梶川卓郎原作、西村ミツル作画『信長のシェフ 21』(芳文社、2018年)は上杉謙信との戦いである。史実では織田軍団が脆くも敗れ去っており、どのように本作品が描くのか興味深い。この巻では手取川の戦いまで進まず、続きが気になる。また、本作品は主人公の料理で歴史が動く展開が定番であるが、この巻では信長が史実では考えられないような方針を出しており、それがどのような結果になるか想像つかない。

手取川の戦いの前には柴田勝家と羽柴秀吉の仲間割れが起きた。本作品の勝家は一般に流布されている横柄イメージではない。羽柴秀吉も勝家との感情的対立ではなく、冷静に計算して別行動をとった。それが信長の秘密の方針には悪い結果を及ぼしそうで気がかりである。

武田勝頼は自国の国力を評価する理知的な政治家になっている。このような勝頼ならば宮下英樹『センゴク天正記』で描かれたような領内改革を推進するだろうが、それが家臣団の結束を壊し、滅亡を速めたことは皮肉である。また、本書のように勝頼に織田と上杉のパワーバランスを分析した知略があったならば、御館の乱で黄金に釣られて上杉景勝に寝返ったことは愚かな選択であった。これは北条を怒らせて武田家を孤立を深めた。