弁護士・裁判

アンナチュラル

石原さとみ主演のドラマ『アンナチュラル』が2018年1月12日から放送される。解剖医達が不自然な死の死因を明らかにするドラマである。タイトルは不自然な死(unnatural death)から来ている。
立正佼成会附属佼成病院の死亡患者のカルテでは9月7日に「午前6時family(息子)callの上naturalの方針を確認」とある。医師が患者の長男に電話して自然死の方針を確認したとある。患者本人や他の家族の意見を確認せずに自然死させるとした。本来は不自然なところがないから自然死である。「naturalの方針」とは論理矛盾ではないか。

厚生労働省が終末期医療ガイドライン改定へ

厚生労働省は「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」(2007年)の改定を検討する。「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」が2018年1月17日に開かれ、改定案「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」が提示された。厚生労働省はパブリックコメントを募り、3月に改定の見通し。
「07年の指針は、患者本人の意思決定を基本とし、主治医の独断でなく、医師以外のスタッフも入ったチームで判断するとした」(野中良祐「人生最期の医療、繰り返し話し合うべき 指針改定へ」朝日新聞2018年1月18日)。立正佼成会附属佼成病院裁判も、このガイドラインを根拠に争っている。主治医の独断で決められたことを問題視している。
改定案は患者や、家族、医師らが治療方針などを繰り返し話し合うことを求めた。「時間の経過、病状の変化、医学的評価の変更に応じて、また患者の意思が変化するものであることに留意して、その都度説明し患者の意思の再確認を行うことが必要である」
「患者本人の気持ちや病状の変化に応じて繰り返し話し合い、継続的に見直すことが特徴だ」(「終末期医療指針改定へ 厚労省 患者の思い 家族ら共有」読売新聞夕刊2018年1月13日)
「患者の意思は病状や時間の経過によって変わり得るため、意思決定については繰り返し話し合う必要性を明記した」(「<終末期指針>在宅も適用の改定案 延命意思、何度も確認を」毎日新聞2018年1月18日)
「患者本人の延命治療などに対する考え方が変わる可能性があることを踏まえ、医師らは柔軟な姿勢で患者と繰り返し話し合うことを求めた」(「終末期の治療方針、指針改定案を提示 病院外でのみとりにも活用へ」日本経済新聞2018年1月17日)
一度の意思表示で終わりではない。契約書にサインしたから認めたというような悪徳商法的な自己責任論とは一線を画す。この考えは立正佼成会附属佼成病院裁判でも重要である。佼成病院が病状が変わっても新たな説明をしなかったことを問題としているためである。この点は『金八アゴラ』「佼成病院裁判が判例時報に掲載」(2018年1月24日)で説明した。
改定案は「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」に取り組むよう医療従事者らに求めると報道されている。但し、ガイドライン本文にACPという言葉がある訳ではない。検討会では木村厚・全日本病院協会常任理事から「言葉を入れないと普及啓発にならない」との意見が出た(大西裕康「終末期医療GLを年度内にも改訂へ、厚労省がたたき台を公表」m3.com 2018年1月17日)。
kosei

不当逮捕 築地警察交通取締りの罠

林克明『不当逮捕 築地警察交通取締りの罠』(同時代社、2017年)は築地警察署による不当逮捕事件を明らかにした書籍である。ある寿司店主は築地市場に仕入れに来た際に警察官と駐車違反をめぐり、ささいな口論になった。ところが、ヒステリー状態になった警察官が「暴行を受けている」と緊急通報した。寿司店主は駆けつけた多数の警官たちに公務執行妨害で逮捕され、19日間も勾留された。

寿司店主は冤罪に泣き寝入りせず、東京都(警視庁)と国(検察庁・裁判所)を被告として国家賠償請求訴訟を提起した。事件から9年後の2016年に東京高等裁判所で勝訴判決を言い渡され、判決は確定した。この経緯を明らかにしたドキュメントである。泣き寝入りせずに闘った寿司店主は立派である。

この事件は本来ならばヒステリー状態になった異常な警察官一人の問題である。悪徳警察官の狂言による公務執行妨害でっちあげという話になる。警察の体質批判には直結しない。ところが、日本では警察や検察、裁判所までが一体化して警官が作った冤罪を組織的に正当化してしまう。文字通り組織の問題である。ここが最大の問題と感じた。

本書のタイトルの『不当逮捕』と言えば、私はナンシー・テイラー・ローゼンバーグの小説を想起する。これは主人公が不当逮捕される小説である。この小説には以下の言葉があるが、本書の事件にも該当する。「警官たちは、たとえ罪のない人々が苦しむ結果になろうと、仲間を守りあい、ミスや不祥事をかばいあいます」

一方で小説では権力側の人間にも主人公側の味方がいて、強大で陰湿な警察権力相手の孤立無援な闘いではなかった。これは小説と現実の違いというよりも、米国と日本の違いに感じてしまう。それだけ日本は救い難いのではないか。

佼成病院裁判が判例時報に掲載

立正佼成会附属佼成病院裁判の一審・東京地裁判決が判例時報2351号14頁(2018年1月11日号)に掲載された。判例時報は以下のように紹介する。

「脳梗塞による意識障害のため緊急入院して経鼻経管栄養の注入を受けていた八九歳の母親に対し、看護していた長男が医師に無断で栄養剤の注入速度を上げたことは違法であるが、そのことについて医師の管理責任の懈怠があるとはいえず、母親が誤嚥性肺炎等を経て敗血症及び急性腎不全により死亡したこととの因果関係がないとされた事例」

「長男が医師に無断で栄養剤の注入速度を上げたことは違法」は正しい。この点が明確にされることは意味がある。但し、「看護していた長男」との説明は誤りである。母親は病院に入院中であり、長男は見舞いに来ていたもので、看護ではない。母親は突然倒れて緊急入院したもので、それまでは元気であった。長男が在宅で看護していた訳ではない。説明文は勝手に長男の看護疲れ・介護疲れの問題にしたがっているようである。

「医師の管理責任の懈怠がある」かは争っているところである。佼成病院は注入の開始時刻や終了時刻すら記録していなかった。大口病院など点滴などが悪意の第三者によって操作され、患者が死亡する事件が起きており、病院の責任が問われている。

「点滴や経鼻経管栄養に悪意が介在することは現実に起こり得ることであり、想定外との言い訳は成り立たない。それは病院の責任放棄であり、最善の医療を受ける権利の侵害である」(上告理由補充書(一)13頁)

次の説明文も長男の看護疲れ・介護疲れをミスリーディングさせる。「母親と同居しその生活の世話をしていた長男の意向も考慮し、終末期の延命措置をしないとした医師の裁量判断に過誤はないとされた事例」

長男夫婦は母親と同居していたが、母親は茶華道の教授者であり、年金収入があった。茶道と華道教室の収入が、月謝、茶会、初釜、朝茶、免状代、謝礼、祝儀などがある。弟子数が15名以上いた。月謝茶道1万円、華道1万円両方習っている弟子は1万5千円で8名いる。一ヶ月の月謝収入は、1万5000円×8+1万円×7で、19万円である。年間収入は228万円となる。茶華道教室維持費は別途、半年ごとに1人3000円を徴収している。年金収入だけでも年収200万円以上ある。

逆に長男夫婦は母親の入院時に母親のキャッシュカードを使用して母親の口座から300万円を引き出していた。長男夫婦は看護疲れ・介護疲れが同情されるような立場ではない。

判例時報の解説は一審判決が厚生労働省「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」に沿った判断をしていると述べる。ガイドラインでは家族が患者の意思を推定できないときは患者にとって何が最善であるかについて家族と十分に話し合い、患者にとっての最善の治療方針を採ることを求めている。これに対して、判決はキーパーソンの意向だけで決めている点でガイドラインに反している。また、判決は容体悪化前の説明だけで説明したことにしており、病院は容態変化後に改めて説明していない。
kosei

患者・家族の自己決定権

患者・家族の自己決定権や病院・医師の説明責任は非常に重要な現代的意義のある問題である。何故、現代的意義があるかと言えば、病院や医師の知識や能力に格差があり、治療方法が多様化しているためである。今や、どの病院、どの医者に任せても同じという訳ではなくなっている。

『週刊現代』2017年12月23日号は「大学病院だから安心、はもう古い 知らないと酷い目にあう「病院格差」治るか治らないか、ここまで差が付きます」と題して病院格差を特集する。ともながクリニック糖尿病・生活習慣病センター院長の朝長修氏は「最近は医学が細分化されてきたので、内科医の場合、最新の医療知識に追いつけていない医者も少なくない。それにより、患者さんが不利益を被っている」と指摘する。

病院・医師の選択や評価は患者や家族の責任にもなっている。「良質な医療、地域に必要とされる医療を効率的に提供しようとする医療機関を正当に評価し、診療報酬で報われるようにすることが社会的に公正であるという認識を、私たちが共有することです」(渡辺さちこ「2025年問題。」DC Card Partner 2017年12月号43頁)

しかし、選択や評価のためには正しい情報が提示されなければならない。病院・医師と患者・家族の間には情報の格差がある。正しい情報がなければ正しい選択、正しい評価は不可能である。正しい情報を提供せずに責任を要求するならば自己責任の押し付けになる。
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