皆様、明けましておめでとうございます。昨年末に「東京都公営企業会計についてその1」というタイトルでブログを書いてから年末年始は、のんびりしすぎてしまい、ブログを書く気力がなくなってしまいました。シリーズ物にしてしまったので、「その2」でも書いてみようかと思います。

前回のブログの締めくくりに"公営企業というものの存在について多少、理論的な説明を加えて、その必要性と問題点などについて"なんかを「その2」で書きましょうとしたので、今回はその辺りを書いてみます。

まず、公営企業というからには"企業"という側面からのアプローチを行っていく必要性があります。特に民間企業であろうと、公営企業であろうと"企業とは何か?"という、この疑問点にフォーカスを置いてから議論を進めていきたいと思います。

1.1 企業とは何か
 まず企業というブラックボックスを開けて中身を知らなければなりません。民間企業であれば、いかに経営者を規律付けさせ株主の利潤を最大限引き出すかが重要だです。標準的なミクロ経済学においては、「企業とは、財・サービスの生産活動を行う主体」とされています。しかし、経営史家のアルフレッド・チャンドラー(Alfred D. Chandler, Jr.)は4つの属性を以下のように指摘しました。

(1)資本主義経済における利潤の生産・分配手段。
(2)様々な経済主体と契約を締結する法人格。
(3)分業の存在や複数の活動への従事のために、管理者によるコーディネーション・モニタリングを必要とする管理機構。
(4)学習技能、物的資産、金融資本など様々な資源の集合体。

標準的なミクロ経済学におけるブラックボックス企業の理論は、(1)の視点に基づいています。(2)の視点は、企業を契約の束または要とみなし、ヒト・モノ・カネといった生産要素の提供者及び会社の生み出す財・サービスの消費者は、会社という契約体と雇用契約、売買契約、負債契約などの明示的ないし暗黙的な契約関係にあります。標準的なミクロ経済学では企業内部はブラックボックスであるため、生産活動が企業内部でどのように組織化されているのかがわかりません。そのため、チャンドラー氏の4つの指摘が大きな意味を持つのです。

1.2 企業の所有者
 1932年に、アドルフ・バーリ(Adolphe Berle)ガーディナー・ミーンズ(Gardner Means)が発表した"The Modern Corporation and Private Property"の中で指摘した概念によると、多数の小投資家によって株式が分散保有されていると、所有と経営の分離が実質的に創り出されます。この概念を前提におけば、企業の所有者は株主となります。しかし、株主は残余請求権が与えられているだけであり完全な企業の所有者であるとは言い難いのです。
 しかし、チトー時代のユーゴスラヴィアでは、労働者自主管理によって企業が経営されましたが、従業員は果てしなく賃上げを求め、設備投資は行われず、企業経営は破綻してしまったのです。従業員は企業との雇用契約の関係にあるだけで企業の所有者として考えるには矛盾を感じます。企業は株主の物でも、経営者の物でも、従業員の物でもない社会の物と考えられるが、簡易的に株主が企業をコントロールして、経営者は企業利潤や株主の利潤を最大化することに専念すべきだと考えるのは、制度や利益相反が生じ易くなるためです。その際、労働者は流動的な労働市場で転職が自由に出来ることが望ましいのです。

1.3 公営企業を経済学的な側面から定義した場合
 上の1.1、1.2は"企業"を経済学的な側面から見た時の古典的な記述です。上の2つを前提として、公営企業を経済学的な側面から定義するならば、公営企業には以下の7点によって定義可能ではないかとされております。

1.企業の所有・経営の主体が地方公共団体(地方政府または一部事務組合)であること。
2.一般行政活動から生じるサービス(行政サービス)とは異なる財やサービスを生産し、提供していること。
3.価格メカニズムをもちいて提供される財やサービスの生産が企業の目的であること(市場原理にもとづく財やサービスの配分)。
4.独占的生産者として市場競争からは隔離されていること。
5.サービスの量や質、その価格については何らかの規制の対象になっていること。
6.普通会計には属さないが、企業会計原則をもちいて特別会計において会計処理されること。
7.独立採算制が基本的な経営原則であること。 

これらの特徴から公営企業の財やサービスは経済学から見ると「準公共財」に分類されます。この「準公共財」以降についての説明は後日改めてということでお願い致します。少し前段の説明が長くなってしまいました。当初予定していた、"公営企業の理論的な説明"のみになってしまいましたので、次回は"公営企業の必要性と問題点など"について触れたいなと思います。また、どうぞよろしくお願い致します。