#書評 #小説 #スノボ #レビュー
末永薫『萌空姫様のスノボ道』はスノボ未経験の女性・萌空がスノボに目覚める過程を描いた小説である。スノボに関する技術的な描写も深い。逆にスノボを知らないと理解することも大変になるほどである。
主人公の行動力がすごい。思いついたら一直線、前に進むだけのように感じられるが、自分のルーツを辿る旅にもなっている。未来と過去はつながっている。
主人公の行動力は国境さえ軽く越えてしまう。但し、スマホの翻訳アプリや地図に助けられている。宇宙旅行や空飛ぶ車など昭和時代に想像していた未来社会とは異なるが、世界中のネットワークと繋がるという小型コンピュータを持ち歩くという昭和から見れば夢の未来に住んでいる。
主人公の個性も遺伝によるところが大きいようである。一方で家庭環境は悪く、行板の台詞のように、よくグレなかったと思う。「氏より育ち」ではなく、育ちより氏という感じである。「子供の頃に始めなかったらプロになれないとかいう最近の風潮が気に入らなかった」という台詞もある(174頁)。子どもの頃に親から英才教育で叩き込まれた訳ではなく、大人になって好きで始めた人が成功するストーリーには夢がある。但し、それは普通の人が本人の努力で獲得したものではない。本書が親によって子どもの人生が決まる格差社会に対抗する物語になるかは意見が分かれるだろう(別に反格差の小説と銘打っている訳ではないが)。ラストは感動的に物語として上手にまとめた。