気になったその日の天気

気になった日の天気を天気図・気象データで解析してます。 主に大阪の天気について書きます。 また気象統計・気象知識についても書いていきます。

2010年12月26日の熊本空港の霧の要因と天気図等での予測可能性

久しぶりの更新です。

今日は読者から

・2010年12月26日の熊本空港の霧の発生要因は何か?

・事前の天気図等で予測できたかどうか?

というお尋ねがありました。

そこで今回はこの検証について書いてみたいと思います。


まずこの時期といえば・・・

そう!日本に強い寒波が南下してきた時期でした。

12月26日09時地上天気図







12月26日09時850hPa天気図12月26日09時500hPa天気図







上図は12月26日9時の地上天気図、下図左は12月26日9時の850hPa地上天気図、下図右は12月26日9時の500hPa地上天気図です。
(天気図は図をクリックすると拡大図をご覧いただけます。)

まず地上天気図を見ると、日本列島は全国的に等圧線が縦縞なった冬型の気圧配置です。
低気圧を中心に等圧線の間隔が狭くなっていることからも、北風が強く、大陸からの冷たい寒気が強く入ってきていることが良く分かります。

次に850hPa地上天気図を検証します。
太線が等高線で、熊本付近は約1580mだと考えられます。
天気図に引いた青線が「もし天候が崩れたら地上では雪になる」と1つの目安になる−6℃の等温線です。
そして赤線で熊本の位置を印しており、この日の熊本は「地上では雪になる」目安の−6℃圏内入っていました。
また黄色線は風向、風速を示す矢羽根を表しており、北より風が吹いていて、寒気の流入があることを示しています。

そして500hPa地上天気図を検証します。
朝鮮半島西岸の青丸は地上天気図の低気圧とはまた別の寒気の中心の存在を示しています。
そして寒気の中心の下の緑の波線は気圧の谷であり、そしてその東の黄色線は風向、風速を示す矢羽根を表しており、九州地方の熊本はこの気圧の谷の東側に位置しています。
地上天気図でこの朝鮮半島西岸には特に何も印されていないことから、この朝鮮半島西岸の寒気は寒冷低気圧であると考えられます。

天気図の検証から26日の九州地方北部、熊本は

・大陸から強い寒気が流れこみ、もし天候が崩れたら雪になる程の低温であった。

・地上天気図の日本海北部にある低気圧とは別に朝鮮半島にまた別の上空の低気圧があり、その東側に位置する九州地方は天候的に非常に不安定な状態であった。

と考えられます。

次にこの日の熊本の気温や天候等の状態を見てみたいと思います。
下記のアドレスにアクセスしてください。


気象庁の過去の気象データより

熊本の12月26日の気象データ表のページ
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/hourly_s1.php?prec_no=86&prec_ch=%8CF%96%7B%8C%A7&block_no=47819&block_ch=%8CF%96%7B&year=2010&month=12&day=26&view=p1

そして熊本空港の観測所である益城の気象データ表のページ
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/hourly_a1.php?prec_no=86&prec_ch=%8CF%96%7B%8C%A7&block_no=0923&block_ch=%89v%8F%E9&year=2010&month=12&day=26&view=p1

本来ならば熊本空港の観測所である益城の気象データだけでいいのですが、益城のアメダスデータは気温のみなので益城から一番近く、また湿度や天気データもある熊本のデータも掲載しました。

この気象データより次のことが分かります。

・熊本空港の観測所である益城の12月26日の気温は0.5℃〜2.0℃

・熊本の気温は0.8℃〜2.9℃

・熊本はこの日の天気はみぞれ、また雪

みぞれ(天気の状態はみぞれ)

ゆき(天気の状態は雪)

・熊本の湿度は午前4時以降では80%以上、12時以降は90%を超える高い状態

以上のことより熊本空港でできた霧の要因は

この日の0℃〜2℃の低温、低温による高湿度、そして1日降った雪やみぞれによってできた

と考えられます。

熊本よりも標高が高い熊本空港では熊本よりも気温が低いため、湿度ももっと高かったと考えられます。恐らくこの日はずっと90%以上だったでしょう。
そのため降ってきた雪やみぞれは通常ならば大気中に水蒸気になって蒸発するのですが、湿度が高いために大気中の水蒸気として蒸発できずに霧となった

のだと考えられます。

(*熊本の標高は38m、益城の標高は193mで155メートルの標高差があります。基本的に標高が100m上がると気温は0.5℃〜1.0℃で下がりますので、だいたい熊本よりも1℃〜2℃位低いと考えられます。)


それでは天気図等では予測可能だったのでしょうか?

やはり天気予報等で寒波の襲来、またその日の最高気温、最低気温の状態、天候状態(雨または雪が降るか、もしくは曇りか)を把握することです。
気温に関して言うと気温が4℃を切りそうなときは注意して置くべきでしょう。
最も晴れていれば問題ないですが、天候が崩れると雪や霧が発生することは十分考えられます。

地上天気図では等圧線が縦縞(冬型の気圧配置)になっていること、そして等圧線の間隔が狭いか、また昨日より狭くなっているかを把握することです。縦縞の等圧線の間隔が狭くなるということは北よりの風が強くなることですから、北風が強く吹けば、それで気温が下がるということは考えられます。

あと気象衛星等(NHKニュースなどではやっていますね。)で大陸からの筋状の雲が大陸からどれだけ離れて出来ているかを見ることもポイントです。その離れ具合によって寒気の強さがわかります。
また冬将軍が強くなった等の寒気が入ってくることが予報されていると注意が必要でしょう。


まあ色々と書きましたが、予測についてはやはり天気予報、気象情報をよく聞き、把握することでしょうか。
そして上記の点を注意することで霧や雪の予測を完全にすることは簡単ではないですが、予測の可能性は高まると考えます。

それにしても今年の冬は寒い。
早く収まってほしいと願う今日この頃です。

強い北風の要因は?

もう年の瀬になろうという昨日の晩から今日にかけて北風が強く吹いています。

ここ大阪もゴーッ、ヒューと大きな音をたてて吹きつけています。
台風が来てもそんな風はそう吹くものではありません。

今日はこの風を吹き付けている要因を天気図から検証してみたいと思います。

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左上図より12月30日午前9時の地上天気図、右上図は12月30日午後9時の地上天気図、左図は12月31日午前9時の地上天気図です。
(天気図は図をクリックすると外部サイトとリンクしていて、拡大図をご覧いただけます。)

30日午前9時の地上天気図より、日本海上に中心気圧1006pHaの低気圧があり東北東へ移動しているところです。

確かに低気圧の北西側こそ等圧線が縦縞になっていますが、日本付近は1010pHaから1014pHaの領域にあり、等圧線もほとんど通っていませんね。

しかしこれが30日午後9時、31日午前9時と進むにつれて、日本上空の等圧線も変化してきています。

特に日本海にあった低気圧は北東進しながら、急速に発達しています。

30日午前9時の低気圧の中心気圧 1006pHa

→30日午後9時の低気圧の中心気圧 990pHa (−16pHa)

→31日午後9時の低気圧の中心気圧 984pHa (−6pHa)

と半日で16pHa、1日で22pHaも下がっています。

特に31日の984pHaなんて台風並ですね。
いかに発達したががわかります。
ちょうど風が強くなってきたのも30日の昼過ぎから夕方にかけてのこの頃からです。

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次に左上図より12月30日午前9時の500pHa天気図、右上図は12月30日午後9時の500pHa天気図、左図は12月31日午前9時の500pHa天気図です。
(天気図は図をクリックすると拡大図をご覧いただけます。)

まず30日午前9時の500pHa天気図を見ますと、朝鮮半島西岸付近に気圧の谷があります。(等圧線が下に凹になった領域です。)

その東側の日本列島はというとやや北西−南東方向の走行をした等圧線に覆われています。(数字は地上からの高度です。)

また朝鮮半島より北の中国の沿海州付近には5100mの閉じた等圧線の低圧部があり、その領域には−42℃線に覆われた強い寒気があります。

それから30日午後9時、31日午前9時と進むにつれて、気圧の谷が東に移り、北の5100mの閉じた等圧線の低圧部と−42℃線に覆われた強い寒気が南下してきています。

それに引きづられるようにして等圧線も走行を変えて、北西−南東方向に走り、等圧線の線の間隔も狭まってきています。
そのため北−北西よりの風も強まっています。

また31日午前9時の500pHa天気図で5100mの閉じた等圧線の低圧部の東側にあるLは地上の低気圧と対応しています。

これより昨日から今日にかけての強風の要因は次のように考えられます。

日本海側の低気圧の急速に発達しながら北東進することにより、大陸からの上空の強い寒気が低気圧に向かって入り込み、吹き込んでいるために昨日の夕方から今日にかけて低気圧の北西側に位置する日本列島は強い北風が吹いている

と考えられます。
そのため気温も今日は全国的に寒くなっています。

この北風はどうやら数日は続きそうなので、寒さと強風には要注意が必要です。

台風18号の強さの要因と急な速度変化と進路変化について

しばらく滞っておりましたが、久しぶりの更新です。

先週の10月7日(水)から8日(木)にかけて日本列島を縦断した台風18号について書いてみたいと思います。

この台風18号は日本に到達する前までは中心気圧が940hPa、最大風速が約47メートル(85ノット)、風速15m以上の強風域は500km以上の大型で非常に強い台風でした。
この時期では最大級の台風ではないかと言われたのも記憶に新しい所です。

そしてこの台風は当初は約時速22km(12ノット)と比較的ゆっくりと北進していたのですが、日本列島に近づくにつれて速度を上げ、更に進路も北東に変化して進行しました。

どうして台風はこのように強い勢力になったのでしょうか?
どうして日本列島に近づくにつれて台風は速度を上げ、また進路が変化したのでしょうか?
天気図で見てみたいと思います。

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まずは左上より10月6日21時の地上天気図、右上は10月7日9時の地上天気図、左下は10月7日21時の地上天気図です。

10月6日では台風18号は8日の早朝に上陸すると予想されていました。
それが7日の21時の天気図ではもう本州付近まで来ています。
6日の予想よりもはるかに早く来ました。
そして勢力はほぼ維持して北上してきました。
(画像をクリックすると拡大した画像へリンクします。)

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2009100721 500pha-tenkizu






次に左上より10月6日21時の500hPa天気図、右上は10月7日9時の500hPa天気図、左下は10月7日21時の500hPa天気図です。

10月6日21時の天気図を御覧ください。
地上天気図とほぼ同位置にある同士円状の等圧線が台風です。
その東側には高気圧帯があり、台風の北側の等圧線が集中している所が偏西風帯(ジェット気流)です。
台風は高気圧の北辺をゆっくりと北進するものと見られていました。
しかし7日の9時の天気図では同士円状の台風に5820mの等圧線が覆われています。
これは台風が偏西風に流されていることを示しています。
21時の天気図では更に多くの等圧線に覆われてしまいました。
そのため台風の速度は上がり、進路も偏西風帯に乗ったことから北東に進路を変えたのです。
(画像をクリックすると拡大した画像へリンクします。拡大画像の図は下の画像です。)

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最後に左図が10月6日の平均海面水温図、右図が10月7日の海面水温図です。
両図とも共通しているのは台風がいた場所、または台風が通った場所の海面水温が27℃〜28℃以上とかなり高いことです。
台風というのは海面水温が27℃の所で発生します。
ここはまさにその水温だったのです。
海面水温の高い海面から多くの水蒸気の補給を受け、その水蒸気が水滴になる際に放出される潜熱が台風を発達させるメカニズムなのですが、この西日本の南海上はこのような発達メカニズムがされていたと想像されます。
この時期はもう少し海面水温が低いために、日本列島に近づくにつれ台風の勢力は弱くなるのですが、この台風18号は勢力を発達・維持させながら接近してきたと考えられます。
(画像をクリックすると拡大した画像へリンクします。)

この後10月8日にかけて台風は愛知県の知多半島付近に上陸し、日本列島を縦断しました。
速度が速くなったため、幸い1日位で日本列島を通過したのは被害面では不幸中の幸いでした。

しかし、上空の偏西風によって台風の速度・進路が急激に変化することから予想は難しいです。
また海面水温も台風の強さを探る上では欠かせない要素であります。
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N.H

大阪在住の気象予報士です。(登録番号:5872)
どうぞよろしくお願いします。


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