ドイツ連邦裁判所(Bundesgerichtshof;ドイツの最高裁)は7月11日、ドイツ連邦特許裁判所(Bundespatentgericht)がメルクの申請によるシオノギ製薬の抗HIV薬の特許についての強制実施権付与手続きにおいて 認めた実施の仮処分を承認したことを公表しました。

仮処分を承認した理由についてドイツ連邦裁判所はプレスリリースで以下のように述べています。

連邦裁判所は、第一審と同様に、適切かつ通常の取引条件下で発明の使用の承認を得ようとした裁判以前の申請人の努力は、本件の特別な実情、特に異議申立の結果が不確定であったことをに基づき十分であったという結論に至った。

連邦裁判所はまた、強制実施権の付与についての公益が疎明されたとする連邦特許裁判所の判断を共有する。確かにHIVまたはAIDS患者の全てが、常に
Raltegravirを用いた治療を余儀なくされているわけではない。しかし、治療の安全性および品質を維持するためにRaltegravirを必要としている患者グループが存在する。この患者グループには特に、乳幼児、12歳未満の子供、妊婦、感染症の危険性の存在が故に予防的治療が必要な人、そして既にIsentressを用いた治療が施され、 他の薬剤への切り替えにより重大な副作用や相互作用に脅かされる患者が含まれる。このような背景を考慮し連邦裁判所も薬剤のさらなる販売の予備的な許可についての公益を肯定した。

本案件ではドイツ連邦裁判所が承認したのは形式的にはドイツ連邦特許裁判所が下した実施許諾を認める仮処分ですが、実質的には仮処分だけでなく強制実施権の成立を認めると判断しています。

ドイツ連邦裁判所が強制実施権付与に関して肯定的な判断をしたのは1961年の設立以降初です。

参考までに本件のこれまでと予想される今後の流れは以下の通りです:

メルク等が連邦特許裁判所に強制実施権の付与を申請(主手続、Main Proceeding)

メルクが連邦特許裁判所に仮処分による実施許諾を申請(付随的手続、Ancillary Proceeding)

連邦特許裁判所が実施許諾を認める仮処分を下す(付随的手続)

連邦特許裁判所の仮処分に対してシオノギが連邦裁判所に不服申し立て(付随的手続)

連邦裁判所が仮処分を承認(付随的手続)     ←今ここ

(多分)連邦特許裁判所がメルクに強制実施権の付与(主手続)

<参考サイト>
http://juris.bundesgerichtshof.de/cgi-bin/rechtsprechung/document.py?Gericht=bgh&Art=pm&Datum=2017&Sort=3&nr=78868&pos=3&anz=114

http://blog.livedoor.jp/hasenfus/archives/48401236