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表見代理は無権代理の特別な場合である。無権代理は無権代理人が責任を負うことが原則である。但し、無権代理人を信用してしまった相手方に落ち度(帰責要因)がある場合もあり、無権代理人と相手方のどちらに責任を負わせるかという話になる。
これに対して表見代理は無権代理人が勝手に動く点では同じであるが、本人に何らかの落ち度(帰責要因)がある場合である。その帰責要因があることによって、無権代理人が真実の代理人であるのような外観が作られる。その外観を信頼して取引に入った相手方を保護する制度になる。これを保護しないと代理人が信用できなくなり、代理人を使った取引が廃れる危険があるためである。
表見代理には表示、消滅、踰越の三種類がある。代理権授与表示による表見代理、代理権消滅後の表見代理、権限踰越の表見代理である。以下では代理権消滅後の表見代理を説明する。
代理権消滅とは本人が正当に代理権を与えた後に代理権を消滅させた場合である。ところが、消滅後も代理人であった人物が代理人と称して取引した。この場合は現行民法第112条は「代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない」とする。第三者に過失がある場合は別である。「ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない」
この善意は代理権が消滅したことを知らないという意味であると解釈される。「代理権が存在しないこと知らない」ではない。代理権が実際に与えられていたことを知っており、その後に消滅した事実を知らなかった。そのために代理権が存続していると誤信した場合である。改正民法では「代理権の消滅の事実を知らなかった第三者」として善意の内容を明確にした。
「他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない」
また、改正民法では第112条に第2項を追加して、消滅と踰越の重複パターンを規定した。重複パターンでは「第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由がある」場合は本人が責任を負う。
「他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う」