岸本斉史『NARUTO―ナルト― 38』は、うちはサスケと大蛇丸が対決する。『NARUTO』は忍者アクション漫画。木ノ葉隠れの里の忍者・うずまきナルトらの戦いと成長を描く。ナルトの夢は歴代の勇者、火影の名を受けついで、先代を超える忍者になることである。しかし、ナルトには出生の秘密があった。

主人公ナルトのライバル・うちはサスケは一族を皆殺しにした兄・うちはイタチに復讐する力を得るため、木ノ葉隠れの里を抜けて伝説の三忍の一人・大蛇丸に師事する。しかし、今回遂にサスケは大蛇丸に反旗を翻す。テレビアニメ『NARUTO−ナルト− 疾風伝』(テレビ東京系列)では2009年6月11日放送の333話「大蛇の瞳孔」が相当する。

『NARUTO』は勝利・友情・努力の3拍子が揃った伝統的な週刊少年ジャンプの王道を歩む作品である。但し、近時の漫画は「努力」が軽視される傾向がある。漫画は空想的な異世界を舞台とした作品であっても、現実世界を映し出す鏡である。格差が深刻化し、身を粉にしても働いても貧困から抜け出せないワーキング・プアという過酷な現実の前では、最初は弱かった主人公が努力だけで強くなる展開は現実味に欠ける。

この格差社会の影響を『NARUTO』も受けている。主人公のナルトは四代目火影(木ノ葉隠れの里の長)の息子である。また、ナルトは忍者の使うエネルギーのチャクラが桁外れであるが、それは九尾の妖狐を封じ込められているためである。好敵手のサスケはエリート一族である、うちは一族の出身である。しかも『NARUTO』には血継限界(遺伝によってのみ伝えられる特殊能力・体質)という設定まである。

それでも『NARUTO』は他の現代の漫画に比して努力の要素を色濃く出している。それは師弟関係を強調しているためである。多くの登場人物に師弟関係(ナルトと自来也など)がある。師弟関係があることで、直接的な修行の描写を長々としなくても、登場人物が修行によって成長したことが推測できる。

この師弟関係は主人公側だけでなく、敵側にも存在する。サスケと大蛇丸の関係がそれである。主人公側の師弟関係が情愛で結ばれたものであるのに対し、サスケと大蛇丸の師弟関係は互いに相手を利用するだけの存在と位置付けていた。そのために今回の放送で両者は激突することになる。対照的な師弟関係が主人公側と敵側の落差を象徴していた。