朝起きて、ヤフーの画面を見たら、何とも感慨深いニュースが目に飛び込んできた。

トヨタの世界販売台数、3年連続首位 過去最高を更新(朝日新聞デジタル)

あ、経済ニュースとか苦手、という人も安心してください。経済ニュースの話じゃないから。ヤフーでは当然、経済ニュースの項目にあがってるけど。

僕はこのニュースを本当に嬉しく思った。あぁ、本当に日本人だなぁ…っていうか、日本人、すごいなぁ…と。


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僕はアメリカが好きだ。住んでたからってのもあるが、国民性が大好きだ。明るいしお祭り好きだし。おおらかだし。文化的なものも好きだ。将来、アメリカに永住したいくらいだ。ジメジメしてないし。
だが、アメリカ政府ってことになると、話は違う。

日本人は何でも我慢する。
日本人は屈辱を受けてもけっこうすぐに忘れる傾向になる。




僕がアメリカに赴任する1年ほど前、2009年のことだった。
アメリカでトヨタ車が…特に人気車種だった『プリウス』に不具合が見つかった、というニュースが世界中を駆け巡った。日本でも大きく取り上げられ…僕の担当していた番組でも先輩アナが扱っていた。

アクセルを踏むと、そのアクセルが戻らないらしい。

それにより、多数の事故が発生。

トヨタはかつてなかったほどの規模のリコールの実施を余儀なくされた。
トヨタ社長はアメリカ公聴会に呼ばれ、つるし上げを食らった。その様子は全米のネットワークで流され、マスメディアでは、大々的にトヨタ車の欠陥が特集された。

日本でもアメリカの報道にそのまんま乗っかった報道は繰り返され、トヨタ社長の公聴会での対応に「自称」専門家の皆様方が辛辣なコメントを連発していた。さらに何の裏も取れていないドライブレコーダーやなぜか録音されていた事故までの瞬間の音声(女性の叫び声などが録音されている)などが繰り返し流れ続けた。

当時は東京都知事だった石原さんだけだった。

「これってアメリカの嫉妬なんじゃないの?」

というコメントをしていたのは。日本の当時のメディアはこの石原さんの発言を失笑とともに伝えているものもいた。ワイドショーの司会者などは「また石原さんは…(苦笑)」とコメントすらしない人もいた。。




でも、僕は大学で「メディアリテラシー」を学んだ身として、このトヨタバッシングにわずかだが疑問を抱いていた。
メディアリテラシーの分野ではあまりに有名なアメリカ政府の情報操作。湾岸戦争のときなど、やりたい放題のウソ情報を垂れ流していた。これらは僕の著書でもある「メディアリテラシーの教科書」にも書いてあるが、ネットを叩けばすぐに出てくると思う。正確な情報か知らないけど。水鳥映像とか、ナイラ証言とか。

何より引っかかっていたのが、当時のアメリカの大ニュース、かのGMの破たん。
アメリカ最大手自動車メーカーの一つであるゼネラルモータースの破たん。そしてそれに伴うオバマ政権へのバッシング。

タイミングが良すぎる気がした。

だが、報道を見れば、もともとトヨタにいた弁護士を名乗る人物が
「トヨタは情報を隠蔽してるYO!」
と叫んでる。そっちばっかりがニュースになってるのは気になったが、果たしてどちらが本当?そう考えていた時、トヨタサイドの反応のニュースが入ってきた。

「私たちは自分たちの作った車を欠陥商品とは認めない」

「しかし、制裁金の支払いには合意」

うわーーーー。
日本っぽーーーい(涙)!
この文化、絶対にアメリカではわからないだろうなぁ…と思ってたらやっぱり何がなんやら理解されず、
「トヨタ、事実上、非を認める」
と現地のメディアでは叩かれまくってた。

僕はトヨタが「認めない」って言った段階で、あ、またアメリカやりやがったな、と受け止めた。そう。僕たち日本人なら分かる心境。あの丁寧な、あの真面目な、あの日本人が、ここまでバッシング受けてるのに、それでも

「不具合はないはずだ」

と言った以上、恐らくその通りなんだろうって気がしていた。だって、日本人よ?あそこまで叩かれまくって、相当に調査したろう。それでも、不具合が出てこなかったんだから、きっと嘘はついてない、そう感じた。個人的な印象だが。




その後、このトヨタバッシングは2010年秋の中間選挙を契機に、ほとんど報じられなくなってくる。
そして、人知れず、アメリカでは米高速道路交通安全局(NHTSA)って所が中心となって、さらに日本でも有名な米航空宇宙局(NASA)も加わり、事故調査が行われていた。

ヒステリックなほどに叩かれまくったアメリカのトヨタはなんと売り上げはおよそ半分にまで落ち込んでいた。
日本ではあまり知られていないが、アメリカでは、そのトヨタのリコール問題にタイミングを合わせるかのように

「トヨタからGM車への乗り換えキャンペーン!」
「トヨタからヒュンダイ自動車への乗り換えキャッシュバックキャンペーン☆」

などがガンガン宣伝されていたからだ。携帯電話かよってね。




世界中で大変なダメージを受けたトヨタはそれでもくじけずに真面目な車作りを続けていた。そして、2011年。あまりにも予想通りな結論が発表された。

「トヨタ車には問題なし。事故は起こした当事者に問題があるケースがほとんど」

これが、アメリカ政府が調査した結論だった。そう。簡単に言うと…




石原さんだけが正解だったのだ。あのじいさん、たまに過激なことも言うけど、やっぱりすごい…(時として)。




トヨタは売れすぎたのだった。
アメリカは自動車産業が何よりも盛んな国だ。そのアメリカにおいて、売れすぎたのだ。たかがアジアのイエローモンキーごときが。そして、あまりにもトヨタが売れすぎたため、すぐに壊れるアメリカのGM社は破たんしたのだった。来たるべき中間選挙に向け、その怒りを納めるため、話をでっち上げたのだろう、そうアメリカのメディアも伝えていた。
事実、弁護士を名乗る男も完全なイチャモンだったことが裁判で証明され、トヨタはその男が起こした裁判に全面勝訴した。

そんなくだらないバッシングに耐えに耐え、文句も言わずに罰金を払え、と命令されれば払い、ひたすらに耐え、真面目に車作りを続け…

そして、トヨタは冒頭で書いたように、本日の朝日新聞デジタルで報じられている通り、その後3年連続の世界販売台数第1位を記録している。




少し気になるのは、僕がアメリカにいて、このニュースを見ていた時に日本の友人にこの話をしたときだった。そう。日本のメディア、実はこの

「トヨタは実は無罪だった」

というニュースをほとんど扱ってはいなかったというこのだ。実際にそうなのかは良く知らない。住んでなかったので。僕の友人や家族がニュースを見逃してただけかもしれない。だが…そもそも、このニュース…アメリカの発表のま~んま乗っかって、当時トヨタ批判をしていたメディアには扱いにくいのかも知れないが、けっこうひどいニュースだと思うぞ?もっと怒りを持って、超大々的に報じた方がいいと思うが?
別に大きなニュースでもあったのかも知れないけれど。

日本人は我慢して、我慢して、それでも、歯を食いしばる。まぁ世界的には絶対に理解されない性格だけれど。でも、そんな日本人の芯の強さは僕も誇らしい。

一件「経済ニュース」の欄に入ってるこのニュースだけれど、実は裏にはトヨタという日本の誇る一大自動車メーカーの知られざる苦労とドラマのあるニュースだと、僕は思っている。