クラシックおっかけ日記

指揮者アダム・フィッシャーのおっかけ記録、音楽の話、海外生活など

ドイツの選挙速報

ドイツの国政選挙は本日の午後6時に投票が締め切られ、現在開票が行われている。「つまらない」選挙と言われていたけれど、速報によれば意外な結果がでている。もちろんメルケル首相のCDU/CSUは第一党なんだけど、それでも8パーセント以上減少させていて勝利とは言いがたい。同じくシュルツ党首のSPDも5パーセント以上の減少。

どの党が伸びたかといえば極右のAfDで13パーセント以上獲得している。AfDは国会に議員を出せる5パーセントを初めて越えると予想されていたが、10パーセントを超えるというのは意外。それから前回5パーセントに未満で議席を失ったFDPが10パーセントと躍進し、Linke, Grunの野党も微増。結局与党を構成していた二つの党が減少し、少数野党が伸びたということらしい。

開票が終了して全議席が確定した後に各党による連立協議に入る。この結果だと可能性があるのはCDU/CSUと経済中心のFDPの二つでは過半数には達しない。可能性があるのはこの2党に緑の党を加えたジャマイカ連合か、現行の大連合しかない。でも大連合の2党は合わせて13ポイント近く失っているので、そのまま続投というのは難しい。またジャマイカ連合でも経済優先のFDPと環境優先の緑の党は主張が大幅に異なるので国政レベルでは舵取りが大変だ。

外国人排斥を訴えるAfDが政権に参加する事はありえ無いが、第3党となればそれなりに存在感がある。ドイツも今後は難民に厳しくなることは予想される。

メルケルとシュルツの演奏会

世界中の新聞記事で「意外なことにとてもつまらない選挙」と言われているドイツの国政選挙の投票がいよいよ明日に迫った。日本のように選挙カーで候補者名を連呼するようなことはやらないが、交差点の信号機や街灯の柱には何枚ものポスターが掲げられている。また各党の代表は大規模な集会やテレビへの出演で最後の支持を訴えている。

それでもメルケル首相の率いるCDU・CSUの優勢は変らず、第2位はシュルツ党首のSPD。緑の党、自由民主党、AfD、左翼党の4つが第3党を競っている。だから話題はもっぱらどんな連立政権になるか。大連立、ジャマイカ、信号機、赤々緑など選挙の後に交渉があるから、閣僚が決まるのはまだ先の話。

選挙を盛り上げるためか、ハンブルグの聖ミヒャエル教会では選挙の当日にメルケルとシュルツの作品の演奏会が開かれるのだそうだ。もちろんアンゲラ・メルケルもマルティン・シュルツも作曲はしない。取り上げる作曲家はグスタフ・アドルフ・メルケルとヨハン・アブラハム・ペーター・シュルツ。

グスタフ・アドルフ・メルケルは1827年オーバーオルデンヴィッツ生まれ。主にドレスデンを中心に活躍し、ドレスデン・ジングアカデミーの指揮者合唱指揮者だった。オルガンや合唱曲を残している。

ヨハン・アブラハム・ペーター・シュルツは1747年リューネベルグ生まれ。1776年から1780年まではベルリンのフランス劇場の指揮者だった。その後にコペンハーゲンで活動して「デンマーク音楽の父」とも呼ばれたそうだ。シュルツはカンタータ、オラトリオ、オペラなどの作品を残している。

選挙当日の演奏会だけど、作品の出来は投票結果には関係しないでしょう。

バイロイト音楽祭2018

例年通りバイロイト音楽祭からチケットの案内が送られてきた。チケットの発売は11月1日で、ネットによる申し込みは10月31日、郵送による申し込みは10月16日必着とのこと。

郵送申し込みの書式は多少変更があり、オンラインで申し込むと手数料を6ユーロ割引すると書いてある。それからよくみると、「今年は申し込まないが、将来の申し込みを継続する」というようなチェックボックスがあり。申し込み書の注意書きに「バイロイト音楽祭2018に来られない人、来たく無い人はチケットを申し込まないで、該当するチェックボックスに印をつけろ」明記してある。バイロイト音楽祭は過去の申し込み経歴を考慮して当選を決めるが、いままでは1年でも申し込まなければその経歴は消去されてしまった。だから行きたい演目が無くてもとりあえず申し込むのが普通だったけど、そうなるとチケットを戻す人が多発してチケット窓口の仕事が増える。注釈によればここにチェックすれば1年分としてカウントされるので来年以降当たる確率が上がる。

それから統計用として年齢とワーグナー協会員かなどの質問に答える欄がある。これはもちろん自由意志に基づく。音楽祭にやって来る人の構成を把握したいというのは良くわかる。

さてチケット代はいくらかと言えば、10ユーロから400ユーロまで。10ユーロというのはギャラリーの左右で多分ほとんど見えない。一番高いのはもちろん平土間の前方。今まではどんな演目もチケットの値段は同じだったけど、来年から新制作のローエングリンは値段が高くなる。それもプレミアと2回め以降では値段が異なる。

バイロイト音楽祭は外れた人には通知をしないので、来年の2月までに返信が無ければ外れという事になる。

<追記>
hasetanさんのコメントによれば、新制作のチケット代が上がったのは今年のマイスタージンガーからだそうです。

トランプ大統領の国連総会演説

今週は音楽以外のエントリーが続く。それは私が興味のあるニュースが少ないだけで、クラシック音楽業界は新シーズンも始まって話題はあると思う。

ドイツのニュースでもトップ扱いはトランプ米大統領の国連総会での演説。その理由は北朝鮮に対して「完全に破壊する」と脅しをかけ、さらに北朝鮮の指導者を公に侮辱したから。

ドイツでも北朝鮮に対する反発は強いけれど、国連総会は多国主義の象徴で結局のところ外交の場だ。総会では何かを決定する場ではなく、ここで演説しても国連の方針に影響は少ない。過去のアメリカ大統領は「悪の枢軸国」などと批判した事はあるけれど、名指しで脅した事は無い。

北朝鮮の代表はトランプ大統領の発言を前に退席しているし、もともとトランプ大統領の脅しなど聞く耳は持っていない。それどころか北朝鮮はアメリカを敵視しているから、国連総会という場の脅しはアメリカへの反感を正当化するだけだ。それにその脅しに反発して北朝鮮が韓国や日本を攻撃したとしても、アメリカは守る術がないのだからトランプ大統領の脅しは実質効果がない。だからトランプ大統領の演説は対話を開こうとしている他国の努力を無にすると中国やスウェーデンなどの大使は批判している。でも日本の朝日新聞や毎日新聞のネット版をみても扱いが小さいのはとても意外。むしろ拉致事件を引用して北朝鮮に対して強く出ているから評価している。これはヨーロッパとは大分感覚が異なる。

トランプ大統領の演説の数時間後にはフランスのマクロン大統領が演説した。こちらは対照的に多国主義の尊重を主張し、武力ではなく国連主導による対話による解決を提案した。マクロン大統領はトランプ大統領との違いを浮き立たせることによりフランスの国際的な印象を上げることに成功している。でもマクロン大統領はトランプ大統領との関係も重視していて、ニューヨークに来た時はまず第一に訪ねている。この辺の立ち回りはとても上手い。

選挙とベルリン・マラソン

今週の日曜日はドイツの国政選挙があるという話は以前の日記に書いた。ベルリンではそれに加えて年に一度のベルリン・マラソンがある。今年の参加者はは4万3千人で例年通り市内の見所をぐるっと回るコースになる。昨年12月のテロ事件の現場も通るし、とにかく参加者が多いので警備が大変だ。

ところが今年はそれ以外にも選挙がある。有権者が投票しようと思っても、参加者が多いからマラソンコースを横切るのは結構大変だ。スタートに近いとほランナーが団子状態でやって来るから道を横切るのは不可能。中盤以降は制限時間ギリギリの人もいるから数時間に渡って常にランナーが通り過ぎる。集団がバラけるのでタイミングを合わせれば道を渡る事は出来るかもしれないけど、いづれにしても簡単ではない。

選挙は4年に一度9月に行われるけれど、いままでベルリン・マラソンと重なった事は無いのだそうだ。警察の担当者がRBBのニュースのインタビューに答えて自信満々で「セキュリティは大丈夫です」と言っていたけど、ベルリン市は市内の警官1500人を投入してマラソンコースの警備に当たるのだとか。

ハーディーとメラ4ヶ月

二匹の子猫ハーディとメラは5月23日生まれなので、まもなく4ヶ月になる。うちに来た時は両方とも1キロ程度で小さかったのだが、今はハーディーが2.7キロでメラは2.1キロと倍以上になった。毎日走り回るのは同じだけど、ジャンプ力がついたので高いところに飛び上がる。キッチン・カウンターにも平気で飛び乗るのでいつも慌てて下に下ろしている。私がいない時はきっと飛び乗って遊んでいるのだろう。

相変わらず写真を撮ろうとすると動き回ってなかなか上手く行かないのだが、先日は窓からハエが入ってきて、それを追い掛け回していた。気温が低いので壁にとまっていたようで、ネコは達は座ってじっくり観察していた。すかさず撮った写真がこれ。
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ドイツの国政選挙まであと1週間

日本では馴染みが薄いかもしれないが、ドイツの国政選挙が9月24日に開かれる。ドイツはフランスとならんでEUには強い影響力があるが、極右のマリー・ルペンが決選投票に進んだフランスとは異なり、ドイツの極右AfDは議席を得ても連立のパートナーとはみなされないので影響力には乏しい。確かに一時期AfDは注目されたのだが、内紛により現在は話題にならない。

イギリスの選挙では勢力増加を期待したメイ首相の賭けがすばれて弱体化されたけれど、ドイツではそんな大番狂わせはなさそう。現時点ではメルケル首相率いるCDU/CSUが他の政党を圧倒している。メルケル政権が誕生した頃は失業率は10パーセントを越えていたし、財政赤字もユーロ圏の上限である3パーセントを超えそうだった。ところが今は失業率6パーセント台、財政赤字は0。.これは実はメルケル首相の前任であるシュレーダー元首相のSPDが主導した改革の結果という説もあるのだけれど、CDU/CSUの政策を支持する人は多い。

対抗するSPDはEU議会議長だったマルティン・シュルツを党首に選出し、一時はメルケル首相を脅かすほどの勢いがあったのだが、最近は以前のレベルに戻ってしまった。現在この二つの政党は連立政権を組んでいるので、厳しく批判できないのも支持率低下の理由かもしれない。

二大政党のイギリスやアメリカと異なり、ドイツでは最大与党でも単独で政権が取れることまず無い。だから連立交渉が大事になる。連立政権は各政党のシンボルカラーで表現されることが多く、もしCDU/CSUが自由民主党(FDP)と連立すればシュヴァルツ・ゲルブになる。もしくは現在のようにCDU/CSUとSPDの連立は黒赤だけど、SPDと同様左派党も赤なので、この場合は大連立政権と呼ばれる。個人的にはこれが一番安定していて良いような気がする。

選挙は来週の日曜日24日で、各テレビ局はそれぞれ速報と解説番組を予定している。

ウィーン国立歌劇場関連の小さなニュース

昨日は「フィガロの結婚」シリーズの最後でライブ・ストリーミングがあった。立見席から見た時とライブ・ストリーミングは印象は異なるが、レパートリー公演としては上々の出来。初日ではまだシーズン開始2日目ということでオーケストラも集中に欠けた部分もあったが、シリーズ最後となれば大丈夫。終演後にはアダムにも盛大な拍手と歓声が飛んでいた。

それからウィーン国立歌劇場の年刊が発行されたみたい。2017年の年刊には指揮者としてアダム・フィッシャーのインタビューが載っているらしい。先日ウィーンに行った時に買いそびれてしまったので読んではいないのだけれど、GMDがいないウィーン国立歌劇場の指揮者の代表格の扱いなのが良くわかる。

ところでウィーン国立歌劇場の前支配人のイオアン・ホーレンダー氏がプレッセ紙のインタビューに答えている。プレッセは有料なので全文は読んでいないのだが、抜粋記事を読んだところによれば、結構面白いことを語っているらしい。ホーレンダーと言えば財政を立て直した事でもしられているが、ケチという事は否定している。ただ必要ないお金は使わなかったのだとか。

あるスター歌手がウィーンの空港からホテルまでのタクシー代を請求したのだが、ホーレンダーは「もし必要なら貸すことは問題ないが、タクシー代を支払う契約ではない。」と拒否したのだとか。それから歌手の出演料はホーレンダーの時代には12500ユーロが最高だったとか。これはホーレンダー以前よりも安いのだとか。その理由を聞かれてホーレンダー氏は、アンナ・ネトレプコの例を挙げている。ネトレプコは今後ザルツブルグには出演しない。その代わり独自のツアーを行い世界中でコンサートを開く。このコンサートに来る人はファンばかりで批評は甘いし出演料もはるかに高い。ネトレプコの声とパーソナリティーがそういうツアーを可能にしたわけだけど、現在ではそれが出来る人はそんなに多くない。でも1980年代はスリー・テナーズなどオペラ歌手がイベントに出演することも多かったので、出演料を上げないとウイーン国立歌劇場に出演してもらえなかったとか。

有料の元記事はこちらにあります。

エステルハーツィー財団対ブルゲンランド州

この日記でも何度か触れているエステルハーツィー財団とブルゲンランド州の戦い。二つの音楽祭をそれぞれ開催するというとんでもない状況になってしまった。デンマーク室内管のメンバーはアイゼンシュタットに宿泊していたからハイドンザールを見学した人も多く、なぜこのホールで演奏会が開けないのか不思議に思っていた程。

再度復習すると、ブルゲンランド州の支援のもとハイドンザールでは9月の第2週の11日間ハイドンターゲが開かれていた。城の所有者はエステルハーツィー公爵夫人だったのだが、財団を設立してそのトップに甥に当たるスイス人の銀行家シュテファン・オットルバイが就任した。この人はビジネスマンなので、財団の所有する財産を活用したい。財団の主な収入はワイン醸造なんだけど、エステルハーツィー家と言えばハイドンのパトロンとして有名だから、ハイドンザールでクラシックの演奏会を開くとともに、自社のワインのイメージを高める事を考えた。音楽祭を開いて遠方からお客さんを呼び、合わせてワインを楽しむイベントを開催すれば宣伝になる。

ハイドンターゲは国際的にも認知されて遠方からお客さんも来るのだが、ブルゲンランド州の支援だからプログラムなど決定できない。そこでハイドンザールの利用権が切れた今年からハイドンターゲを追い出してしまった。クールに考えれば商売上の決定ということになるのだが、音楽祭はいつでも開けるのに、あえてハイドンターゲの時期である9月の第2週に11日間の予定でほぼ同じフォーマットで音楽祭を開くとなれば、お客さんの乗っ取りということになる。

追い出されたハイドンターゲはウィーンやブルゲンランド州の各地で演奏会を開くことになった。どうやらチケットの売り上げは悪くないみたいだけど、会場が狭いので販売可能なチケットの総数が元々少ないので実質聴きに来た人は減少した。だから来年以降は不透明で、2018年のスケジュールは発表できる段階ではない。

これに対してエステルハーツィー財団の開催する「ヘルプストゴルド」音楽祭はクラシックだけでなく、ジャズや民族音楽の演奏会も含めて現在開催中だが、チケットの売り上げはあまり良くない。それでもホールを持っている強みで、来年のパンフレットを制作して宣伝している。

エステルハーツィー財団は2年に1度同じブルゲンランド州のローマの遺跡、ザンクト・マルガレッテンのオペラ・フェスティバルを主催しているのだが、ブルゲンランド州は仕返しに補助金を停止してしまった。その結果エステルハーツィー財団はオペラ・フェスティバルは中止を発表した。

10月にはオーストリアも選挙があるので、ブルゲンランド州の政治家の顔ぶれも変るかもしれないが、双方の意地の張り合いといった様相だ。

2017年9月6日、ニコラス・アルトシュテット指揮ハイドンフィル、ハイドン・ショスタコーヴィチ・ベートーベン

アダムの「フィガロの結婚」の翌日には再びアイゼンシュタットに向かい、今年から始まったエステルハーツィー財団主催のヘルプストゴールド音楽祭のオープニングコンサートに行った。

Nicolas Altstedt
HAYDN PHILHARMONIE

Joseph Haydn: Sinfonie Nr. 88 G-Dur Hob I:88
​​Dmitri Schostakowitsch: Cellokonzert Nr. 1 Es-Dur op. 107
​Ludwig van Beethoven: Symphonie Nr. 1 C-Dur op. 21


オーケストラは3日前にスロベニアのマリボルで同じプログラムをやっているのだが、この日は午後2時からみっちり3時間リハーサルがあった。長年のファンという事でそのリハーサルにも入れてもらったのだが、ハイドンフィルのメンバーは大幅に入れ替わっていた。今までの常連メンバーで残っているのは第一ヴァイオリン1名、第2ヴァイオリン1名、チェロ1名、第2フルート、第2ファゴットの5名のみ。良くエキストラで参加する顔見知りのクラリネットの2人とウィーンから来たティンパニ奏者を合わせても知っている人は8名。名前は同じハイドンフィルなんだけど、楽団の8割近くのメンバーが入れ替わってしまった。これでは同じオーケストラとは言えない。

この日の演奏会はチェロとコントラバス以外は立って演奏した。その方が自由に演奏できるのだそうだが、リハーサルとと本番合わせて5時間以上立っているのは大変そうだ。

今年参加しなかったベテラン奏者に言わせると、アルトシュテットはチェロ奏者で指揮者ではないとのことなのだが、リハーサルを見学してその理由がわかった。ハイドンとペートーペンではアルトシュテットは指揮に専念したわけだが、既に本番を1度経験しているにも関わらず、細かい表現に注文をつけ、頻繁に止める。これはゲネプロのはずなんだけど、アダムのリハーサルの1回目よりも細切れで、本番でどんな演奏になるか全く見当が付かない。これに対してショスタコーヴィッチのチェロ協奏曲はアルトシュテットがソロと指揮を担当したが、自分が演奏している時は止めないのでリハーサルでもほとんど楽章を通していた。

実際本番ではどうだったかと言えば。ハイドンとベートーベンの交響曲は全体的にテンポが速く、細かい表現が雑になってしまう。リハーサルでも感じたのだが、弦楽器のボウイングには厳しいが各セクションのバランスには無頓着だから旋律が浮き出ない。これに対してショスタコーヴィッチの協奏曲はソロが上々だし、コンサートミストレスの活躍もあって指揮無しでも魅力的な演奏だった。

新聞批評にもアルトシュテットはチェロ奏者としては第一級だが、指揮者としては今後の研鑽が必要というような事が書かれていたが、全く同意。

この演奏会のお客さんの入りはオープニングという事もあり、9割以上。でもどうやらエステルハーツィー財団関係者も多く、ほとんどが招待でチケット売り上げと言う点ではそれほど良くなかったみたい。

No.365、 2017年9月5日、ウィーン国立歌劇場、モーツァルト「フィガロの結婚」

ハイドンランドターゲの最終コンサートの二日後にはウィーンで「フィガロの結婚」のシリーズ最初の公演を観た。

Wolfgang Amadeus Mozart
Le Nozze di Figaro

Dirigent Adam Fischer
Regie Jean-Louis Martinoty

Conte d'Almaviva Carlos Alvarez
Contessa d'Almaviva Dorothea Roschmann
Susanna Andrea Carroll
Figaro Adam Plachetka
Cherubino Margarita Gritskova
Marcellina Ulrike Helzel
Don Basilio Pavel Kolgatin
Don Curzio Peter Jelosits
Don Bartolo Ryan Speedo Green
Antonio Igor Onishchenko
Barbarina Maria Nazarova


最近のウイーン国立歌劇場はチケットの取得が大変で、この公園も早々と売り切れ。そこで平土間の立見に挑戦した。劇場内に入ったのは開演1時間前で、既に100人以上の列が出来ていた。私が立見エリアに入った時は既にスペースはほぼ埋まっていたのだが、アッシャーが前に誘導してくれた関係で2列目で見ることが出来た。ここは天井もないから音は良く聞こえるし、前の人の頭の角度にはよるけれど舞台も良く見える。開演した頃には立見エリアは満員というか満杯状態。でも観光客風の人が多く、案の定休憩時間で多くの人が帰ってしまった。おかげで後半は1列目の中央で観ることができた。

この日はシーズン開幕2公演目ということもあって、全体的にエンジンのかかりが悪い。序曲のテンポは日曜日のアンコールに比べるとゆっくりでデンマーク室内管のような切れ味はないけれど、ウィーンらしい美しい音色。第一幕は全体的に粗も目立ってオーケストラも合わないことがあったが、2幕以降は本気モード。

キャストは劇場所属の歌手が中心で大スターはいないけど皆充実していた。特に良かったのがスザンナ役のアンドレア・キャロルで、中心人物として物語をすすめる。カルロス・アルヴァレスのアルマヴィーヴァも自分勝手だけど愚かではない男爵を演じていた。即興的な部分も多く、高品質のレパートリー公演だった。

新聞の批評はアダム・フィッシャーの手腕を称えていて、、実質ハウス・コンダクターという扱いの暖かいものが多かった。

No.364、 2017年9月3日、デンマーク室内管、ハイドンとモーツァルト

ハイドンターゲ改めハイドンランドターゲの最終日はブルゲンランド州南部のライディングにあるリストの生家の脇に立てられたリスト・ツェントルムでの公演。

ライディングというのは街どころか村にもならない小さな集落で、ウィキペディアによれば人口は2009年4月1日付けでわずか836人(!)。この小さな集落にブルゲンランド州は600人が収容できるホールを作った。ここで町民総会をやろうというわけではないだろうが、それでも一応リスト音楽祭なるものがあって、年に数回は利用されているらしい。デンマーク室内管のメンバーは大都市のコペンハーゲンから来ているから、畑の真ん中で演奏するのかとバスが駐車場に止まったときには不安になっていが、それでもウィーンからのシャトルバスのサービスがあったので客席の入りはまずまず。2階席は6割くらいだったけど1階の平土間はほぼ満員。

ABSCHLUSSMATINEE

Danish Chamber Orchestra
Jasminka Stančul, Klavier
Adam Fischer, Leitung

J.HAYDN: Symphonie Nr.92 G-Dur "Oxford"
W.A.MOZART: KIavierkonzert Es-Dur, KV 271 "Jeunehomme"
W.A.MOZART: Symphonie D-Dur, KV 297 "Pariser"


ハイドンのオックスフォードは2年前にハイドンフィルが演奏しているが、デンマーク室内管はそれに比べると慣れない感じ。ホルンの表現などハイドンフィルよりもさらに工夫されていて面白いのだけれど、全体的に余裕が無い。もっとリハーサルが出来れば状況は異なるのだろうけれど、シーズン初めのツアーで条件が悪いか。

2曲目のモーツァルトの協奏曲は5月にコペンハーゲンで演奏しているのだけれど、ソリストが異なる。セルビア生まれのヤスミニカ・スタンチュールは東京交響楽団とも共演している人らしいけれど、本番では即興的な演奏があってオーケストラは合わせるのに苦労していたみたい。途中「あれ?」という感じの部分はあった。

後半のモーツァルトの交響曲はオーケストラの実力を発揮した演奏。アダム・フィッシャーのモーツァルトはレコーディングもしているし、良く知っているので安心して聴ける。快適なテンポにアクセントをつけた表現はお手の物と言う印象だ。

アンコールの1曲目はアダム・フィッシャーの定番である「フィガロの結婚」序曲。これも強弱をはっきりつけたメリハリのある演奏。それから例年通りアダムの挨拶があってハイドンの「告別」のアダージョを立ち去りながら演奏。ハイドンフィルなら毎年やっているから特に指示は必要ないが、デンマーク室内管はこの曲を良く知らない。そこでアダムがリハーサルの時に、各奏者にいつまで演奏して立ち去るかを指示していた。照明係に暗くするようにサインを送ったり、この曲に関しては指揮だけでなく演出も担当していた。

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オーケストラに聞いたところ、ホールとしては普段演奏しているコペンハーゲン音楽院のホールよりも音が聴きやすいそうだ。お客さんはそれなりに満足していたが、やはりウィーンから80キロとかなり遠いので、音響が良くてもここを主会場にするわけにはいかないでしょう。

No.363、 2017年9月1日、デンマーク室内管、ハイドン「ハルモニウムミサ」他

例年ならシーズン初めはハイドンザールでの演奏会なのだけれど、音楽祭は追い出されてしまったのでブルゲンランド州のいくつかの会場で行われることになった。この日の演奏会はノイジートラーぜーの反対側のフラウエンキルキェン。

ウィーンからローカル線で1時間くらいのところにあるフラウエンキルヒェンにはとても美しい教会がある。プログラムはこの会場に適した合唱曲。
Danish Chamber Orchestra
Wiener Kammerchor
Adam Fischer, Leitung
Fatma Said, Sopran
Hermine Haselbock, Mezzosopran
Martin Piskorski, Tenor
Mathias Hausmann, Bassbariton

J.HAYDN: Te Deum C-Dur, Hob.XXIIIc:1 u. Hob.XXIIIc:2
W.A.MOZART: Kyrie d-moll, KV 341 (KV 368a)
J.HAYDN: Harmoniemesse B-Dur, Hob.XXII:14


DSC02224教会の祭壇の部分に段差がありここをステージに見立てて演奏するはずだったのだが、リハーサルでオーケストラが座ってみるととても狭くて弦楽器のボウイングもままならない。そこで数メートル客席に移動して何とか演奏できるようになった。でもそうなると合唱団とオーケストラとの距離が開いてしまう。

教会の構造上合唱団は奥まで届くのだがオーケストラの音は上に行くので、客席で聞いていると臨場感がないが、指揮台ではオーケストラの音ばかりで合唱が聞こえないらしく、アダムはしきりに客席でのバランスを気にしていた。

教会での演奏会とあって、最初にフランシスコ教会の修道士による挨拶があった。聴きに来たお客さんはハイドンターゲの常連と地元の人らしく、観光客らしい人は一人も見かけなかった。アジア系の人はほとんどいなかったのだが、見ず知らずのお客さん3人から、「あなたはアダム・フィッシャーの演奏会にいつも来てるでしょう。」などと言われてビックリ。確かにハイドンターゲは27回目だけど、そんなに知られているとは思わなかった。

演奏は悪くなかったけど、客席が響かないからオーケストラとの一体感がほとんど無く、感動がすくなかった。それに教会だから舞台が見えない席も多く、その点でも普通のコンサートとは異なった。それと指揮台で合唱が聞こえないというのは問題が大きく、合唱とオーケストラがずれた時に修正が難しい。アダムはオペラ指揮者だからそれに関してはとても上手なのだが、さすがに聞こえなければ修正できない。これは会場の問題だから仕方が無い。

狭い会場だからお客さんは満員だったけれど、来年以降ここで演奏会を開くとなると色々問題もありそうだ。

アダム・フィッシャー68歳

本日アダムはウィーンで「フィガロの結婚」のシリーズ2回目の公演がある。そして68歳の誕生日でもある。過去30年はアイゼンシュタットで誕生日を祝うのが普通だったのだけれど、今年は音楽祭が1週間早まった。誕生日にリハーサルがあると、オーケストラが「ハッピーバースデー」を突然演奏したりする。ウィーン国立歌劇場の場合は本番だからどうするかはわからない。カーテンコールの時に演奏したりするのだろうか。

アダム・フィッシャーは1949年の9月9日ブダペストで生まれた。実はこれはリヒャルト・シュトラウスが亡くなった翌日で、「東洋の宗教だとシュトラウスとの因縁があるってことになるのかな」と冗談を言っていた。でもシュトラウスとはそれほど得意にしているわけではなく、オペラでは最近は「薔薇の騎士」くらいしかやらない。コンサートでは交響詩は何回かやったことがある。その中でも「ドン・ファン」は何度もやっているのだが、「あの曲はオーケストラにとってはオーディションに使われるなど技術的にも難しいけど、フォルテやピアノなどの指示を守れば失敗がないから、指揮者にとってはやりやすい曲なんだよ。」と言っていた。それに比べるとハイドンなどは楽譜をそのまま演奏したのでは退屈な演奏になってしまうので、想像力が必要なんだとか。


ウィーン国立歌劇場に日本語字幕登場

最近は航空運賃が安くなったしインターネットの発達でチケットの手配も自力で出来るようになったので、海外へのオペラ鑑賞旅行も容易になった。それでも割高なオペラ座の引越し公演に行く方は、もちろん長期の休暇がとりにくいこともあるが、日本語の字幕が出るからという人もいるかと思う。なんとウィーン国立歌劇場は今シーズンから全公演に日本語の字幕をつけると発表した。

ウィーンの字幕システムは2001年から客的のディスプレーに英語とドイツ語が表示されるタイプを利用していたのだが、老朽化したので夏休み中にシステムをアップグレードした模様。字幕の種類は従来の英語とドイツ語に加えてフランス語、イタリア語、ロシア語と日本語の6ヶ国語に対応している。

5日の「フィガロの結婚」を見に行った時に試してみたのだが、日本の舞台脇の字幕とは異なり横書きで、4行くらいまで表示されたと思う。翻訳の質はともかく日本語としては十分なので0日本人のスタッフが訳したのだろう。字幕のおかげでフィガロの長いレチタチーヴォも笑いが沸いていたから、やはり重要なのだろう。

ウィーンまでオペラを観に行かれる方は日本語字幕をお試しください。

ウイーンとアイゼンシュタットの旅

毎年9月恒例のアイゼンシュタット訪問から今日帰って来た。予定通りコンサート3回にウィーン国立歌劇場の「フィガロの結婚」を立見席で観て、さらにリハーサルも聴いたので音楽三昧の1週間。ウイーンの友人宅に3泊、アイゼンシュタットの友人宅に3泊させてもらったので、宿泊費は無料だし、その他も節約したので安上がりのおっかけ休暇。

日記を更新できるようにノートPCを持参したのだが、泊めてもらった友人二人ともITには疎く、WIFIのパスワードがわからないという。だから更新は断念した。この6月からEU内はデータローミングも無料になったので、メールのチェック程度はスマートフォンでも何とかなったが、日記の更新はそれでは手間がかかるのでやめた次第。

帰ってきたら家の中が大混乱で驚いた。どうやら二匹の子猫たちは私がいない間に大運動会をやったらしく、棚からは物が落ちているし、ソファのクッションは床に散らかっている。さらには小さなマットレスは隣の部屋まで移動している始末。成長するともう少しおとなしくなるのだろうか。毎回旅行に出ると家の中が大混乱では先が思いやられる。

今年のハイドンターゲ

1991年以来過去26年にわたって9月の第2週はアイゼンシュタットに出かけてハイドンターゲを聴きにいったのだが、今年はパターンが変った。ハイドンザールの所有者であるエステルハーツィ・エステートはブルゲンランド州と仲が悪く、州の支援を受けているハイドンターゲはハイドンザールから追い出されてしまった。だから今年は期間を1週間早めてウィーンやリストの生地のライディング等複数の場所で演奏会を開くハイドン・ランドターゲとして再出発した。

エステルハーツィー・エステートの方は例年ハイドンターゲが開かれる期間に独自の音楽祭を開く。ハイドンフィルハーモニーはエステルハーツィー城内のハイドンザールを本拠地にしたいので、エステルハーツィー・エステートの支援を受けてこちらの音楽祭に出演する。でもアダム・フィッシャーは長年インテンダントを勤めてたライヒャー氏を支持しているので、今年はデンマーク室内管を率いてハイドン・ランドターゲの方に出演する。

アダム自身はブルゲンランド州とエステルハーツィー・エステートが和解して音楽祭を共同で開くことを期待していたのだが、関係が悪化して双方とも相手に最も大きなダメージを与えることを目的にしているようで、全く見込みが立たない。だからアダムもあきらめて来年以降はどちらの音楽祭にも出演しない。

アダムとデンマーク室内管の演奏会は明日と3日の日曜日にある。それから5日にはアダム指揮のフィガロの結婚をウイーン国立歌劇場で立見して、6日にはアイゼンシュタットのハイドンザールでアルトシュテット指揮のハイドンフィルの演奏会を聴く予定。オーケストラのメンバーも大幅に変ってしまい、誰が演奏するのかも良くわからないのだけれど、長年の付き合いなのでやはりはずせない。

という事で明日からの1週間は更新が不定期になります。

演出助手の仕事

バイロイト史上初(多分)のブリュンヒルデを演じた男性のニュース続報。面白いニュースなので南ドイツ新聞がインタビューをしている。

この人は演出助手で、リハーサルの時に歌手が出られないと演技をして相手の歌手のサポートするのは仕事のひとつだそうだ。助手だから演出家の命令に従う何でも屋みたいなところもあるが、本番での役割は出番の前に歌手を呼びに行くなどの仕事に加えて、幕を下ろす合図をだしたりカーテンコールの順番を決定したりする。

カーテンコールといえば小さな役から順に大きな役になるわけだけれど、主役級が複数いる場合はお客さんに受けた人を後にする。以前ウィーンで魔笛を2回同じキャストで観た事があるのだけれど、1回目はパミーナの出来が良かったのでパミーナが最後だったけれど、次の公演ではパパケ゜ーノがとても調子が良く、お客さんにも受けていたのでカーテンコールでも最後に出てきた。こういうコントロールは演出助手やステージマネージャーがその場で決断する。

なぜ演出助手のアンドレアス・ローザーがブリュンヒルデを演じることになったかというと、まず演技の難しさがある。「黄昏」第2幕のアルベリヒのように出番が短く相手の歌手がハーゲン一人だけなら演技を知らない人でもなんとかなるかもしれない。でもブリュンヒルデを2幕と3幕演じるとなればストーリーだけでなく、音楽や相手役とのやり取りなど全てを知っていないといけない。だから演出助手がやるしかない。

今年のバイロイト音楽祭でリングを担当した演出助手には女性はいなかった。3人の男性のうち誰がやるかということになると、残るの二人は髭面だったので選択肢は無かったそうだ。オペラファンはビジュアル面には比較的寛大だけど、さすがに髭面のブリュンヒルデはありえ無い。

アンドレアス・ローザーは車椅子から歌ったキャサリン・フォスターと一緒にカーテンコールに出てきたのだが、この時は「鳥肌が立った」と言っている。この感動は一生忘れられないとの事。

バイロイト最終公演のトラブル

昨日の日記で月曜日の「神々の黄昏」でバイロイト音楽祭2017は終幕したと書いた。やっぱり公演が終了するまで何があるかはわからないもので、最終公演でもトラブルがあった。

「神々の黄昏」の第一幕のラストではブリュンヒルデとグンターに変身したジークフリートが争う場面がある。ここでブリュンヒルデ役のキャサリン・フォスターは足を捻挫してしまった。病院に行くほど重症ではないが、それでも歩けないから2幕と3幕は演技ができない。そこでアシスタント・ディレクターの男性アンドレアス・ローザーが舞台での演技を担当し、キャサリン・フォスターは舞台の袖から杖を突いて歌ったのだとか。

ヨーロッパのオペラ座は代役のキャストを用意しないから、急なキャンセルで演技のリハーサルが間に合わないときなど歌手と演技を別々の人が担当する事は時々みかける。代役の歌手が歌い、本来のキャストが演技を担当することが多いけど、時には演技を良く知っている演出助手が舞台の演技を担当することもある。でも男性がブリュンヒルデを演じたとというのはバイロイトの歴史のなかでも珍しいだろう。

来年はリングは無しで、「ローエングリン」「さまよえるオランダ人」「トリスタンとイゾルデ」「ニュルンベルグのマイスタージンガー」を上演する。

バイロイト音楽祭2017終了

本日8月28日の「神々の黄昏」の公演をもって、バイロイト音楽祭2017は終了する。過去にはハーケンクロイツの刺青をしていた歌手を直前に首にしたり、プレミアの1ヶ月前にタイトルロールを歌う歌手がキャンセルするなどのスキャンダルがたくさんあったが、今シーズンは比較的穏やか。スウェーデン国王夫妻が観劇して話題になったくらい。来年のオープニングは「ローエングリン」で、初めて「ワルキューレ」を単独で上演する。指揮はプラシド・ドミンゴ。

本日の公演が終るとすぐに明日から祝祭歌劇場の足場を組みなおしてファザードの改装工事が始まる。大規模な改装だけど9ヵ月後にはリハーサルが始まるので9ヵ月後には再び足場を取り壊さなければならない。もともとの計画はファザードの改装と部分的な修理だったのだけれど、現時点ではもっと大規模な工事になりそう。ハンブルグのエルブフィルハーモニーのように工事の費用が増大してスキャンダルになるような気もする。
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