クラシックおっかけ日記

指揮者アダム・フィッシャーのおっかけ記録、音楽の話、海外生活など

バレンボイム・ザイード・アカデミーのオープニング

ベルリンのローカルニュースを見ていたら、バレンボイム・ザイード・アカデミーのオープニングの模様を報道していた。このアカデミーはベルリン国立歌劇場の隣に建てられた音楽学校で、中東から毎年90人の学生を受け入れ、音楽だけでなく色々な勉強をする機会を提供する。ここではシュターツカペレ・ベルリンやベルリンフィルのメンバーが勤め、ふるさとの戦争状態から離れて音楽家としてのトップレベルの教育を受けることができるが、音楽家としてだけでなく平和の大使としての勉強にも重点を置く。

このアカデミーは政治を勉強する場ではなく、音楽の勉強が中心なのだそうだ。ローカルニュースのインタビューアーからの「学生は中東出身なんだから、テルアビブやエルサレルに創設しても良かったんじゃないですか?」という質問に答えてバレンボイムは「世界一の音楽の都、ベルリンで勉強する事が重要なんです。」と強調していた。このアカデミー出身の音楽家達が世界中のオーケストラで演奏する日もそれほど遠くない。

アカデミーの隣にはピエール・ブーレーズ・ザールがあり、アカデミーの生徒の演奏だけでなく、新しいベルリンのクラシック音楽の重要な場所になりそうだ。

スカラ座でのコンサート

本日はデンマーク放送で、11月末のデンマーク室内管のコンサートの録音が放送された。曲目はワーグナーのジークフリートの牧歌とベートーベンの交響曲2番と4番。さらにアンコールのフィガロの結婚序曲もあわせて放送された。多分オンデマンドもあると思うので、興味のある方はこちらをどうぞ。

会場で聴いていたときはそれほど気づかなかったけれど、録音されたものを冷静に聴いてみると、ところどころにミスがある。これはちょっと頂けない。一応記録として録音はしたのだけれど、あまり良い出来とは言えない。そんな事を考えていたら、アダムから電話があった。「ちょうど今ラジオでやってるよ」と話したら、「オーケストラがミスがたくさんあったら、聴きたくない。」という答えが返ってきた。残念ながら、思わず同意してしまった。でもアダムの話では、コンサートの後にあったレコーディングではずっと良かったのだそうだ。

電話の用件は大した事ではなかったのだけれど、11日の日曜日からミラノのスカラ座でのコンサートを指揮することになったとのこと。キャンセルしたドホナーニの代役でプログラムはモーツァルトのシンフォニア・コンチェルタンテとレクイエム。どちらもアダムのレパートリーだから問題なし。この演奏会はモーツァルト没後225年のメモリアルという事だ。

インターネットでは今日の朝に見つけたので、発表になったのはここ数日だと思う。ただ少し前から、もしキャンセルになった場合はよろしくという話はスカラ座の支配人ペレイラ氏から聞いていたので、それほどビックリというわけではなかったみたい。本来ならクリスマスの「魔笛」の前の休暇だったのだけれど、明日の夜にはミラノに飛ぶのだそうだ。


音楽家のサインはどうしたらもらえるか

少し前にアダム・フィッシャーのサイン入り写真の希望者を募集したけれど、何人かから届いたというご連絡があった。コンタクトしたのにまだ届かなかったらご連絡を。普通郵便で送ったのでカスタマー・サービス0のドイツポストが紛失しかかもしれないので。

私が日本に住んでいた時は演奏会の後にサインを貰いに行ったことは無いので、当時から楽屋口で出待ちする人がいたかどうかはしらない。でも今年のウィーン国立歌劇場の公演では、出待ちどころか本番前の入待ち、さらにはホテルまで来る方がいてとても驚いた。アダム自身もそんなスター扱いされる事は珍しいので最初は快くサインに応じていた。

私もファンの一人だからサインを求める心情は良くわかる。だからアダムにはなるべくサインをしてあげて欲しいとお願いしたし、話しかけるきっかけが掴めずに遠巻きに待っている方を見つけると、会話を中断してサインをしてあげるように勧めることもあった。そうすると何人もの方がやって来て、それぞれが何点もサインを求め写真を撮るのにはちょっと驚いたけど、一段落すると邪魔する人はいなかった。(ヨーロッパの場合サインを貰いにホテルまで来る人はほとんどいないけど、同じホテルに宿泊した人がアダムを見つけて話しかけて来ることはある。たまたまその場に居合わせただけなのに長話しをして、アポイントメントを取って会っている私を無視するのには閉口することはある。)

ところが公演が始まるとサインを求める方の人数が増えた。2回の本番は週末だった事もあり、ホテルの客室からエレベータで降りてくるとたくさんの方に囲まれてしまう。なんとか振り切って車に乗り、文化会館に到着すると今度は数十人が待っている。アダムもこれにはちょっと困った模様。開演時間を想定してホテルの部屋を出てくるから、サインをしていると予定に遅れてしまう。とても熱心なファンでありがたいことはわかっているが、本番前には時間が無いのでサインの要求は控えた方が良い。

終演後はもっと多くの方が楽屋口で待っていた。東京春音楽祭の時は本番の後に楽屋口に机を出して、並んでいる人にサインをしていたが、アダムだけでなくソリスト全員が楽屋のロビーに出てきたから、主催者の配慮ではないかと想像する。今回は人数が多すぎるのでサイン会は無かったが、サインを求める方を楽屋出入口の片側に集め、出演者がその前を通った時にペンとプログラム等を差し出せば運がよければサインしてもらえた。このシステムは必ずサインがもらえるとは限らないが、出演者には主導権があるのでありがたい。ただアダムは本番の後に約束があったし、そんなにたくさんの人が自分を待っているという自覚が無かったので素通りしてしまったらしい。

人によっては楽屋口ではなく終演後に楽屋を訪ねてサインを貰う人もいるという話もあるが、これは注意が必要。コンサートホールは関係者以外の立ち入りを禁止しているから、勝手に立ち入るのはマナー違反。「外国では簡単に楽屋を訪ねられるのに、なぜ日本は禁止するのだ」と言う人もいるけれど、ホール次第で状況は異なる。メトロポリタンオペラなんて演奏者の来客リストに登録されていない人は絶対に入れてもらえないし、ウィーン国立歌劇場は客席から楽屋に通じる扉にはカギがかかっていてキーカードを持っていないと入れない。それ以外のホールでも基本的には人が立っていて出入りをチェックしているから、普通のお客さんは入れてもらえない。舞台上の客席に行くためには楽屋の通路を使わないと行けないムジークフェラインは楽屋を訪ねることも不可能ではないが、これは例外。

楽屋には高価な楽器が置いてあり盗難の恐れもあるし、最近はテロ対策で警備が厳しくなっている。終演後でも勝手に楽屋に入ると警備員に咎められ、公演を楽しんだ良い気分が吹っ飛ぶ恐れもあるので、楽屋を訪ねてサインを貰うのはやめた方が賢明かも。

劇場関係者の最低賃金が4.8パーセント上昇

ドイツではオペラや演劇団体の多くが公的な支援を受けている。その利点としては経済的な成功に左右されないで、真の芸術を追求できることだが、それ以外にも劇場経営の内情が一般に公開される事も業界の実体を知る上で役に立つ。

ドイツの州立または市立の劇場で働く舞台俳優、合唱団などの加入する団体と雇用側の合意によれば、劇場の芸術部門で働く人の最低賃金が4.8パーセント増加し、月間1850ユーロになった。この契約は舞台の出演者だけでなく、ドラマトゥルク、コーデネーター、ステージ・マネージャー、プロンプター、演出アシスタント、劇場トレーナーなど芸術部門の従業員に加えて、舞台技術者や衣装制作、メイクアップ担当なども含まれる。ソリストに関しては労働時間が不定期なので月間1850ユーロではなく、時給に換算した金額が最低賃金を下回ることは許させない。

この金額はあくまで「最低」であって実際にはもっと高い。劇場所属の役者やダンサーの平均給与は月2800ユーロで、ソリストになれば平均3100ユーロなんだそうだ。最低賃金に関する交渉は来年も行われ、賃金の上昇はドイツ国内の舞台芸術に対する公的支援の増加の影響をうける。つまり4.8パーセントの上昇は、州や市からの劇場に対する補助金がそれだけ増えたという事。

最近ドイツは景気が安定しているし、税収も好調で負債が0の状態がつづいているから、文化予算も伸びているという事だろう。

外国から見た日本のクラシック音楽

arimaさんから世界のクラシック音楽市場での日本市場の占める役割が大きいというコメントをいただいた。その件について少し考えてみた。

20年近く前、まだMP3による音楽配信が無かった頃にヨーロッパの音楽関係者と話したところ、すでにレコード会社は録音を作らなくなったと嘆いていた。当時のクラシックのCDの売り上げは5割がアメリカ、3割が日本、ヨーロッパと残りの国々合わせて2割だったそうだ。今なら定額制の音楽配信のために全てのジャンルでCDが売れなくなっているから、日本の比重はもっと大きくなったと思う。つまり日本の市場がなければ録音業界は存続できない。

昔のレコード業界は残す価値のある芸術を録音するという考えがあった。だから結果的に録音されたものは既にヨーロッパで評価が高いものであることが多かった。でもレコード会社は企業だから売り上げを確保しなければならない。もともとヨーロッパではCDは売れないのだから、アメリカや日本で売れそうな人の演奏を録音して売り出すのが理にかなっている。90年代後半のアメリカでは何が好まれたかと言えば、「天才児」。CDの録音とセットでコンサートのソリストに起用される事が多かった。今はどうかはわからないけど。日本で好まれるものは今も昔もメジャー・コンクールの入賞者だろう。ショパン・コンクールやチャイコフスキー・コンクールなどで優秀な成績を残せば日本で話題になり演奏会を開く事ができる。

とりわけ録音重視の日本はレコード会社のプロモーションに影響されやすいから、ヨーロッパで評価が高くても日本では不当に低い評価を受けることはよくある。そういう事もあって、日本での評価は外国で考慮されることは少ない。この辺が日本のクラシック音楽の問題かもしれない。

バイロイト祝祭歌劇場の工事期間が延長

ワーグナーの聖地、バイロイト祝祭歌劇場の改装工事が予定より長引き、コストもそれにしたがって高騰することが予想されると、音楽祭事務局が発表した。

元々の計画によれば、祝祭歌劇場の改装工事は去年から始まり、2023年までには終了するはずだったのだが、2026年まで延長する見込みだとか。音楽祭の声明によれば、第2期の工事の開始は来年秋までずれ込むそうで、その段階で既に1年の遅れになる。計画では第2期工事部門は2018年に終了し、コストは7百万ユーロと見積もられていた。でもこの資金が予定通り利用できなかったので今年の秋に工事を始める事ができず、1年間遅れることになった。

改装計画は2013年9月11日に承認されたのだが、バイエルン州とドイツ連邦が3千万ユーロを支出することに合意している。詳しいコストの再見積もりは来年4月にならないとわからないそうだが、構造的に工事が難しい部分もあるので、総費用は増加が見込まれている。この部分を誰が負担するのかは明確になっていない。

第2期の工事には舞台の上のタワーが含まれているのだが、まず足場を建築しなければならないため、今から始めても来年の音楽祭のリハーサルが始まるまでに撤去しなければならず、コスト的に無駄が多いとのこと。だから第2期の工事は来年の音楽祭が終了した9月1日に再開するとのことだ。

ハンブルグのエルブフィルハーモニー、ベルリンの国立歌劇場などは、計画の見直しのためにコストが増加して、市民の税金で埋め合わせをしたけれど、バイロイトの祝祭歌劇場は音楽祭意外には使われない劇場だから、公的資金による追加支援はドイツ連邦もバイエルン州も簡単には認可できない。今後誰が負担するかでニュースを賑わすことになりそう。

No.353、 2016年11月27日、デンマーク室内管、ベートーベン2番4番他

一時は先行きも危ぶまれたデンマーク室内管だけど、政府からわずかながらも補助金を受けることが決まり、手探りながら少しずつ安定して活動出来るようになって来た。現時点ではアダム・フィッシャーとのベートーベンの録音と演奏会のプロジェクトが中心だけど、放送局所属だった時と同様にポピュラー・コンサートも少しずつ充実させていく計画らしい。

そのデンマーク室内管とアダム・フィッシャーの新シーズン最初のコンサート。プログラムはベートーベンとワーグナー。

Danmarks UnderholdningsOrkester
Dirigent: Adam Fischer

Wagner: Siegfried Idyll
Beethoven: Symfoni nr. 2
Beethoven: Symfoni nr. 4


プログラムの最初はワーグナーのジークフリート牧歌。この曲は室内オーケストラのために描かれた作品だから、デンマーク室内管でも演奏できる数少ないワーグナーの作品。このオームストらはオペラとはあまり縁が無いのでこの曲を演奏した事は無い。それにベートーベンの交響曲2曲の録音も控えているから、ジークフリート牧歌にはリハーサルの時間が割けない。だからまぁ普通の演奏で、悪くは無いけど普段の過激さはない。

でもベートーベンの交響曲になれば話は別。久しぶりにコンマスのエリック・ハイデ君(かの有名なチリを食べながらの演奏するユーチューブのビデオで、真っ赤な顔をしながら演奏しているソリスト)がアシスタント・コンマスとして参加しているので活気のある演奏。テンポの変化も激しいし、切れ味が鋭い。

ただ最終リハーサルでは交響曲2番の4楽章かなり大幅に修正していた。というのも前日までのリハーサルは市内の教会だったので、そこの音響にあわせて各楽器のバランスを調整したら、本番の会場では逆効果になってしまったとか。「あるセクションは小さい音で演奏してるのに、他のセクションが大きな音で演奏して、場乱がちょっと問題だなぁ。これは僕に責任があるんだけど。本番の会場を念頭に入れてリハーサルすべきだったなぁ。」と反省。本番はなんとかなっても、リハーサルの会場探しからやらなければならないから、まだまだプロオケとしての活動は大変なんだけど。

後半の4番はそれほど問題もなく、いつも通りの迫力ある演奏。満員のお客さんは大喝采でアダムを何度も舞台袖から呼び出した。それに答えてアンコールは「フィガロの結婚」。アダムはオーケストラに対する政府からの支援が決定した事を紹介し、「お祝いにはやっぱりフィガロです。お祝いのフィガロを何度も演奏できること期待します。」と述べて演奏を始めた。そういえば今年の初めにオーケストラの存続が決まったときもフィガロだった。

最後には満員のお客さんが総立ちになって大拍手。このオーケストラはウィーンやベルリンほどの名手が揃っているわけではないが、個性があるし地元の人にも愛されている。少しずつ財政を安定させて、今後もずっと活動して欲しい団体だ。

因みにこの演奏会の模様はデンマーク放送が録音したので、現地時間の12月7日19時20分から放送がある。日本時間だと8日の午前3時20分だけど、しばらくの間はオンデマンドがあると思う。

ミヒャエル・ザンデルリンクとドレスデン・フィルハーモニー

ドレスデン・フィルハーモニーの音楽監督であるミヒャエル・ザンデルリンクは現在の契約が切れる2017/18 シーズン以降は契約を更新しないと発表した。本来なら即刻辞任したいところだが、オーケストラのメンバーや聴衆への責任のために思いとどまったという事だ。

ザンデルリンクが何に対して怒っているかと言えば、Rot-Rot-Gruneと呼ばれるLinke, SPD, Gruneの3つの党の連立政権が、オーケストラへの補助金を一方的に25万ユーロ(約3千万円)も削減したから。ザンデルリンクはそのニュースを新聞で知ったそうで、事前に説明も無かった事でさらに腹を立てた模様。

公的な支援を受けているドイツのオーケストラでさえ、最近は補助金削減による財政難や合併といった事例が出ている。そういう時には強い反対の意思を示すために指揮者が辞任するケースも多い。でも指揮者は辞めても他から仕事がくるが、オーケストラの団員はリストラされたら簡単に次の職場は見つからない。GMDが辞任すれば話題にはなるが、残されたオーケストラは代弁者を失ってもっと厳しい状況に立たされる。だからその判断は難しい。

デンマーク放送がアダムが17年率いてきたデンマーク放送室内管を潰すことを決定した時、反対して辞任するという選択肢はなかった。オーケストラの代弁者として支援を訴えたし、ウィーンフィルやメトロポリタンオペラ・オーケストラから反対の声明を取り付け、自腹でデンマークの新聞に意見広告を出した。これは日本に置き換えてみると、NHKがテレビ番組のテーマの録音や歌番組の伴奏をする東京放送管弦楽団を解散させたら、ウィーンフィルから反対声明が出たようなもの。評判が高くなりつつあるのは知っていても、外国からそれほど評価されているとは思わなかったデンマーク人はかなりビックリした。だから反対運動は盛り上がり、反対決議が国会で可決されるまでに発展した。

それでも放送と政治の独立を盾に文化大臣がオーケストラの解散に合意したのだが、その後もオーケストラとともに演奏会を開き続け、デンマークの私設基金からプロジェクトへの支援を引き出した。さらにこのほどわずかながら国からの補助も受けられることになった。オーケストラを運営するには不十分だけど、この資金があればマネージャーなどの裏方を雇うことができる。

何とか少しずつ存続できるようになってきたが、これもアダムの苦労があってこそ。でもデンマーク室内管の演奏会のためにメトロポリタンオペラなど有名な団体との仕事を断っているのを見ると、ファンとしては少々複雑ではある。アダム・フィッシャーがヨーロッパに比べて日本で知名度が高くないのはこういうところも関係している。

オーケストラが困難な立場になった時に指揮者がどうするかは難しい決定だが、ザンデルリンクがドレスデン・フィルハーモニーのために最適な決断を下すことを望む。

来日ラッシュに思う

11月もまもなく終了。ドイツ各地では既にクリスマス市が始まっていて既に年末気分だけど、11月を振り返るとおっかけは東京、デュッセルドルフ、コペンハーゲンとなかなか忙しかった。

それでも東京のクラシックファンから比べると大したことは無い。毎年10月から11月は海外団体の来日ラッシュで大変そうだ。インターネットで話題になった、10月と11月の来日団体をざっと挙げてみる。
<オーケストラ>
・メータ指揮ウィーンフィル
・ゲルギエフ指揮のマリインスキー劇場オーケストラ
・ブロムシュテット指揮バンベルグ響
・ティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデン
・小林研一郎指揮ハンガリー国立フィルハーモニー
・ティルソン=トーマス指揮のサンフランシスコ響
・ハーディング指揮パリ管
・ヤンソンス指揮バイエルン放送響
<オペラ>
・ウィーン国立歌劇場
・プラハ国立歌劇場

この他室内オケなどもあり盛りだくさん。私が東京に住んでいたとしたら、このうちどの演奏会に行くだろうか。色々と興味はあるものの、一度にあまりたくさん聴くと印象が混ざってしまうので好ましくない。プログラムを見るとマーラー5番やアルプス交響曲など複数の団体が取り上げているけれど、普段あまり聴くことが出来ないような作品は11月でもやはり取り上げられない。だいたいチケット代が高くて複数の団体なんて行っていられない。

素朴な疑問なんだけど、何で毎年10月11月に来日公演が集中するのだろう。確かに「文化の秋」だから音楽鑑賞には適した季節ではあるけれど、別に1月や2月でも問題はなさそうだ。招かれるオーケストラにとっても特に10月11月が都合が良いとも思えない。だいたいオーケストラのシーズンはそれぞれ異なるし個別の事情があって当然なのだから、揃って来る必要はない。ボーナスが入るのは12月だから、懐具合の良いときを狙って公演しているわけでも無い。私だったら集中させないで平均的に演奏会があって欲しいものだけど、何か業界の理由があるのだろうか。

No.352、 2016年11月20日、デュッセルドルフ交響楽団、マーラー4番他

日本から帰った直後にはデュッセルドルフ交響楽団との今シーズン最初の演奏会があった。

Dusseldorfer Symphoniker
Hanna-Elisabeth Muller, Sopran
Adam Fischer, Dirigent

Haydn: Symphonie Es-Dur Hob. I/103 "Mit dem Paukenwirbel"
Mahler: Symphonie Nr. 4 G-Dur


アダム・フィッシャーとデュッセルドルフ交響楽団の定期演奏会は前半がハイドンで後半がマーラーと決まっている。今回のハイドンは「太鼓連打」。アダムからハイドンフィルと比べてどう思うか意見を聞かせて欲しいと前もって
頼まれていたので、特に注意して聴いた。冒頭のティンパニーのソロは普段なら即興演奏をするところだけど、さすがに慣れていないので決められた通り。1楽章は全体的に硬くて生真面目な感じ。ハイドンがんばってはいるけれどハイドンの楽しさがまだ十分発揮できない。

ちょっと長い第2楽章はなかなか面白かった。途中にコンサートマスターによる長いソロがあるのだけれど、この部分はまるでヴァイオリン協奏曲のように演奏したのがちょっと変わっていた。後で聞いたらコンサート・マスターはこの曲は初めてだったとか。デュッセルドルフ響は大型のオーケストラだから、ハイドンはあまりプログラムには入れないのだろう。

この曲はところどころに色々な楽器のソロが入るのだが、どれも無難にこなす。でも全体的にオーケストラの個性がよく見えない。ハイドンフィルだと弦楽器の各セクションもアダムのアイディアを取り入れた上で、それぞれ独自の個性をだすのだけれど、デュッセルドルフ響は第2ヴァイオリンやビオラの内声部が個性に乏しい印象。終演後この辺を指摘したところ、アダムは「ハイドンフィルは30年の経験があるからねぇ。本当はもう少しハイドンのリハーサルに時間を取りたいんだけど、マーラーは大変だしレコーディングがあるでしょう。だからどうしても時間が無いんだよね。」まあ何年も続けていけば慣れて来るでしょう。

後半のマーラーはライブ・レコーディングされた。進行中のマーラーシリーズの一環としてCDで発売されるはず。4番は他の交響曲とは異なり編成は小さめなので、室内オーケストラも唯一演奏できる。9月のハイドンフィルとの演奏に比べると、やはり大型オーケストラの演奏で、途中のソロも正確だ。一番感動したのが第3楽章。集中した小さな音が素晴らしく、お客さんも身動きを控えるほど。でも時節柄咳をする人はいるけど。

第4楽章のソロはハンナ・エリザベス・ミュラー。バイエルン国立歌劇場の契約歌手だそうだ。ハイドンフィルの時と同様、ステージ後方の台上から歌う。悪くないのだけれど、無垢な子供の声ではない。ちょっとタイプが違うような気はする。

開演前のトーンハレ支配人自身によるアナウンスが効果を発揮したのか、終った後もしばらく沈黙が続いてから拍手が出たのは良かった。

次回のデュッセルドルフ響との演奏会は来年2月でプログラムはハイドンのトランペット協奏曲とマーラー1番。

引越し公演裏話(4)

数日前に書いた「ウィーン国立歌劇場来日公演の経済性」というエントリーは、ページビューが多くてビックリ。この記事はザルツブルガー・ナッハリヒテンというドイツ語の記事が元なんだけど、やはり日本では報道されていなかったのだろう。チケットが高いという意見はよく聞くけれど、実際のコストの解析も重要だ。

さて、例のブックレットの情報だけど、ウィーン国立歌劇場として来日した人数を数えてみた。出演する人の中で一番大きいグループはオーケストラで、舞台オケ所属の人も合わせると99人。オーケストラのマネージメントとしてインスペクター、ステージ・マネージャー、楽器担当がそれぞれ2名ずつだから、オーケストラ関連だけで105名。次に多いのがソリストが53人で、合唱は32名に合唱指揮者1名。さらにワルキューレに虐められる黒服の男性もなど役者が10名。これに指揮者が3名なので、出演者だけで総数204名。

舞台には出てこない裏方もたくさんいて、舞台技術者が53人、演出部門が12人など。それ以外に各部門のディレクターやら劇場のマネージメント、今回のツアーの添乗員、医者、プレス関係、専業の職場委員など総数292人。普通のオーケストラの来日公演だったら80人から100人規模のオーケストラにマネージャー数名だから、3倍近いサイズの団体旅行になる。こうなるとビザの手配やらなにやら、色々な面で大変になるから、受け入れる日本側も大変だろう。

最近は外国を旅行するのが簡単になって、ウィーン国立歌劇場を現地で見ること機会も増えたことはたしかだ。この値段を払うならヨーロッパに行ったほうが良いという意見もある。でも長期の休みが取れない人や、体力的に海外旅行は難しい人など来日公演を楽しみにしている人もいる。純粋に採算だけを考えると難しい事業かもしれないが、無くなると悲しむ人は多いだろう。

デュッセルドルフのクリスマス市

11月はウィーン国立歌劇場の来日月間だったけれど、気づいてみれば既に月末で第一アドヴェントはもうすぐだ。この時期ドイツの各地ではクリスマス市が開かれる。デュッセルドルフでは先週末から始まっていて、既にグリューワインを楽しむ人で賑わっていた。

デュッセルドルフのクリスマス市は何箇所かに分かれているのだが、ライン河に近い旧市庁舎の回りに行って見た。
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これは定番の蝋燭屋。

クリスマスツリーに吊るすガラス細工の店もあった。ガラス職人が目の前で作ってくれる。
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さらにデュッセルドルフらしく、各種のビールを取り揃えた店もある。
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ビールの店はその場で飲むというよりもプレゼントとして持ち帰るためのもの。やはり寒いからアルコールを飲むならグリューワイン。それ以外には定番の焼きソーセージの店もいくつかあった。デュッセルドルフはソーセージの種類に拘るらしく、テューリンガーだのアルト・デュッセルドルファーなど、素人には名前意外に何が違うのかよくわからないソーセージが何種類も焼かれていた。

引越し公演裏話(3)

日本ツアー参加者向けのブックレットには、いつだれがどの便で来日または離日するか書いてあるのだけれど、個人情報だからここに載せるのは差し控える。ただ舞台設営やリハーサルにどのくらい時間をかけているのかはコストを考える上でも重要なので、少し紹介しよう。

今回は10月末に文化会館で「ナクソス島のアリアドネ」があった。その最終日が10月30日で、終演後舞台装置を解体し、31日に梱包という計画になっている。舞台が空いたらすぐに「ワルキューレ」のセットの組み立てと照明のリハーサル。舞台芸術では照明はマジックの源で、単なる発泡スチロールも照明次第で大理石に見えたりする。またこの演出はラストの炎だけでなく、狼の影などプロジェクション・マッピングが使われているから、特に入念なチェックが必要だ。

出演者によるリハーサルも31日に始まった。この時点では舞台がまだ使えないのでリハーサル室のみ。11月1日も同じ状況で、2日になってやっと舞台上でのリハーサルが計画されている。伴奏はピアノだけど、キャストの演技に照明や舞台装置の動きも合わせて練習する。翌11月3日はクラヴィーア・ハウプトプローベ。これはピアノ伴奏だけど衣装や舞台装置は本番同様にして全体を通す。

「ワルキューレ」のリハーサルにオーケストラが参加したのは11月4日のオーケストラ・ハウプトブローベ。これはNBSの会員などに公開したので、ご覧になった方もいると思う。本来オーケストラ・ハウプトブローベは途中で止めてオーケストラに指示してもよいのだけれど、アダムは最初から止めないで通して演奏し、休憩に入る前に問題を纏めて指摘する方針だった。というのも舞台上の歌手はもちろん照明やステージマネージャーにとっても、本番のタイミングに慣れることは重要だから。リハーサルとしてはこの日が最後で、5日は舞台技術関係の調整のための予備日で11月6日が初日。その後は本番のみでリハーサルは無い。

上演時間は4時間、各幕で舞台装置を変更しなければならない大規模な公演だから、このリハーサル・スケジュールは必要最最低限だ。公演を観た方は意外に思うかもしれないけれど、オーケストラのピット内の配置が確定したのも4日だし、リハーサルだって1回きりで途中で止めることもない。それでいて独自色が出せるのはオーケストラとアダムの相互理解があるから。アダムもウィーンで勉強したし、コレペティ時代も含めればウィーン国立歌劇場との付き合いは45年近くになる。お互いに手の内がわかっているからできる事で、他の指揮者だったらこんなスケジュールでは難しい。

引越し公演裏話(2)

ウィーン国立歌劇場の来日公演の将来は未定という話はアクセスが通常よりも多いのだけれど、やはり日本でも関心があることなのかもしれない。

さてそのウィーン国立歌劇場の来日公演だけど、記念にもらったツアーに関するブックレットのソリストのセクションを眺めていたら、ヘルベルト・リッペルトとかユルゲン・リンなんていう名前が入っていた。どちらもヨーロッパで活躍しているソリストだけど、10月末に来日し11月13日に帰国しているから「ワルキューレ」に関係しているはず。でも公演では歌っていない。多分彼らは万が一キャストが出演できなくなった時に備えたカバー歌手なのだろう。ウィーンなら代役をすぐに調達できるけど東京では簡単ではないから、そういう配慮は必要だろう。

ブックレットではなくホテルの掲示板で知ったことなのだが、NBSはホテルにピアノを設けた部屋も借りていて、ソリストがピアノ伴奏により練習できるようにしていた。それも二部屋。もちろん文化会館でのリハーサルは何時間もあったのだが、ソリストが単独で練習したいとなれば劇場所属のコレペティの伴奏によりリハーサルできる場を提供していた。

これにはちょっと感心した。そういう事は本拠地では当たり前だけど、日本のプロモーターの中には「公演の質は演奏家の責任」とでも考えているのか、必要なリハーサルの時間すら取らないところもある。リハーサルはお客さんから見えないからコストカットの対象になりやすいのだ。オーケストラの演奏会ならリハーサルは本国でやり、日本では本番前の音鳴らし程度で済ませてもなんとかなる。でもオペラの場合は長いし演技も関係するから、リハーサルできる環境を用意することは公演の品質を左右する。

このようにお客さんからは見えないくても必要な事は省かないというのが今回の来日公演で、劇場の組織全体を一時的に日本に持ってくる正に「引越」。映画などのほかの娯楽に比較するとチケットは確かに高額だが、決して理由が無いわけではない。

ウィーン国立歌劇場来日公演の経済性

今回のウィーン国立歌劇場の来日公演は、日本経済新聞がスポンサーについているはずなのだけれど、有料の新聞記事ではあまり見かけなかった。批評記事は今後何かに掲載されるのだろうか。

オーストリアからは記者が何人も招待されている関係で、ドイツ語ではタイムリーな記事がたくさんあった。総括記事によれば、今回の来日公演では9公演でのべ1万7千人の観客を動員したのだとか。劇場としての収支は明らかにしていないが、コストは日本側が払うので豪華なホテルに泊まってもかなりの収入になる、と支配人のメイヤー氏はインタビューに答えている。でも気になるのはこの記事。オーストリアの共同通信の記事だけれど、今回の来日公演は主催のNBSとしては経済的にはとても厳しい状況と書いてある。

この記事によれば、来日公演の総コストは10億円近くになる。NBSはブライベートな団体なので、この費用はスポンサーからの支援とチケット代で賄わなければならない。だから一番高いチケットは6万7千円(約580ユーロ)、一番安くても1万3千円(112ユーロ)。NBSの専務理事である高橋典夫氏によれば、「この値段はもちろん信じられないほど高い」との事。でも最近のホテル代の高騰がコストを押し上げているのだとか。若い人にとってはチケット代が高すぎるので、お客さんは年配の方が中心で新しい聴衆の開拓ができないのが問題と高橋氏は言っている。今回の公演ではNBSはかなりの赤字なんだそうだ。

高橋氏は「将来的な話は何もできない。」と言っていて、次回の来日公演の交渉はしないという立場らしい。高橋氏個人の意見として「文化交流は国と国、政府と政府が話し合って行うものだが、NBSは私設団体だ。」

この記事を読むかぎり、NBSの専務理事としては現時点では次回の交渉は出来ないし、今後のウィーン国立歌劇場来日公演を企画する事に関しても消極的であるという印象を持つ。NBSを創設した佐々木忠次氏が亡くなり、ヨーロッパの芸術団体との関係が薄くなったことも影響があるのかもしれないが、今後は海外の団体の招聘は少なくなるのかもしれない。

オーストリアの人にとってはこのニュースは歌劇場の運営という観点からしか気にならないが、日本にしてみると一般の聴衆にも関心がある。ウィーン国立歌劇場の来日公演に来たのべ1万7千人だけでなく、今回は見送った人の中にも来日公演がなくなるとなれば残念に思う人は多いだろう。オーストリアの記者が専務理事の名前を出して記事にしているのに、日本でニュースにならないというのは、日本ではすでに知れ渡った事実なのだろうか。

採算が合わない理由はウィーン国立歌劇場とNBSに限ったことではなく、他のオーケストラやオペラも同様だから、ウィーンだけでなく他の文化交流も縮小される可能性はある。これではますます「ジャパン・パッシング」に拍車がかかってしまう。

ベルリンとデュッセルドルフの往復

先週日曜日に日本から帰国したばかりなのに、今週末はデュッセルドルフへ。さらに来週の日曜日にはコペンハーゲンへの日帰り。11月はおっかけ月間になってしまった。

ベルリンからデュッセルドルフへは電車なら4時間20分くらい。土曜日のお昼に自宅を出て1泊し、日曜日11時からのマチネーを聴いて戻って来たのが午後8時半だった。往復ともベルリン中央駅から直通のはずだった。でも行きの電車はベルリンから1時間ほどのウォルフスブルグに予定外の停車。車掌のアナウンスでは、「車両から避難しなければならないので、この電車はいつ次駅のハノーファーに到着するかわかりません。」ただ車掌の声は特に緊迫した雰囲気でもなく、そのまま乗っていても良いような口ぶり。

この列車は途中で2つに分離するため2編成が連結されていたのだが、どうやら私が乗ったのとは別の編成の車両で何かあったらしい。後でネットで調べたところ車両が停電して機能しなかったみたい。結局ウォルフスブルグで降りて後続のICに乗り、とりあえずハノーファーまで行けとの事。状況は良くわからないがとにかく先に進んだほうが良いのでその指示に従った。

ハノーファーに着くと、今度はデュッセルドルフ行きの代替列車を走らせるのでこれに乗れとのこと。その列車が走り出してしばらくすると車掌がアナウンス。「代替ICEのようこそ。でもセンターの指示により、残念ながらこの列車はデュッセルドルフには行きません。途中のエッセンまで行き、その後はベルリン中央駅に戻ります。」なんて言う。日本なら発車した後に行き先が変わるなんてありえ無いけど、ここドイツでは時々ある。

エッセンに到着したらすぐにローカル電車のデュッセルドルフ行きが来たので、それに乗ってデュッセルドルフ中央駅に到着したのは意外にも40分くらいしか遅れなかった。その間、トラブルに遭遇したお客さんたちは皆冷静で、慌てふためく車掌のアナウンスを笑う余裕もあった。この程度で怒っていてはドイツでは生活できない。でもドイツ語がわからないとこういう時は厳しいかもしれない。その場合は周囲の人の行動をよく観察し、親切で英語が出来そうな人に聞くのが一番良い。

帰りの電車は意外にも定刻にやって来た。途中他の電車の遅延に影響されて12‐3分遅れたが、ベルリンまでに回復して予定通りに到着。ドイチェバーンもやる気を出せば定刻運行ができるらしい。

今後もデュッセルドルフ交響楽団の日曜日の演奏会を聴く機会が多いと思うけど、どうやらエア・ベルリンで日曜日の朝にベルリンからデュッセルドルフに飛べば11時の演奏会に間に合うようだ。エア・ベルリンで往復すると約150ユーロなんだけど、帰りをユーロウィングにすれば何故か約90ユーロ。これなら日帰りも悪くない。次回のデュッセルドルフおっかけはコペンハーゲン同様日帰りできそう。

引越し公演裏話(1)

10月16日から11月16日までの間にのべ300人近くがウィーンからやって来る引越し公演。ロジスティックスはとても複雑だ。舞台装置は8月中旬には荷造りされ、1ヵ月半以上かけて船便で横浜に陸揚げされた。人の移動はそれ以上に複雑。だからウィーン国立歌劇場は詳しいスケジュールを印刷したブックレットを作り、同行者全員に配布した。帰国する前に必要のなくなったブックレットを記念にアダムからもらったので、内容を少し紹介よう。

このブックレットには引越し公演に同行する全ての人の氏名と期間が明記されている。それぞれにはID番号が付されていて、例えばL001は支配人のドミニク・メイェールで10月20日から26日と、11月2日から16日までの2往復した。アダムにはD003という番号が与えられている。DとはDirigent指揮者の略みたい。

案の定、オーストリアからも記者を数名招待している。10月21日から29日までが1名でさらに6名が11月3日から11月11日まで滞在した。だからオーストリア国内ではアリアドネに対する批評はわずかで、ワルキューレとフィガロに関する記事が多かったのだ。その他医者も2名同行している。

音楽関係では指揮者、ソリスト、合唱団、オーケストラだけでなく、オーケストラのインスペクターやステージマネージャーも同行しているし、楽器担当として2名も来日している。ただし前半と後半に分かれて一人ずつだけど。おもしろいのはFreigestelter Betriebsratも同行していること。これはウィーン国立歌劇場の従業員委員。引越し公演でも従業員の仕事が契約にしたがっているかチェックするのが役割なのだろう。さすがにドイツ語圏の団体だけはある。

今回宿泊はオーケストラとそれ以外に分かれたらしい。またフィガロにしか出演しない人は横浜に宿泊したので、ムーティは横浜だった模様。

その他ブックレットには興味深い事が書かれているので、次回以降に紹介しよう。でも明日はデュッセルドルフにおっかけるのでお休み。その1週間後には日帰りコペンハーゲンおっかけもある。

ところで先日紹介したアダム・フィッシャーのサイン入り写真の件。依頼は常時受け付けているのだけれど、次にアダムに会うのは数ヶ月という事もあるので発送は原則不定期。でも今ならデュッセルドルフかコペンハーゲンでサインをもらえるので、比較的早く発送ができる。直筆サイン入りの写真が欲しいという方はメールでご連絡を。

No.351、 2016年11月12日、ウィーン国立歌劇場東京公演、ワーグナー「ワルキューレ」

ウィーン国立歌劇場の「ワルキューレ」は最終公演を観ることが出来た。公演を観た方も多いしネット上に色々な感想がアップされていて、いまさらこの日記でレポートする必要もないけれど、おっかけの観点からの記録を残しておこう。

ワーグナー「ワルキューレ」

指揮:アダム・フィッシャー
演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ

ジークムント:クリストファー・ヴェントリス
フンディング:アイン・アンガー
ヴォータン:トマス・コニエチュニー
ジークリンデ:ペトラ・ラング
ブリュンヒルデ:ニーナ・シュテンメ
フリッカ:ミヒャエラ・シュースター
ヘルムヴィーゲ:アレクサンドラ・ロビアンコ
ゲルヒルデ:キャロライン・ウェンボーン
オルトリンデ:ヒョナ・コ
ワルトラウテ:ステファニー・ハウツィール
ジークルーネ:ウルリケ・ヘルツェル
グリムゲルデ:スザンナ・サボー
シュヴェルトライテ:ボンギヴェ・ナカニ
ロスヴァイセ:モニカ・ボヒネク

ウィーン国立歌劇場管弦楽団、ウィーン国立歌劇場舞台オーケストラ


本番前にアダムが文化会館に到着すると、楽屋口にはすでにサインを求めるお客さんがたくさん来ていた。アダムは何人かにサインをしてから控え室に向かうが、エレベータのところでオーケストラのヴァイオリン奏者と出くわした。その人の話では「フィガロの結婚」は凄く大変だったのだそうだ。それに比べれば「ワルキューレ」は楽なものという話で、アダムもちょっとビックリしていた。ムーティーはウィーン国立歌劇場で指揮するのは久しぶりだから、オーケストラも勝手が違ったのだろう。

その後一旦指揮者控え室に行ったアダムは、オーケストラピットの写真を撮るためにピットに向かった。縦書きの対訳が出るのをとてもおもしろいと思ったみたい。せっかくだから付いていって私もピットを撮影。
DSC03008

ピットはとても深くて椅子に座って演奏すると四方を壁に囲まれた状態で、歌手は2階から歌っているようなものだ。オーケストラが大きな音で演奏するとピットが飽和状態になってしまって、セクションの音がわからなくなるというのは良くわかる。

その後は邪魔をしないように私は楽屋を出て客席へ。座席はなんとホ列。東京文化会館はイロハで列を指定するほどレトロなのかと訝ったのだが、ホ列とは補助席のことだった。つまり通路に特別に設けられた座席。入り口に大入りと書いてあったし、補助席を出すほどチケットが売れたという事らしい。

第一幕は3人しか登場しない。ジークムント役のクリストファー・ヴェントリスはリリカルな声で私の好み。悲劇の人らしい雰囲気が出ている。フンディングのアイン・アンガーも怖そう。ジークリンデのペトラ・ラングは容姿や演技で雰囲気はあるのだけれど、低音がつらいのか重くなってしまう。ジークリンデというタイプでは無い。ブダペストで聴いたオルトルートは凄い迫力で良かったのだけれど。

ブリュンヒルデ役のニナ・シュテンメは以前チューリッヒでアイーダを聴いて以来、ワーグナーは初めて聴く。いかにも若いブリュンヒルデという感じでとても良かった。ウォータン役のトーマス・コニエチェニは10年以上前、まだマンハイムの契約歌手だった頃からウォータンを聴いているのだが、声の質がウォータンとは違うように思う。この人の特徴は何と言っても演技力だけど、この演出は特別な事はしないので良さが出ない。3幕ワルキューレを追い払う場面で長い槍をグルグル回すくらい。細かいリアルな演技では広い文化会館の客席からはよく見えないし、大きな動作をするとわざとらしく見えてしまう。そういう点でコニエチェニには厳しかったかもしれない。でも迫力はあったけど。

フリッカ役のミヒャエラ・シュースターは慣れ親しんだ役という感じだけど、実はブダペストでジークリンデを歌ったこともある。彼女も実力派でウォータンをやり込める迫力はなかなかのもの。オーケストラは第一幕が少々切れがわるかった。やはりフィガロの疲労がのこっていたのかもしれない。2幕以降は調子が上がり、とても良かったと思う。

3幕の始まる前にもブラボーが出ていたが、終演後は全員に対して喝采がたくさん出ていた。アダムのソロ・ボウにもブラボーがたくさん飛び、ファンとしてはとても嬉しかった。

オバマ大統領がやって来た

私の職場はベルリンの中心部にあるのだが、いつもは職場から市電に乗って中央駅まで行き、Sバーンでツォー駅に帰ってくる。今日も退社後いつも通り中央駅まで来たら、なんと電車がストップしている。「国賓訪問によりフリードリッヒ・シュトラーセ駅からツォー駅まで電車がありません。地下鉄とバスをご利用ください。」なんて書いてある。予想していなかったのでちょっとショック。

気を取り直してバスに乗ろうとしたら、バス停の前には人だかりができている。どうやらバスも遅れているらしい。5分以上送れてやって来たバスの運転手は、「国賓訪問のため、金曜日まで全路線で遅延が予想されます。」なんて言う。結局バスと地下鉄を乗り継いで帰って来た。

国賓訪問というのはオバマ大統領の最後のドイツ訪問のこと。大統領に選ばれる前にベルリンにやって来て戦勝記念塔の前で演説をしたし、3年前に再びベルリンに来て、今度はブランデンブルグ門の前で演説をした。オバマ大統領は何度もドイツに来ているけれど、特にベルリンでは人気が高い。

アメリカの大統領がベルリンを訪問するとブランデンブルグ門の前のアメリカ大使館脇にあるホテル・アドロンに宿泊する。だからブランデンブルグ門駅を通る地下鉄やSバーンは運休になり、100番、200番のバスも無くなる。200番のバスはフィルハーモニーを経由するので、明日と明後日にフィルハーモニーでのコンサートに行く方は要注意。

オバマ大統領だから皆納得するけれど、これがトランプ次期大統領だったら怒る人も出るんじゃないか。

スラトキンの指揮教室第2回

以前紹介したレナード・スラトキンの指揮教室、第2回のビデオがユーチューブにアップされている。


今回は4拍子の振り方。よくある質問は左利きの指揮者はどうするのか。ほとんどの指揮者は右手で指揮棒を持つが、左利きの人もごくわずかだがいるとのこと。その際はミラー・イメージになるだけで、オーケストラはすぐになれる。

大事な事は拍子を打つポイントが横のラインに乗っていること。打点が上下するとオーケストラが目で追えない。

という事で、次回までの宿題は4拍子をテンポを変えてふれるようにすること。次回は3拍子だそうだ。
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