佼成病院事件は平成29年11月に報道された総務省消防庁から委託された研究班の提言と比べても問題である。提言は持病や老衰で終末期にある介護施設などの高齢入所者が心肺停止した場合の対応手順案である。そこでは本人の事前意思と医師の指示がセットで確認できた場合は蘇生処置の中止を認める(「<高齢者の救命>本人望めば蘇生中止 消防庁委託研究班提言」毎日新聞2017年11月18日)。この点で議論を呼ぶ内容であるが、本件は本人の事前意思の確認がなされておらず、前提を満たしていない。

佼成病院裁判高裁判決18頁の以下認定は経験則に反し、釈明権不行使による違法な認定がなされている。「控訴人を含めた患者の家族の全員に対して個別に連絡を取ることが容易な状況であったことを具体的に認めるに足りる証拠はなく、そうである以上、キーパーソンを通じて患者の家族の意見を集約するという方法が不合理であるとは認められない」。これは情報化社会の現実を無視し、明らかに経験則に違反する。現代において個別に連絡を取ることは容易である。
個別に連絡を取ることが容易な状況であったかが問題であるならば、これについての証拠方法の提出を促すことを要するものであり、このような措置に出ることなく、漫然「具体的に認めるに足りる証拠」がないとして請求を棄却することは、釈明権の行使を怠り、審理不尽の違法を犯している。