稲葉光史『からかい上手の(元)高木さん』(小学館)は、山本崇一朗『からかい上手の高木さん』のスピンオフ漫画である。大人になった高木さんを描く。高木さんは結婚して名字が変わり、娘が産まれた。名字が変わったので(元)高木さんである。

『からかい上手の高木さん』は2018年にアニメ化され、アニメも好評であった。高木さんのその後が幸福な展開になっていることは喜ばしい。『からかい上手の高木さん』がラブコメならば、『からかい上手の(元)高木さん』はホームコメディになる。

漫画としては『からかい上手の高木さん』のような強烈に突っ込みたくなる笑いは乏しい。本家あってのスピンオフと感じた。代わりに小さな娘が親を振り回す要素が強い。この点は、あずまきよひこ『よつばと!』に重なる。但し、『よつばと!』では周囲の大人との交流で話が広がっていく。逆に脇役が主人公を翻弄するパターンもある(林田力「『よつばと!』第11巻、脇役が主人公を翻弄する逆パターンも」リアルライブ2011年12月1日)。

これに対して『からかい上手の(元)高木さん』は家族内で完結する傾向がある。これは『からかい上手の高木さん』からの傾向である。『からかい上手の高木さん』は登場人物の少なさが特徴である。学園物はネタが切れたら転校生と言われるように人間関係の広がりの中で話を膨らます傾向がある。これに比べると『からかい上手の高木さん』はストイックである。

思春期ならば互いに西片くんや高木さんのことばかり考えていても面白いが、社会人となると現実感が乏しくなる。民間経済人的な意味での生活感が感じにくい。たとえ専業主婦であっても消費者としての生活感を描くことはできる。ここは東急不動産消費者契約法違反訴訟原告として声を大にして言いたい。滅私奉公の仕事中毒は時代遅れであるが、マイホーム主義も昭和的である。個人の個性が見えない点で裏表の関係にある。