2016年01月11日

OSAS(閉塞性睡眠無呼吸症候群)への試み 〜 その3

前回までのまとめ

・ 睡眠時無呼吸症候群(OSAS:閉塞性睡眠無呼吸症候群)は健康に影響を与えるため対策が必要です。
・ 最も効果的な対処法はCPAP(シーパップ) ですが、手軽に使用しにくいため十分に普及しているとは言えません。
・ CPAPの代用として、就寝時に装着するOA(口腔内装置)についての研修を受けて参りました。



さて本文です

OAの作用機序は、下顎の開口制限と前方移動、および下顎の固定 にあります。
睡眠時(特に仰向けで休んでいるとき)は下顎が下方に沈みそれによって気道が閉鎖され、いびきや無呼吸が起こるため、下顎を前方で固定させ、気道を確保します。

下顎の固定位置は、噛み合わせの高さを出来るだけ低くすること、また水平に前方移動させることが重要とのことです。

OAで、十分な効果が得られなかった場合は減量やCPAP、手術などとの併用が勧められます。



研修最後の講義は川名ふさ江先生(日本睡眠総合検診協会 代表理事)で携帯型睡眠呼吸検査装置の判断方法とレポートの正しい読み方についてでした。



さて、研修を終えて、OA(口腔内装置)をご希望された患者さんに、実際に装置を作成し装着していただきました。以下はそのデータです。

  * この検査結果の公開につきましては患者様のご許可をいただいております。

これは、OA(口腔内装置)を装着していない時の携帯型睡眠呼吸検査装置のデータです。(図をクリックすると拡大されます)

在宅PSG00 1


青矢印のSpO2は 動脈血酸素飽和度で、通常は95%以上です。これが睡眠時の無呼吸により一時的とはいえ70%以下に低下している事をあらわしています。

また赤矢印はいびきをしているポイントを示しています。



これは、OA(口腔内装置)を装着した時の携帯型睡眠呼吸検査装置のデータです。(図をクリックすると拡大されます)

在宅PSG002


青矢印のSpO2が改善していることが読み取れます。
また赤矢印のいびきも減少しています。


今回の患者様の、装着前と装着後の検査結果は

                 AHI           ODI  
OA 未装着時      31.0 回/時    32.2 回/時
OA  装着時       20.8 回/時    19.1 回/時
          、                             
AHI、ODI共に改善が見られます

くりかえしになりますが、 
AHI は 無呼吸低呼吸指数 ・・・ 無呼吸低呼吸が1時間あたり10秒以上続く回数
ODI は 酸素飽和度低下指数 ・・・ SpO2が下降する1時間あたりの回数      です。

AHIは睡眠障害の判定基準となります

   AHI < 5   正常
5 ≦ AHI < 15  身体に異常がないレベル。
              日中に強い眠気がある場合は精密検査の受診が勧められる
15 ≦ AHI < 30  中等度の睡眠障害 (要受診 もしくは要保健指導)
30 ≦ AHI      重度の睡眠障害 (要受診)

今回は、OA(口腔内装置)による、睡眠時無呼吸症候群の症状改善は期待通りの結果となりましたが、当然、このような改善が常に期待できるかどうかは不明です。

しかし、OAがたくさんの睡眠時無呼吸症候群に悩まされている患者さんにとって、症状改善のための選択肢の一つとなり得ることは間違いないことだと感じています。

今回は研修を受けて、最初の一例でしたが、さらに研鑽や経験を積み、より効果的なOA(口腔内装置)の作成技術を磨きたいと考えています。

長々とおつきあいいただきありがとうございました。

 
        

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2016年01月07日

OSAS(閉塞性睡眠無呼吸症候群)への試み 〜 その2

(前回からのつづきです)
 
 * やや、専門的な内容です。ご興味のある方のみ、おつきあいください。


次に外木守雄先生(日本大学歯学部口腔外科学教授) より 閉塞性睡眠無呼吸症候群(OSAS)に対する顎顔面手術 についての講義がありました。


その1で、手術以外のOSASへの治療法、対処法を記しましたが、数ある治療法の中でも手術が最も確実な治療法であることに間違いはありません。

実際に外木教授のすばらしい手術の技術により、OSASが治癒する症例を何例も提示していただきました。

しかし、骨を大きく切断する手術となるため、体への侵襲の大きさから、すべての患者さんが手術を受け入れるという現状ではないようです。

実際に手術を受ける患者さんには限りがあるため(高度かつ特殊な技術のため専門医の数も少ない),CPAP(シーパップ Continuous Positive Airway Pressure ;睡眠中、鼻から圧力空気を送り込む装置)や口腔内装置(OA)による治療法が求められるのです。



午後になっていよいよ、口腔内装置(OA)治療の現状と展望についての講義となりました。

講師は河野正己先生(日本歯科大学新潟病院 睡眠歯科センター長・教授)です。

口腔内装置(Oral Appliance ;OA)の立ち位置は微妙で、口腔内装置は歯科医院で作られるものですが、歯科医師の判断(診断)で作ることは出来ないのです。
健康保険で作る為には、まず睡眠時無呼吸症候群の確定診断が可能な医科の医療機関(耳鼻科や呼吸器内科など)からの紹介依頼(診療情報提供書)が必要なのです。



睡眠時OA

さて、OAはこの写真のようなものです。
これは、最も一般的なモノブロック型(上下一体型)ですが、バイブロック型(上下分離型 通常はゴムで力を加えられる)の物もあります。バイブロック型は保険適応外です。


通例では、口腔内装置(OA 以降OAと記載)は次の流れで作成に至ります。
まず患者さんが一般医院でOSAS(閉塞性睡眠無呼吸症候群)の診断を受ける。
前述の通り、AHI(Apnea Hypopnea Index)が5以上で、OSASの確定診断となり、保険でのOA作成が可能となりますが、通例では15以上(眠気を伴うときは10以上)が診断基準となります。

また、単なるいびき症・保険適応外のOA作製希望の患者さんは、すべて自費治療になります。



ところでAHI(Apnea Hypopnea Index)はどのように計測するのでしょうか。AHIは睡眠1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数ですが、計測するには専用の生理検査(PGS:睡眠ポリグラフ による病態検査)が必要です。

PSGとは睡眠の質と量、異常行動の診断をするものです。一般には専門機関で泊まりがけ(入院)で測定します。しかし、それはとても大変なので、簡易測定方として、在宅PSGがあります。
これは簡単な装置を額に装着するだけで、脳波と眼球運動、筋電、いびき、脈拍数、頭の向き、頭の動き の8チャンネルの睡眠時のデータを記録できるものです。在宅というだけあって、泊まりでの検査は不要です。

( つづく )
  
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2016年01月04日

OSAS(閉塞性睡眠無呼吸症候群)への試み 〜 その1

年末の12月13日(日)に睡眠歯科技術講座(中級臨床編)に参加いたしました。

会場は東京本郷の(一般社団法人)日本睡眠総合検診協会の研修センターです。

年末の開催ですので、少人数と思いきや、60人以上の参加者があり熱気に包まれていました。



参加の目的は、OSAS(閉塞性睡眠無呼吸症候群)のための口腔内装置(Oral Appliance ;OA)の為の知識を習得するためです。



ことの起こりは、当院に通院中の患者さんが、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome :SAS)に罹患していて、睡眠中装着する装置(上記のOA)を作って欲しいとの申し出があったことでした。

大学でも習った記憶がなく、紹介するにも専門の診療所が近くにないため、これを機に勉強しようと受講を決めたのです。


osas02
 ※ 修了証を頂きました。やや、専門的な題材ですので、ご興味のある方のみ おつきあい下さい。


セミナーは睡眠障害の診断と治療から始まりました。(講師:伊藤洋 東京慈恵会医大 精神医学講座 教授,日本睡眠学会 理事長)

睡眠障害は不眠症が主なものですが、それ以外にもRSL(むずむず脚症候群)RBD(レム睡眠行動障害)などがあり、今回のOSAS(閉塞性睡眠無呼吸症候群)もその一つです。

睡眠障害は交通事故や転倒事故などの間接的な原因となるばかりでなく不登校や出社困難、うつ病などの神経症、身体疾患 ( 糖尿病、高血圧etc ) さらには寿命にも影響を及ぼすとのこと。そして睡眠障害による社会的損失は3兆5000億円に及ぶとの試算もあるとのことです。また、日本での睡眠薬の使用量の多さへの指摘もありました。


   閉塞性睡眠無呼吸症候群(OSAS)について
   ・有病率は2〜4% 日本の患者数は200万人以上  
      中年期以降の男性に多い
   ・症状は 日中の眠気、睡眠中の呼吸停止、いびき、口渇 など
   ・治療法はCPAP(シーパップ Continuous Positive Airway Pressure ;睡眠中、鼻から圧力空気を      送り込む装置)の装着や、今回の主題の口腔装置(OA)などがあります。


OSASでは、AHI(Apnea Hypopnea Index)が5以上で確定診断となり、20以上でCPAP(シーパップ)の適応となり保険治療が受けられます。


200万人いる患者さんの中で、CPAP(シーパップ)を使用しているのは40万人程度( 装置の供給数 )という事ですので、150万人以上の患者さんに何らかのOSASに対する治療が必要といわれています。口腔内装置(OA)はCPAPほどの治療効果はありませんが、取り扱いがCPAPに比べ簡易なので、その普及が期待されるところです。


AHI(Apnea Hypopnea Index ;無呼吸低呼吸指数)とは

睡眠1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数をAHIと呼び、この指数によって重症度を分類します。なお、低呼吸(Hypopnea)とは、換気の明らかな低下に加え、動脈血酸素飽和度(SpO2)が3〜4%以上低下した状態、もしくは覚醒を伴う状態を指します。

( つづく )
  
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