二子玉川ライズ住民訴訟控訴審準備書面(1)
第2 争点3 財務会計行為に先行する原因行為の違法性のうち補助金支出負担行為について
1 控訴人らは,原判決が世田谷区長らが東京都知事の先行行為を尊重すべき義務があり,きわめて重大な瑕疵がある場合以外は,先行行為を前提としてなされた財務会計行為は違法とはならないとしたことに対し,最高裁平成4年12月15日判決(一日校長事件)を正しく解釈すれば,先行行為を行う権限が財務会計行為者とは別の主体に属している場合において常にこれを尊重しなくてはならないなどとは考えられないこと,判例上は先行行為が財務会計行為者に対して法的義務を課すような場合においても,先行行為が無効である場合には,それに従った財務会計行為をしてはならないとされていることなどを明らかにしてこれを批判した(控訴理由書9〜15頁)。
 そして本件においては,世田谷区補助金交付規則第3条,同6条,東京都世田谷区市街地再開発事業補助金交付要綱第7条などを根拠に,世田谷区長らは補助金支出の法令・予算への適合性や,目的適合性について審査すべき義務,すなわち「違法な事業計画等に補助金を交付してはならない財務会計法規上の義務が課せられている」と主張した(同16頁)。
2 これに対して被控訴人は,一日校長事件最高裁判決は内部組織の権限行使に伴う財務会計行為についての判示であり,別個独立の公共団体である東京都と世田谷区のような場合に詳細な検討を求めるものではないと主張している(答弁書4頁)。しかし別個の主体がなした先行行為であってもそれが違法無効な場合にはそれを前提とした財務会計行為をなすべきではないことは変わりはなく(この点八ッ場ダム費用支出差し止め請求事件判決が明らかにしたとおりである),後述するような基準により先行行為の法令適合性などを審査しなくてはならないのであって,この点原判決が誤っていることは明らかである。
3 また,被控訴人は地方自治法232条の2が,「補助金交付は公益上の必要がある場合においてなされる」(条文上正確には「することができる」というのが文言であるが)のであるから,上記規則や要綱の審査もそのような観点からなされれば足りると反論している。
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 しかし地方自治法232条の2はその文言からしても,補助金交付のための必要条件として公益性の要件を定めるものであり,上記規則等はその公益性判断の基準を具体的に定めるものである。すなわち上記規則等は,財務会計行為者には補助金交付事業の法令適合性,事業の目的,内容の適正などを調査する義務があり,これらが認められない場合は地方自治法232条の2の要件を欠くものとして,補助金の交付決定をしてはならないことを定めているのである。
財務会計行為者は自らの権限に基づき本件事業の法令適合性などを検討して,補助金の公益性の要件を審査するのであり,知事と同等の立場で審査するものではないのは当然である。しかし法令に違反し,あるいは不適正な目的,内容の事業に対しては補助金を交付してはならないことは明らかであり,その点についての審査を怠ることはできないのである。