龍道真一『風よ、空へ』(日本橋出版、2017年)は傾きかけている大企業のエンジニアが風力発電に取り組む話である。冒頭は退職強要面接から始まる。主人公は早期退職を求められる。同期の多くは既に早期退職した。

何ともやりきれない話であるが、主人公より下の就職氷河期世代(ロスジェネ世代)からすると同情一辺倒にはならない。氷河期世代の方がもっと大変という感覚である。個の自由を望みながら、競争を強いられ、昭和の価値観を押し付けられている。

また、本書には80年代のMade in Japanが世界を席巻した頃の日本のものづくりを取り戻したいという思いが感じられる。これも20世紀末のインターネットブーム後に社会に出たロスジェネ世代にはピンと来ない。最初から日本はデジタル化後進国という自覚があり、Made in Japanの過去の栄光の方がピンと来ない。

しかし、話が進むにつれて、80年代的な日本の誇りの要素は薄くなる。主人公は自前主義ではなく、海外企業の技術利用を考えている。海外の技術者も繊細なところを持っており、心は同じとの台詞が登場する(137頁)。

最後は想定外の展開になった。想定外の事態に救われた形であり、それがなければどうなっていたか。この点では御都合主義的展開であるが、主人公の行動は中々できるものではない。それは過去の神戸の経験と重なるもので、物語としては上手くできている。

御都合主義と言えばパワハラ役員がいる。ロスジェネ世代としてはパワハラ役員を追い出す展開の方が考えやすい。せめて辞表を叩きつけて、別の場所で成功する展開だろう。パワハラ役員も含めて大団円とするところは、やはり世代感覚のギャップがある。