NHK大河ドラマ『いだてん 東京オリムピック噺(ばなし)』第1話「夜明け前」が2019年1月6日に放送された。『いだてん』は日本がオリンピックに初参加した1912年のストックホルム五輪から1964年の東京五輪を描く。大河ドラマでは珍しい近現代劇である。脚本は『あまちゃん』が大ヒットした宮藤官九郎。朝ドラには馴染みの時代設定であるが、大河ドラマで成功するか注目される。

『いだてん』は2020年の東京五輪開催を意識しているだろう。そのために私は『いだてん』に対し、高度経済成長の夢をもう一度という昭和ノスタルジアに日本社会全体を持っていこうとするのではないかとの懸念があった。国中が一つの方向を向いて頑張ることを素晴らしいとするような昭和の集団主義である。

ところが、第1話は違った。登場人物は、面白いか面白くないかを判断基準とする。これは共感できる。私も「さいたま市桜区をもっと楽しく面白く」をモットーに楽しいイベント、面白いイベントを開催しようと考えているためである。「面白くないから軍隊式は普及しない」との台詞があり、昭和的な根性論精神論のアンチテーゼになっている。

反対派には官僚的石頭だけでなく、国を背負う重圧に押し潰される選手のメンタルを心配する真面目な意見もある。勝ち負けにこだわる競技スポーツの弊害を指摘する意見が出る。悪質な反則行為で相手チームの選手を潰してまで勝利しようとする日大アメリカンフットボール部のような体質への皮肉になる。

このように日本的集団主義を称揚する作品になっておらず、スポーツを楽しむ姿勢を持っている。これは素晴らしいことである。一方で現代日本に昭和的精神論根性論が存在したことは事実である。現実に円谷幸吉選手が自殺している。ドラマが昭和的精神論根性論のアンチテーゼを描くことは素晴らしいが、昭和的根性論をなかったことにするならば歴史修正主義になってしまう。その視点も忘れずにいたい。