2006年09月

2006年09月26日

第7回購買ネットワーク会考

第7回購買ネットワーク会が開催された。今回も会の志向を変えた。

まずはCPPの資格についてJMAの方より話があった。「高いので会社の金でテキストを買ってください」とおっしゃっていたが、自分は高いと感じなかった。知識を高める為に勉強するわけだが、その知識がすぐに役に立つかは分からない。しかし、知識というのは誰にも奪われない財産なわけで、そういった意味では投資であり、まさに自己投資である。投資って人の金でやらないでしょ?だったら自己投資も自分の金でやるよというわけです。

次に「売れるバイヤー、売れないバイヤー」ということで、ある外資系のヘッドハンディング会社の方の講演があった。内容的には「そこまで言っちゃっていいの?」という内容で、普段自分を売ることを考えていない自分にとっては刺激になる話であった。

最後に「バイヤーのぶつかる悩み即決・紛糾・学習」ということでバイヤーの悩みを解決するべく各参加者がアドバイスをする企画である。

最初の悩みは、コスト決定方法(目標価格設定)が曖昧になっている。コストテーブル、類似品比較、複数見積りなど方法はあるが、どれも納得できないという内容であった。自分は以前「調達・購買ブログ」で、適正価格というものは相対的なもので、極論を言うと適正価格=自己満足であり、そしてその自分の自己満足に理屈がつけれればいいのでは?ということを書いた。好例は前述のCPPのテキストであり、自分の中ではこのテキスト価格は妥当性があるということが言える。ある人は高いと思う人もいるのであろう。一方で原価の積み上げ云々と言ってしまうと執筆者への原稿料がこのくらいで、紙代はこのくらいで、印刷代は....となってしまうのである。それで価格を出したい人はやればいいが、バイヤーがバイヤーたる一番のものは自分は「相場観」と思っている。ぱっと何かを見せられて、これは幾らくらいで、だったら買いだなという訓練(?)....してますよね?

最後の悩みは「仕事がつまらない」というものであった。この悩みを聞いたとき何故か娘が最近お気に入りで、しょっちゅう歌っているアンパンマンの歌を思い出した。その中には「ア、ア、アンパンマン、やさしい君は、ゆけ!みんなの夢守るため。なんのために生まれて、なにをして生きるのか、わからないまま終わる、そんなのはいやだ!」という歌詞がある。彼女は1歳と10ヶ月なので歌詞の意味なんてわからないと思うが....(ほんとは分かってるかも?)アニメの主題歌にしては哲学的な歌詞である。人気のある漫画やドラマには、メッセージがある。その主人公達は、かっこよく、時に人間らしく活躍して子供の心を捕らえて離さない。ほんとに子供はアンパンマンが好きである。(我が家だけかもしれないが)

翻ってみると、自分たち大人が子供たちに希望を与えているだろうか?
自分たち大人はヒーローのようにかっこよく、颯爽と生きているだろうか?
妥協したり、あきらめていたり、姑息にいきたりしていないだろうか?
もしそうだとしたら、あまりにもかっこ悪い。
子供たちのためにも、子供たちの心をわくわくさせる、ヒーロー以上の大人になる必要があるのではないだろうか。でも、いくら戦っても傷つかないヒーローなんてうそっぽい。正義や大儀を貫けば、自分も深く傷つくこともある。自分達は人間だからそれでいいと思う。

仕事は大変だけど、人間関係も大変だけど、最近、疲れた顔もしてかっこ悪いけど、ちゃんとベストをつくして颯爽と貴女の親父は働いてるぜ!って言えればいいんじゃないかな?
「仕事がつまらない」という人にとってはこれらに一つ加わるだけだと思う。

いいんじゃないの?つまらなくたって、だったら次どうしようか、どうしたら今の状況を変えられるかと考えてれば。その生き様をみせてやれ!悩んでない奴よりはぜったいかっこいいよ。

でも娘は「パパよりアンパンマンの方がかっこいい!」って言うんだろうな〜。

てなわけで(?)第8回も請うご期待!



hasebet1 at 22:45|PermalinkComments(0)TrackBack(3)

2006年09月17日

世界一のバイヤーになってみろ!!第81号の雑感

先日配信された世界一のバイヤーになってみろ!!第81号「バイヤーは競合をやめろ!」の雑感です。

先日、弊社のある間接購買が、とあるコンサルと一緒に入札により調達コストを下げた事例が社内で紹介された。その報告会には自分は参加しなかったのだが、上司(先般ブログにも書いた新しい上司)から資料を見せられた。そこでその上司が「今まで調達コストを下げてきたつもりのものでも、競合をすればもっと下がるんだ。このシステムのすごいところは入札によってサプライヤーも下手な小細工ができないから下がったんだ」とのたまわった。そこで自分は「じゃあ、○○や▲▲(いずれも世界で造っているのは1社のみ)をこのシステムを使って調達コストを下げましょう!サプライヤーも小細工できなくなるんでしょう?是非やりましょう!」と言った。その後はその上司は憮然としたのは察する通りである。

そんなことがあって数日後にこのメルマガである。非常にタイムリーで驚いた。前述の資料の中にはそのコンサルの実績がズラリとあった。(資料の半分以上はそれであった。)いずれも、「どこにでもあるもの」で「誰も手につけていないもの」であった。そして、その実績があるもので調達コストを削減した後に、所謂カスタム品の実績の無いものを効果の大きいものから実施するとある。自分はコンサルのアドバンテージは(それが良いか悪いかは別として)専門性と経験と理論と考えている。それが実績の無いものをやりますときたから、どう考えればよいのであろう。何をアドバンテージとして提供してくれるのだろうか?非常に楽しみである。まぁ皮肉はこの辺にしておこう。

あるメーカが材料を調達する方法として、似たようなシステムを使い入札を実施し、特定のサプライヤーを決めず、わずかでも安価に提供してくれるところから渡り買うと言った手法をとっていた。その原料は日本でも数社しか造っていなく、いずれも直販はしていない。ということは商社やその商社から購入している2次商社や問屋から買うことになる。現在、種々の事情でその原料は非常にタイトになっている。そしてそのメーカーの入札に応じているサプライヤーは今はほとんどいないということである。そのメーカは困った末にその原料メーカーや商社、問屋にあたり構わず「求む□□(原料名)!」というFAXを流したが、反応は無かったそうである。そりゃ、そうだ。このように非常にものがタイトになったときはサプライヤーは今までの関係を重視する。浪花節的な非常に日本的な考えだ。我々が仕事しているのは日本と言う国なので当たり前と言えば当たり前だ。

このことはメルマガの最後の「単なる競合で下げることができないと認識した後では、他にやることがある。それは、特定メーカーとの関係向上であり、特定メーカーに肩入れした競争力の向上活動である。アメリカの調査で、バイヤーに求められる能力が「単なるコストダウン」から「サプライヤーリレーションの向上」に移ってきたのは偶然ではない。これからは、単に競合させコストを下げたり、机をたたいてロジック抜きに価格を下げる交渉をするのではなく、もっと戦略的な見識が求められているのだ。」ということを示す事例ではないだろうか?

このメルマガでは、バイヤーのスキルとされてきた「コストテーブル」「競合」を捨てろ!となった。いや〜実におもしろい。次は何を捨てるんだろうか?それらを使ってきたバイヤー達と、そして、それらを専門に売っているコンサル達の行く末は如何に?それを超越した者が「すごいバイヤー」の称号を得るのであろう。



hasebet1 at 16:21|PermalinkComments(2)TrackBack(1)

2006年09月09日

倒産ドキュメント

日は前回書いたとおり、あるサプライヤー(以下A社)の倒産までのドキュメントです。実際に起こったことなので詳細が分かるといろいろまずいこともあるので、かなり省略していますので、流れがつかめなかったらすいません。

A社より、ファクタリングの期日前支払依頼がきたので直近の決算書を入手し分析。

・流動資産で在庫が異常にあった→以前このサプライヤーに行った際はこんなに在庫は持っていなかった。
・仮払金が異常にあった。

・投資額が異常に増えていた。(ゴルフの会員権なんかも買っていた!)

異常と思える点が多々あったのでA社に行き、社長と面談。資金不足の原因や使途等理由を問いただしても言わず、ノンバンクや闇金融からの融資と、債権譲渡通知書捺印等は無しとのことであった。これだけ隠すということは、倒産は近いと判断して、少しでもA社の下請けに支払える策として分割小切手で支払うこととした。

この1週間後A社破産の連絡が入った。
社長は信用できないと思い、弁護士と面談し法的処置(破産の申立)の進捗を確認した。
破産の依頼を受けているが まだ裁判所に申立はしていない。
破産の決議の取締役会議事録及び正式な依頼書も受取っていない。とのことであった。

次に民事再生等もありうるのでメインバンクの考えを確認するためメインバンクの支店長と面談した。ここでA社存続しないのであれば、弊社のほしい機械設備と資材の引き取り方法を決定した。

次の日、社長と面談
ここで、なんと経理担当者が本人の債権保全のため 建物に根抵当設定を勝手にしてしまったことが発覚。→印鑑、権利書等の管理にずさんさが露呈した。
また、弁護士から一部に破産通知が出ているのも知った。同時に弁護士から物を動かしてはいけないという指示があることを確認した。
しかしながら債権、債務について真実の話はいっこうに聞けなかった。
また、債権譲渡通知書が弊社に郵送された旨、弊社の人間から連絡を受けた。
同日、銀行の支店長とも面談。銀行の意思がわからなくなるので債権譲渡通知書の件はこちらから話さないことにした。ここで、確認できたことは

・支援する意思はあるが その為に 負債の全容を出してくれと依頼しているが出てこない。
・白地小切手が乱発されているので、当座を閉鎖した
・銀行から人を出して 支援することも検討する→社長の浪費、放漫経営が原因ならば、事業採算は取れることで認識は一致

同日、社長の家族とも面談
ここで初めて社長が粉飾を認めた。また隠れ債務があることも分かった。(最悪なことにノンバンクからもかなりの金額を借りていた。)ここで、機械設備、資材は弊社が購入することで了解を得た。同時に債権譲渡通知書が来ている以上A社には直接支払いできないことも了承してもらった。機械の売買契約書と使用貸借契約書を締結(A社が万が一生き残った場合でもA社で使えるように)そして、弁護士、銀行に救う方法を検討するよう依頼した。(最後の悪あがきだが)

次の日、社長夫妻と一緒に弁護士と面談し、以下のことを協議

・破産産処理をすること
・銀行へ営業譲渡を受けてくれるよう依頼すること。営業譲渡を受けた場合は 弊社は取引を継続する考えであることが前提。
   営業譲渡可:操業を停止しないでいける方法の検討にはいること
   営業譲渡不可:即刻 機械設備、資材の引取りを実行する

ここで銀行は当然受けないものと考え、秘密裏にトラックを手配した。

次の次の日
なんと、銀行が営業譲渡を受諾したとの連絡が入った。こんなことは銀行が即決できるはずがない(駄目の場合はやつらは即決だが)と思い、支店長に確認したところ、結局そんな話はなく、営業譲渡の可否はまだでていないとのことだった。そこで可否の判断を早くするよう依頼した。

2〜3時間後、支店長より営業譲渡は受けないとの回答を受け取った。そこでこの話をA社社長にすぐ伝えるよう言った。

暫くしてから社長に連絡をしたところ、銀行から出資者を探すので1日待つようにと言われたとのことだった。これはまずいと思いすぐに支店長に連絡をとったところ、弊社もしくはその他に出資者になってくれるようお願いしていると話したとのこと。完全に銀行にはめられたと察し、銀行は営業譲渡も受けないし出資者も募らないということをはっきり伝えるよう強い口調で言った。

再度、社長に連絡を入れ、あと1日待ってほしいと言われたが、銀行から営業譲渡を受けないし、出資者も募らないと伝えられたを確認し、機械設備、資材の引き取りの了解をもらった。

同日深夜
引き取り完了の連絡を受ける。

以上がドキュメントである、
A社を生かすことを考えたのがそもそもの間違いであった。銀行(特に地銀は)はその地域で生きていかなくてはならず、誰かを悪者にすることで信用というものを作り上げるということが良く分かった。今考えてもあの狸オヤジ支店長には非常に頭に来る。(銀行の言ったことを信用した自分も悪かったが....)
考えると今回は最悪のケースかも知れない。

皆さんの今後の参考になれば幸甚です。



hasebet1 at 16:55|PermalinkComments(2)TrackBack(0)