原泰久『キングダム 54』(集英社、2019年)は朱海平原の戦いが大詰めである。朱海平原の戦いは秦も趙も軍を右翼、中央、左翼に分けて戦っている。右翼や左翼は自分達の立場からの呼称である。右翼と左翼は各々の逆である。秦の右翼には趙の左翼が相対する。

右翼や左翼では激戦が展開されたが、中央の動きは鈍い。王翦は右翼か左翼のどちらかが相対する敵を撃破した上で、中央軍と撃破した軍で趙の中央軍を叩く戦略であった。右翼や左翼に比べて総大将の動きは鈍いが、にらみ合いが展開されていた。

李牧は序盤で自ら別動隊を率いて紀彗の離眼勢の危機を救った。これは総大将の戦い方ではないため、これで比較することは酷かもしれない。しかし、李牧は要所で適切な助言をしている。これに対して王翦は何も助言をしていない。ピンチに陥っても手助けせず、覚醒することを待っているだけである。マネジメントとしては李牧が優れている。

カイネは李牧の使者となって李牧の策を伝えている。総大将の使者とはいえ口の聞き方が気になる。虎の威を借る狐という嫌なキャラと思われないか。無礼者と思われないか。旧日本軍のような昭和の日本型組織ならば「女は黙っていろ」となりそうである。秦軍の右翼で河了貂が軍議を仕切ることに王賁は止めさせるが、「女は黙っていろ」とはならない。ジェンダー意識が異なる21世紀の社会を反映した作品である。