欧州特許庁における審査が「遅い、高い、厳しい」というイメージがすっかり定着してしまったせいか、近年日本の出願人には欧州特許庁の人気がありません。日本からの出願数は2012年から連続で減少しています(「日本から欧州特許庁への出願数の推移 2007-2016」参照)。それとは対照的に日本からのドイツ特許出願の数は2011年と比較して倍以上になっています(「日本からドイツ特許庁への出願数の推移 2007-2016」参照)。

日本で知財関係者と話しても最近は欧州での各国ルートの話題が活発で、欧州特許庁はあまり話題に上りません。

欧州特許庁もすっかり嫌われたものです。。。。

そんな中、今回はあえて逆張的な立場を取って今EPOルートを見直すべき3つの理由を紹介したいと思います。


理由その1:    思ったより早い

一昔前は欧州特許庁での平均係属期間が6年程度と言われていましたが、バティステリ長官の審査官との軋轢をも辞さない努力により今では4年弱まで縮められました(「最新データに基づくEPOでの平均係属期間」参照)。これに伴い納付すべき出願維持年金の総額も大分減りました。加えてバティステリ長官は公式ブログで審査期間をさらに縮めることを公言しています。

一方、例えば最近人気のドイツ特許庁では油断していると審査官に出願を2年も3年も放置されます。公式な統計データはありませんがドイツ特許庁では特に気を使わなければ審査期間だけでも5年程度かかると思います。

このため欧州で早期に権利が欲しい場合は、各国ルートよりもむしろEPOルートを選択したほうが賢いかもしれません。


理由その2:    思ったより高くない

日本では権利を取得したい国が3ヶ国以下である場合は、各国ルートのほうが安いという定説があります。例えばドイツ、イギリスおよびフランスで権利を取得したい場合は、EPOルートよりも各国ルートのほうが費用は安いと言われています。

しかしこの定説は事実に即していません。

以前の記事「EPルートは何ヶ国からがお得か?」でも説明しましたが実際には2ヶ国で権利を取得する場合であってもEPOルートのほうが各国ルートよりも安くなります。さらに上述したようにバティステリ長官が公言する審査期間の短縮によってさらなる出願維持年金の減額も見込まれます。

このため例えばコスト削減を目的にEPOルートからドイツ・イギリスの各国ルートに変更したという出願人にとっては、実は当該変更により逆にコストが増加していると考えられます。このような出願人には今一度EPOルートを見直すことをお勧めします。


理由その3:    思ったより厳しくない

欧州特許庁での審査は厳しく特許になりにくいというイメージがありますが、近年はそうでもありません。特に2016年はかなりの数の特許査定が発行され、特許査定数を完了した審査の数で割ることによって求められる特許査定率は69%にもおよびます(「欧州特許庁における特許査定率の推移」を参照)。

上記と同じ計算方式で求めた2016年のドイツ特許庁の特許査定率は66%程度です。つまり最近はドイツ特許庁よりも欧州特許庁でのほうが特許になり易いことを意味します。

このため一昔前の欧州特許庁での審査の厳しさに嫌気がさしてEPOルートから各国ルートに変更したという出願人はEPOルートを見直してもよい時期かもしれません。


まとめ

以上のことからわかるように欧州特許庁は近年「早い、値段もリーゾナブル、優しい」機関に変わりつつあります。バティステリ長官もまだまだ頑張ってくれそうなのでこの機会にEPOルートを見直してみてはいかがでしょうか。