真相JAPAN 第四回勉強会「TPPによる日本再占領と崩壊する世界秩序に立ち向かう知恵」が11月5日に池袋勤労福祉会館で開催された。第一部は安部芳裕氏の講演である。第二部は安部氏、竹原信一氏、山崎サラ淑子女史、ジェイ・エピセンター氏、高橋清隆氏、天野統康氏をパネラーにしたシンポジウムである。

真相JAPANは東日本大震災を契機に生まれたメールマガジンで、竹原信一ブログ市長へのインタビューやカダフィ大佐の追悼記事など他のメディアとは異なる視点を特色とする。勉強会でもカダフィ大佐の写真が掲示され、オルタナティブな雰囲気を醸し出していた。

『原発震災後の日本の行方〜知られざるTPPの真実』などの著書のある安部氏はTPPの問題点を説明した。最初にTPPが環太平洋戦略的経済連携協定と訳されていることを「誤訳」とする。「Trans-Pacific」は「太平洋横断」になると主張する。

また、参加表明後に条件が提示されるTPP参加方式を詐欺商法と同じとする。

「詳しい情報が分からないのに入るか入らないか決めなければならないことは怪しい。契約の内容を明らかにしないで契約を迫るビジネスは大抵詐欺である。」

TPPのキャッチフレーズとなった「第三の開国」にも手厳しい。

「第一の開国はペリーの砲艦外交による不平等条約の押し付けであり、第二の開国は敗戦による占領である。第三の開国とは不平等条約を押し付けられて、占領されることではないか。」

前原誠司外相の発言「国内総生産(GDP)構成比1.5%の農林水産業を守るために、残り 98.5%を犠牲にしていいのか」によって農林水産業がTPPの抵抗勢力のようにされているが、その嘘も指摘した。

「現在の日本の最大の貿易相手国は中国である。アメリカではTPPを中国封じ込めのブロック経済と見ている。日本がTPPに参加すれば最大の貿易国である中国を失ってしまう。」

さらにTPPが格差拡大という小泉構造改革からの一貫した流れであることを指摘した。「労働者の平均賃金は下がり続けている。労働者への分配率が下がった。郵政民営化は郵便だけの問題ではない。郵貯と簡保をウォール街で運用させることが狙い。鳩山政権が日米構造協議の窓口である日米規制改革委員会を廃止した後でTPPが発生した。日本の貧困率は米国を抜き、格差の激しい国になった。」

米国では「コーポレート・ランドという言葉が流行っている」とする。企業領土である。

「TPPでは投資先の相手国を訴えて、損害を賠償できる。外資が公正な競争を阻害されたかで判断される。多国籍企業に治外法権を与えることになる。国民を法律で守れなくなる。」

NAFTAによってカナダの農家の所得は減った。メキシコは主食のトウモロコシの輸入が増加して自給率が低下した。バイオ燃料ブームでトウモロコシが高騰し、低所得者は買えなくなった。

最後に安部氏はTPPへの対抗策として「まず勉強すること」を挙げた。そして「友人や知人、政治家、マスメディアへの働きかけ」を提言する。さらに「オルタナティブな暮らしの実践」として、「食べ物は信頼できる農家から購入する。仲間内で共同体を作って食糧やエネルギーを自給する」などにより資本主義の影響を受けにくい生活を提案した。

第二部はシンポジウムである。竹原氏はTPPについて、「この国がやりそうなことである。官僚は国民を利用するために法律を作る。略奪国家のやり方」と批判した。

ファイナンシャル・プランナーの天野氏は「日本がアメリカ化していく」との感想を述べた。具体例として医療を挙げる。

「米国の民間保険会社が進出する。政府が負担を減らせば、米国の保険会社がカバーする。人間の生活が金銭の対象になる。」

さらに「アメリカ化すると言っても、日本は実質的にはアメリカの植民地であるため、アメリカよりひどくなる」と警鐘を鳴らした。

ヒップホップアーティストにして国際情勢分析家のジェイ氏は、TPPの方向性を「社会のために個人があるという全体主義」と断じた。

「アメリカのルールを日本に押し付けることは新世界秩序(ニュー・ワールド・オーダー)そのもの。右よりの軍事的な全体主義である。」

安部氏「市場原理主義が地球上を覆っているカルト主義。全ての規制を取っ払って企業に任せることで、企業が利益を得る。国という機関を利用して、あらゆる人間から搾取する。」

山崎氏「収奪システムとしての国家。国家を乗っ取って収奪する寄生虫のような人間がいる。最終的な受益者は誰か。日本はアメリカにやられっぱなし。TPPで日本の主張が通ると考えることは夢物語である。マスメディアが真っ先に狙われる。外国人の持ち株比率の撤廃を求められる。」

最後のまとめとして、安倍氏は米国の刑務所ビジネスに注意喚起した。刑務所が民営化され、囚人に低賃金で労働させて企業が儲けるという奴隷社会的な構造がある。一方でTPP反対では国民が政治家に反対を働きかけるようになったことを希望とした。

この勉強会ではTPPを政治支配の問題から捉える視点が特徴である。これまでTPPは経済的なプラスマイナスで論じられる傾向が強かった。最近では反対論から生活の問題と主張されるようになったものの、さらに一歩進めて資本の支配構造まで迫っている。また、日米構造協議や構造改革から一貫した米国の狙いを浮き彫りにする歴史的視点も、目の前の問題に心を奪われがちな日本社会で強調される価値がある。
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残念な点は第一部と第二部の時間配分に偏りがあり、パネラー同士や会場とのディスカッションが不十分であったことである。特に阿久根市長として地方の疲弊した実態を体感している竹原氏の発言が欲しかったところである。

一方でTPP反対は新たな害悪への反対であって、反対を貫徹したとしても今の日本の抱える問題を解決するものではない。日本の現状を問題視して改革を志向した竹原氏にとっては反対論だけでは語ることは少ないとも言えるかもしれない。
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