大分県の動物園で生まれたサルの赤ちゃん。その命名に関するニュースが久しぶりに面白かった。
動物園は名前を募集。一番投票の多かった名前にしようとしたところ、時節柄、一番人気が「シャーロット」であったというのだ。

で、これに対して『一部の』日本人が苦情を。

100件以上の抗議が動物園に寄せられ、動物園は対応に追われたという。で、当のイギリスの温度は…?というところがこのニュースのミソだ。そして、日本という国のガラパゴスな部分を見事に表していると筆者は感じるのだ。

イギリスでは、この「日本国内の杞憂」に対してほぼ全ての人が一蹴。「何が悪いのか?」「むしろ喜ぶだろう」とインタビューを敢行するテレビクルーのことも笑ってほぼ相手にしない状態。
そりゃそうだ。
そこに悪意なんてあるわけがない。むしろ、敬愛の念をこめてイギリス王室に誕生した王妃の名前を付けたのだろう。ところが、実に日本的…というか、動物園に寄せられた苦情の中には
「日本の皇室の名前をサルにつけたらどう感じるのか!」
「イギリス王室の気持ちを考えろ!」
という的外れな批判が殺到しているのだ。繰り返すが、そのイギリス王室がまったく気にしていないのだが。

これを日本では「空気を読む」という。

勝手に相手の気持ちを慮って(おもんばかって)、自分の想像の中で相手の「迷惑」を空想し、先回り、先回り、してとにかく「周囲の人が嫌な気持ちにならないように」自分たちの行動や表現を全部制限する。

テレビなどで徹底的に行われている『自主規制』の正体もこれだ。

ちょっと批判的な記述となってしまったが、筆者はこの日本の文化を別に単純にバカにする気はない。いや、むしろ、これこそが日本の素晴らしいところで、日本独自のものではあるが日本が優れた社会を築ける礎(いしずえ)の部分であると感じている。

だが、だ。

これは少しだけ月曜日のブログにも書いたのだが、世界の文化は日本の文化とはかなり異なる。
特に、筆者が2010年にアメリカニューヨークに赴任して、現地で通訳の資格も持っている方に聞いて驚いたことの中に一つが
「『空気を読む』に正確に該当する英語がないんです」
ということだった。
相手や周囲のことをとにかく先回りして想像し、周囲が右を向いているのであれば自分の意見はとにかく無視してでも「右でーす」という文化。
そもそも、諸外国においてその「文化」自体が存在しないので、正確に言い表せられないのだという。

なるほど、と思った。

当然と言えば当然のこと。世界ではまず「自分の意見を持ち」、「その意見を周囲に伝え」、「権利を主張し」、そうして、みんなが「普通」に生きているのだ。
日本ではなんと…
「意見を持つと『うざい』と言われ」、「意見を主張すると『面倒くさい』と言われ」、「権利を主張すると『クレーマー』と言われ」る文化が出来上がっている。

ガラパゴス的文化にもほどがある。

要は、「病的に」争いが嫌いなのだ。「病的に」面倒が嫌いなのだ。「病的に」みんな仲良しで手をつないでいないと怖がり、それを乱す人間はみんなしてハブにして叩きのめす文化なのだ。

なので先回りする。
予想をする。
文句を言われそうなことはやめておく。
文句を言われそうなことをやりそうな奴がいれば、みんなで叩きのめす。
問題なのは…

そんなものは日本独自すぎる、ものすごく珍しい文化であることを「知らない」日本人が多すぎることだ。

大分県でサルが生まれました~。かわいいですね~。その名前が『シャーロット』と名付けられましたよ~。

そんなもんにイギリス王室が気分を害するわけがないだろ。

その程度のことがわからないのだ。理解できないのだ。イライラして、文句ばかりを言って、行動を勝手に制限し、そのうっ憤をどこかに晴らしたいのは理解できなくもない。が、世界的に、そんなことを問題視するような国はほぼない。要は「自分もあれもこれも我慢してきているのだから、周りの人間も全部ガマンしろ」という苦情なのだ。こんなもの、ニュースにする価値すらない話題だ。でもそれが話題となり、

「確かにやめておいた方がいいよね~」

なんてことを言うインタビューが堂々と流れるのが日本のテレビなのだ。
当たり前すぎて文面にするのも恥ずかしいことだが、人間はもっと「自由に」「好きに」生きていいのだ。が、自由勝手・好き勝手に生きていいものではない。その制限をするのが「法律」なのだ。面倒であっても法律を勉強し、どこまで制限があるのかをちゃんと知り、その上で、「規制されていないこと」は、堂々とやればいいのだ。

「空気を読む」ということが日本人の持つ、素晴らしい文化であることは否定しない。が、そのおかげで生きやすい部分と生きにくい部分があることを知るべきだ。
日本人は、件のニュースにおいて、イギリスまでインタビューに出向いた日本のテレビ局の問いかけに、多くのイギリス人が

「笑いながら」

答えている姿をもっと刻んだほうがいいと思う。とりあえず、大分県の動物園、スター誕生、おめでとう。次に赤ちゃんサルが生まれたときは、是非名前は「ダイアナ」で。