権をにぎっているのはあくまでも私。
じりじりと待たせた後、ようやく会う機会を設ける。


それほど暇ではない。


彼とあれほど会えていたのは、彼が私の行動パターンを知り尽くしていて、そこに彼が合わせていたから。
5分、10分をいとわずに彼が会いに来ていたから。


男性陣の中から、会話が面白そうな、刺激をもらえそうな人を選んで会う。
ドライなようだけれど、ただ一緒に飲むようなお友達はいらない。


会うのは基本的に経営者たち。美味しい食事をしながら、彼らからビジネスについて学ぶというのが私の目的。


セミナーなどに高いお金を払っていくのもいいけれど、こうしてマンツーマンで聞くほうが聞きたいことを聞けるから好き。
また私の話も聞いてもらい。アドバイスをもらう。

言ってみれば無料コンサルをうけているようなもの。


彼らと会い、お酒を飲むと、彼らは期待している展開をにおわせてくる。
彼らにも目的があることはわかっている。


けれど私はもう、恋愛はする必要がないから。



相手が熱っぽくなればなるほど白けていく。


昔からそうだ。


この人ならいいかもしれない・・・。
そう思っても、相手の気持ちについて行けず冷めてしまう。



そう思えば、ユウとはそれがなかった。


こうして結局私は思うのだ。

他の男の隣で、彼に会いたいと心底願うのだ。






 



その日、彼は新幹線でやってきた。

私のせいで予定が狂い、会える時間は 5時間程度。


少しの時間も惜しいとタクシーでやってきた彼。


私たちは迷わずホテルへ向かった。



話したいことは山ほどあった。
本当ならばお酒を飲んでゆっくりとこの1カ月について語らいたかった。



けれど、5時間しかないなら話は別。



彼を感じながら、思った。

これは私たちにしかできない至高のコミュニケーションだと。


身体をぴたりとそわせるだけで、なんて心地よいのだろう。




極上。


それはフランス料理のフルコースのように、丁寧で繊細で、かつ濃密。


他の人では味わえない。


別れの時間までは夢のようにあっという間だった。


タクシーで去る彼を見送りながら、私たちの間に確かにある物理的な距離を想った。
近くにいるときはこんなこともなかった。

彼はいつだって私を送り届けてくれていた。
タクシーで帰るときだってそうだ。


けれど今は違う。


彼は帰りの新幹線が迫っていて。

そして私は近くに車を停めているのだ。





彼に育てられたこの身体で、あと一か月絶えなくてはいけない。


彼との時間が幸せだったからこそ、それは耐え難く思えた。



「愛してる」とは何だろう。
彼に操を立てる義理はあるのだろうか。


この後に及んで、まだそんなことをぼんやりと考える私がいた。





彼は行ってしまった。

しばらくは、正直慣れなかった。


私の日常に入り込んでいた彼だから、彼がいなくなってもなお、そこかしこに彼の気配を感じてしまうほど。

隙間時間を見つけては会いに来ていた彼はもういないのに。


助手席に座った私を抱き寄せる彼。
お互いのぬくもりを感じながら過ごすひととき。


その日にあったことをあれこれと話す私。


彼との関係は私が望んでいたようなライトなものではなくなってしまったから、
わずらわしさを感じる時も確かにあったけれど。


それでも、あの日々が確かに私を支えていたことに改めて気が付いた。


とはいえ、慌ただしい日々。
感傷にふける暇はない。

4月になり、新学期が始まり、連日予定をこなしているとあっという間に1日は終わる。



変わったのは、彼がここにいないこと。


変わらないのは、彼からの連絡の頻度。


会えなくても、離れていても、変わらずに届くLINE。



会いたい気持ちを胸にしまって
時折空を見上げながら

何食わぬ顔で日々を過ごそう。



私はひと月ぶりに会える、その日を心待ちにしていた。




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