ハト豆エッセイ

お盆休みにシンガポールと台湾の友達が久しぶりに来日し、いっしょに都内の樹木豊かな風情ある公園や商店街などを回りました。最寄りの駅から滝のある公園を探して住宅街を歩きます。途中、通りがかりの人からコンビニの店員さん、戸建ての住宅前をたまたま清掃している高齢の女性まで、皆さん、公園までの行き方を丁寧に教えてくれます。中にはしばらくついて行ってくださって、公園に向かう曲がり角までご案内くださる方々までいました。

 シンガポールの友人は「日本の人たちはみんな親切よね。アメリカだったら、人にもよるけど、行き先を知っていても知らないふりをして教えてくれない人もいたり、意地悪な人ならわざわざ間違った行き先を教える人までいたりするから、日本とはえらい違いだわ」と言います。確かに、日本人は親切だと国際的にも定評があるようです。この日も目的地の公園への道案内は親切な人たちがかなり多かったです。

 公園に着くと、入り口は中国か韓国のお寺の門のようです。門から中に入れば、池があり、池の水面に枝先が垂れ下らんばかりにサクラやモミジ、ケヤキなどがうっそうと茂っています。公園の奥に曲がりくねった水の流れと滝があるようです。散歩中の高齢のご夫婦、シオカラトンボを補虫網で捕まえようとしている親子が滝に進む道を教えてくれます。滝のほうに行き着き、滝の水しぶき、滝の風情、滝の音を堪能できました。

シンガポールと台湾の友人も大いに喜び、涼やかさを楽しんでいました。

 池に戻ったら、バズーカのような望遠を備えたカメラを抱えた熟年の男性たちが5人ほどいました。「何かいるんですか。何か写真に撮るんですか」とそーっと男性の1人に尋ねました。その男性は「何もいないよ。何もいない」と言います。「もしかしてこの池にカワセミなどがいるんですか」と突っ込むと、手を振ってあっちへさっさと行けと言わんばかりの表情です。

 おそらく状況から察すると、この池はカワセミが出現するヒットポイントだろうし、この男性たちはカワセミの飛翔のシャッターチャンスをとらえようと望遠のカメラを構えているのは想像できます。別に撮影を邪魔するわけではないし、「そうそう、カワセミがいますよ」ぐらい答えてくれてもいいのではないかと思いました。しかし、その男性は突然現れたヘンなおばさんたちが自分たちのシマを荒らす存在にしか思えなかったのでしょうか。それにしても、他の男性たちも何も言ってくれません。

 シンガポールの友人は「このポンド、キングフィッシャーが来るんですね。皆さんにとって楽しいことだし、癒しになるんじゃないですか。写真に収めるのもホビーでしょうけれども・・・・」と口にすれば、台湾の友人は「ヘンなおばさんたちにカワセミのいいシーンを撮るのを妨げられたくないのかも。カワセミは地域の皆さんのアイドルでしょうけどねえ」と。日本人は親切なのか、親切でないのか、果たして・・・・。

(みえこ)

「あ、久しぶり、シンガポールから来れたんだ、何日ぐらい、日本にいられるの」「1週間ぐらいいられるかしら、大阪にも寄るんだけど」「台湾からよく来られたね、何年ぶりになるかな」「17年ぶりになるみたい、台湾のほうがシンガポールより近いのに、ご無沙汰しちゃった」「そっか」と女性3人の話が弾みます。英語、中国語、日本語が飛び交います。おばさんたちの話に花が咲くのを「ガールズトーク」と称したら図々しいかとも思いますが・・・・。

 このお盆休みにシンガポール、台湾、日本のおばさんたちが3人そろいました。池袋のメトロポリタンホテルに近いしゃぶしゃぶの店でランチです。シンガポールの女性は5年ぶりで来日に。台湾の彼女は前述の会話のように17年ぶりに顔合わせです。いずれも以前は日本での生活歴も長く、日本語はある程度堪能です。シンガポールの女性は中国系なので、英語だけではなく、中国語も多少は分かります。シンガポール、台湾の女性に加え、日本人の女性の私も交えて、肉、野菜などを豆乳だし、昆布だし、ピリ辛だしでしゃぶしゃぶしながら、お互いの近況、家族のことなどぶっちゃけトークです。

 話しているうちに、共通の友達であるインドネシアの女性の話題に移っていきます。

首都ジャカルタに住んでいる彼女ですが、花や野菜を育てるのが好きで、家庭菜園を長年やっています。凝り出して、外国産の花や野菜にまで手を出し始めているようです。

インドネシアの彼女と特に仲のよいシンガポールの女性が「日本の野菜の種を購入してもらえないかな。インドネシアの彼女に送るから」と。さらに、「生で食べられる野菜に、ナス、パプリカもほしいって」と付け加えてきます。しゃぶしゃぶランチ後は、女性3人で池袋駅の地下タウンをショッピングして回りました。

翌日、ご近所の大型スーパーの専門店街モールにある園芸店に駆け込みます。野菜の種子を売っているコーナーを物色してから、カウンターの女性店員さんに声をかけ、事情を話しました。店員さんから「日本の種を持って行ったら空港の検疫でひっかかりませんか。それに、インドネシア現地の菜園で外国産野菜の種を植えて育てたら、外来植物として問題には」のお話が。シンガポールの彼女にケータイで確認すると、問題や懸念はないということらしいです。

ナスは種まきの時期が合わず園芸店に置いていないし、パプリカも苗はありましたが、種はこの店で取り扱っていません。結局、生で食べられる野菜ということで、玉レタス、サニーレタス、サラダほうれん草、サラダ水菜の種をチョイスして購入しました。お盆休みの終盤の日に、これらの種をシンガポールの友人に託しました。彼女を通じてインドネシアの友達の手に渡ります。日本の種がジャカルタの菜園でどんなふうに育つのでしょうね。

 (みえこ)

我が家の大きな植木鉢に夜咲く白い幽玄な花が。始まりはご近所のお宅が長年続けてきた家業のお店を閉店したことからです。店主の高齢化だけではなく、息子さんも家業を継がなかったからです。家業の店舗の建物は解体され、さら地となりました。不動産会社が仲介し、敷地にはロープが張られ、「売地」の看板が立てられています。さら地が何か月か経つうちに、カタバミ、ドクダミなどが出現してきました。出現したと言っても、まだ芽生えというか、姿かたちがやっと判別できる程度です。

ところが、突然、大きな葉を持つ植物がさら地の2か所で姿を現し、どんどん成長していきます。あろうことか、大きな花までつけています。葉っぱや花の形状からして、近いものとしてキダチチョウセンアサガオというか、栽培種名で言えばトランペットリリーやエンジェルトランペットのたぐいかと思いましたが、花が下向きではなく、上向きについています。何じゃこりゃです。どうもケチョウセンアサガオ、別名アメリカチョウセンアサガオです。

さら地に現れたカタバミ、ドクダミ、イヌタデ、メヒシバは荒れ地や空き地などの裸地にまず侵入してくる、言わばパイオニア植物、先駆植物の役割を果たしているようです。しかし、このケチョウセンアサガオはそれらしい役割の存在ではなさそうです。どうやら何年も土壌中に眠っていた種子が目覚めて、発芽し、急速に成長しているもよう。店舗の建物が重機で解体される際、地中深くまで攪乱されたことが原因のようです。

このケチョウセンアサガオはハイバネーション機能で地中に休眠していた種子が活動開始に。ハイバネーション機能というと、パソコンなどまずはIT用語としての使い方をイメージします。パソコンをハイバネーション(休止状態)させるように、ケチョウセンアサガオの種子も何年にも渡って土壌中に休眠していましたが、お目覚めになったというわけです。

ケチョウセンアサガオはキダチチョウセンアサガオ(エンジェルトランペット)と同様に全草毒草です。キダチチョウセンアサガオは形状がよく似ている果実や根がオクラ、ゴボウと間違って食されて聴覚性幻覚、行動の異常などが見られるとのこと。ケチョウセンアサガオも奇行、重度の瞳孔拡大などもたらし、これを食したアメリカの高校生が死にかけ、重病になったことも。ご近所のさら地のケチョウセンアサガオは、いずれさら地が売られることから、現在の地主さんと相談し、我が家で引き取りました。我が家の大きな植木鉢の中で、夜の闇の中に上向きのトランペット型の白い花を咲かせるようになりました。このお花さん、これからどうなるのでしょうか。
(みえこ)

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