増田純一『Health Dentistry (健口歯科) 0歳から“噛む”で健康長寿』(グレードル、2015年)は歯科医による書籍である。噛むことが健康長寿につながると主張する。患者指導用のDVDが付いている。

寝たきりの入院患者を転院させ、経口摂取を始めたところ、元気になり、退院したというエピソードが紹介される。口から食べることで健康を回復した。これは考えさせられる。現実には高齢患者に対して手間がかかる、誤嚥のリスクを避けるなどの理由で安易に経管栄養などにすること例が多い。

本書の例では中心静脈栄養を続けた患者は危篤状態になった。毎日発熱があり、MRSA感染症で隔離された。MRSAはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌で、入院中の患者に発症する院内感染の起炎菌である。患者は敗血症にもなっていた。

これは立正佼成会附属佼成病院裁判(平成26年(ワ)第25447号 損害賠償請求事件)の患者と重なる。この患者は入院直後から経管栄養にされたが、発熱が多く、敗血症になったことは共通する。また、裁判の証人尋問では医師から多剤耐性緑膿菌(multidrug resistance Pseudomonas aeruginosa; MDRP)の院内感染が起きたと証言された(第10回口頭弁論、2016年6月1日、東京地方裁判所610号法廷)。

患者はトイレに行きたいとの意思表示ができており、安易に経管栄養にしたのではないか、食べられるか試すべきであったと遺族は考えている。