小山ゆう『AZUMI-あずみ- 3』(小学館)は、義家族が幸せをつかむと思いきや、悲劇が起きる。読者としては何事もなく進まないだろうと思いながら読んでいた。虐げられた側は虐げる側の思い通りには動かない。悲劇ではあるが、相手の予想外の抵抗をする点では溜飲が下がる。
このような旗本の腐敗が蔓延していたら、幕府を守るために戦おうと思わなくて当然である。明治政府の歴史観は支持できないが、その反動で江戸幕府を美化することも考えものである。NHK大河ドラマ『西郷どん』は、江戸幕府を明確に否定し、近代化・西欧化を否定せずに明治政府とは別の道を志向する西郷隆盛を描いた。このような視点に新しさがある。
勝海舟や木村摂津守という歴史上の人物が登場する。勝海舟は木村摂津守を評価している。これは慶應義塾大学生として福沢諭吉の影響を受けた立場としてはどうかと思う点がある。勝海舟は自分が感臨丸のトップになれなかったことを面白くないと思っていたとされる。また、本書では威張るだけで水夫の仕事を拒否する旗本の次男坊達を役立たずと否定するが、自分も船酔いで役立たずではなかったか。
恐らく本作品の幕末維新の歴史観は勝海舟、坂本龍馬の立場に立ったものになるのだろう。それが作画を担当した『おーい!竜馬』と一貫する。