徒然なるままに欧州・ドイツ特許実務

ドイツで働く日本弁理士が、欧州・ドイツ特許実務に役立ちそうな情報を徒然なるままに書き記していきます。雑文・乱文にご容赦下さい。

カテゴリ: 早期審査

ドイツ特許庁における審査の遅さは、多くの日本企業の悩みのタネの1つです。審査が10年以上に亘ってしまい、権利化されたころには権利満了が目前ということも稀ではありません。

そんなドイツでも審査期間を平均2~2.5年まで短縮できる方法、すなわち審査請求から査定までの期間を平均2~2.5年とする方法があります。

その方法は極めて単純、ただ「出願から4ヶ月以内に審査請求をする」だけです。

以前説明したPPH早期審査申請では、促進効果が次のOAまでと限定的であるのに対し、本方法によれば審査期間全体に亘って促進効果が得られます。 ドイツにおいて審査の迅速化を図りたいのであれば使わない手はありません。

<参照サイト:ドイツ特許庁 Q&A集>
http://www.dpma.de/patent/faqs/index.html

欧州特許庁にはPPH以外にもPACEとよばれる早期審査プログラムが存在することは有名です。一方でドイツ特許庁でもPPH以外にBeschleunigungsantragと呼ばれる審査促進する手段が地味に存在しています(ドイツ審査基準3.3.2)。以下、ドイツ特許庁における早期審査申請の要件および効果について説明します。

時期的要件:出願が審査に継続中であればいつでも申請することができます。審査請求と同時に申請することもできます。

客体的要件:
ドイツ審査基準によると、早期審査が認められるには、審査を促進させなければ申請人が極めて大きな不利益をこうむる恐れがあるという理由が存在することが要件とされています。例えば第三者が既に出願にかかる発明を実施していたり、ライセンス契約中である場合は当該要件を満たします。一方で、早期審査の申請の際には、上述した理由が本当に存在することを証明することまでは求められません。したがって上述したような理由が存在しなくとも、例えばライセンス交渉中であることを装うことで当該要件を満たすことができます。


手続き的要件:
上記理由を述べた早期審査を申請する書面を提出します。書面にとくに様式はありません。


費用:
庁費用はかかりません。


効果:
早期審査の申請が認められると申請から概ね3ヶ月以内にオフィスアクションが得られます。一方、オフィスアクションを得た後にもさらに早期審査が続行されるか否かは審査官の裁量によります。

1.EPC規則70条(2)の通知とは?
EPC規則70条(2)の通知とは、出願時または移行時に審査請求が済まされた欧州特許出願において、拡張欧州調査報告書の送付の後暫くして出願人になされる審査継続の確認をする通知です(EPC規則70条(2))。つまり欧州特許庁は、拡張欧州調査報告の送付後、「調査でこんな結果が出ましたけど、金のかかる本審査を本当にすんの?今の時点であきらめれば審査料を返しまっせ。」ということを出願人に聞いてくるわけです。これに対し出願人は、欧州調査報告に対する応答と共に審査を継続するか否かの判断を通知から6月以内にすることが求められます。


2.EPC規則70条(2)の権利の放棄の要件
1)
前提
出願時または移行時に審査請求がなされ、審査料が支払われていること(EPC規則70条(2))。

2)手続き
欧州移行時に提出するForm for entry into the European phase (EPO Form 1200)のボックス4.2にチェックを入れるだけです。庁費用はかかりません。


3.EPC規則70条(2)の権利の放棄の効果
1)欧州調査報告書に欧州特許庁の見解書が添付されなくなります。すなわち引用文献だけが列挙された一昔前のISRのような形式の欧州調査報告書が発行されます。本来であれば調査報告書に添付されるはずの欧州特許庁の見解書は、後述するファーストアクションとして発行されます。

2)欧州調査報告書の送付後、約一ヵ月後にEPC規則70条(2)の通知がなされることなくファーストオフィスアクションが送付されます。これにより欧州調査報告書の送付とEPC規則70条(2)の通知との間の時間を短縮することができます。ここで欧州調査報告の送付とEPC規則70条(2)の通知との間の時間は、PCT経由のEuro-PCT出願で約1ヶ月ほど、PCTを経由しない通常の欧州出願で約半年ほどです。

3)EPC規則70条(2)の権利を放棄してしまうと調査報告書を受け取った時点で出願を取り下げた場合であっても、審査料が返還されなくなります。


4.まとめ
EURO-PCT出願の場合はEPC規則70条(2)の権利を放棄しても短縮できる期間が1ヶ月程度と短く、あまりメリットがないためお勧めできません。一方、パリルートの欧州出願では当該権利放棄によって短縮できる期間が6ヶ月以上になることもあるため、審査を継続することが予め決定している場合は、審査期間の短縮のための有効な手段であるともいえます。


関連記事:
早期審査以外の審査期間短縮手段 その1
早期審査以外の審査期間短縮手段 その2


1.Early Processingとは?


PCT出願を欧州特許庁に早期移行した際、移行期限経過に先立って審査を開始させるための手段です。


2.なぜEarly Processingが必要か?

PCT出願の場合、欧州特許庁には、優先日から31ヶ月以内に移行しなければなりません(EPC規則159条)。しかし移行手続きは移行期限の31ヶ月前であってもすることは可能です。このように移行期限前に以降手続きを済ませることを早期移行とも称します。

このとき、早期移行したのだから当然審査も早期に開始されると考えるのが普通に思えますが、欧州特許庁では、移行期限が経過するまで審査を開始することが禁止されています(欧州特許庁によるEarly Processingに関する通知を参照)。

ここで、注意すべきは仮に欧州特許庁への移行と同時にPACEやPPHを申請したとしてもこの禁止が解除されないことです。この禁止は唯一Early Processingの申請によって解除することができます。


3.Early Processingの費用

Early Processingの申請自体は庁費用がかかりません。しかしEarly Processingの申請の要件として欧州特許庁への移行手続の要件を満たすこと、すなわち出願費用や調査費用等が支払われることが要件となります。


4.Early Processingの効果

・欧州特許庁にとって国際段階が終了する(欧州特許庁において方式審査が開始される)。

・分割出願をすることが可能となる。

・国際出願を取り下げても、欧州特許庁の国内段階には影響を及ぼさなくなる。


5.まとめ

上述のように早期移行した場合、Early Processingを申請しなければ審査の開始時期を早めることはできません。したがって早期権利化を意図して早期移行をしたのであれば、Early Processingも申請すべきです。

通常の欧州代理人であれば早期移行の際に、「Early Processingを申請しますか」と質問してきますが、何も言ってこない代理人もいるので注意が必要です。


関連記事:
早期審査以外の審査期間短縮手段 その1 EPC規則161条の権利の放棄

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