尾田栄一郎『ONE PIECE 91』(集英社)はワノ国編が本格的に開始する。ワノ国は前近代の日本をイメージしている。本作品は以前より、歌舞伎のような見せ方をしており、作者の関心のあるところだろう。しかし、本作品の恐ろしいところはワノ国を単に不思議な面白い国と描いていないことである。

国民は十分に食べることができず、飢えている。工場の排水により、水は汚染されている。支配層だけが安全な食べ物を食べている。身分制度による差別があり、住む場所にも格差がある。

国民を無視する現代日本の悪い面のアナロジーになっている。しかも、これは改革志向の為政者が潰された後の話である。それをルフィが破壊する方向性が示される。ルフィという外圧がなければ変えられないところも日本の悪い面のアナロジーになっている。

良い政治を行っていた為政者に濡れ衣を着せて国を乗っ取る展開はクロコダイルやドフラミンゴと同じである。この点でワンパターンに陥りかねない。しかし、現代日本のアナロジーである点が吹き飛ばすだろう。

本作品は現代日本を代表するエンタメ作品である。危険ドラッグが社会問題になる際にパンクハザード編で依存性薬物を扱うなど社会性がある。空島編はパレスチナ問題、魚人島編は人種問題のアナロジーになっている(林田力「『ONE PIECE』第63巻、人種差別のアナロジーで物語に深み」リアルライブ2011年8月6日)。エンタメ作品で社会性を持たせている点は素晴らしい。