古今書院『地理』2017年11月号は「観光の人材育成」を特集する。小学校、中学校、高校、大学、ボランティアガイド育成と一通り網羅した記事を揃えている。

興味深い点は工場の夜景や灯台、アニメの聖地など観光資源のランク付けでは現れにくいものも、観光資源になることである。有名な観光地でなくても、観光教育は地域再発見になる(澤達大「中学校における観光教育の実践」31頁)。皆が同じ場所に行き、同じ物を見て、同じ物を食べる観光は大量消費の延長に過ぎない。それでは価値観が多様化し、個の消費の時代に旅行離れが生じるだろう。知られていない観光資源が大切である。

齊藤由香「まなぶ―土地のすがたを知る」はカタルーニャの景観教育を取り上げる。本書は月刊誌であり、速報性はないが、独立問題が大きなニュースになっている中でホットな記事になった。地域の景観の大事にする姿勢は、独立を求める姿勢の背景になっているだろう。ここでも景勝地ではなく、普通の景観が事例として選ばれている(59頁)。生活の場である身近な景観を意識することが大切である。

柴田祥彦「NIMBY施設の立地を地理的見方・考え方で検証する」は考えさせられる。迷惑施設に反対するだけでなく、様々な視点・価値観を考えていくことは大切である。しかし、難しい点は同じ地域にAという価値観を優先する人もいればBという価値観を優先する人もいることである。地理的な見方で検証すると、被害を受ける人々が地理的な合理性によって我慢させられることになってしまうのではないか。画一的・押し付け的なバラマキではなく、被害を受ける人々を尊重する形の代償が必要だろう。