少しぬるくなった烏龍茶で喉を潤してから、またベットに沈むと、真っ白なシーツの上に裸のまま横たわるしなやかな背中に目を奪われた。
天井からの灯りに照らされて金色に光る産毛。
それは、よく目を凝らして見なければわからないほどのものだけど…
天井からの灯りに照らされて金色に光る産毛。
それは、よく目を凝らして見なければわからないほどのものだけど…
思わず、手を伸ばしてくぼんでいる真ん中の線をツーっと撫でた。大げさにびくんと跳ねて彼女がこっちを視る。
「ごめん。ごめん。そんなに怯えないでよ。もうしないよ」
潤んだ瞳に困ったように苦笑いして、手をひっこめた。
「飲む?」
飲みかけのそれを持ちあげると、こくりと頷いてゆっくり起き上がった。
足元に丸まっていた掛布団を胸のあたりまですくっとかけてから、手を伸ばしてくる。
細くて白くて、ピンクの爪が女の子の手だな~と思う。わたしが渡したそれを両手で可愛らしく掴んで、ゴクゴクゴクと喉を鳴らして飲む。そんなに、喉乾いてたの?
喉が渇くまで喘いだせいだよね。
ときどき、じぶんを抑えられなくなってしまうときがある。
女の「いや」は、「ほんとうは嫌じゃない」って、なにかの本に書いてあって、それは男の願望でしょと思っていたけど、耳に入らないくらいに無茶してしまったかも。
いまも、無防備な首筋に噛みついて、押し倒したい衝動に駆られてる。
いったい、わたしは、どうしちゃったのだろう…。
3分の1を飲み干して、無言でペットボトルを渡してくるのを受け取ってテーブルに置くと、変わりに白い手首をやんわり掴んだ。咄嗟に、手を引っこめようとするから、ちょっとだけ傷つく。
「ねえ、さっきみたいなひどいことしないから、またシテもいい?」
「いや」と言われる覚悟で、そう言ってみると、黒い瞳を大きくさせて驚いたように目をぱちぱち瞬いてから、その赤い唇がふにゃんと歪んだ。
「ひどいことなんてされてない」
低く掠れていたけど、はっきりとそう聞こえた。
「うん…」
掴んだ手のひらを口の傍まで持ってくると、どこぞの王子のようにそこにチュっとキスをする。視線をあげると、濡れた唇にまた目が止まる。気づいたときには、彼女の脚を跨いで頬を両手で挟んでキスしていた。二度三度啄むようにしてから、さらに舌をいれて官能的な口づけを交わす。角度のせいで、二人分の唾液が彼女の口の中に溜っては、何度もごくんと飲みこむのがうれしくて妙にドキドキした。キスをしながら、回した指先で背中を摩ると、彼女がくすぐったそうにモジモジする。指の先に産毛の感触があった。
ようやく唇を離して、尖った顎、首筋、鎖骨と降りていき、唇がたどり着く前に、手の平でふわっと包み込むと少し力を入れただけで変形する膨らみ。唇といっしょで、吸い過ぎて赤く充血する先端をやんわり口に含んだ。頭の上で甘い声がひびく。舌先で先端を擦るようにしながら、上下の唇を使ってふわっと包み込む。これが好きなの知っている。仰け反る背中を慌てて腰に手を回して支えながら何度もした。
ポンポンと子供の頭を撫でているようにしてた手が、わたしの髪を掻きむしりだす。ちょっと痛いけど、感じてくれているのが分かってうれしい。
開いた足の間に視線を向けると、また、彼女の躰に緊張が走ったのが分かった。
怯えさせないように湿った薄い下生えやさしくなぞり、ゆっくりと指と指を離すと中からとろんとしたものが流れ出した。見上げると、気まずそうに目を逸らされる。
その瞼の裏も、目の下のあたりも、耳たぶまで真っ赤に染まって、女の子って可愛いな~と改めてそう思う。健康そうな白い歯でやんわりと噛みしめた唇も、真っ赤に充血していた。
いつもなら、冗談ぽくでも、なにか言って始めるけど、そんな余裕もなく、足の間に体を入れて、もう閉じることはできないようにしてから腹這いになって、そこに顔を近づけた。
ジッと見られてひくんと呼吸するそこ。わたしが舐めやすいように両膝の後ろに手をあてて押し上げると、白いすべすべの太ももが露わになる。
こんなところ、誰にも見せてないんじゃないのかな~と思うと、妙な優越感が生まれた。そして、背中の産毛といっしょで、こんな綺麗な場所があることを本人がいちばん知らないんだ。
こっちは、どうだろう。
黒い影りのある場所に思わず、にやりと笑うと、彼女が手のひらで覆い隠した。
ピンク色の爪がくるんと丸まって、戸惑ってるような感じがすごく可愛く思えた。小指に光る金色のリングは、シンプルでそんなに高いものじゃなかったけど、いつか、わたしがプレゼントしたもの。大事に使ってくれてるのがうれしい。そのリングにチュっとキスをして、やんわりとその指を一本ずつ剥がした。
「綺麗だよ」
透明な雫がピンク色の粘膜に光ってうっとりと見つめながらそう言うと、
「うそ!」
と、返ってくるから、少しおかしい。
じぶんじゃ見てないから分からないだけ。
背中の産毛と違って、ちゃんと「毛」というものが生えていて、排泄する場所でもある女のそこは、厳密には「美しい」と表現されるようなのものではないのかもしれないけど、わたしには、そうとしか言えないのだから、否定されても困る。
躊躇なく口づける。
お花畑で甘い蜜をいただく昆虫のように、上手に啜った。
目の端に、プルプルする太ももの横で彼女の指先がグーになっているのが見えた。子どものようなその仕草に愛しさが増す。
つい激しくしてしまいそうになるのを自制しながら、ゆっくりと時間をかけてやさしくイカせた。
前の車のブレーキランプに照らされた助手席の人が首を傾けながら目をつぶっていた。スースーとちいさく息をする音が聞こえてきた。
運転していて、デートなのか買い物なのか、助手席の奥さんか彼女が思い切り爆睡してるのを見て、「それも、なんだかな~」と思っていたけど、じぶんの彼女が隣で寝ても、まったく気にならないし、むしろ、なんかうれしい。
ラジオのボリュームを少し下げた。
今日あたりで桜も終わりみたいなこと言われてるけど、ぜんぜん綺麗で、まだ満開。それに花びらが散った後の葉桜もけっこう好きだった。いつもはそうでもないこの渋滞も、みんな夜桜を楽しんでいるせいなのかも。
そういえば、今年はお花見の予定を入れなかったな。ま、毎年してるわけじゃないけど。
みんなで呑んで騒ぐのも嫌いじゃないけど、こうして、車の中で二人きりで観る桜もおつなもの。まあ、いっしょに観たかった人は寝ちゃってるけど。(笑)
寒くなってきたので暖房を入れる。後部座席に常備してあるひざ掛けをあてたら起きちゃうかな?
とか、いろいろ考えながら甲斐甲斐しくお世話するじぶんも、嫌いじゃなかった。
無防備なその頬にキスしたい。
こっちを向かせて唇を奪いたい。
油断すると、すぐにそんな不埒なことをシタくなってしまう自分に飽きれるけど、こんなに好きで好きで、大事な人はいない。そう思った夜。
陳腐な言葉で〆るけど、素直に、そう思ったのだから仕方がないよね。
