以前の記事でドイツの職務発明制度ではドイツの従業者発明法に基づき使用者に多くの義務が課せられているものの、実際は使用者が従業者から従業者発明法(13条、14条および16条)に基づく権利を買い取ることでこの義務が免除される旨を説明しました。

ここで気になるのがこの権利の買取りの相場がいくらであるかです。

少し古いのですがその相場の参考になるのが2004年にドイツ連邦産業連盟(BDI)およびドイツ使用者連盟(BDA)に対してなされた従業員発明の報酬に関するアンケート結果です。このアンケートでは権利買取りの相場についても触れられています。

そのアンケートの結果では権利買取りの値段は以下のようになっています。

(1)従業者発明法第14条および16条の権利買取りの値段
従業者発明法第14条(外国出願の権利の譲渡提案義務)および16条(国内出願権利の譲渡提案義務)の権利のみの買取りを行っている企業では、権利の買取の平均買取金額は320ユーロでした。買取金額は最高で1000ユーロで、多くの場合100~600ユーロ内に収まりました。

(2)従業者発明法第13条、14条および16条の権利買取りの値段
上述の従業者発明法第14条および16条の権利に加えて、従業者発明法第13条(国内出願義務)の権利の買取りを行っている企業では、平均買取金額は430ユーロでした。買取金額は最高で1000ユーロ、最低で50ユーロで、多くの場合150~600ユーロ内に収まりました。

結論

現在では上述のケース(2)のように従業者発明法第14条および16条だけではなく13条の権利も買い取るのが主流と思います。また個人的な感覚では権利買取りの現在の平均価格は2004年よりも10~20%ほど高くなっています。

つまり現在の従業者からの権利の買取りの相場は500ユーロ程度になると思われます。

注意すべき点は、この権利の買取りの対価はドイツ従業者発明法第9条で定められた職務発明の対価とは別物であるということです。したがって権利の買取りとは別に職務発明の対価として従業者に適切な額を支払う必要があります。

参考資料:
・Novellierung des ArbEG – Keine Ende in Sicht: Die. Industrie reagiert mit Incentive-Systemen in: Einsele, R. W., Franke, E. R. (2005). Festschrift 50 Jahre VPP
ドイツ従業員発明法(日本語)