
サッカー選手はサッカーを、野球選手は野球を、歌手は歌を…。エンタテインメントに携わる僕らが出来る事は人々に夢や希望、勇気を与える事、と言うより試合を観てもらって音を聴いてもらってそれぞれの人がそれぞれに何かを感じてもらいそれが夢や勇気や希望に変わる触媒になれば嬉しい。夢や勇気や希望は元々みんなの心に確かに存在するのだから…。
先日友人から「私達一般人は募金や節電とか買い占めしないとかしか出来ない。多くの人に夢や希望、勇気を与える事が出来る仕事に携わっているんだから頑張って!!」と発破をかけられた。阪神淡路大震災の時には色々深く考え込んだけれど、結局答えはそれしかなかった。それ以降、世の中に悲しいこと、辛い事が起こるたびに「音楽なんかやっていいのか?」などと思わないで、それが許される範囲内で精一杯表現し、みなさんの立ち直るきっかけになることが僕らの仕事だと思ってやっている。
そう言う意味でこのチャリティマッチはヒーローがヒーローとして、例えばクラーク・ケントがスーパーマンになって登場するような、ドラマとしては最高のシーンだ。バスでスタジアム入りするシーンから最後のゴールまで選手達は光り輝いていたように思う。そして最後の得点を決めたのがカズだったんだからチャリティマッチとしては最高にドラマティックな締めになったのではないだろうか。
試合前、車で何日もかかって仙台から横断幕を持って来たと言うベガッタ君を背負ったベガルタ仙台サポーターが「ベガルタ仙台のTwistedを歌って下さい」とスタンドに頭を下げて回っていた。感極まった彼のお手本の歌は叫びにも似て初めて聴く人にはよく解らなかったかも知れないが、試合を通して両ゴール裏で聴き慣れたあの歌が何度も歌われていた。カントリーロードも。
甚大な被害を出した宮城県に本拠を置くベガルタ仙台には街の復興のシンボル、それこそ希望の星になって欲しい。出来るだけ近い将来にゴールドに染まったユアテックスタジアム仙台でセレッソ大阪と激闘を演じてくれるものと信じている。比較的情報が少ないが茨城県も甚大な被害を被っている。鹿島アントラーズはスタジアムが相当やられていると言うし、水戸ホーリーホックは経営からしてかなり厳しそうだと新聞にあった…。天皇杯で苦杯をなめさせられた福島FCも…。でも、リーグ全体で助け支え合えば乗り切れない事はないはず。とにかく今を乗り切るためにここは一致団結して頑張るしかない。
国歌斉唱をした倉木麻衣さんは昼の時点ですでにかなり緊張していたと聞いた。この試合は特別な意味合いを持っているし雰囲気が普段のゲームとはかなり違うから…。緊張は手に取るほど分ったが、そんな中でもしっかり歌えていたし、僕的には個性を出しすぎる事なく丁寧にすっきりと歌っていた所が良いと思った。