以前の記事でドイツと欧州特許庁とでは方法の発明における用途限定の解釈が異なると説明しました。より詳細には欧州特許庁では方法の発明における用途限定が発明を限定するが、ドイツでは原則限定しないと説明しました。

当該説明について多方面から異論を頂戴致しましたので、今回はなぜドイツと欧州特許庁とでは方法の発明における用途限定の解釈が異なると結論付けられるかについて踏み込んで説明したいと思います。

まず前提として理解しておくべきことは、ドイツでも欧州特許庁でも物の発明における用途限定はあくまでその用途に適したものと判断され原則限定力がないということです(EPO GL F-IV, 4.13; BGH X ZR 105/04)。以下に欧州特許庁とドイツ裁判所との方法の発明における用途限定に対する考え方について分けて説明します。


1.欧州特許庁の考え方

方法の発明における用途限定の解釈の指標的判決であるT843/93では欧州特許庁は以下のように述べています。

「例えば、クレームがある装置に関し、そしてその装置が公知の装置と単に用途に関する情報で異なる場合は、当該用途は装置の特徴を構成しない。これは構造に関しては両者の装置が同じであることを意味する。公知の装置がクレームされた用途にも適する場合は新規性は否定される。同様のことが物、物質および組成物にも言える。一方、クレームが方法に関する場合は、これとは異なり比較できない。この場合、用途特徴は、カテゴリーの観点から方法の他の特徴(ステップ)と比較可能な機能的方法特徴である」

「クレームが方法に関する場合は、これとは異なり比較できない」からも明らかなように欧州特許庁は方法の発明における用途限定は、物の発明における用途限定とは異なる解釈をすべきであるとしています。より具体的には方法の発明における用途限定の限定力は、物の発明における用途限定の限定力よりも強いとしています。


2.ドイツ裁判所の考え方

 方法の発明における用途限定の解釈をテーマとした判決BGH X ZB 9/09ではドイツ最高裁は次のように述べています。

 「一般的に物または装置は、クレームに記載されたそれらが用いられる目的とは独立して、空間的物理的に書換えられた特徴によって保護対象として規定される。・・・この場合、目的、効果または機能的記載は保護対象の特徴ではない。同様のことが方法クレームに含まれた目的、効果または機能的記載にも原則言える

「同様のことが方法クレームに含まれた目的、効果または機能的記載にも原則言える」からも明らかなようにドイツの最高裁は欧州特許庁のように方法の発明における用途限定の解釈と、物の発明における用途限定の解釈とを区別していません。すなわち物の発明における用途限定と同様に、方法の発明における用途限定もあくまで「当該用途に適した」と原則非限定的に解釈すべきと読み取ることが出来ます。

またBenkardやBusse、Schulteなどドイツの大御所による基本書でも方法の発明における用途限定は原則発明を限定しないとの立場を取っています。


3.結論

物の発明における用途限定は原則発明を限定しないという点においてはドイツも欧州特許庁も共通します。しかし欧州特許庁は方法の発明における用途限定の限定力を物の発明における用途限定のそれよりも強く解釈し、ドイツの裁判所は物の発明における用途限定の解釈をそのまま方法の発明における用途限定の解釈に適用しています。このためドイツでは方法の発明における用途限定の限定力は欧州特許庁のそれよりも弱いと言えます。