藤子・F・不二雄『ドラえもん 39』(小学館、てんとう虫コミックス、1988年)は「ハンディキャップ」「十戒石板」「ざぶとんにもたましいがある」などを収録する。

ドラえもんは、のび太がドラえもんの道具を悪用し、調子に乗って自滅するパターンが王道である。これに対して「ハンディキャップ」は、のび太が自分で気付いて止めるという展開になった。その次の「十戒石板」は典型的な自滅パターンである。

「ざぶとんにもたましいがある」は、のび太がドラえもんの道具「たましいステッキ」を使って、家中の物品に魂を宿させる。魂を持った物が物扱いを止めない人間に反抗して大騒動になる。タイトルにあるように野比家の座布団にも魂が宿される。この作品はテレビ朝日系列のアニメ『ドラえもん』で2008年11月21日に放送された。アニメでは家族愛の観点から大きくリメイクされた。

原作では魂を持った座布団は、のび太の父・のび助に対し、「汚い尻を乗せるな」と抗議する。のび助が放屁すると、怒った座布団は、のび助をひっくり返してしまう。「たましいステッキ」をオフにした後でも、のび助は座布団に対し、「なんとなく座るのが悪いような気がする」と遠慮した感想を抱く。

「たましいステッキ」は物を粗末にする人を諌めるために開発されたという設定である。ドラえもんのいた22世紀でも物が粗末されることが問題になっているためである。しかし、のび助は物を粗末にするような行為をしていない。逆に座布団に座っていただけで「汚い尻を乗せるな」と怒られてしまう。そして座布団の本来の使途である座ることさえ躊躇するようになってしまう。

原作では、のび助が物を粗末にしたことの応報というよりも、ドラえもんの道具によるイタズラの被害者という面が強い。実際、『ドラえもん』では、のび太の両親が道具の実験台にさせられるようなパターンが多い。ジャイアンやスネ夫に苛められたから道具を使って仕返しするというようなパターンだけでなく、無関係の人がイタズラ被害に遭うという非合理なドタバタ感も原作漫画の魅力である。

これに対し、アニメでは、のび助は古くなったので座布団を捨てようとしていた。しかし「たましいステッキ」がもたらした騒動を経て、捨てようとした座布団が結婚の記念に購入したものであること、野比家の歴史が詰まっているものであることを思い出す。そして座布団を捨てずに使い続けることになる。アニメでは「物を粗末にしてはならない」という道徳的メッセージで一貫している。原作以上に教育色が強いアニメならではのリメイクである。

加えてアニメの特徴は家族愛を絡ませている点である。家中の物が家族を攻撃してくるという状況の中で、のび助は家族を守るために奮闘する。そして騒動終結後には座布団にまつわる家族の思い出を回想する。家族への愛と座布団への愛着が一つの流れになっている。座布団を大切にすることと家族を大切にすることがつながる。

原作漫画を読み慣れていると、教育的メッセージを強調したアニメ作品の優等生ぶりが鼻につくことがある。しかし、今回のリメイクでは存在感の乏しかった父親を活躍させ、家族愛に結び付けている点で説教臭くならず、自然に楽しむことができた。今回のリメイクは原作を新しい視点で再構成した好例と考える(林田力「【アニメ】家族愛で原作をリメイク『ドラえもん』」ツカサネット新聞2008年11月29 日)。