先日、東京池袋、サンシャイン通りのセガ社が運営するゲームセンター「池袋GIGO」において、カプセル型景品自動販売機(ガチャガチャ/ガシャポンともいう。以下「カプセル自販機」と記す)機が荒らされ、50万円以上の現金が盗まれるという事件が起きました。

池袋でカプセル販売機荒らし 硬貨計52万円分盗難
 東京都豊島区のJR池袋駅近くで、ゲームセンターなどに置かれた景品入りカプセルの販売機から硬貨が大量に盗まれていたことが、池袋署への取材でわかった。同署が窃盗事件として調べている。

 同署によると、豊島区東池袋1丁目で25日午後3時ごろ、ゲームセンター「池袋ギーゴ」の店頭にあったカプセル販売機48台のうち45台から、約40万円分の硬貨がなくなっていることに男性従業員が気づき、110番通報した。従業員はその直前、販売機を触っていた不審な2人組の男を目撃したという。
http://www.asahi.com/national/update/0528/TKY201105280170.html

 この事件について私は報道されている以上のことを存じ上げないのですが、「なぜこのような事件が起こったのか」事件が起きる前に訪れた同店舗の様子や、最近のゲームセンターを取り巻く事情からいくつか考えてみたいと思います。

※これ以降の内容は憶測を多く含みますので、実際の事件の全容とはかけ離れている場合もあります。以上のことをご了承の上お読みください。

 まずはじめに、なぜカプセル自販機が狙われたのかを考えてみましょう。

 現在流通しているカプセル自販機は200円〜500円の現金を投入し、それと引き換えに1個の景品を購入できるようになっていますが、筐体がFRP(プラスチック)製のものが多く、非常に華奢なつくりになっています。

 そのため、鍵を使わなくともバールやドライバーなどの工具で筐体そのものを破壊し、内部のキャッシュボックスまで容易にたどり着くことが可能です。内部に防犯ブザーや南京錠を追加して、セキュリティ対策を施すことも可能ですが、抜本的な解決にはなりえません。

 このようなセキュリティ上の問題を抱えたまま、なぜ大量のカプセル自販機が設置されているのかというと、1台(1日)あたりの売り上げが少なく、犯行を行う側からは「いい獲物とみなされてこなかった」という、ただそれだけの理由です。

 これまでに起きたカプセル自販機を狙った事件・犯行といえば、変造硬貨などを用いて内部の景品を不正に入手するといった「子どもの悪戯」レベルのものが大半で、今回の事件のような大金が盗まれるということは稀だったのです。

 そしてもうひとつ、「カプセル自販機」が狙われた理由として、東日本大震災後、関東地方を中心に行われている「節電」が影響している可能性があります。

 これはどういうことかといいますと、通常、ゲームセンターに設置されているゲーム機やUFOキャッチャーなどのプライズ機には、照明装置や、明るく光を放つディスプレイが内蔵されていますが、屋外にも設置されることのあるカプセル自販機は、基本的に無電源で運用されるように設計されています。

 そのため、「節電」によってフロアの照明を控えると、他のプライズ機は筐体そのものに光源があるため、設置箇所が極端に暗くなるということはないのですが、光源を持たないカプセル自販機の場合は設置箇所全体の明るさが落ちてしまいます。

 犯行当時の同店舗がどのような状態であったかを知る由はありませんが、カプセル自販機を設置している他店舗において、同様の犯行を未然に防ぐためには、カプセル自販機設置箇所の光量にも気を配るべきだと思います。

 次に、「なぜ池袋GIGOであったのか」を考えてみましょう。

 私はこの事件の第一報を、同店舗で遊んでいたお客様のツイッターへの投稿で知ったのですが、何十台もあるカプセル自販機の扉がこじ開けられている写真を見て、「マスターキー/キャッシュキーが盗まれて、それを使って扉を開け、現金が盗まれたのか」と考えました。

 しかし、その後の報道を見るに、どうも犯人はカプセル自販機の扉を物理的に破壊し、現金を盗んだように思えます。

 従業員が目撃した犯人と思われる不審人物は二人組であったと、先に引用した報道には記されていますが、48台の機械から、それぞれ現金を抜き取って持ち去るとして、犯人一人が1分に1台という非常に速いペースで犯行に及んだとしても、実に30分近くもの長時間、従業員に発見されなかったということになります。

 率直に言って、これはお粗末の一言です。

 ですが、現在のセガ社の店舗運営マニュアル上では、このような事件がいつ起きてもおかしくはないな、とは以前から思っていました。なぜならば、フロアのスタッフを極端に減らして、売り上げが見込めるプライズコーナー「だけ」に重点的に配置し、またそのスタッフも景品の並び替えを四六時中行っているような状態で、フロアを総括して見渡せるスタッフを配置していなかったからです。

 そのような実態の一端を示す画像がこちらです。

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※この画像は西新宿にあるセガ運営店舗の「クラブセガ西新宿」で撮影したものです。

 本来であれば、フロアの安全管理を担うはずのスタッフがその役目を放棄し、店内にいる子どもへの注意・監視をお客に丸投げするとは何事でしょうか。

 このようなポスターを店内に掲示していれば、犯行に及ぶ側に対して「当店のスタッフはフロアに目が行き届いていませんよ」と宣言しているようなものです。

 結果として、営業時間中に50台近くのカプセル自販機を荒らされるという、非常に「恥ずかしい」被害にあってしまったわけですが、同じようなオペレーションを行っている店舗は、セガ運営店舗以外にも少なくなく、同様の事件がまたいつ起こらないとも限りません。

 また、国際的に開かれている日本国という環境に広く目を向ければ、100円玉、500円玉という、それぞれ1ドルもしくは5ドル以上の価値を持った「高額な」硬貨が貯まったキャッシュボックスは「オイシイ獲物」に他なりません。

 ましてや国際都市東京・池袋というロケーションなわけですから、被害にあった店舗の防犯意識が低かった、とのそしりは免れないと思います。

 今後、再発防止策としては、フロア巡回要員の増員や運営マニュアルの見直し、開店前もしくは閉店後の集金業務を毎日行うなどの対策が考えられますが、どれもひとつとっても容易なことでないことは承知しています。

 とはいえ、今回のように、白昼堂々何十台もの機械を荒らすという、大胆な犯行をゆるしてしまったことによって「カプセル自販機は狙いやすい」ひいては「ゲームセンターは狙いやすい」と思われた可能性を否定することは出来ません。各店のオペレーターは、より一層の防犯対策、もしくは防犯意識の向上を求められることになると思います。