船瀬俊介『魔王、死す!』(ビジネス社、2018年)はデイビット・ロックフェラー氏没後の時代の転換を解説した書籍である。デイビット・ロックフェラーはエネルギー、金融、食品、メディア、医療、戦争、国家など全てを意のままに操る世界皇帝と呼ぶべき存在であった。その死によって世界支配システムが崩壊し、石油から再生エネルギーへの変換など新たな産業革命が始まると主張する。

英米の大富豪を世界皇帝とする設定は漫画『静かなるドン』でも描かれた(林田力「『白竜』『静かなるドン』に見るヤクザ漫画の方向性」リアルライブ2010年10月19日)。

本書はフリーメイソンやイルミナリティが登場する陰謀論的な書籍である。その点で評価は分かれるだろうが、現代日本批判は的を射ている。「自己保身の官僚主義に冒された日本の病状は、目を覆うばかりだ」と指摘する(81頁)。自分の責任逃れが第一で、自らの裁量で責任をとろうとせず、ただ目の前の問題を相手に負担と我慢を押し付けて解決しようとする無能公務員が横行している。

また、本書は以下のように相対化する視点も持っている。「中国共産党独裁は、人権抑圧、言論統制、汚職腐敗などの問題を抱えていることも確かだ。しかし、日本もそれは同じ。露骨に弾圧するか、陰湿に弾圧するかの違いだけだ」(81頁)。根拠のない自国の優越と他国批判に陥っていない。

本書は石油王が石油を売り続けられるように電気自動車など非ガソリン車の普及を妨害してきたと主張する。その石油王の死によって制約がなくなり、世界各国も自動車メーカーも電気自動車の普及を進めている。これに対して日本は遅れている。トヨタのプリウスはエコカーとして宣伝していたが、ハイブリッド車はガソリンを使用する車である。ハイブリッド車も含めてガソリン車を新規販売しない方向に進んでいる(105頁)。日本は大艦巨砲主義にこだわった戦艦大和と同じ過ちを繰り返しそうである。

電気自動車は自動運転も相性がいい。自動運転車はコンピュータで制御する車であるが、電気自動車になれば家電製品と同じくコンピュータが制御しやすい。この点でも電気自動車の普及に期待する。