林田力 だまし売りのない世界へ

マンション問題や警察不祥事、書籍や漫画の書評など。書籍『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者。マンションだまし売り被害者。東急不動産消費者契約法違反訴訟原告。みんなの未来(あした)を守る会代表。江東住まい研究所長。マンションだまし売りや迷惑勧誘電話、貧困ビジネス、危険ドラッグのない世界を目指します。 http://www.hayariki.net さいたま市の話題は林田力@さいたま市桜区ブログ

 林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』(ロゴス社)は東急不動産(販売代理・東急リバブル)から不利益事実を隠して問題物件をだまし売りされた消費者(=原告)が消費者契約法に基づき売買契約を取り消し、裁判(東急不動産消費者契約法違反訴訟、東京地裁平成18年8月30日判決、平成17年(ワ)3018号)で売買代金を取り戻した闘いの記録。

FJネクスト・ガーラ・グランディ木場問題
http://hayariki.x10.mx/
東急不動産で買ってはいけない 被害者が語る「騙し売り」の手口
http://www.mynewsjapan.com/reports/1101

民法

民法改正と表見代理

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表見代理は無権代理の特別な場合である。無権代理は無権代理人が責任を負うことが原則である。但し、無権代理人を信用してしまった相手方に落ち度(帰責要因)がある場合もあり、無権代理人と相手方のどちらに責任を負わせるかという話になる。
これに対して表見代理は無権代理人が勝手に動く点では同じであるが、本人に何らかの落ち度(帰責要因)がある場合である。その帰責要因があることによって、無権代理人が真実の代理人であるのような外観が作られる。その外観を信頼して取引に入った相手方を保護する制度になる。これを保護しないと代理人が信用できなくなり、代理人を使った取引が廃れる危険があるためである。
表見代理には表示、消滅、踰越の三種類がある。代理権授与表示による表見代理、代理権消滅後の表見代理、権限踰越の表見代理である。以下では代理権消滅後の表見代理を説明する。
代理権消滅とは本人が正当に代理権を与えた後に代理権を消滅させた場合である。ところが、消滅後も代理人であった人物が代理人と称して取引した。この場合は現行民法第112条は「代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない」とする。第三者に過失がある場合は別である。「ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない」
この善意は代理権が消滅したことを知らないという意味であると解釈される。「代理権が存在しないこと知らない」ではない。代理権が実際に与えられていたことを知っており、その後に消滅した事実を知らなかった。そのために代理権が存続していると誤信した場合である。改正民法では「代理権の消滅の事実を知らなかった第三者」として善意の内容を明確にした。
「他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない」
また、改正民法では第112条に第2項を追加して、消滅と踰越の重複パターンを規定した。重複パターンでは「第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由がある」場合は本人が責任を負う。
「他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う」

民法改正と無権代理人の責任

民法改正では無権代理人の責任も変更される。代理は代理人が本人のために意思表示を行い、法律行為の効果を本人に直接帰属させる制度である。民法の世界の代理は法律行為が対象であり、事実行為は対象外である。代理は本人から代理権を与えられて行うことが普通であるが、代理権がないのに勝手に代理人を名乗って代理人として行動することもある。これが無権代理である。
民法第117条は取引の安全をはかるために、無権代理人に重い無過失責任を負わせている。相手方は無権代理人に対し、履行又は損害賠償を選択できる。但し、現行民法では相手方が無権代理行為を知らないことに過失がある場合、無権代理人の責任を追及できなかった。その過失も重大な過失に限られなかった。最判昭和62年7月7日民集第41巻5号1133頁は以下のように判示する。
「同条(注117条)一項が無権代理人に無過失責任という重い責任を負わせたところから、相手方において代理権のないことを知つていたとき若しくはこれを知らなかつたことにつき過失があるときは、同条の保護に値しないものとして、無権代理人の免責を認めたものと解されるのであつて、その趣旨に徴すると、右の「過失」は重大な過失に限定されるべきものではないと解するのが相当である」
これに対して改正民法では過失がある場合でも代理人が自己に代理権がないことを知っていたら、責任を追及できるようになった。

現行民法
(無権代理人の責任)
第117条  他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2  前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。

改正民法
(無権代理人の責任)
第117条  他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。
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民法改正と危険負担

危険負担(risk of loss)は、売買等の双務契約が成立した後に、債務者の責めに帰することができない事由で目的物が滅失・毀損等してしまったことにより履行不能となった場合のリスクを当事者のいずれが負担するかの問題である。
例えばマンション売買契約を締結した後で引渡し期日が到来する前に台風で倒壊した場合である。新築マンションの分譲では青田売りがされるために契約締結と引き渡しの間に数か月以上あることもある。
危険負担には債務者主義と債権者主義がある。
債務者主義は買主の債務(代金支払債務)が消滅する。売主(債務者)が危険を負担する。
債権者主義は買主の債務(代金支払債務)が存続する。買主(債権者)が危険を負担する。
現行民法は危険負担について債務者主義を原則とする(536条1項)。しかし、特定物に関する物権の設定又は移転を目的とする双務契約は債権者主義を採る(534条1項)。
債権者主義は意思の合致によって契約の成立を認める近代民法的な考え方である。しかし、売買契約が成立しただけで、対象物が買主のところに来ていないのに代金支払義務を負担することは債権者(買主)に酷である。
このため、改正民法では「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる」とした。反対債務は存続するが、履行拒絶権が発生する。
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現行民法条文
(債権者の危険負担)
第534条 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2 不特定物に関する契約については、第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。
(停止条件付双務契約における危険負担)
第535条 前条の規定は、停止条件付双務契約の目的物が条件の成否が未定である間に滅失した場合には、適用しない。
2  停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰することができない事由によって損傷したときは、その損傷は、債権者の負担に帰する。
3  停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰すべき事由によって損傷した場合において、条件が成就したときは、債権者は、その選択に従い、契約の履行の請求又は解除権の行使をすることができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
(債務者の危険負担等)
第五百三十六条 前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
2  債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

民法改正と錯誤

民法の一部を改正する法律案が2017年5月26日に可決された。錯誤についての規定も変更された。現行民法95条は以下のように定める。「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」

現行民法は「動機の錯誤」について述べていない。動機の錯誤を錯誤に含めるか否かについて一元論と二元論の対立がある。私見は一元説を採る(林田力「動機の錯誤をめぐる二元説と一元説(上)」PJニュース 2010年11月24日、林田力「動機の錯誤をめぐる二元説と一元説(下)」PJニュース 2010年11月25日)。

改正民法は「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」を定めた。また、錯誤の効果を無効から「取り消すことができる」に変更された。

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意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

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民法の錯誤の最大の問題は、詐欺や脅迫とも重なるが、中々認められないことである。そもそも民法は対等な私人間の権利関係を規制することを建前とする。これに対して東急不動産だまし売りなどの消費者問題は消費者と事業者の間に格差がある。民法の前提とは異なる。

このため、消費者問題は消費者契約法の出番が多くなるだろう。消費者契約法第1条は「消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み」と異なるものを異なるものとして扱っている。東急不動産だまし売り裁判でも消費者契約法第4条第2項(不利益事実不告知)で売買契約取り消しを達成した。
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