雑誌『地理』2018年7月号は「インド 変わる大都市圏」を特集する。近代化が進むインドの大都市圏を紹介する。

インドはBRICsの一角であり、経済成長著しい。このインドの発展は、社会主義・計画経済と親和性のある混合経済を止めてからである。官僚主導経済は個人を抑圧し、停滞をもたらす。この点は日本も反省が求められる。むしろ高度経済成長の成功体験に囚われている分、日本は発展途上国に追い抜かれつつある。

インドと言えばカースト制度が近代化の障害として悪名高い。20世紀の地理教育では依然としてカースト制度は強固と習った記憶がある。ところが、都市化によって身分と結び付いた伝統的職業がなくなり、弱まっている。本書の記事では「住民間の社会関係が分断されたアーバンビレッジでは、増大する地域問題を解決する地域の主体がなくなり、その解決はより困難になった」とマイナス面を評価している(澤宗則「大都市近郊農村からアーバンビレッジへの変容」47頁)。このような評価が出るところにカースト制度が現実に弱まっていることを実感する。何とかしてカースト制度を克服しなければならないとの問題意識からは考えられない評価である。

一方で都市化のマイナス面として、土地が開発や投資の対象になり、不動産開発業者が介入することで従来からの住民が住み続けられず、地域の個性が失われる問題が指摘される(中谷哲弥「デリー首都圏における市街地の形成と変化」22頁)。経済原理では富裕な新住民が入った方が歓迎となるが、街づくりでは住民が住み続けられる街にすることが重要課題になる。

これは先月号の特集「変わる農村と田園回帰」でも指摘された(磯田玄「田園回帰は反都市化のさきがけか?」『地理』2018年6月号41頁)。雑誌『地理』は地理学という非常に範囲の広い学問を対象とし、毎号の特集が大きく変わるため、特定の号だけを読むことでも十分楽しめる。バックナンバーを読まなければ理解できないということはない。一方で通して読むと重なる問題意識に気付かされることがある。