今年の3月、東葉高速鉄道の経営状況に関するニュースが流れ、ドキッとされた方が多かったと思います。今回はコロナの影響による見通しと併せて、私の市長2期目に入ってからの取り組み状況について報告したいと思います。
◆長期収支推計のローリング結果について
(2022年3月8日/千葉日報)
「東葉高速鉄道、資金ショートの可能性も 長期債務にコロナ拍車…2028年度にも 千葉県、国や沿線市と支援協議へ」
◆長期収支推計のローリング結果について
(2022年3月8日/千葉日報)
「東葉高速鉄道、資金ショートの可能性も 長期債務にコロナ拍車…2028年度にも 千葉県、国や沿線市と支援協議へ」
上のようなネットニュースや新聞記事をご覧になって、大変動揺された市民の方も多かったと思います。この内容は、令和3(2021)年11月9日に報告されていた「東葉高速自立支援委員会の開催結果について」と同様のものとなっています。
「東葉高速自立支援委員会」は、国交省、千葉県、船橋市、八千代市、鉄道・運輸機構、東京メトロが関係者として2007年に設立されました。東葉高速鉄道の経営改善計画や長期経営計画に係る検証・ローリング、需要拡大策、今後の支援のあり方等について協議を重ね、会社の自立を目指しています。
さて、今回の報告書では、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて『運輸収入が感染拡大前の水準に対して令和4年度中に100%、95%、90%まで回復する3ケースを、金利動向(高金利・基本・低金利)ごとに推計した結果』が示されています。ちなみに、令和2年度もコロナの状況を踏まえた長期収支推計のローリング結果が報告されましたが、1年前と比べてリモートワークの定着等によって働き方が変化してきたことから、今回は「通勤定期は回復水準が他券種より下回る(5%減)」という想定を加えて推計されています。
その結果、新型コロナウイルス感染症の影響などにより、運輸収支の見通しについては未だ不透明ながらも、運輸収入の回復状況や金利動向等によっては、将来、資金ショートに陥る可能性があることが改めて確認されました。
最も厳しい想定条件である「高金利となり、且つ90%までの回復(通勤定期は85%)」となった場合、令和10(2028)年度に資金ショートするという見通しが示されました。仮に現在のような低金利の状況が続いたとしても、95%までの回復(通勤定期は90%)に留まった場合は令和15(2033)年度で資金ショートする見通しです。
最も厳しい想定条件である「高金利となり、且つ90%までの回復(通勤定期は85%)」となった場合、令和10(2028)年度に資金ショートするという見通しが示されました。仮に現在のような低金利の状況が続いたとしても、95%までの回復(通勤定期は90%)に留まった場合は令和15(2033)年度で資金ショートする見通しです。
なお、この長期収支推計は、(二次支援策として実施している利子補給以外は)自治体の出資等の支援や繰上償還、運賃改定などを含めて、今後、支援がないものとして推計されています。
この報告を受けて、「東葉高速自立支援委員会」では会社の経営状況や取組状況を注視しながら引き続き検証を重ね、仮に早期に資金ショートの可能性があると見込まれた場合には速やかに支援策の実施に移行できるように、今後の支援のあり方について協議を継続していくこととなりました。
◆令和4年3月末時点での経営状況について
これまでの取締役会では、次のような説明がありました。
● 令和2年度から続く新型コロナウイルス感染症の影響は令和3年度も収まらず、運輸収入については前年度と比較すると回復傾向であったものの、コロナ前に比べ80%を下回る状況であった。
● 令和2年度から続く新型コロナウイルス感染症の影響は令和3年度も収まらず、運輸収入については前年度と比較すると回復傾向であったものの、コロナ前に比べ80%を下回る状況であった。
● このような状況ではあったが、経費節減に努めるとともに増収のための取り組みを進め、令和3年度の収支は前年度と比較すると運輸収入は7.9%増、当期純利益は116.5%増と、増収・増益となった。
● 鉄道の利用を促進するとともに、鉄道以外の収入源を確保するために様々な企画や取り組みを進めている。年末年始の利用促進を目的とした「年末年始おでかけ1日乗車券」や、利用が低調な土休日の需要を掘り起こすため、土休日に利用できる企画乗車券「春の東葉ホリデーパス」を発売した。
● 高架下や駅構内の不動産貸付についても積極的に取り組んでおり、八千代緑が丘駅においては令和4年度から2区画において新たなテナントが入居する予定である。
◆ 東京メトロとの合併に向けた働きかけについて
私は市長に就任する以前から、「東葉高速鉄道の運賃値下げについては、東京地下鉄株式会社との合併が必要である」という結論に至り合併実現を公約として掲げており、2期目就任後も、東京地下鉄株式会社とは意見交換を続けてきました。
具体的には、令和3年7月12日、さらに令和4年2月1日に意見交換を行っています。
本年2月の意見交換では、東京地下鉄株式会社から
● ポストコロナにおける経営の見通しは極めて不透明な状況である
● 有楽町線と南北線の延伸の費用は数千億円にも上ることが見込まれている
● 工事期間の延長やさらなる費用の発生といったリスクも考えると、過度にリスクは負えない
という意向を受けました。
具体的には、令和3年7月12日、さらに令和4年2月1日に意見交換を行っています。
本年2月の意見交換では、東京地下鉄株式会社から
● ポストコロナにおける経営の見通しは極めて不透明な状況である
● 有楽町線と南北線の延伸の費用は数千億円にも上ることが見込まれている
● 工事期間の延長やさらなる費用の発生といったリスクも考えると、過度にリスクは負えない
という意向を受けました。
これまでに何度も東京地下鉄株式会社との意見交換を繰り返してまいりましたが、経営統合による運賃の引き下げの実現は、コロナを経て以前と大きく見通しが変わってしまった状況下において困難であるという認識に至り、合併の働きかけをこれ以上は断念せざるを得なくなってしまいました。
長年の取り組み方針が断たれ無念ではありますが、運賃値下げへの思いを取り下げるつもりはありません。今後は、子育て世帯の多く求めている経済的負担の軽減や、東葉高速線の利用促進を図るため、通学定期の割引率の引き上げの実現に全力を挙げていくべく、会社に働きかけを続けてまいります。
◆ 通学定期の値下げについて
通学定期の値下げについては、以前より取締役会など機会を捉えて会社に働きかけを行っています。
令和3年12月に八千代市議会において早期の割引拡大に向けた積極的な働きかけを求める決議がなされたことを受け、令和3年12月20日や令和4年3月30日の取締役会では『通学定期割引率引き上げについては、私一人の意見のみならず、八千代市議会の総意である』旨を伝えた上で、通学定期の割引率拡大のタイミングについて意見を述べました。
「やちよ市議会だより」令和4年2月 99号より
https://www.city.yachiyo.chiba.jp/351000/page100010.html
<2021年12月20日 取締役会にて>「やちよ市議会だより」令和4年2月 99号より
https://www.city.yachiyo.chiba.jp/351000/page100010.html
服部:
『今まで度々申し上げてきたことだが、確かに新型コロナウイルスの影響があって、乗客、営業収入が減になっている中にあっても、会社の努力もあるかと思うが、前期も今期も経常利益を計上することができている。私は、飯田社長時代から、通学定期の割引率拡大を主張してきた。通勤定期はある程度会社持ちで、一定部分以上は自分で出しなさいということになっているが、通学定期は100%家計を直撃する。自治体にとってみれば、子育て支援ということで家計にやさしくするため、例えば教育費の無償化など、国を含めて努力してくれてはいるが、通学定期の家計への直撃が大きいので、是非これを下げていただきたいという話をしてきた。
実は今回の市議会で、議会の総意という形で、会社に対し通学定期の割引率拡大を働きかけるべきだという決議をいただいた。乗客が減っている中でダイヤを減らさなくていいのかなど厳しいご意見が出ている中ではあるが、これまでは私一人で言っていたが、議会の決議という形で上がってきたので、市長としては重く受け止めさせていただき、私一人の意見のみならず、八千代市議会の総意ということも敢えて言わせていただき、会社のご努力を待ちたいと思う。八千代市にとっては、東葉高速鉄道は市の発展のためには欠くことのできない交通ツールであると思っており、まちづくりを進める上で少しでも東葉高速鉄道を使っていただける乗客が増えるよう市としても努力していきたいと考えている。会社の方でも市民還元という観点もあるので、是非ともご検討いただければありがたい。』
(回答要旨)
● 12月の八千代市議会で「東葉高速鉄道の通学定期の割引率引上げの早期実現を求める決議」が決議されたことは、八千代市からお聞きしている。その中で、「通学定期は通勤定期と異なり、その費用の多くが家計の負担となることから、更なる割引率引上げを望む市民の声は切実である」とされているが、まさしく社会的に皆さんが思っていることであり、その意味で、通学定期の割引率が各社とも通勤定期より相当割り引いているというところもあるのだろうと思っている。
● 割引率の拡大によって、沿線の定住の促進や需要の拡大に対して一定の効果があるだろうと思われるが、一方でそれによる減収の影響も小さいものではないと考えている。
● 当社の構造的要因として、未だに2,400億円を超える有利子負債を抱え、その返済が非常に経営を圧迫している中で、減収施策については慎重な検討をする必要がある。
● 自立支援委員会という自立的な経営についてご議論いただいている委員会があるので、その御意見もうかがっていきたいと考えている。
● 当社の構造的要因として、未だに2,400億円を超える有利子負債を抱え、その返済が非常に経営を圧迫している中で、減収施策については慎重な検討をする必要がある。
● 自立支援委員会という自立的な経営についてご議論いただいている委員会があるので、その御意見もうかがっていきたいと考えている。
● コロナ禍の状況については、若干明るい兆しが見えていながらも、まだまだ不安要素があるので、今はまずそれを注視して、経費節減、収入の増加策に全力で取り組むべき時期だと考えているので、どうかご理解いただきたい。
服部:
『補足になるが、東葉高速鉄道に対しては、私は市長でありながら取締役の一員でもあるので、市民の思いを会社に伝えるのが一つだが、あまりにも言い過ぎてしまって、会社がおかしくなってしまってはしょうがないので、非常に難しい立場にある。以前も話したと思うが、八千代市における駅勢圏人口もだいぶ頭打ちになってきて、今までは順調に乗客が増えてきたので、収入も増えてきたと思うが、これからだんだんそのカーブも緩やかになっていくので、会社としても積極的な増収策を考えていただきたい。確かに通学定期の割引率を拡大すると、目先の売上は落ちてしまうかもしれないが、長い目で見たとき、通学定期を使った以降は通勤定期を使ってもらえるような形にもなると思うので、八千代市としても定住人口を増やしていくためにも、東葉高速鉄道とは共存共栄をしていきたいと思う。八千代市としてもできる限り協力させてもらうので、これからもよろしくお願いしたい。』
<2022年3月30日 取締役会にて>
服部:
『前回の取締役会で市議会の総意という形で通学定期の割引率拡大を働きかけるべきとの決議をいただいたと話したが、通学定期の割引率拡大実施のタイミングとしては債務超過が解消したタイミングが会社としてもいいのではないかと思う。資料3を見ると今年度の見込みとして約13億円の債務超過額の減少がみられるが、このままのペースで行けば債務超過が解消されるのはどのくらいと見ているか。』
(回答要旨)
● コロナ禍からの回復状況にもよるが、純利益は昨年度決算では約7億円強、今年度の収支見込では約13から14億円程度となる見込みであり来年度は約20億円弱を見込んでいるため、このままのペースでいけば債務超過の解消はあと2年程度だとは考えている。
● コロナ禍前はもう少し早い段階で債務超過の解消があるだろうとされていたが、若干先延ばしになった経緯もあり、今後も債務超過の解消やその先に向けて頑張っていきたい。
服部:
『債務超過が解消された段階で通学定期の割引率拡大に向けた動きが出ると考えてもいいか。』
(回答要旨)
● 課題であった債務超過の解消はひとつのタイミングではあると思うが、それでも累積損失として620億円を超える額が残っている。経営に影響を与える機構への債務返済等をこの先も続けていく中で、現時点で具体的にいつ実施するということを述べることは難しい。
● タイミングについては、今後、自立支援委員会等の関係者の意見も聞きながら議論をしていくことになると思う。
◆ 経営安定化に向けた取り組み
東葉高速鉄道の経営安定化に向けた取り組みについては、本年8月に行われました千葉県知事との意見交換において支援を要望したところです。
今後も、国へ鉄道・運輸機構に対する多額の長期債務の縮減や、利払いの軽減などについて働きかけを進める方針です。
東葉高速鉄道が置かれている経営状況を注視しながらも、一日もはやく実現に結び付くよう働きかけを続けてまいります。