クラシックおっかけ日記

指揮者アダム・フィッシャーのおっかけ記録、音楽の話、海外生活など

NDRエルブフィルハーモニーとトーマス・ヘンゲルブロック

KSさんからNDRエルブフィルハーモニーとトーマス・ヘンゲルブロックに関する質問をいただいたので、今日はその話題。

NDRエルプフィルハーモニーは来年11月に首席指揮者のトーマス・ヘンゲルブロックと来日するはずだったけれど、指揮者がアラン・ギルバートに変更になった。この真相についての質問。

トーマス・ヘンゲルブロックは2018‐19シーズン終了までシェフを務める予定だった。ところが12月初旬に公表されたところによれば、ヘンゲルブロックは1年早く2018年の夏にシェフを辞任する。だから秋の来日公演は同行しないことになった。

その理由はどうやら後任アラン・ギルバートの発表のタイミングらしい。NDRは時期監督が決定してすぐに発表したのだが、シーズン中でまだヘンゲルブロックの演奏会はたくさん残っていた。その件でNDRに対して信頼をなくしたのだとか。

2018‐19シーズンには首席指揮者がいない状態になるので、オーケストラに対してはとても影響が大きい。国際的に活躍する指揮者は何年も先まで予定が詰まっているから、ヘンゲルブロックの穴埋めを探すのは大変だ。日本公演以外にも次期首席のギルバートがいくつか引き受けると思うけど、定期全部を担当するのは難しいでしょう。

ウィーンの「薔薇の騎士」ライブストリーミング

本日アダム・フィッシャーはウィーン国立歌劇場で「薔薇の騎士」を指揮した。これは11月12月の間に開かれたリヒャルト・シュトラウス・ターゲの一環。この間ウィーン国立歌劇場では「サロメ」「ナクソス島のアリアドネ」「ダフネ」「エレクトラ」「薔薇の騎士」「アラベラ」を複数回上演し、合わせて「ウィーン国立歌劇場のシュトラウス」などのレクチャーがある。

ライブ・ストリーミングの最初の公演がアダムの「薔薇の騎士」だったから、今回で多分4回目。演出は同じだけど毎回キャストが代わるので、歌手のタイプにより印象が異なる。今日の公演では歌で一番良かったのはオックス男爵のピーター・ローズ。でも演技が田舎者という雰囲気はしない。元帥夫人はクラッシミーラ・ストヤノーヴァ。このシリーズがウィーンでのロールデビューだったようだ。そのためか歌はまずまずだけど演技が硬い。劇場で観ているならそれでもよいのかもしれないけれど、ライブストリーミングだと表情まで写るから大変だ。

ルーチンの公演ではあるけれど、ウィーンらしくハイレベル。カーテンコールではアダムとオーケストラに対する拍手が一番多く、次は元帥夫人とオックス男爵か。

ニキエアーの取り残された乗客救助

昨日に続いて航空関係の話題。エア・ベルリンの倒産したが、その子会社のニキ・アエーも昨日破産を宣言し航空機が飛ばなくなった。そうなるとニキ・エアーを利用して国外に出た人が帰れなくなってしまう。現在そういう状況で帰れなくなった人が4万人近くいるそうで、ルフトハンザや旅行会社のテュイなどがチャーター便を手配して帰国できるように苦心している。

ドイツ人は休暇の旅行が大好きだから、旅行業界の倒産は市民生活に直結する。10数年前に大手の旅行代理店が倒産したときは、前払いした旅行代金が返還されなくて大きな問題になった。そこで法律が強化されて旅行代理店は保険に加入することが義務付けられた。だから航空会社が倒産しても、旅行代理店のパックツアーとして購入した場合には、旅行企画会社が加入している保険が保証するし、代替便の手配は旅行会社の責任になる。ところがインターネットなどで航空会社から直接チケットを購入した場合には、エアラインが倒産するとチケット代の返還されるとは限らない。それに代替便の手配も自分の責任になる。だから多くの人が外国に取り残されてしまったわけだ。

ところでベルン・ブランデンブルグ空港の開港だけど、関係者の会議が明日開かれて、日程が正式に発表になる。漏れてくる話では、東京オリンピックよりも先になりそう。当初の予定よりは9年遅れというとんでもない話。

エア・ベルリン倒産の余波

ベルリン在住者にとってはエア・ベルリンの倒産により色々な影響が出た。ルフトハンザ等に比べるとエア・ベルリンは価格が安かったので、倒産により航空券の値段が1割から2割高くなった。これはベルリンだけでなくドイツ全体の問題。特にドイツ国内便はルフトハンザに対抗する航空会社が無くなり、チケットを安くする必要が無い。

それからエア・ベルリンは中心部に近いテーゲル空港から発着していたので、近場の空港からの発着便がなくなったのも大きい。だから11月にデュッセルドルフに行った時は日曜日の朝のデュッセルドルフ行きがなくなり、夜行列車で行くしか方法がなかった。

ところがその状況も年明けから改善されそう。というのも、格安航空会社のイージージェットがエア・ベルリン枠を買取る形でテーゲルからの発着枠を確保したから。ドイツ国内だけでなくウィーンやブダペストなどのおっかけに便利な都市向けの便もテーゲルから発着するらしい。

ただ現時点では3月末の便までしか予約できないので今後どうなるかはわからないが、値段の安いイージージェットで近場のテーゲル発というのはとても好ましい。

ウィーンコンツェルトハウスの経営レポート

ウィーン交響楽団の本拠地であるコンツェルトハウスが2016‐17シーズンの経営状況のレポートを発表した。

チケットの販売数は前シーズンの 452,200から577.000に増加した。公演数は861から897に増加しているので、この影響が大きそうだ。この内コンツェルトハウスの自主公演は591公演で、そのうち146公演を「若い聴衆向けの演奏会」が占めている。それ以外はオーケストラ公演が114回、室内楽が86公演、現代音楽の公演が70回となっている。

大まかな予算は2千万ユーロ(約26億円)で、その内チケット収入は千80万ユーロだそうだ。

クラシカ・ジャパンで「魔笛」を放送

ワーグナーファンさんからコメントをいただいたように、12月にはクラシカ・ジャパンでアダム・フィッシャー指揮ミラノ・スカラ座アカデミーによる「魔笛」を放送する。一番間近なのは12日の13時5分からだけど、それ以外にも5回ほど放送が残っている。

スカラ座アカデミーというのはミラノ・スカラ座のプロフェッショナルが中心になって若い人を教える組織で、実はオーケストラは比較的新しい。元々は合唱団のアカデミーで、舞台制作や演出助手など、オペラ座に必要な仕事の各分野の若手を育成している。毎年1年かけてオペラを制作するのだが、衣装や舞台装置なども学生が制作する。

例年演出家と指揮者は第一線のプロが担当するが、この「魔笛」の演出はペーター・シュタイン。ベテランらしくトラディショナルな演出。ただ歌手は役者ではないので長いセリフの声が聞こえないなどの問題はあった。

この公演についてアダムが語っている映像を発見。ゆっくりした英語で話していてわかり易いので、興味のある方はどうぞ。

ハイドン「天地創造」の初演のチケット代

アダム・フィッシャーはデンマーク室内管の演奏会の後金曜日までレコーディングがあった。その後ドイツに戻ってきてそのまますぐにウィーンに飛び、「薔薇の騎士」のリハーサル。今日がシリーズの初日で、13日・16日・19日と合計4公演ある。19日はこの演出で999回目の公演なんだそうだ。16日の公演はインターネットのライブ・ストリーミングがある。

「薔薇の騎士」の本番と並行して「魔笛」のリハーサルもある。こちらは22日・25日・27日・29日の4公演。こちらも29日はライブストリーミング。

その後はスカラ座のアカデミーオーケストラとのニューイヤー・コンサート。ブダペストの芸術宮殿では毎年元旦はハイドンの「天地創造」をプログラムに入れている。これはアダムの発案で、毎年オーケストラは変わるけれど、プログラムはいつも同じ。さらに元旦の午後4時からは子供向けにハンガリー語の「天地創造」の抜粋も演奏する。今年はその後1月6日ロンドンでエンライトメント管と「天地創造」がある。その後は12日からデュッセルドルフ響の「大地の歌」があるから、年末年始は大忙し。

そのアダムから調査を頼まれてしまった。子供向けのコンサートのトークのネタにするから、ハイドンの天地創造のロンドンでの初演時のチケットの値段を調べて欲しいとの事。多分ポスターにはチケットの値段が書いてあるはずだから、インターネットで見つけたら教えて欲しいとか。いくらなんでもそんな情報があるかと思ったが、なんと1891年の6月1日に発行された「ミュージカル・タイムス」という雑誌に「天地創造」のロンドンでの初演の時の話が記事になっているのを発見した。

「天地創造」のロンドン初演は1800年だから記事が書かれたのは91年後だけど、この記事自体が126年前。誰かがご丁寧にスキャンしたらしく、ネット上でイメージを読むことが出来る。それによれば、「天地創造」ロンドン初演のときのチケット代は、ボックス席が6シリング、平土間3シリング6ペンス、ギャラリー2シリング、上のギャラリー1シリングだそうだ。

それが現在の価値に返還するとどうなるかは歴史には疎いのでわからない。

ベルリン国立歌劇場の275周年

ベルリン国立歌劇場が275年周年を迎え、合わせて改築された劇場での通常運営が始まった。

ベルリン国立歌劇場は1742年にオープンした。第2次大戦中には2度も爆撃を受けたけれど、その後1952年から55年の間に再び建設された。ベルリン国立歌劇場はベルリンにある3つのオペラハウスのうち最も古い。だから劇場設備は古く、今回の改修工事では音響の改善とともに最新の舞台装置も導入された。

収容人数としては1400席なのでドイツオペラよりも1000席近く少ない。ウィーンに比べても小さいのでこじんまりしている。本来なら2013年にはオープンする予定だったけれど、今年の10月3日にやっと杮落とし公演が行われた。でもレパートリー方式で上演するための準備にさらに数ヶ月かかり、ようやく12月7日から通常運営となった。

8日にはヘンゼルとグレーテルが行われ、日曜日には初の新制作としてモンティヴェルディのポッペアの戴冠の初日が予定されている。

ミュンヘンのコンサートホールの着工時期変更

デザイン・コンペティションの結果、ミュンヘンのコンサートホールの外観デザインが決定されたと先日発表があった。バイエルン州大統領のホルスト・ゼーエンフォーファーは、来年に予定されているバイエルン州政府の選挙の前に工事を開始する予定だったが、どうやらその日程は変更になりそう。

変更を要求しているのはバイエルン州の予算委員会。建設を始める前に十分な計画を練る必要があると判断したのだとか。「計画の立案は何にも増して重要である。だから期限を設ける必要は無い。」というのが予算委員会の意見。ある委員の話では、2〜3年かけて十分に検討し、建設途中のコストの増加を防ぐのが狙いだそうだ。

エルブ・フィルハーモニーやベルリン国立歌劇場は、建設開始前の計画が不十分だったから、工期の延長とコストの増加を招いたわけだから、その過ちを繰り返さないというのはさすが産業の中心ミュンヘンらしい。

でも建設開始が遅れれば完成時期も遅れるから、ヤンソンスとバイエルン放送響はまだしばらく待たされることになる。

ニコラウスの日

本日12月6日はヨーロッパではニコラウスの日。ニコラウスとは6世紀ごろに実在した聖人で、貧しい人を助けたらしい。子供の教育にも力を入れていて、良い子にはお菓子をあたえた。だからニコラウスの日にはチョコレートやキャンディなどプレゼントする。

ニコラウスはサンタクロースのモデルになった聖人らしいけれど、ドイツではニコラウスとサンタクロースは別人扱い。サンタクロースはドイツ語ではWeihnachtsmannと呼ばれる。こちらはコカコーラのテレビコマーシャルが有名。

12月6日はフィンランドの独立記念日でもある。今年は独立後100年なので、フィンランドでは盛大な記念式典があったらしい。フィンランドと言えば作曲家シベリウスのふるさとだけど、最も有名な響詩「フィンランディア」はオーケストラだけではなく合唱も入る。シベリウスがこの曲を作曲した時はまだロシアに占領されていたが、初演から17年後、ロシア革命の数ヵ月後にフィンランドはロシア独立した。

映画「ダイハード2」のラストシーンにも使われるほど有名な曲だけど、ロシアの圧政に苦しむ重苦しいイントロから熱狂的なラストまで、まさにフィンランドのナショナリズムをかきたてる。という事で、こちらはユッカ=ペッカ・サラステ指揮フィンランド放送交響楽団とシベリウス・アカデミー合唱団の演奏。

Brexit交渉第一段階の山場

イギリスのEU離脱を問う国民投票から1年半が経過し、日本では関心が薄れているかもしれないが、イギリスとEUの交渉の第一段階が山場を迎えている。

ざっと経過を振り返ると、国民投票後メイ首相が正式に離脱の通告をしたのが3月29日。これでイギリスは2019年3月29日にERから離脱する事が決定した。その後メイ首相は総選挙に打ってでたけれど惨敗し、北アイルランドの地方政党DUPとの連立政権で何とか政権を確保した。ようやく6月になって離脱交渉が始まったが、どんな形で離脱したいのかイギリス国内でも意見が定まらない。

EU側は離脱後の貿易関係の交渉をする前に、離脱条件を明確にする事を要求した。具体的には(1)未払いの分担金の支払い、(2)イギリス国内に在住するEU市民の権利、(3)アイルランドと北アイルランドの国境の3つ。

Brexit強行派はどの項目に対しても強行に反対し、特に未払い分担金については支払いを拒否する姿勢もみせていたが、結局メイ首相が提示した額の倍以上をEUに支払うことに合意した。また(2)に関してはEU市民にはEUの司法が適応される事を認めてなんとか合意できそうな雰囲気だった。

第2段階の貿易交渉に移るには上記3点について大きな進展が認められると27カ国の首脳の合意が必要で、その会合は来週に予定されている。もしこのタイミングを逃すと次回の会合は来年3月になるので、各国の承認手続きを考えると貿易交渉はほとんど不可能になる。だからイギリスとしては今週中に合意にこぎつけたい。月曜日にはメイ首相とユンケルEU委員長のビジネスランチが開かれ、ここで合意する予定だった。ところが会議の最中に保守党の連立相手である北アイルランドのDUPから(3)に反対するという連絡があり、結局ここでも決着できなかった。

イギリスは島国だから国境の管理は比較的簡単だが、イギリスの一部である北アイルランドとEU参加国のアイルランドは国境を接している。過去、北アイルランドはイギリスから独立して統一アイルランドに統合する事を目的としたカトリック勢力とイギリスに連合したいプロテスタント勢力が争い、テロ事件を引き起こすなど大きな問題があった。EUに加盟したことにより自由に国境を行き来できるようになり、北アイルランドの暴力闘争はなくなった。だからイギリスがEUを抜けて国境が復活すると、また双方が争うのではないかと危惧されている。だからEUは国境の復活には反対の立場を取っている。

国境が無いという事は移民の管理も出来ないのでイギリスの離脱派政治家は反対している。それにものの移動を自由にするという事は、EUの単一市場にアクセスするわけだから、EUの規格に合わせる必要がある。EU離脱は国内では自分達のルールを適応するという目的が大きかったが、国境をなくすとそれも達成できない。

メイ首相は、北アイルランドはEUのルールに従い単一市場にアクセスできるソフト・ブレクシットにし、イングランド・スコットランド・ウェールズはイギリス独自のルールを適応するという案を提示し、EUとの合意が期待されていた。

ところが連立相手のDUPにしてみると、これでは北アイルランドがイギリスのその他の地域と別の扱いになり、長期的にはアイルランドに吸収されてしまうのではないかという危機間がある。だから強行に反対している。逆にEU残留派が多かったスコットランドやロンドン市は、「北アイルランドがソフト・ブレキシットできるなら、他の地域もその権利がある」と主張していよいよイギリスの分裂もありそうな雰囲気。

イギリスは単一市場にアクセスする代わりにEUに巨額の費用を支払うが、EUの決定には参加できない準加盟国扱いになるのではないかという説が有力になりつつある。結局EU離脱はイギリスの国際的な地位を落としただけなのかもしれない。

ウィンナー・ワルツはオーストリアの文化遺産

オーストリアのユネスコ協会はオーストリアの文化遺産リストを作成していて、半年毎に見直しがある。この度ウィーンのヨハン・シュトラウス・オーケストラの推薦にしたがって、ウィンナー・ワルツをオーストリアの文化遺産リストに登録することを発表した。

その選定理由は、「ウィンナー・ワルツは過去から現在にいたるまで広く受け入れられていて、ダンス教室やダンスグループ、ブライベートなイベントなどで次世代に受け継がれている。独特のスタイルやリズムのウィンナー・ワルツは、オーストリア全土とりわけウィーンの指揮者、オーケストラ、合唱団などにより演奏され、現在でも作曲されている。」との事。

その他の音楽系の文化遺産として今回リストに登録されたものは、ウィーン少年合唱団の音楽教育と合唱と、伝統的なツィターの演奏だとか。

オーストリアの文化遺産リストには現在103登録されていて、そのうち3つが世界文化遺産として認められている。

2017年のおっかけ公演

アダム・フィッシャーは12月にはウィーンで「薔薇の騎士」と「魔笛」が数公演ずつある。クリスマス休暇ではあるけれど、どちらも観たことがあるしライブ・ストリーミングがあるので12月のおっかけは無し。そこで2017年のおっかけを振り返ってみた。

今年1年間に行ったアダム・フィッシャーの公演は15回。

1月15日、デンマーク室内管、マーラー4番他
2月12日、デュッセルドルフ交響楽団、マーラー1番他
3月12日、デュッセルドルフ交響楽団、モーツァルトミサ曲他
3月20日、エンライトメント管、ハイドン、モーツァルト、ベートーベン
3月26日、デンマーク室内管、ハイドン、モーツァルト、シューベルト
4月2日、デュッセルドルフ交響楽団、ハイドン97番とマーラー5番
4月23日、デュッセルドルフ交響楽団人権擁護コンサート、ベートーベン第九
5月14日、デンマーク室内管、ベートーベン・モーツァルト・シューベルト
6月21日、ワーグナー・イン・ブダペスト「パルジファル」
9月1日、デンマーク室内管、ハイドン「ハルモニウムミサ」他
9月3日、デンマーク室内管、ハイドンとモーツァルト
9月5日、ウィーン国立歌劇場、モーツァルト「フィガロの結婚」
10月22日、デンマーク室内管、モーツァルト、ハイドン、ベートーベン
11月12日、デュッセルドルフ響、マーラー3番
11月26日、デンマーク室内管、ヴィヴァルディ、モンティヴェルディ、ベートーベン

去年までは一番多いのはハイドンフィルだったのだけれど、オーケストラの体制が変ってアダムが退いのでアダムとの共演はなくなってしまった。一応名目上は名誉指揮者になっているけれど、メンバーも大幅に変更されてしまったので当面アダムが指揮台に乗ることはなさそう。新しい音楽祭のオープニング公演にはいったのだけれど、来年以降は多分行かない。メンバーとは長年の知り合いなのでちょっと寂しい。

それに変って多かったのがデンマーク室内管。例年なら年間4公演しかないはずなんだけど、今年はハイドンフィルの代わってハイドンランドターゲに客演したから少し多かった。それからデュッセルドルフ響。こちらも年間4プログラムに加えて亡くなった指揮者ネヴィル・マリナーのプログラムを引き受けたので普通よりも多かった。それ以外はウィーン国立歌劇場とワーグナー・イン・ブダペスト、エンライトメント管。

コペンハーゲンとデュッセルドルフは日曜日なので来年も多分聴きにいける。それ以外はブダペストのワーグナーには行きたいし、ゲヴァントハウスなどの客演暦の少ないオーケストラも聴きに行く予定。

アダム・フィッシャーとデンマーク室内管

日曜日の演奏会はアダム・フィッシャーとデンマーク室内管の20周年を祝う演奏会でもあった。だから終演後のパーティーでは古参メンバーのイヴァーがエピソードを紹介した。

アダムとデンマーク室内管の出会いは1997年の12月。演奏会ではなくてモーツァルトのプラハ交響曲とベートーベンの2番の放送用の録音だった。その日放送局では運悪く抜き打ちの避難訓練があり、職員は外に避難して混乱していた。そこにやって来たアダムは途方にくれてオーケストラのメンバーに入り口を聞いたのだそうだ。そのイヴァーは避難訓練のときに来るなんて運の悪い来客だと思ったが、後でスタジオに行ったらそのさえない男が当日の指揮者で驚いたとか。

数日かけて録音したが、結局ベートーベンは完了できなかった。イヴァーは当時「ウィーンかどこかで働いている指揮者かもしれないが、多分二度と競演する事は無いだろう」と思ったそうだ。でも数週間後にラジオでプラハ交響曲を偶然耳にしたイヴァーは、絶対どこかの有名楽団の演奏だと思ったので、演奏が終るとアナウンサーが自分の楽団の名前を言った時には信じられなかった。

デンマーク室内管は78年の歴史を持つ楽団だけど、当時はポップスの演奏が中心でクラシックはモーツァルトの軽い曲くらいしか演奏したことがなかった。当時の正式名称を日本語に訳すとデンマーク放送娯楽管弦楽団。兄弟分の放送交響楽団がシリアスなクラシックを担当し娯楽管弦楽団はその名のとおり歌番組の伴奏やテレビドラマの音楽の演奏を演奏するのが仕事だった。NHKに例えれば歌謡コンサートや紅白歌合戦の伴奏をする東京放送管弦楽団にあたる。当時は技術レベルも高くなかったし、国際的に活躍する指揮者が客演するような楽団ではなかった。だから99年にアダムが首席指揮者に就任した時はメンバー全員が驚いたとか。

この20年に紆余曲折はありながらもアダムとともに楽団は成長し、モーツァルトの録音では国際的にも高く評価されている。3年前に楽団はデンマーク放送から解雇されてしまったが、新たな支援者を探してデンマーク初の私設楽団として再出発した。2019年にはウィーンの楽友協会に出演するこことになっていて、イヴァーはじめ楽団員は今からとても楽しみにしている。

No.368、2017年11月26日、デンマーク室内管、ヴィヴァルディ、モンティヴェルディ、ベートーベン

11月26日には今年最後のおっかけでデンマーク室内管を聴いた。

Danish Chamber Orchestra
Adam Fischer, conductor
Else Torp, Sopran
Zoltan Megyesi, Tenor
Lucas Bruun de Neergaard, Baryton
Kreeta-Julia Heikkila, Violin
Christine Enevold, Violin

A. Vivaldi: Concerto for two violin
C. Montiverdi: "Il combattimento di Tancredi e Clorinda"
L.v. Beethoven: Symphony No. 7


この日のプログラムの前半はバロック作品。1曲目のヴィヴァルディのソリスト2人はオーケストラのメンバー。第1ヴァイオリンのクレタはフィンランド人でデンマーク室内管の第3コンサートマスター。BBC交響楽団としても演奏していている。クリスティン・エネヴォルドは第2ヴァイオリン首席で、アダムのコンサートには毎回欠かせない存在だ。

金髪の若い女性2人が華やかに演奏するヴィヴァルディにはお客さんも注目する。テンポの速い楽章では2人の技術を十分に披露して、オーケストラの奏者の力を発揮した演奏。でも本番は緊張したのか、ゲネプロの方が伸び伸びとしていたような気もする。

2曲目はモンティヴェルディ・イヤーにちなんで「タンクレディとクロリンダの戦い」。これはアダムがマンハイムのGMDに就任した時にバルトークの「青髭公の城」と一緒に制作した。タンクレディとクロリンダに加えて語り部が歌う。というかほとんど語り部のテノールが歌っていて、所々バリトンとソプラノがセリフを歌う形式。オーケストラも描写的で、戦いで剣がぶつかる音なども表現している。

後半はベートーベンの7番。この演奏会の後数日かけて録音する。だからメンバーもしっかり練習してきたようで、以前に演奏した時よりもずっと安定していた。過去の演奏会の録音を聴くと特に第4楽章の速いテンポにつられて弦楽器群のフィンガリングが雑になり、それがさらにテンポを加速させてセカセカした雰囲気になっていたのだが、この日の演奏会は速いテンポでも安定していた。この調子だとレコーディングも期待できそう。

ICバスのコペンハーゲン行き

ベルリンからコペンハーゲン行きは日曜日の早朝発のイージージェットを使っていたのだが、26日はなぜか遅い時間しかなかったので、長距離バスを使うことにした。最近はドイチェバーンもICバスなるものを走らせていて、バーンカードなどの各種の割引も適用される。調べてみたら土曜日の夜11時に中央駅を出て、ハンブルグ経由でコペンハーゲンには朝7時頃に到着する。長距離バスには後発のドイチェバーンは他のバス会社よるも安くて定価でも片道19ユーロ。さらにバーンカード25の割引が25パーセントで運賃は約16ユーロだった。

バスの発着はベルリン中央駅の北側のオイローパ・プラッツから。発車20分前には既にバスは止まっていたのでさっさと乗り込む。大きな荷物は預けることになるが、乗ってみたら空席ばかりでほとんどガラガラ状態。

社内はWIFIも飛んでいるし、座席の下には電源もあるから携帯電話の充電もできる。座席は多少リクライニングするけれど、角度はそれほど大きくないので横になることは出来ない。バスの後方にトイレと自動販売機があって、飲み物等を買うことが出来る。

11時定刻にバスが発車するとドイツ語と英語による案内が放送され、社内は消灯される。夜遅くだから渋滞は無いし高速道路は信号による停車も無いから眠ることもできる。気がついたら午前2時ごろハンブルグに到着した。

ハンブルグで乗り降りする人が数名いて、そのままコペンハーゲン方面へ。午前4時ごろフェリーの乗り場に着いた。バスはそのままフェリーに乗り込むのだが、安全のため車内ではなく船のデッキに行かなければならない。まだ早朝なので船の売店は閉まっていた。

船は4時15分発で45分ほどの乗船時間がある。デンマーク側に着く直前にアナウンスがあるのでバスに戻る。バスが船から出ると国境検査のために一旦停車。ここでパスポート・チェックがある。その後でコペンハーゲンに向かって再び走り出し、中央駅の近くに到着したのは定刻より30分早く午前7時だった。

飛行機と違って所要時間が長いから疲れることは確かだけど、コストパフォーマンスは抜群。タクシーの値段でコペンハーゲンまで行けるのは悪くないかも。

旅先で出会う食べ物

アダム・フィッシャーの演奏会をおっかけて各地を訪ねると、地元の人が好む食べ物に接する機会がある。おっかけが主眼だから高級レストランなどには行かないが、街のスタンドやイートインなどで庶民の食べ物は挑戦する。

例えばブリュッセルではワッフルとフライドポテト。ブリュッセルのワッフルは四角いものが主流で、厚くて大きい。駅や街中でもスタンドがあり、手ごろな食べ物だ。観光客向けにはワッフルの上にアイスクリームやチョコレートでデコレーションしたものが売られているが、見るからに甘そうでとても食べられない。地元の人が行くワッフル店はもっとずっとシンプルだ。

フライドポテトのスタンドもブリュッセルではたくさん見かけた。フライドポテトと言えばハンバーガーやカレーヴルストの付け添えが多いけれど、ブリュッセルではポテト専門のスタンドがある。ドイツでもベルギーに近いデュッセルドルフの旧市街にはポテト専門店がある。

コペンハーゲンはホットドッグ。中心部にはスタンドがたくさんあるし、セブン・イレブンでも売っている。こちらのホットドッグはパンに茹でたソーセージを挟みトーストする。その上にソースをかけ、さらにタマネギのみじん切りの生のものや、油で炒めたものを上に振りかけて食べる。物価の高いコペンハーゲンではホットドック1つでも500円近くする。

コペンハーゲンのショッピングモールでJapadogというものに挑戦した。名前から判断してホットドッグの亜流らしいけど、写真では何が違うのか良くわからない。そこで試しに注文してみた。基本的には普通のホットドッグと変らないのだが、ホットドッグの上になんと海苔のみじん切りと長ネギの小口切りをトッピングしたものが出てきた。Japadogとは和風のホットドッグという意味であると納得。醤油ベースとの特性ソースも海苔に合うし、恐る恐る食べてみたが意外に悪くはなかった。

2017年11月24日、イヴァン・フィーシャー指揮コンツェルトハウス管、モーツァルト「レクイエム」他

昨日はベルリン・コンツェルトハウス管の演奏会に行った。

Konzerthausorchester Berlin
Vocalconsort Berlin
Ivan Fischer - Dirigent
Lucy Crowe - Sopran
Sophie Harmsen - Alt
Jeremy Ovenden - Tenor
Hanno Muller-Brachmann - Bass

Wolfgang Amadeus Mozart: Sinfonie Es-Dur KV 543
Wolfgang Amadeus Mozart: Requiem fur Soli, Chor und Orchester d-Moll KV 626


曲目はモーツァルトの交響曲39番とレクイエム。どちらかと言えばアダムの得意とする曲目で、どちらもデンマーク室内管の演奏を聴いた事がある。兄弟比較になるわけだけど、結論としてはイヴァンはモーツァルト指揮者ではないなぁ。

交響曲はオーソドックスでエレガントな演奏なんだけど、切れ味が良くない。トランペットなど古楽器を使っているしオーケストラのサイズも小さいのだけれど、やっぱり大型の交響楽団ゆったりとした演奏という感じ。弦楽器も音の出だしを揃えてパンチを効かせるなんていう事はない。

レクイエムになるとオーケストラは完全に伴奏に回ってしまい、合唱とソロが主役。合唱団もバランスがあまり良くなくて、ソプラノは良く聞こえるけどテノールが弱い感じ。イヴァン・フィッシャーはあまり声楽曲を指揮しないからかもしれないけど。全体的に悪いわけではないのだが、ごく普通のモーツァルトという演奏。終演後には喝采はたくさんあったけど。

アダムが言うように、「現代楽器の交響楽団がモーツァルトを演奏するには、しっかりしたアイディアを持った指揮者が必要」というのがなんとなくわかった。

そのアダムは日曜日にはデンマーク室内管とのベートーベンの7番の演奏会がある。これはオーケストラとアダムの20周年を祝う演奏会。いつもの通りコペンハーゲンに日帰りでおっかける予定。ただしなぜかイージージェットの朝の便がないので、夜行バスでの弾丸ツアーになってしまった。だから明日の更新は無し。

アンネ・ソフィー・ムターにバイエルン文化賞

バイエルン州政府はヴァイオリニストのアンネ・ソフィー・ムターにバイエルン文化賞を授与すると発表した。受賞の理由は若者向けの音楽の普及プログラムに貢献した事。ムターは自身の創立したアンネ・ゾフィー・ムター協会を通じて若者向けの演奏会を開くなどの貢献をしている。また医療や社会的な研究も支援するなど、チャリティ活動でも知られている。

ムターと言えば13歳の時にカラヤンに見出され、天才少女として名前が知れ渡った。その後ソロや室内楽でも活躍し、優秀なレコーディングなど数多くの賞を受賞している。ローティーンの頃は「天才少女」として騒がれたヴァイオリニストも二十歳過ぎると話題がなくなってしまうことも多いが、ムターは世界中で活動している。とりわけ若い音楽家の育成に力を入れていて、複数の団体を支援していることでも有名。

ベルリンを舞台にしたドラマ

ベルリンは戦後東西に分断されていたこともあり、ベルリンを舞台にしたドラマにはスパイ物が多い。たしかに冷戦時代は西側と東側の情報戦の最前線で、チェックポイントチャーリーの脇にあるカフェはスパイの情報交換の場所だった。またポツダムには実際にスパイの捕虜を交換した橋もある。だからベルリンとスパイは期っても切れない関係なのかもしれない。

東西が統合した現在でもベルリンと言えばスパイを連想する人が多いのか、ネットフリックスはオリジナル・ドラマで「ベルリン・ステーション」というスパイ物を放映している。これは冷戦時代ではなく現代の物語。アメリカ大使館の内部にあるCIAのベルリン支局の話で、第一シーズンはトーマス・ショウという偽名で不正を告発している内部の人間を、ベルリンに赴任してきたCIAの捜査官が追及する話。まるで不正を告発したエドワード・スノーデンを意識しているみたい。

第2シーズンになると、ドイツの極右政党PfD(Perspektiv fur Deutschland、明らかにAfDのパロディ)が選挙直前に爆弾テロを計画し、難民に罪を擦り付けて選挙結果を有利に進めようとする。それをベルリン支局が察知しテロ事件を防ぐというストーリー。なんだかパラレル・ワールドみたい。

ストーリーはアメリカ人向けで粗もみえるのだが、ベルリンの名所が出てくるので在住者としては観察してしまう。ただPfDがメセ・ベルリンで党大会を開くというストーリーなのに、その建物は明らかにテンペルホフの空港ビルだったり、作中でアメリカ大使館とされている建物は実際は北欧4カ国の大使館だったりして、間違い探しも出来る。
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