かわぐちかいじ『ジパング』(講談社)は架空戦記物の単行本である。太平洋戦争の時代にタイムスリップした海上自衛隊のイージス艦「みらい」の戦いを描く。『モーニング』連載作品。

最新鋭の武装と未来世界の知識を有する「みらい」の介入により、本作品では実際の太平洋戦争とは異なった経過をたどる。しかし、原則として「みらい」は専守防衛や人命尊重をモットーとし、戦争への介入は謙抑的である。この点で自衛隊の一団が戦国時代にタイムスリップして天下統一を進める『戦国自衛隊』や、パラレルワールドで日本軍が米軍を撃破する『紺碧の艦隊』とは一線を画する。

実際の太平洋戦争のような破滅的な日本軍の敗退は回避できているものの、本作品でも米国との圧倒的な国力差から日本軍は守勢に立たされつつある。山本五十六・連合艦隊司令長官も史実に近い形で戦死した。そして日本の政府や軍部首脳が戦争終結の展望を描けないでいる点も史実と同じである。「みらい」と接触した何人かは早期講和の意欲を持つが、積極的な動きにはなっていない。

一方、「みらい」から日本の未来を知った帝国海軍参謀・草加拓海は歴史を改変し、新たな日本「ジパング」創生を目指す。その具体的行動が反乱という形をとったことは興味深い。草加の計画を実現するためには日本軍という組織には柔軟性が欠けていた。