クラシックおっかけ日記

指揮者アダム・フィッシャーのおっかけ記録、音楽の話、海外生活など

アダム・フィッシャーのネットラジオ放送

現在アダム・フィッシャーはコペンハーゲンでモーツァルトの交響曲を録音中。ハイドンフィルとのハイドン交響曲全集に続いて、デンマーク国立室内管とのモーツァルト交響曲全集がまもなく完成する。

今回のレコーディングはラストの有名交響曲を集中的に録音するよていで、それにあわせて16日にコンサートがある。元々のプログラムは36番リンツと38番プラハだけど、ボーナスということで35番ハフナーもやるそうだ。なかなか楽しそうのプログラムだ。このコンサートはネットラジオDR-P2 Klassikで生中継される。放送時間は現地時間の16日の19時20分。日本時間だと17日の3時20分。

デンマーク国立室内管はデンマーク放送所属のオーケストラだけど、デンマーク放送交響楽団とは別物。アダムとのモーツァルトの録音が評価されて、最近はグラモフォンなどの雑誌でも取り上げられることが増えている。でも今のところ来日公演という話は無い。

日本では大型のオーケストラが好まれるみたいだけれど、デンマーク国立室内管はハイドンフィルと同じくらい。それにデンマークのオーケストラは過去に殆ど来日していないらしく、日本のクラシック愛好家もあまり関心がない。

だからインターネット・ラジオは貴重なライブだ。

エディタ・グルペローヴァがバイエルン国立歌劇場と決裂

コロラトゥーラ・ソプラノとして有名なエディタ・グルベローヴァが2014年7月27日を最後にミュンヘンのバイエルン国立歌劇場に別れを告げるそうだ。ソースはこちら。http://derstandard.at/1328507066589/Muenchen-Gruberova-nimmt-Abschied-von-Bayerischer-Staatsoperこの記事によれば、このところずっと新しい役に起用されていないし、出演のオファーも減っているので劇場側は今後のプロジェクトに対する関心が薄れていると解釈したとのこと。

グルペローヴァはウイーン国立劇場とは関係が深く、この4月にもソロ・コンサートが予定されているし、「ロペルト・テヴェリュー」にも出演する予定だ。でも65歳だから、さすがに往年の輝きはないかも。ベルカント・オペラを歌うソプラノは競争が激しく良い若手もたくさんいるから、過去の栄光だけでは難しいのかもしれない。最近ドイツのオペラ座は演技力も要求するのが普通で、ミュンヘンもウイーンに比べると演出重視だし。

バイエルン国立歌劇場とは縁が切れても、ウイーンには出演するだろうから、ファンの方はまだ実演に接する機会はあるでしょう。

寒波は続く

ヨーロッパの寒波はまだ続いている。ヨーロッパ全土で死者が300人以上というすごさ。おもにホームレスの人が凍死したとのことだけれど、本当に寒い。今日の朝はマイナス16.5度だった。バス停から事務所まで10分くらいあるくのだけれど、裏のついたジーンズでもといも寒くて足が痛くなった。今の外気はマイナス6度くらい。ここまで寒くなるとマイナス6度でも少し暖かくなったような気がする。

外はとても寒いのに、室内は暖房が効いていて23度くらいになっている。暑がりの人は半そでのTシャツ姿だ。ドイツ人は環境保護意識が高いというけれど、こういう点では本当に不思議だ。室内でもう少し厚着して暖房を減らすとは考えないようだ。

そうは言っても暖房費を追加徴収される頃には後悔するだろうけど、それは春から初夏にかけてなので、忘れた頃に請求が来る。もっとタイムリーな徴収ができれば省エネにもなるだろうに。

バイロイト音楽祭も映画館へ

昨日の日記に書いたペルリン・ドイツオペラのリエンツィはプレミアは1月24日に済んでいて、4月10日は再演だそうです。ご指摘ありがとうございます。本文も修正しました。

となると4月20日に公演を入れてしまったのは単純なミスかもしれない。ヒットラーの誕生日なんて殆ど意識していなくて、後で指摘されて重大さに気がついたのかもしれない。ワーグナー家とヒットラーは関係があったし、特にベルリンではデリケートなテーマという事でしょう。

ところでそのワーグナーの本家であるバイロイト音楽祭だけど、メイン・スポンサーのジーメンスが昨年限りで手を引いてしまい、今後の見通しが心配されていた。ことしはどうやらパブリック・ビューイングの代わりに映画館で上映することになるようだ。詳しいソースはこちら

この記事によれば、生中継するのは8月11日の「パルジファル」で指揮はフィリップ・ジョルダン、演出はシュテファン・ヘアハイム。合計100以上の映画館で上映される予定。メトの放送のように、映画館向けの休憩時間プログラムも用意するらしく、そのキャスターは人気テノール歌手のクラウス・フローリアン・フォクト。映画の値段は32ユーロとの事。

ヘアハイムの演出は数年前に制作されたもので、前衛的だけどなかなか面白いらしい。ドイツとワーグナー家の歴史を表しているという話だ。去年はヨーロッパでもArteがローエングリンをサイマル中継していたけれど、今年はどうするのだろう。テレビで放送されるなら映画館には行かないような気がするけど。最近は自宅でHD環境の整っている人も多いだろうし。

ただ去年は落雷で信号が途絶えて、放送が中断させてしまった。NHKと違ってヨーロッパの放送局は大雑把だから、こういうトラブルは無いとはいえない。

ベルリン・ドイツオペラがリエンツィを1日延期

ドイツでも2番目に大きなオペラ座であるペルリン・ドイツオペラがワーグナーの初期の作品「リエンツィ」を上演する。その再演の1回は予定されていた4月20日ではなく、4月21日になった。4月20日はアドルフ・ヒットラーの誕生日だから。

「リエンツィ」といえばバイロイトでも上演されないワーグナー初期のオペラだけど、若きヒットラーがこのオペラに感動した事が政治を志すきっかけになった作品だったそうだ。第三帝国時代にはナチ文化の宣伝に利用された劇場が、ヒットラーの誕生日にお気に入りの作品を上演するというコンセプトだったのかもしれないけど、やはり反対する人が多かった。そこで1日ずらして21日になったという訳。

ドイツではヒットラーの「我が闘争」が出版禁止になったり、ナチの思想には絶対許さないと厳しく対応している。それでもネオナチと呼ばれる国粋主義、外国人迫害に賛同する若者は存在して、凶悪な事件も起きている。「リエンツィ」の4月20日上演も企画した支配人には悪意は無かったのだろうけれど、ネオナチに利用されても好ましくないし、妥当な判断となった。

ペルリン・ドイツオペラは「イドメネオ」のイスラム教徒の神経を逆なでする過激演出など、過去にも物議を醸してきた。今シーズンは100周年の記念シーズンで、今年の9月からは支配人が交代する。新支配人はマンハイム時代にアダム・フィッシャーの右腕だったディトマー・シュヴァルツ氏で、その後バーゼルの歌劇場を2年連続で最優秀オペラハウスに選ばれるほどの功績を残した人。ベルリン国立歌劇場、コーミッシェ・オーパーに比べると最近はスキャンダラスな演出以外では覇気が無いようにみえるドイツオペラを立て直す事が期待されている。

マレブ・ハンガリー航空の運行停止

6月にワーグナーを観にブダペスト行きを計画されている方から、マレブ・ハンガリー航空の運行停止に関して質問があった。ANAではチケットの払い戻しをしているようだけれど、ANAからの理由の説明が無いらしい。

もともとマレブは赤字体質で何時つぶれてもおかしくなかったのだが、フラッグキャリアを残したいハンガリー政府が支援していた。しかしながら、先月EU裁判所が政府支援を「自由競争を阻害する」ということでEU協定違反と認定し、マレブに2007年から2010年までに受けた補助金の全額返済を命令した。そのため負債が207億円に膨れ上がってしまった。

それにくわえて、各国の空港が未決済の利用料などの支払いを求めてきたので、マレブは運転資金が不足し運行できなくなってしまった。国外にあって飛行機の殆どはハンガリーに戻っているようだが、イスラエルとアイルランドにある2機は代金を支払わないと離陸できないので、いまだに目処が立っていない。

日本航空も倒産しているけれど、これは会社更生法を申請して負債をいくらか棒引きにしてもらい再出発をしたわけだ。だから会社は存続しているし、運行停止にはならなかった。ハンガリーの場合、会社更生法のように借金を減らして会社を残す法律が整備されていないのかもしれないが、EUの判決により負債が急に増加したのが大きかった。

運行停止により7千人近い人が足止めされた。航空会社が倒産しても全面運行停止なんて派手な事態になることは殆どなかったから、観光国ハンガリーの印象は悪くなったかもしれない。でもマレブが停止しても他の航空会社はブダペストへの増便を週明けから運行する。具体的にはルフトハンザ、ライアン・エア、ジャーマン・ウイングス、エア・ベルリン、イージー・ジェットなど。中にはマレブのチケットを受け付けるところもある。(追加料金が必要な場合もある。)

アダムの主張

2月1日からブダペストの市営劇場では劇場マネージメントが交代し、極右政党支持者で国粋主義者の役者ジョルジ・ドルナーがディレクターとなった。以前の日記に詳しく書いたけれど、簡単に経緯をまとめてみよう。

この劇場はブダペストの中心に位置し、小さいながらも人気のあるプログラムで経営も安定していた。過去10年以上にわたって成功させていた前支配人の契約更新に当たり、ブダペスト市は専門家6人と市の職員、与党フィデスの文化担当の8人による選定委員会に審査を依頼した。候補者は従来路線を継続する前支配人とジョルジ・ドルナーの二人。ドルナーは極右政党の党首である作家、イシュトバーン・チュルカを総支配人にして、愛国的なハンガリーの作品のみ上演するという計画を提出した。

選定委員会の専門家6名は皆前支配人を支持したけれど、フィデス所属のブダペスト市長はそれを無視してドルナーをディレクターに任命した。ドルナーは「リベラルにより堕落した劇場を建て直す」など国粋主義丸出しの発言を繰り返し、その劇場に出演していた人気俳優の多くが契約を断ってしまった。この件が原因で、指揮者ドホナーニもブダペストでの出演を拒否している。

税金を投入する市営劇場が極右の宣伝機関になってしまうという危機感から、ドイツやオーストリアなどからもこの人事には批判の声があがった。その反応にブダペスト市長は多少折れて、チュルカを総支配人にする案は却下したけれど、その作品の上演は許可した。チュルカ信望者のドルナーがディレクターで、チュルカは劇場所属の作家という立場だけれど、やることは同じ。国粋主義で人種差別的な演目を上演する計画だ。

2月1日にはこの決定に異議を唱えるデモが行われ、数百人が劇場前に集まった。また、極右政党ヨビクの私設軍隊である新ハンガリー衛兵が反対デモに反対する(つまり新劇場マネージメントに賛成する)デモを行った。幸い警察が二つのデモを分けたので乱闘にはならなかった。

アダムはこの日、ヨーロッパ議会のあるブリュッセルに出かけて、ヨーロピアン・ピープルズ・パーティー(EPP)所属の全議員に対して公開の手紙を送った。EU議会はメンバー諸国の政党が政策に従って会派をつくるのだが、EPPというのはEU議会の中道右派でメルケル首相のドイツCDUやサルコジ大統領のフランスUMPなども所属している。ハンガリーの与党フィデスもこの会派に所属。EPPはEU議会では多数派を形成している。

議会では同じ会派に属する議員は擁護するので、先週オルバーン首相が議会で演説した時も、議会の半分は賛成に回ってしまった。EU委員会のバローソ委員長はじめ多くの人がオルバーン首相の反民主主義的政策には反対しているのだが、肝心の議会が強いメッセージを出せない。これが現在のEU議会の問題点。アダムはこの点に関してアクションを求めている。

アダムの主張は、EPPは中道右派なのに、フィデスは極右政党と近い関係にあるのは劇場支配人の任命の一件を見ても明らかだ。それならEPPはフィデスに対して圧力をかけ、極右との関係を絶つことを要求すべきだし、場合によっては会派から除名という事もありえるだろうという事。与党フィデスが党内の反ユダヤ主義や人種差別を撲滅できないのに、ハンガリー全体の人種差別の対策が出来るはずはない。そのフィデスに要求できるのはEPPしかないのだから、多数派を形成するという政局的な連帯ではなく、個々の政治家として、人種差別は絶対に許さないという態度を示して欲しいと手紙に書いている。

最近徐々にドイツの新聞記事などで、「民主主義の危機なのにEPPは何をしている」という論調がでているので、アダムの行動に理解を示す人は多いかもしれない。

サッカー・スタジアムの惨劇

サッカーの試合はフーリガンがやってきて大騒ぎすることもあるけれど、エジプトでとんでもない惨劇が起きてしまった。なんでも、試合終了後に地元のチームがスタジアムのファン挨拶に行った時、一部のファンがグランドになだれ込んで大混乱になった。現時点で死者は73人、負傷者は1000人以上、そのうち180人以上が重態という話。

かなり昔にイギリスのスタジアムでファンがつけた火が木製の客席に燃え移って、何人も焼死した事件があったけれど、今回は乱闘が原因らしい。政治記者などは、アラブの春で民主化したけれど、厳しい状況は変わらないから民衆に不満がたまっていたからだとか、ムバラク政権が崩壊した後、警察が人手不足で治安が悪化したなど、政治と関連付けている。

実は職場の同僚達と地元のスタジアムにブンデスリーガーを観にいくことになり、今日チケットを買ったばかり。2月19日のハノーファー対シュトゥットガルト。サッカー見物にはブラートヴゥルストとビールは標準なんだそうだ。試合を見たいと思ったらテレビが一番で、スタジアムに行くのはビールを飲んで騒ぎたいからだとか。そういう点からすると2月は寒いけど、今週のように日中の最高気温が氷点下9度なんてことが無い事を祈る。

いよいよ寒波がやってきた

この冬は比較的安定していて、0度以下に下がる事はまれだったのだが、今週に入って寒い日が続いている。今日も1日中マイナスで、木曜日の予想は最高気温がマイナス9度だそうだ。

いままで暖かかっただけに、急に冷え込むといろいろなところで問題が起きる。朝外に出ようと思ったら扉が開かない。仕事から帰ってきた時も同じ。扉を思い切り押すとガリガリという音がしてやっと扉が開いた。扉の下に空気中の水分がたまり、それが凍ってしまったようだ。

道路に雪が積もっているわけではないので歩くのには支障はないが、とにかく寒くて外に出る気がしない。今後しばらくはこの寒さが続くので、寒さ対策はしっかりやろう。

民主主義とブダペストのクラブラジオ

少し前の毎日新聞のコラムに、「民主主義を疑え」という文章が掲載されていた。この文章を読んで感じることは、筆者は民主主義は完璧な政治形態で、皆を幸福にすると誤解しているような気がする。

民主主義は基本的に人々の多数決で決めるということだから、決定に時間がかかるのは当たり前だ。民主主義でない企業と同じスピードを求めること自体無理だし、民衆の質が悪ければ政治の質も悪くなる。民主主義に欠陥があるのはあたりまえで、完璧を期待する事じたい無理がある。

それでも民主主義の優れているところは、政策のバランスをチェックする機関が存在し、だれでも反対意見を述べる事ができることだ。当たり前すぎて実感が湧かないけれど、民主主義が後退しているとEUから批判されているハンガリーの事例を考えると、どんなに大切かよくわかる。

ブダペストにはクラブラジオという人気放送局がある。この局はトークショーが中心で、誰でも電話をかけて政策を批判したり、擁護したりする民主主義の代表のような番組が人気だった。日本で言えば田原総一郎の討論番組を一般市民に広げたようなものだ。このクラブラジオは過去10年以上同じスタイルで、現在のフィデス政権も厳しく批判してきた。ところが昨年政府がメディア法の関係で現在存亡の危機に面している。

与党支持者で構成されるされたメディア委員会は、ラジオは最低50パーセントは音楽を放送しなければならないというルールを作った。仕方が無いのでクラブラジオは人気番組を削って音楽を放送した。また、ハンガリーでは2年に1回周波数の更新手続きがあるのだけれど、メディア委員会はクラブラジオの申請を却下しその周波数を過去の実績の全く無いオートラジオという局に割り当てた。クラブラジオは別の周波数も申請していたのだが、こちらも却下。だからこの放送局は3月1日以降は放送できなくなってしまった。

委員会の選定したアウトラジオは割り当てられた周波数を信じられないほどの高値でクラブラジオ始め他の放送局に売り込んでいるという話だ。つまりメディア委員会は最初からクラブラジオを潰すつもりで、放送計画も不完全なオートラジオを選んだのではと疑われている。

もちろんクラブラジオはこの件に関して法廷に訴えることはできる。でもハンガリー政府は判事の定年を強制的に引き下げて、250人近い判事を引退させてしまった。その後任を決定する権利があるのはただ一人で、与党の重職の妻。与党支持者を判事に任命するのだろう。そんな状態で法に訴えてもクラブラジオの主張が聞き入れられるとは思えない。

民主主義を支持するEUとアメリカは、このクラブラジオの件を特に重視し調査している。クラブラジオのような事が起きないように、意見の多様性を認めバランスをチェックするのが民主主義であり、皆が経済的に豊かになって幸せになることを目的にしているわけではない。民主主義を疑っている毎日新聞のジャーナリストは、クラブラジオのジャーナリストに何ていうのだろう。

売れっ子指揮者のスケジュール

ファビオ・ルイジがメトの首席指揮者になったけれど、ジーェムス・レヴァインの容態はどうなのかという質問をいただいた。本来なら年明けから復帰する予定だったけれど、完全に回復するまで予定は入れないということで、今後のメトのスケジュールは全てキャンセルするという発表があった。それではレヴァインの予定は何年先まで入っていたのだろう。

アダムは実は来年の12月にメトの新制作を担当する。この話があったのは前回「魔笛」を指揮した時だから2010年の春。音楽監督レヴァインは客演指揮者に割り振る前に決めるから、4年くらい先までメトのスケジュールに組み込まれていたのではないかと想像する。それを全部キャンセルとなると、劇場の負担は大きそうだ。

コンサートに比べるとオペラはリハーサルの期間も長いし、毎日歌えないから公演期間も長期になる。だいたい新制作やスタジオーネ劇場のリバイバル公演で2-3ヶ月、レパートリー劇場の通常公演でも2-3週間は出演者は劇場のある街にいないといけない。だから売れっ子の歌手に出演してもらうには、相当早い段階での申し込みが必要だ。

歌手にしてみると伴奏する指揮者と相性が良くないと実力を発揮できない。だから歌手に先立って指揮者を決める。(もちろんディーヴァが「この指揮者でないと歌わない」と指定する場合もある。)だからオペラ系の指揮者の予定は3年から4年くらい先まで決まっている。

コンサートの場合は1つのプログラムのリハーサルが2日から3日、数日間連続で演奏会があったとしても、出演者の拘束期間は5日から1週間程度。3ヶ月一つの都市に留まる事は不可能でも、1週間なら大丈夫かもしれない。だからオーケストラのマネージメントはそんなに先まで計画を立てない。だいたい2年くらいか。

アダムが日本のオーケストラに客演しないのはこのため。日本である程度の出演回数をこなすとなると複数のプログラムを指揮することになるが、そのためには2週間近く日本に滞在しなければならない。日本から帰った後も時差ぼけで本格的に仕事ができないので、合計3週間はスケジュールを空ける必要がある。たから日本のオーケストラが客演を依頼しても、オペラの仕事がすでに決まっていて時間が取れない。

今年のタンホイザーはウイーン国立歌劇場の全支配人ホーレンダー氏が関与しているから、オペラ座なみにかなり先まで計画しているけれど、日本のオーケストラはそんなに先まで計画しないので、残念ながら客演できない。

ブダペストの日本支援コンサート

1月26日にブダペストの芸術宮殿で日本支援コンサートが行われた。裏方の見積もりの甘さでどうなる事かと思ったのだが、何とか表面的には成功だったようだ。

寄付を募る支援コンサートではなくて、日本で起きた災害を忘れずに日本の人々を力づけようという趣旨に変更した。最近日本以外では震災の話は大分少なくなってしまったが、CNNなどでもペレやジャッキー・チェンなどが同じ趣旨のコマーシャルに出演している。だからハンガリー国内向けには有効なメッセージだったような気がする。

このコンサートはハンガリー国営放送でテレビ中継されたらしいし、バルトークラジオの生中継もあった。音質は以前ほど良くないけれど、バルトークラジオは3週間オンデマンドで聴ける。

http://hangtar.radio.hu/bartok#!#2012-01-26

上記のリンク先は1月26日の番組表になっているのど、19時30分のところをクリックすると聴くことが出来る。タンホイザーからもプレリュードや合唱曲をやっているので、日本の方は興味があるかもしれない。

なぜこの時期に日本支援コンサートをやったのかといえば、もともと6月のワーグナーのためにリハーサルが組まれていたから。演奏面では完成には程遠いけれど、半分リハーサルのつもりでチャリティ・コンサートをやれば一石二鳥という考えだった。だから放送を聴いて「こんなワーグナーはダメだから、東京も聴きに行かない」なんていう人がいたら残念だけど、演奏会の目的を理解した上でラジオを聴くのが良いでしょう。

ウイーン国立歌劇場マネージメントの契約延長

ウイーンのスタンダード紙によれば、ウイーン区立歌劇場の支配人、ドミニク・メイヤーとGMDフランツ・ウェルザーメストの契約が延長されたそうだ。

メイヤーは2020年まで延長し、ウェルザーメストは2018年まで。ただしさらに2年間延長のオプションがあり、それは2015年までに決定しなければならない。ウェルザーメストはクリーブランドの契約も2018年なので、こちらと合わせて考えたいのかもしれない。二人とも契約の延長は就任直後から噂されていたので、特に不思議という感じはしない。

大手歌劇場の人事という点では、チューリッヒが問題かもしれない。アレキサンダー・ペレイラは今シーズンで辞任してザルツブルグ音楽祭の総監督になる。その後にチューリッヒの支配人に就任するのはベルリン・コーミッシェオーパーの支配人のアンドレアス・ホモキ。あわせてファビオ・ルイジがGMDになるはずなんだけど、ルイジはメトロポリタンオペラの主任指揮者に決まっている。レヴァイン復帰の目処が立たないから実質的にはGMDだ。アメリカのオーケストラとヨーロッパのオペラの監督兼任する人は、ウェルザーメスト以外にも何人かいるけれど、レパートリー劇場2つのGMDを兼任するのは難しいだろう。

それでも似たような規模の劇場なら、共同制作などの交流があるから支配人も喜ぶかもしれないが、千人少しのチューリッヒに比べると3千人以上入るメトは舞台の規模が違いすぎる。メトの演出は伝統的だから、演出家出身の支配人ホモキが喜ぶような演出はメトに持っていくことは出来ない。

ルイジがニューヨークにいる時間が長くなるとチューリッヒ側には不満が出てくるだろう。

招待券は貰ったものの・・・

チャリティ・コンサートはいよいよ明日に迫った。何がどうなっているか正直全くわからないのだけれど、コンサートは実行される。プログラムはワーグナーで「神々の黄昏」からジークフリートの葬送、タンホイザーの第2幕と3幕から「夕星の歌」や「ワルトブルグへの入城」などの抜粋。後半はパルジファルのプレリュード、「ワルキューレの騎行」と「ウォータンの告別と魔の炎の音楽」

なぜワーグナーになったのかといえば、6月のワーグナーシリーズに向けてのリハーサルも兼ねているから。ハンガリー放送響はコンサート・オーケストラだから、ワーグナーを演奏する機会が少ない。せっかくリハーサルするならチャリティ演奏会を行えば一石二鳥という目論見だった。

ところで、例のハンガリーの担当者からメールがあった。なんと明日の演奏会のチケットをボックスオフィスに置いておくという連絡。それならもっと早く言ってくれれば計画も立てたのに。いくらなんでも前日に言われても休みを取ってブダペストまで行く事はできない。

この人電話をかけてきたから、私がドイツに住んでいることは知っていると思うのだけれど、当然来ると思い込んでいるらしい。それともチケットがあまり売れていないのか。とにかくたくさんの人が聴きに来て、演奏会が成功する事を願う。

ところで、6月のワーグナー・シリーズだけど、こちらのチケットの売り上げはかなり好調の模様。神々の黄昏とワルキューレは売り切れ。タンホイザーの2回目はまだ余裕があるけれど、他の公演は残りは僅かだ。ユーロ安に加えてフォリントはさらに安いから、日本からのお客さんにとってはとても割安だろう。

ハンガリー人気質?

チャリティコンサートの件ではかなり怒っているアダムだけど、この手の経験はハンガリー国立歌劇場のGMDをやっていた時に何度もあったらしい。ハンガリー人の悪い癖は、プロジェクトの見積もりが甘く簡単に考えること。後になってそれができないとなると他人のせいにする。

オペラ座のGMDとして国際的な歌手と契約しようとすると、オペラ座のマネージメントは当初はOKするものの契約書を作成しない。でも歌手はアダムのことを信用して出演するつもりでいると、後からオペラ座マネージメントが出演料が高すぎるとか文句を言って、契約が流れてしまう。こういうマネージメントに振り回されて、かなり不信感を持ったらしい。ハンガリー国立歌劇場を辞めた直接の理由は政府による干渉だけど、マネージメントというかハンガリー人職員に対する不信感も原因の一つらしい。

ただアダム自身は全く自覚がないのだが、国際的に活躍するマエストロだから、逆らう人はまずいない。何かを頼んでもたいていは「わかりました」という答えが返ってくるのだが、それを実行するとは限らない。

実はハンガリーの音楽ジャーナリストがアダムに関する本の出版を計画していて情報を集めている。写真や新聞記事、コンサートのプログラムなどは私の方がたくさん持っているから、アダムとしてはジャーナリストに協力するつもりで私を紹介するということになった。わざわざ元旦のコンサートの始まる前に楽屋で会う約束をしたのだが、当党のジャーナリストが来ない。時間を間違えていたらしく、話す時間は殆ど無かった。なんとなく、「マエストロが言うから会っただけです。」みたいな感じ。

僅かの会話の中で、「アダムが過去にマーラーについてコンサートプログラム用に何か書いたという話ですが、もし記事を持っていたらコピーを送ってください。それから写真もメールでお願いします。」ということは頼まれた。記事は簡単に見つかったのだが、問題は写真。ジャーナリストはほんの数枚だと考えているのかもしれないが、アダムの写真なんてデジタル化しているものだけでも10ギガバイト単位だ。メールに添付できるはずは無い。それに写真を送ると著作権も無視して勝手に使われることもあるから、必要なもの以外は送りたくない。結局過去に作ったフォトブックを貸して、どのような写真が欲しいか説明してもらうことにした。

フォトブックを見たジャーナリストはなぜアダムが私を紹介したがったのか、やっとわかったらしい。今度はそのフォトブックを返してくれない。仕方が無いので、次回ブダペストに行ったときに直接返してもらう事にした。

どうやらこのジャーナリストは執筆に取り掛かったみたいだけど、出版されるのかはわからない。チャリティ・コンサートの二の舞で、手伝っても結局中止になるのではないかと疑っている。

芸術宮殿の日本支援コンサートその後

以前の日記でアダム・フィッシャーの主導で、ブダペストの芸術宮殿が日本支援コンサートを企画していると書いた。コンサート自体は1月26日に開かれるのだけれど、経済の状況が悪化して企画を変更することになった。

もともとアダムは支援コンサートをやりたがったのだけれど、どこに寄付するのが一番良いのか質問された。たまたま持っていた日本の新聞記事には、宮城県民会館などのホールが被災して再開の見込みが立たないという話が載っていたので、ホールに寄付するのはどうかという話をした。

その話の乗ってきたのは芸術宮殿の支配人で、ハンガリー放送交響楽団をアダムが指揮することになった。私は支援先などの情報を調べてアダムに渡した。詳しい事は芸術宮殿の担当者がコンタクトを取るからという話だった。これが去年の10月。

その後全く連絡が無いまま年が明けてしまった。元旦には芸術宮殿を訪ねたけれど、支援コンサートの話は特に無かったので、ハンガリー在住の日本人組織が協力していると思い、そのままにしていた。

ところが1月10日ごろ担当者から電話があった。留守だったので電話のメッセージを聞いただけなのだが、あわててメールを送ったら、私のメールアドレスを間違えていたのだそうだ。この間日本のホールの担当の方からハンガリーからチャリティコンサートに関するメールを受け取ったと聞いていたのでその件かとも思ったのだが、メールの返答は全く逆だった。

曰く、「コンサートまで日にちも少ないのに日本側からの返答が無いから、チャリティの企画は中止します。だから義捐金はありません。予定されたコンサートでは日本の支援について注意を呼びかけることはします。」なんて書いてある。冗談じゃないぞ。情報を提供したのは10月末なのに、1月まで何もしなかったのはハンガリー側の責任だ。

バード・キッシンゲンでアダムとこの件についてはなしたのだが、「あの連中はまったくおお馬鹿だよ」と怒っている。現実の話は以下の通り。チャリティ・コンサートということで、芸術宮殿はチケット代をかなり高く設定していたが、ハンガリー国内の経済事情が悪化してチケットが全然売れない。だから義捐金も捻出できない。担当者はその責任を取らさせるのを恐れて、日本側のせいにしているというわけ。

ところが、事情の良くわからないホールの担当の方に真の事情を説明した翌日に、東京のハンガリー大使館からホールにチャリティ・コンサートの連絡があって情報が大混乱。アダムも、「ハンガリー当局の一方はチャリティ・コンサートがあると言っていて、別の担当者は無いといっているの?それじゃ、ハンガリー人同士けんかさせておいて、放っておいていいから。」と苦笑していた。典型的なハンガリー人の対応なんだそうだ。

これじゃビジネスの話しをするのは難しいだろうなぁ。アダムがハンガリー国立歌劇場を辞めた理由が良くわかった。

シュレッカーの倒産

ドイツでは労働条件が良く従業員は簡単に解雇されないというイメージがいる。実際に多くのドイツ人がそう思っているし、「アメリカなんて即刻解雇だから、それに比べるとドイツは良いよね」なんて言う。でも現実はドイツの法が状況が悪い。

確かに労働組合に加盟する大手企業の社員はそう簡単に解雇されない。会社の業績が悪く、リストラが避けられない時だけだ。でもドイツにも人材派遣業がある。日本の派遣法では同じ職種に3年以上派遣されている人は、派遣先が新規に雇用する時には直接雇用を申し込む義務があると規定されている。でもドイツにはそんなものは無い。

直接雇用の場合は期限付き契約の社員でもを3度以上更新することはできないので、無期限雇用として扱うという規定がある。でも派遣会社との契約は何度でも更新できるので、派遣先企業は派遣社員を雇ったほうが簡単だ。派遣元企業と派遣社員との契約は無期限だけど、新たな派遣先が見つからなければ解雇できる。

つまりは派遣社員なら3ヶ月の通知さえあれば明確な理由も無く雇い止めできて、それはそのまま派遣社員の失業につながる。結局派遣社員である以上、何年働いても3ヶ月以上先の雇用は明確にならない。これは安定雇用を目的にした労働法の趣旨には反するけれど法律違反にはならない。

この法律の矛盾を大々的に利用したシュレッカーという会社が倒産した。この会社は従業員を強制的に子会社の人材派遣業に移管した。だから仕事は同じなのに給料が減り、さらに長期雇用という安定も失った。でも法律違反ではない。ただその話が公になり、売り上げが落ちて倒産ということになった。

シュレッカーほど目立たないけれど、同じ事はどの企業でもやっている。大企業でも直接雇用者の2倍3倍の派遣社員により仕事が成り立っていて、本来派遣社員には強制できない休日出勤や休暇取得の禁止を命令する。でも雇い止めが怖くて派遣社員は文句は言えない。

アメリカは転職が簡単なので、待遇が悪ければ有能な人ほど他社に移ってしまう。だから法律の規定は低くても企業はどこまで上積みできるかを競う。しっかり働いている人が明確な理由も無く解雇されたら、その企業で働く人はいなくなる。

ドイツの場合は法律の条文は守るが、目的は忘れてしまう。だかわ労働法は長期的な雇用を目的にしているにもかかわらず、労働法の一部である派遣業の規定に抜け穴があるとこれを利用する。

だからアメリカとドイツを比較すると、法律はドイツの被雇用者の方が優遇されているように見えるが、その実態はアメリカの方がずっと良い。これがドイツとアメリカで働いて得た結論だ。

中学で武道が必修になる

新聞を読んでいたら、4月から中学の1-2年は男女とも武道が必修になるそうだ。多くの学校では柔道、剣道、相撲からの選択だそうだが、なかなか興味深い。というのは、クールジャパンということでアニメや漫画などの日本文化は人気があるけれど、日本といえば武道を連想する事がヨーロッパには多いから。

オペラに行くためにチューリッヒで信号待ちをしていたら、突然地元の若い男性から話しかけられた。「日本の人?武道は何をやるの?」どうやら日本人は全て武道をやると思っているらしい。ご本人は空手のある流派に属しているらしく、チューリッヒでも空手は人気があるのだそうだ。

その後オペラに行って「イル・トロヴァトーレ」を観たのだが、途中に日本の剣道のシーンがでてくる。歌手はやはり動きが素人だけど、それ以外の黙約は本格的。プログラムを見たら、チューリッヒの剣道協会の人が出演しているらしい。

今の職場は日本にも関係があるのだけれど、ドイツ人従業員も日本好きが多い。その多くは趣味で武道をやっている。何故かインターナショナルな柔道はいないけれど、空手は数名習っていて、中には日本の道場に短期留学した人もいる。剣道もいるし、同じグループの同僚は弓道をやっている。それから忍術の流れを組む武道をやっている人もいる。日本の普通の職場でも、こんなに武道愛好家は揃っていないだろう。

武道を学ぶと将来国際的な仕事に就いたときに役立つかもしれない。

ポピュリズムと政治

毎日新聞のコラムに、「『大衆迎合』としたり顔で断罪しても意味がない」という記事があった。http://mainichi.jp/select/opinion/iitai/news/20120119ddm004070004000c.html
この評論は多分日本の政治が念頭にあるのではないかと思うが、ハンガリーとオルバーン首相の現状を考えると、驚くほど当たっている。

「ポピュリズム政治は、具体的争点に固執はせず、政治のあり方そのものを非難する運動だ」と述べているが、オルバーン首相の政治手法がまさにそうだった。2002年から2010年までハンガリーでは社会党などの左派の連立政権が政権をとっていた。この政権は抜本的な改革が出来ずに、汚職や腐敗がはびこっていた。当時野党の党首だったオルバーン首相はこの点を強く批判し、2010年の選挙では3分の2の議席を獲得する大勝利を収めた。この選挙でフィデスの掲げた争点というのは、汚職にまみれた社会党政権を一掃し、複雑で腐敗の温床になる課税方式を簡単にするということ。まさに政治のあり方そのものを非難していた。

この論文にあるとおり、オルバーン首相のポピュリズム手法も効果はあった。だから経済界は選挙結果に好感を表したし、多くの人は3分の2の力で腐敗の一層を期待した。でも実際に政権を取ってみると状況はことなる。この論文では、「政権批判を糧にしているポピュリズム政権は、権力を奪取した途端に現実の壁にぶつかり穏健化すると人々の政治に対する失望に拍車をかける」と述べている。これは多分日本の民主党のことを指しているのだろう。残念ながら圧倒多数の勝利を許したハンガリーはその程度では済まなかった。

政権をとったフィデスは選挙の公約を実行し、前政権で優遇されたポストをフィデスの支持者で固めてしまった。つまり汚職で潤った人は解雇されたが、フィデス支持者がその後釜に座った。それから税制を簡単にするために、累進課税をやめて所得税を一律16パーセントにした。でもそのために政府の税収が大幅に下がり、結果として福祉を切り詰める事になった。つまりこの政策は金持ちはよろこんだが、所得の低い弱者がその穴埋めをすることになった。

また、ポピュリスト政権は常に批判する対象が必要だ。だからフィデスは過去8年間の社会党政権の責任を追及するために法律を改正したし、さらに共産党時代の不正の責任を現在の社会党に対して追及している。また、ナショナリズムを煽る政策をとり、EUの政策と対立している。このEUとの対立がエスカレートしてきていて、今週EUはハンガリーに対して法的措置を講じる決定をしている。下手をするとハンガリーは制裁を受けるかもしれない。

今ハンガリーは今経済状態が悪く、破綻を防ぐためにIMFからの支援が不可欠の状況だ。ところがIMFの理事であるEUとの対立で支援に向けた話し合いに入れない。だから投資家の信頼が得られなくて通貨フォリントの価値が下落。そうすると外貨立てのローンを組んでいる多くのハンガリー人の支払いが困難になる。市民を犠牲にして政権の敵を作り出しているような状態だ。

ハンガリーの状況から学ぶとしたら、やはり批判するだけでは政治は良くならないということだろう。フィデスは腐敗した社会党政権を批判したが、腐敗の解決法を提示したわけではない。「腐敗に関与した人物を排除し、党の関係者が後釜に座る」なんていう公約だったらだれも投票はしないだろう。

日本の政治も批判ばかりで、実際の政策に関しての議論が少ないのが問題だ。

No.287 2012年1月14日、ハイドンフィル、バート・キッシンゲン公演

バイエルン州北部の保養地バート・キッシンゲンはアイゼンシュタットとは提携しているらしく、この演奏会はその縁で呼ばれたらしい。街の中心部の温泉に併設して作られた建物内にある、マックス=リットマンザールはハイドンザールと同じくらいの大きさだけど、2階席がずっと多いから1000人くらいは入りそうだ。ここで開かれているヴィンターツァウバーという音楽祭の最終コンサートにアダムとハイドンフィルが出演した。


Atal Schöck, Mezzosopran
Öesterreichisch-Ungarische Haydn Philharmonie
Adam Fischer, Leitung

Bela Bartok: Musik fuer Saiteninstrumente, Celesta und Schlazgeug
Joseph Haydn: Berenice che Fai? Solokantate fuer Sopran und Orchester
Joseph Haydn: Symphone Nr. 88


1曲目のバルトークの弦チェレは長年おっかけをやっていても実演で聴いたのは初めて。アダム自身も演奏する機会が少なく、ここ15年でも3回しかない。中央に大きなティンパニーが置いてあり、打楽器軍はその上手側にいくつかある。ティンパニーはフォルクスオーパー首席のハネス・フォーゲルで、多分彼の弟子の若い生徒が打楽器を担当していると思われる。

舞台の下手に奥からピアノとチェレスタ、ハープが置かれ、弦楽器は二つに分かれて指揮台を囲むように並んでいる。この曲は二つのオーケストラ向けにかかれたんだすね。知らなかった。技術的も難しいし合わせるのがとても大変な曲なんだけど、リハーサルが少なくて本番の始まる前には弦楽器は皆おさらいに忙しそうだった。

本番の演奏は良かったですよ。もちろん左右が合わないところが数箇所あったけれど、レコードで聴くようには演奏できるわけないからその辺は仕方が無い。ただ、普段の演奏よりは音が小さくなる場合が多かった。これは演奏者がまだ確信をもてないからで、普段ならピアノの部分でもうまく響かせて音が聞こえないことはないけれど、このバルトークの演奏では音が小さくなると、ミスしないように必至という感じだった。本番がもう1〜2回あれば違うと思うけど。

この曲は楽器編成が複雑だから、ツアーでやるには向かない。でもわざわざプログラムに入れたのは主催者側の希望かと思ったのだが、湯治客中心のお客さんはバルトークには興味は薄いらしく、お客さんの反応はあまりよくなかった。

バルトークの後には休憩が入り、その間に椅子と譜面台の配置を変えた。管楽器奏者は後半から登場。後半はハイドンのプログラムで、ソプラノのコンサート用のカンタータ。これはハイドンフィルの定番プログラムで、よく演奏する。今回のソロはハンガリー国立歌劇場所属のメゾ・ソプラノ。

その後の88番はハイドンフィルの定番だからオーケストラも慣れている。ただ普段と違ってティンパニーが皮の古楽器ではなく、バルトークで使っていた現代楽器だったので、少し音色的には違ったけれど。

前半のバルトークではつまらなそうにしていたお客さんも後半のハイドンは大喜び。拍手喝さいも大きかった。そのあと予定していたアンコール・ナンバーの「フィガロの結婚」序曲を演奏。ここでまた拍手喝采が大きくて、アダムは何度も舞台の袖と指揮台を行ったり来たりした。それでも拍手が止まないのでアダムが「そんなに拍手をもらえるとは思っていなかったので、アンコールは1曲しか用意できませんでした。だからこれでおしまいです。」なんて謝っていた。お客さんはようやく解散。バイロイトで演奏しているアダムは、フランケン地方では知名度が高いのでしょう。

コンサートとしては短めではあったけれど、良い演奏会だった。バルトークは翌日もう1回演奏できればもっと良くなっただろうけど、ツアーでは仕方が無い。アダムはザルツブルグ音楽祭でこの曲を演奏するので、出来たら聴きに行きたいものだ。ただザルツブルグはチケットが高くて出費が大きいのが難点だ。
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