今日は少し長文になります。
ですが、この一件に対しては丁寧に書きたいと思います。

毎日新聞が報じたニュースでこのような悲しいものがありました。

透析中止の女性、死の前日に「撤回したいな」 SOSか、夫にスマホでメールも

記事によれば、去年の8月、都内の病院で一人の女性がなくなりました。その女性は人工透析患者。経緯はこちらの記事に詳しく書かれていました。

医師が「死」の選択肢提示 透析中止、患者死亡 東京の公立病院



【記事より】
 女性は受診前に約5年間、近くの診療所で透析治療を受けていた。血液浄化用の針を入れる血管の分路が詰まったため、昨年8月9日、病院の腎臓病総合医療センターを訪れた。外科医は首周辺に管を挿入する治療法と併せ、「死に直結する」という説明とともに透析をやめる選択肢を提示。女性は「透析は、もういや」と中止を選んだ。外科医は夫(51)を呼んで看護師同席で念押しし、女性が意思確認書に署名。治療は中止された。

 センターの腎臓内科医(55)によると、さらに女性は「透析をしない。最後は福生病院でお願いしたい」と内科医に伝え、「息が苦しい」と14日に入院。ところが夫によると、15日になって女性が「透析中止を撤回する」と話したため、夫は治療再開を外科医に求めた。外科医によると、「こんなに苦しいのであれば、また透析をしようかな」という発言を女性から数回聞いたが、苦痛を和らげる治療を実施した。女性は16日午後5時過ぎに死亡した。
【以上記事より抜粋】



記事を書いた毎日新聞の斎藤義彦という記者は、

同病院の医師が
「十分な意思確認がないまま透析治療が導入され、無益で偏った延命措置で患者が苦しんでいる。治療を受けない権利を認めるべきだ」
と主張している

とし、記事ではその主張を一方的に否定する文章をつづっています。

恐らく現場もロクに取材せずに思い込みで書き綴っているのでしょうが、現場はそんなに簡単な状況でもありません。患者さんそのご家庭事情も一人一人すべて違います。治療内容も人それぞれです。透析病棟の現実は一概に部外者が一方的な意見を言えるほど楽な状況でもありません。この当該医師も、本当に様々な思い、悩みを超えてのご意見なんだろうと思います。この医師の意見は、もっと慎重に聞かなければいけない内容があることでしょう。この毎日新聞の斎藤という記者の一方的な思い込みで断罪できるほど、現場は簡単ではないことは先に強く記しておきます。

ただ、この記事への批評や意見は今日は置いておきます。取材不足な上に人の話をロクに聞けない人なんだろうなぁとはもちろん思いますが。


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もう2年半ほど前のことになります。僕の記した一本のコラムが世間で、と言うよりはネットの世界で随分と話題になりました。そのタイトルが

「自業自得の透析患者なんて全額実費負担にせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」

増加の一途をたどる社会保障費を何とかしなければいけない、と訴えた内容。

しかしやり方は最悪でした。当時の僕はMXテレビのレギュラー番組やテレビ大阪の報道番組のキャスターをしており、僕を起用してくれたスタッフや局に、出来るだけ恩返しをしたいという思いがとても強かったことを覚えています。
大した知名度もない僕がネットの世界の先輩に相談し、取った方法が【炎上商法】というやり方でした。
とにかく汚い言葉を並べる。
とにかく無駄にケンカを売る。
長年「正しい日本語」しか使ってこなかった僕にとってはかなり抵抗のある作業でしたが、先輩の助言通り、確かにネットの世界では一定の「受け」はありました。PVは跳ね上がり、間違いなく僕の番組の視聴率も右肩上がりにアップしていきました。

結局、慣れないままそんなことをやり続けていたので、どんどんエスカレートするしかありませんでした。

取材に訪れたある透析病棟で、数人のモンスター患者と言われる態度の極端に悪い患者の行動を目の当りにし、ショックを受けた状態で、まさに上記記事にあるような、透析病棟で本当に大変な思いをしてらっしゃる医師や看護師の方々から、痛切に訴えられました。

「何とかしてほしい!」
「長谷川さんのブログで、訴えて!」

「任せてくださいよ!」

バカな僕はゆがんだ傲慢な正義感のままに、その数カ月前に流行した「保育園落ちた、日本死ね」というブログのタイトルをもじり、上記のようなショッキングなタイトルのコラムを書き連ねました。

とはいっても、しょせんはただの【炎上商法】。強いのはタイトルだけで、文章や中身は比較的どこにでもあるような内容。現実的に日本の社会保障は限界を超えていることは確かですし、ブロゴス含めて多数の媒体に掲載され、拡散。結果、多数のお叱りを頂戴する事態になりました。

今ではあの時の傲慢で思い上がっていた僕を多くの方々が強く叱って下さったこと、長い目で見れば本当に良かったと思っています。どう客観的に見ても、あの頃の僕は増長しエスカレートし過ぎていました。


前置きが長くなりましたが、今回の件。
あくまで僕は取材せずに記事を読んだだけでしかありませんが、奥様を亡くしたご主人の心情、察するに余りあります。
記事にはスマホの画面なども撮影されていますが、きっと奥様は最後に「助けて」と訴えたのではないかと思います。
その画面を見るたびに、ご主人は胸が締め付けられるような痛みを襲うのではないかと思います。

こちらの当時のコラムにも記した文章をもう一度コピペしておきます。
『人工透析の現場と現実』(2016年9月22日記)

現実的に「実際に患者と向き合っている医師たち」の中には多くの葛藤が存在していることは事実です。それはこの取材不足の思い込みの激しい毎日新聞の記者ごときが一方的に断じることが出来るほど甘いものでもありません。

僕は今、件(くだん)の一件で不快な思いをされたり気分を害された透析患者の方々に、一つの約束をしています。

献腎移植を進める。

世界では当たり前の医療行為である「献腎移植」を進めるよう、全力を尽くすことです。
これは2016年10月に全腎協という団体に謝罪に伺った時にも馬場さんというトップの方にお話しした内容ですが、例の一件以来、僕も世界中の事情などもできるだけ取材し勉強しました。
すると「人工透析」のことを世界ではある通称で呼ばれている事が分かりました。

「つなぎの医療」

世界では「次の腎臓提供者が現れるまでの『つなぎの医療』」とされている人工透析が、日本ではほぼ「死ぬまでの医療」とされているという現実。
腎臓という臓器は、医師によれば「他臓器に比べ、比較的移植しやすい臓器と言える」とのことです。聞くと血液型が違ったとしても移植を行えたりすることもあるそうです。もちろん最大限の注意を慎重な判断の上でのことですが。

腎臓って、人間の体に二つあります。

世界には、悲しい交通事故や不慮の事態、病気によって亡くなってしまった方々の腎臓を「献腎移植」といって、腎機能に障害のある方々に対して、最大限前向きに移植していくシステムが整っている国が多くあります。

要は海外では人工透析って「治すもの」なんです。それまでに「つなぎ」。

でも日本ではこの「献腎移植」が全く進んでいません。この現状をある医師などは「病院が儲けるために献腎移植を進めていないのではないか?とすら疑ってしまう」と訴えてらっしゃいました。死ぬまで人工透析が続けば、その分病院が儲かることは事実だからです。

今、日本には33万人を超える人工透析患者が存在します。
これは人口がおよそ3倍いるアメリカに匹敵する人数で、対人口比では世界で最大の人工透析国家です。

僕は増加の一途をたどる社会保障費についてあのコラムを記したつもりでしたが、今はお金云々ではなく、単純に縁あってかかわった人工透析患者の皆さんの苦しみと痛みを和らげてあげたいと心底思っています。

この斎藤何とかという取材不足記者は記事中に

「最近では薬や機器の進歩で患者負担が軽減され、大多数は苦痛なく治療を受けている。ただ、疲れが出て腰が痛くなったり、針を刺す痛みを強く感じたりする人も一部にいるという。」

などと軽々しく記していますが、とんでもない思い込みです。
昔よりも機器が発展していることは確かに事実ですが「大多数は苦痛なく治療を受けている」など、大間違いです。
多くの方は透析を受けたその1日は、やはり通常の動きは出来ない人も多く、ぐったりした疲労感が残るものです。少なくとも僕が話を伺った多くの患者さんたちは

人工透析なんてやめたいと願っています。

「治してしまう」と「病院が儲からない」ことは確かですが、日本でも世界基準程度の献腎移植を進めることが出来れば、きっと人工透析患者数は減少させることが出来ます。一人でも二人でも負担が軽減されれば、彼らだって、透析なんて気にせずに旅行に行くことだってできます。

全国にいる人工透析患者の皆さん、そしてそのご家族の方々。

随分と切り取られて、皆さんを不快にさせる記事や匿名のツイートがたくさん出回りましたね。
本当にごめんなさい。
あれは僕のミスです。
皆さんに嫌な思いをさせた償いって訳じゃあないんですが、僕は皆さんの負担を減らせるように動きたいと思っています。単純計算、日本では毎年3000人の交通事故死亡者がいます。全然そんな計算式じゃあないんですけれど、それだけで6000人の腎移植が出来る可能性だってあるんです。一人に2つずつの腎臓があるんだから。

人工透析なんて、つなぎだよ。

そう言える日本にしましょう。
全腎協の馬場さんは名刺も受け取らず「謝罪は受け付けない」と言いましたが、食い下がって誠意をもって話したところ、最後には
「あなたの今後の行動で判断させてもらう」
との言葉もいただきました。

僕もそれでいいと思っています。
口先だけの謝罪とか嫌いなんで。

今の人工透析の現場は、やってる医師も看護師も、受けている患者もみんなが疲弊してしまっています。
改善すべきです。どんな既得権益者がいても!

長文にお付き合いくださり、感謝します。
この記事にある女性のご冥福を心よりお祈りします。そしていつの日か、ご主人の心の痛みが少しでも和らぐように。心から祈っています。


長谷川豊拝