クラシックおっかけ日記

指揮者アダム・フィッシャーのおっかけ記録、音楽の話、海外生活など

バイロイト音楽祭もチケット売れ残り

バイロイト音楽祭はまもなく閉幕するけれど、音楽祭事務局の発表によれば、今年はチケットの売れ残りが発生したとの事。それでも売れ残りは全公演を通じて40枚以下で、予約はしたが引き取らなかったものも含む。売れ残ったチケットは高額だし、今年は警備がとても厳しく当日券を求めてボックスオフィスに並ぶことは制約があったようなので、それが原因ではないかとの事。

それでもバイロイト音楽祭は最もチケット入手が困難な音楽祭であることは間違いない。チケット代は一番安い後部のボックス席が30ユーロで最も高い平土間は320ユーロ。、通常のチケットは6年から8年、新制作なら12年から14年待ちだとか。2月にインターネットで販売するが、3時間以内に全部のチケットが売り切れてしまったそうだ。

バイロイト音楽祭は招待客もたくさんいるし、音楽祭の後援会員向けのチケットも多い。だから一般人が入手使用と思うと、それなりに努力は必要でしょう。

ベルリン・ムジークフェスト2016

毎年9月初旬にはベルリン・ムジークフェストが開かれる例年アイゼンシュタットと重なるので実は1度しか聴きに行った事が無いのだが、毎年メジャー・オーケストラが客演する。日本だとそういうイベントのプログラムは有名な作品ばかりだけど、ムジークフェストはリームやメシアン、アダムス、リゲティなどの現代作品をたくさん取り上げる。オーケストラだけでなく室内楽のプログラムもあり、興味深い。

オーケストラ演奏会を紹介すると、
9月3日、バイエルン放送響、Wolfgang Rihm: Tutuguri
9月4日、ジョン・ウィルソン・オーケストラ、MGM映画音楽特集
9月6日、ミュンヘンフィル、Ustwolskaja / Schostakowitsch
9月7日、ベルリン・ドイツオペラ・オーケストラと合唱団、Langgaard / Wagner
9月8日、コンツェルトハウス・オーケストラHenze / Bruckner
9月9日、10日、ベルリンフィル、Debussy / Varese / Berlioz
9月11日、ユンゲドイチェ・フィルハーモニー Varese / Ligeti / Beethoven
9月11日、ベルリンドイツ交響楽団、Ligeti / Neuwirth / Dvořak
9月13日、ベネズエラ・シモン・ボリバル交響楽団、Villa-Lobos / Messiaen
9月14日、バイエルン州立オーケストラ、Ligeti / Bartok / Strauss
9月15日、ベルリンフィル、Adams
9月16日、ベルリン放送響、映画音楽
9月19日、シュターツカペレ、Elger
客演する指揮者はハーディング、ゲルギエフ、ランニクルズ、ネルソンス、ドゥダメル、バレンボイム等の有名どころが登場する。この時期ベルリンに滞在する方は要チェック。

ベルリンはヨーロッパのシリコンバレーになる?

日本人の抱くベルリンのイメージは、壁によって遮断されていた街とか、第二次大戦で破壊されたなど、否定的なものが多いかもしれない。でも最近のベルリンは若者に人気があり、若手の起業家がたくさんあつまっている。

ベルリンには劇場はもちろんダンスホールやパブ・レストランもたくさんあり、ナイトライフはヨーロッパでも有数だ。その割には食べ物などの物価が安く、各地からクリエイティブな若者が集まってくる。だからスタートアップ企業には適している。

ここ数年ベルリンにはたくさんのスタートアップ企業が出来ている。特に国際的な企業が多く、EU以外の国からもエンジニアを採用する企業はたくさんある。こういう企業はもちろんドイツ語は必要ない。ここ数年の起業に関してはベルリンはロンドンやパリよりもずっと多いのだそうだ。それにくわえてイギリスのEU脱退が決まった。脱退後はロンドンの新興企業はヨーロッパからの融資が得られない。だからロンドンの人気が落ちてベルリンは有利になると予想されていた。

国民投票から2ヶ月の起業をみると、ロンドンは多少減少しているがベルリンはその前の月の倍くらいあるとか。これらの企業は国際的な人材を採用するので、ベルリンには外国人が増えている。もしベルリンに住みたい人がいたら、IT系の仕事を探せばみつかるかもしれない。

メトロポリタンオペラのスプートニク再起動

8月は音楽祭のシーズンだけど、都市部のオペラ座はどこも閉まっていて公演がない。だからこの間に劇場施設の改修工事をするところが多い。ニューヨークのメトロポリタンオペラはリンカーンセンターに移ってから50周年になるので、スプートニクの改修を行った。

スプートニクというのはロシアの衛星ではなくて、メトロポリタンオペラの客席にあるシャンデリアの事。オペラ座のシャンデリアは豪華な雰囲気を醸し、客席が暗くなると公演ほの期待感は最高潮を迎える。メトロポリタンオペラのスプートニクは暗くなると同時に静かにつり上がって客席の雰囲気を変える。オペラ座の建物の名物のひとつでもある。

さすがに50年間使われてきた機構はオーバーホールが必要で、夏休みの間にシャンデリアを下ろしてウィンチを付け替えた。以前のものは150ポンド(約68キロ)を毎秒30センチずつ吊り上げる事が出来たのだが、新しいものは最大500ポンドをその3倍のスピードで動かせる。新シーズンオープニング新制作「トリスタンとイゾルデ」のテクニカル・リハーサルで既にテスト済みなのだそうで、リンカーンセンター50周年シーズンの幕開けの準備は万端だそうだ。

メトロポリタンオペラは映画館によるHDライブがあるけれど、開演前に天井のスプートニクがゆっくりせり上がる雰囲気は生で観劇しないと味わえない。

新シーズンのABOラインアップ

ベルリンでもまもなく夏休みが終わり、演奏会のシーズンが始まる。昨日郵便ボスとを開けたら、ベルリンフィルのシリーズ券が送られてきた。

今年のABOはベルリンフィルがCシリーズ6公演とコンツェルトハウス管がウイーン・クラシックシリーズの4公演。合計10公演で約300ユーロくらいだったと思う。1公演30ユーロなら悪くないでしょう。日付順に並べると以下の通り。

9月22日、ガッティ指揮ベルリンフィル、ドビュッシー「海」他
10月22日、イヴァン・フィッシャー指揮コンツェルトハウス管、ベートーベン2番3番
10月27日、イヴァン・フィッシャー指揮ベルリンフィル、バルトーク、モーツァルト
12月10日、ミヒャエル・ザンデルリンク指揮コンツェルトハウス管、モーツァルト「リンツ」他
12月16日、ティーレマン指揮ベルリンフィル、ブルックナー7番他
2月11日、ショーンヴァルト指揮コンツェルトハウス管、モーツァルト、シベリウス
3月9日、メータ指揮ベルリンフィル、チャイコフスキー5番他
5月5日、ラトル指揮ベルリンフィル、ブルックナー8番他
5月27日、スピノーシ指揮コンツェルトハウス管、ハイドン、サン=サーンス「オルガン付き」
5月31日、ラトル指揮ベルリンフィル、ストラヴィンスキー「春の祭典」他

これ以外にオペラは随時行く機会がありそう。またアダム・フィッシャーのおっかけは例年通り10‐15公演ありそうだから、年間25−30公演くらいにはなりそう。

ハイドンターゲの今後の展望

毎年9月にはハイドン縁の街アイゼンシュタットでハイドンターゲが開かれる。今年は8日から18日までで、アダム・フィッシャー指揮オーストリア・ハンガリー・ハイドンフィルハーモニーやバーゼル室内管などが出演する。テーマは「ハイドンとボヘミア」。ハイドン以外にもドボルザークやマーラーも演奏する。

この音楽祭はオーストリアのブルゲンランド州が設立したハイドン・フェストシュピーレが主催している。ハイドンが演奏したエステルハーツィー城内のホールで開かれるのだが、城の持ち主のエステルハーツィー家とブルゲンランド州が対立し、来年以降お城のホールが使用できなくなってしまった。さらにエステルハーツィー家はハイドンフィルハーモニーを支援するとして、本来ならハイドンターゲが行われる9月の同じ期間にハイドンザールで音楽祭を開くと発表した。つまり音楽祭からオーケストラとホールを奪ってしまった形になる。

こちらのドイツ語の記事によれば、ハイドンターゲのインテンダントであるライヒャー氏はそれでも音楽祭を続ける意向らしい。ブルゲンランド州にはハイドン縁の教会などがあるので、これらを使って演奏会を開くのだとか。ただ演奏家との契約があるので、音楽祭の時期は従来通り9月中旬で、エステルハーツィー家の音楽祭と重なってしまう。

確かにハイドンザールは会場としては重要だけど、ハイドンターゲはアダム・フィッシャーの音楽祭として評価されている。ハイドンフィルはエステルハーツィー家側についているが、現在のGMDをチェリストのニコラス・アルトシュテットだから、アダムは当分ハイドンフィルを指揮しない。ハイドンターゲ、エステルハーツィー家双方とも、アダム・フィッシャーを取り込もうと働きかけている。

アダムとしては何とか間を取り持って問題を解決させたいのだが、両者の間は既に感情的な争いにもなっているので、どうしようもない。でも長年付き合いのあるライヒャー氏からの願いを断れないから、来年はデンマーク室内管を率いてハイドンターゲに出演する予定。そうするとエステルハーツィー家の音楽祭の集客にも影響があるので、双方の対立はさらに悪化するような気もする。馬鹿げた権力争いのために音楽が犠牲になるのはとても残念。

ザルツブルグ音楽祭2017速報

夏の音楽祭シーズンも終盤に差し掛かったが、ザルツブルグ音楽祭の来年の速報が発表された。公式発表は秋の予定だけど、既に発表されているムーティー指揮でアンナ・ネトレプコが歌う「アイーダ」に加えて、「ウォツェック」、「リア王」、「ティトゥス」、「マクベス夫人」だそうだ。

「アイーダ」の演出は映画監督のシリン・ネシャト、「ウォツェック」は南アフリカ出身の芸術家ウィリアム・ケンドリッジが担当する。モーツァルトの「皇帝ティトゥスの慈悲」はピーター・セラーズの演出。

現代音楽の「リア王」の指揮はフランツ・ウェルザー・メストで、ショスタコーヴィッチの「マクベス夫人」はアンドレアス・クリーゲンブルグの演出で、指揮はマリス・ヤンソンスの予定。

アメリカにチェロを持ち込むためにはビザが必要?

最近原油価格が低いし、格安の航空会社がたくさんできたおかげで、飛行機の利用が手軽になった。それは旅行の多い音楽家には朗報なんだけど、機内持ち込み荷物の制限が厳しく、楽器を持っての移動にはトラブルが多発している。航空会社によって対応が異なることも混乱の要因だけど。

一般的にはチェロよりも大きな楽器は持ち込みは不可。でもスーツケース等とともにチェックインすると破損されてしまうこともあり、音楽家はチェロ用にチケットを買って移動する事が多い。ところがスイスス在住のチェリストはそれでも問題に遭遇した。なんとチェロにアメリカのビザが無いから搭乗を拒まれたのだとか。

この人は英国航空のチューリッヒからアメリカのボルティモアまでの航空券をオンラインで予約した。この場合はチェロの席でも名前が必要なので、ファーストネームをCelloと入力した。空港ではチェロを人物だと誤解して、アメリカ入国に必要な書類が無いために搭乗を拒否した、と言う話。

結局航空会社が謝罪して翌日の飛行機には乗れたそうだが、国際的に活躍する音楽家にとっては問題は大きい。

オリンピックのドイツ対日本

毎回オリンピックが開催されるたびに思うのだけれど、ドイツと日本では人気のあるスポーツが全然異なる。日本が強いのは体操や水泳だけど、最近のドイツはこれらの種目ではメダルが取れないから、なかなか中継されない。ドイツで人気が高く、メダルの期待がかかるのは乗馬と射撃。特に乗馬は裾野が広いからメダル獲得にも期待がかかる。

ドイツと日本でともに人気が高い競技が卓球。団体戦では男女とも準決勝はドイツ対日本だった。女子はドイツが勝ったけれど、男子は日本が勝った。男子のペスト4の残りは韓国と中国だから東アジアが中心の卓球で、
図体の大きなドイツ人が活躍するのは意外かもしれないけれど、実は一般にも人気が高い。例えばパーティー会場にも卓球台が置いてあったりするし、学校でも休み時間の遊びに人気なんだそうだ。

ダニエル・バレンポイムのユーチューブ・チャネル

人気指揮者、ダニエル・バレンポイムが独自のユーチューブ・チャネルを制作した。ビデオは毎週更新するらしく、音楽の話はもちろんだけど、政治の話や日ごろ考えている事などいろいろテーマに取り上げるとか。
アドレスはこちら

バレンボイムと言えばクラシック業界でもとにかく忙しい人だ。ベルリン国立歌劇場のGMDとして年間数多くの公演を指揮するだけでなく、室内楽のシリーズも行っている。シューターツカペレの公演もたくさん指揮してツアーにも同行しているし、ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団を創立してアラブやイスラエルの若手音楽家に一緒に演奏する機会を提供するとともに、各地でツアーを行っている。先日は南アメリカのツアーで、南米諸国にシリア難民を受け入れるように声明を出している。バレンポイムの両親はユダヤ系ロシア人で難民としてやって来たアルゼンチンにやって来た。ダニエル・バレンボイム自身はブエノスアイレスで生まれているので、もし両親が受け入れられなかったら別の人生を歩む事になっただろう、というのが理由らしい。

ユーチューブ・チャネルはそういう話も出てくると思われる。

ネトレプコのバイロイト出演はあるのか

以前の日記で紹介したアンナ・ネトレプコのインタビュー記事が問題を起している。このインタビューはドイツの有力紙、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングに掲載されたもので、インターネットの速報版では、ネトレプコ自身が2018年のバイロイト音楽祭出演を否定している。その理由はドイツ語が覚えられないからだそうで、"Nein, stimmt es nicht"とかなり明確に否定している。ところが実際に印刷された記事ではその部分が変更されていて、"Nein!"の後に「つまりまだ交渉中でわからない」とトーンダウンしている。

この件に関してバイロイト音楽祭のカタリナ・ワーグナーもコメントを出していて、「ネトレプコのいう事は正しく、現在交渉している段階。契約に至ったわけではないので詳細は不明」らしい。

普通のオペラ座は出演する歌手によって出演料は代わるけれど、ウォルフガング・ワーグナーが監督だった頃のバイロイトは役により出演料が決まっていたという話は新聞か何かに書いてあったと思う。つまり有名な歌手でも新人でも同じ役なら出演料は同じにということ。バイロイトは知名度に関わらず、最高のワーグナー歌手が出演することで知られていたし、歌手の立場からしてもバイロイトに呼ばれたというのは実力が認められた証拠だから、出演料は二の次という人も多かった。でも最近は以前ほど評判は高くないし、他の劇場もレベルの高い上演していることもあり、バイロイトもスターの名前に頼るようになったのかもしれない。それは少し残念な事ではある。

ベルリン国立歌劇場の大理石の階段

ベルリン国立歌劇場はウンター・デン・リンデンの建物の工事のためにシラー劇場に引っ越して5年になる。9月からのシーズンはいよいよ最後になる予定で、オープニングは来年秋。当初の計画よりも工事期間が延び、その分コストも高くなった。改装前のベルリン国立歌劇場に使われていた大理石の階段部分がインターネットで売りに出ているのだとか。売り出しているのはブランデンブルグ州の業者で、1ユニット75ユーロで200個を販売している。2種類の大きさがあってボックス席への階段に使われていた。

本来、再利用可能の大理石は旧劇場を解体後に保管して、再利用できないものだけが業者に引き渡されるはずだったのに、どうやらネットで販売しているものは再利用可能なものらしい。それがなぜ業者に引き渡されたのかは不明で、ベルリン市議会は調査を開始したとの事。ベルリン国立歌劇場は戦後再建されたから、東ドイツ政府が調達した大理石らしい。

どこかの建物に再利用するにしても、業者の収入になるだけでベルリン市に還元されないのは問題だ。

ドイツ視点で観たリオ2016

リオ・オリンピックが先週末から開催されているけれど、ドイツではあまり話題になっていない。それもそのはずでドイツチームの成績があまり良くないから。東西冷戦の頃は東ドイツは当時のソ連と並んでメダルレースのトップを争っていた。それが最近は低迷していて、メダル数の多い水泳でも不振。今日になってやっと乗馬で金メダルを取った。

ドイツ人はサッカーに関する思い入れは凄いものがある。動物に占いさせたりワールドカップやヨーロッパ選手権では毎日大騒ぎなんだけど、オリンピックはそれに比べると話題が地味。日本だと水泳と体操はメダルの期待のかかる種目だけど、最近のドイツはその可能性が少ないからあまり中継されない。ドイツが期待するのがカヌーやレガッタ、射撃、乗馬、フェンシングなどで日本ではあまり人気が無い。だから日本選手が活躍してもほとんどこちらでは報道されない。

それでも前回は陸上競技が始まる後半には少しメダル数を伸ばしたけど、今回はどうだろう。ドイツは経済は豊かでスポーツにお金をかけることは出来るけど、ゲルマン魂が無くなってよい選手が少なくなったのかもしれない。

ミュンヘンの新コンサートホールのデザインコンペ

バイエルン放送響のホームとなるミュンヘンの新しいコンサートホールのデザイン・コンペティションが今月から始まる。規定によれば建物内には1800席の大ホールと700席の中ホール、さらに300席の室内楽ホールが計画されているそうだ。それからミュンヘン音大のためにプロジェクトルームとして200人収容のホールも規定に入っている。でもそれ以外には特別なリハーサル室は無い。

計画では、デザインコンペティションは今月スタートして、EU内の建築家からデザインを募るそうだ。締め切りは2017年中ごろ。応募作品の中から選ばれたものを基にして、2018年から工事を始める予定。

ミュンヘンの新しいコンサートホールはその建設場所に関しても未だに反対議論が絶えなくて、今後も色々ニュースになりそう。

ドイツで人気のオペラ

1846年創立のドイツ舞台協会は、ドイツ国内の劇場とオーケストラが所属する一般の団体だけど、ここが2014‐15シーズンの統計を発表した。オペラ部門によれば、ドイツ国内で上演されたオペラを演出ごとに数えると、トップ3は
 第1位 ヴェルディ 「椿姫」 31演出
 第2位 モーツァルト 「魔笛」 30演出
 第3位 ビゼー 「カルメン」 29演出
 第3位 フンパーディンク 「ヘンゼルとグレーテル」 29演出
だったそうだ。 オーストリアとスイスは1位と2位が入れ替わる。

作曲家別にすると、第1位がヴェルディ、第2位がモーツァルト、第3位プッチーニ、4位ワーグナー、5位シュトラウス。これは演出数、公演数とも順位は同じ。

現代オペラの部門では、第1位はストラヴィンスキーの「放蕩児の遍歴」、第2位はブリテンの「ピーター・グライムス」、「ねじの回転」だった。

オペレッタ部門だとヨハン・シュトラウスの「こうもり」が圧倒的で、作曲家としてはレハール、カールマン、オッフェンバッハ、ベナツキーと続く。

毎年あまり変化がなく、60年以上前に作曲された作品も「現代オペラ」に入ってしまうのは問題だ。新しい作品が無ければ新しい聴衆の獲得は難しい。この辺の問題をどうするかがオペラの今後を考える上で大切。

因みにアメリカで公演数の多いオペラABCは、「アイーダ」「ラ・ボエーム」「カルメン」だとか。

ヤノフスキとネトレプコのインタビュー

夏の音楽祭もたけなわで、ドイツのラジオや新聞には音楽祭に出演している音楽家達のインタビュー記事が掲載されている。

バイエルン放送はバイロイト音楽祭のリング指揮者、マレク・ヤノフスキの長いインタビューを放送した。こちらにテキストとラジオで放送した音声がある。

ヤノフスキは1990年代に演出中心のオペラを批判してピットから退いた。それでもオペラ作品に対する興味は失わず、2010年から2013年までベルリンでワーグナーのコンチェルタンテを演奏した。約2年半前にバイロイト音楽祭からオファーがあった時、77歳で断ったら祝祭歌劇場のピットに立つ機会は絶対に無いと思ったので引き受けた、との事。

カストルフの演出について、コンセプトに関しては悪いとは思わないが、歌手は役者とは違うのだから、歌えないような動作や立ち位置は良くないと言っている。歌手と指揮者のアイコンタクトは重要だから、見えないような位置で歌わせると音楽に影響がでるそうだ。

また、祝祭歌劇場は構造が特殊なので、指揮者は音が良く聴こえない。リングの舞台装置の関係もあって、歌手が舞台の脇で歌うと指揮者は全然聴こえないのだそうだ。だからリハーサルではアシスタントが客的から確認するのが必須で、ステージ・リハーサルにはティーレマンも聴きに来てアドバイスをしたそうだ。

さて、もうひとつのインタビュー記事はアンナ・ネトレプコ。最近ドラマチックな役に移行しているネトレプコだけど、ドイツ語が覚えられないのでワーグナーはやりたくないそうだ。2018年にはバイロイトで「ローエングリン」のエルザ役を歌うのではないかと噂されているが、このインタビューでは否定している。今年ドレスデンでエルザを歌った時はティーレマンにかなり厳しく注意されたらしく、ワーグナーをあきらめたみたい。「6時間もドイツ語で歌うなんてできない。」と嘆いている。母音で歌うイタリア語やフランス語は問題ないが、ドイツ語は子音も重要なので勝手が違ったみたい。でもリヒャルト・シュトラウスには興味があるようだ。

エジンバラ音楽祭のノルマ

音楽祭の季節だけど、最近注目を集めつつあるエジンバラ音楽祭の今年の目玉は、チェチリア・バルトリの歌う「ノルマ」。この作品はノルマ役のソプラノがドラマチックに歌う作品で、声の小さいバルトリには適していないのではないかと思われている。でもエジンバラではオーケストラ古楽オーケストラを起用して、違った解釈で演奏することになっている。

ところがプレミアの直前に指揮者が交代したらしい。もともとはDiego Fasolisが指揮する予定で公式プログラムにもそう書かれているのだが、実際にプレミアを指揮をしたのはGianluca Capuanoだったそうだ。この人は合唱指揮者だそうだ。

そういえば音楽の友のアダム・フィッシャーとライナー・キュッヒルの対談記事の中で、アダムがエジンバラの「ノルマ」を指揮するみたいなことが書かれていたけど、これは全くの間違い。アダムの元アシスタントの指揮者リチャード・ルイスがこの音楽祭の運営に関係していることもあって、この音楽祭の事は詳しいけれど、アダム自身は出演しない。

実はアダムはここ数年、毎年夏にエジンバラに行っている。「ノルマ」はレパートリーではないけれど、バルトリに泣きつかれて夏休み返上なんて事にならなければ良いけど。

アダム・フィッシャーの新作録音

アダム・フィッシャーの録音と言えば、日本ではオーストリア・ハンガリー・ハイドンフィルハーモニーを指揮したハイドン交響曲全集が知られている。ハイドンの104曲の交響曲にシンフォニア・コンチェルタンテと番号のついていない交響曲を全部録音するなんて、さすがにたくさんはいない。アダムの後にはナクソスなどいくつか交響曲全集が出ているが、クラシック音楽業界の歴史に残る偉業であることはまちがいない。

それ以外にはデンマーク室内管とのモーツァルト交響曲全集がある。こちらは日本ではあまり話題になっていないみたいだけど、ヨーロッパではかなり評価されている。それに続いて同じくデンマーク室内管とベートーベンの交響曲全集を録音したのだけれど、全曲完了する前にデンマーク放送がオーケストラの対する支援を打ち切ったので、録音テープはお蔵入りしてしまった。でもオーケストラはなんとか独自に活動できるようになり、アダムとのベートーベン全集プロジェクトも再開した。現時点での予定では録音完了は2018年以降になる見込み。

Mahler7さらに昨シーズンから首席指揮者を務めるデュッセルドルフ交響楽団とのマーラー交響曲全集のプロジェクトも進行中。これはコンサートのライブ録音で、最初に録音したマーラー7番のCDがまもなく発売される。どうやら公式発売は8月12日らしく、ドイツ国内ならこのサイトで購入できる。日本まで発送するかどうかは不明。でも日本はドイツよりもずっとCDの売り上げが多いし、11月の来日もあるからどこかのCDショップが輸入する可能性もあるかも。

<8月9日に追記>
rotenfelsさんのコメントによれば、日本でもHMVが扱うみたい。

アンドリス・ネルソンスのインタビュー

6月末に電撃的にバイロイト音楽祭の『パルジファル』を辞退したアンドリス・ネルソンスがニューヨーク・タイムスのインタビューに答えている。

この夏はバイロイトとタングルウッドを行ったり来たりするハードスケジュールだったのだが、バイロイトのキャンセルによって大分余裕が出来たのだそうだ。だからまずラトビアの海岸で家族と一緒に休暇を楽しみ、それからタングルウッドにやって来た。本来ならコンサートとリハーサルだけだったけれど、タングルウッドでもリラックスできるらしい。タングルウッドは避暑地だから、夏の休暇を兼ねているのかもしれない。

インタビューの冒頭ではバイロイト音楽祭の事情を質問しているのだが、ネルソンスはやはり答えない。来年以降のバイロイト出演予定については「いつか」と確定を避ける答えをしている。ティーレマンがリハーサルでの口論を否定していることに関しても、「何も無い」とのこと。ティーレマンの事は指揮者として尊敬しているし、「だれでもゴシップを流したがる」というコメントだ。「クリスチャンがコメントしている事は知っているけど、彼にはその権利があるし。」とあくまで口が固い。

だからインタビューはボストン響の今後のスケジュールと2017‐18シーズンからのライプツィヒのゲヴァントハウス管の話が中心。ボストンの聴衆にしてみるとスケジュールが忙しすぎるのではないかという不安もある。アメリカから見たネルソンスへの期待が伺えるインタビュー記事だ。

アンゲラ・メルケルとバイロイト

ドイツのメルケル首相はワーグナー愛好家として知られている。首相に就任する前からバイロイト音楽祭には着ていたが、「ヒットラーの前例があるから、ドイツの首相はバイロイト音楽祭には行かない」という反対にも負けずに、毎年のようにバイロイトにやって来る。2002年か2003年にはアダム・フィッシャーの振る「ニーベルングの指環」を観に来たそうで、アダムも喜んでいた。

ただヒットラーの例を破ったのは前任のシュレーダーだったと思う。2002年のサッカーのワールドカップの決勝戦を観戦するために、サミットの後に日本の首相専用機に乗せてもらったヒッチハイク外交のお礼として、その夏のバイロイトに小泉元首相を招いた時に同席したはず。

メルケル首相は今年は6月から「オープニング公演には行かない」と招待を辞退していたが、ティーレマン指揮、カタリナ・ワーグナー演出の「トリスタンとイゾルデ」には行くそうだ。厳重な警備は一度は解除されたみたいだけど、メルケル首相が行く時にはまた復活するのだろう。ティーレマンのワーグナーは定評があるし、カタリナ・ワーグナーの演出も昨年は好評だったから、今年も手を加えてさらに進歩しているかもしれない。

ヤノフスキ指揮の「ニーベルングの指環」の第一サイクルが終ったけれど、全体的に不評。演出に関してはコンセプトは変らず、ジークフリートの3幕に出てくるワニの数が増えているなど悪い冗談がさらに悪化したらしい。音楽面ではヤノフスキの指揮に対してオペラの実地経験が乏しいと批判が集中している。神々の黄昏の第三幕の冒頭のラインの娘たちが揃って出だしをミスしたり、オーケストラが大きすぎて最後のハーゲンの叫びが聴こえないなどは、指揮者の指示が悪いからと批判されている。歌手がついていけないほどテンポが速く、せっかく美しいところもどんどん続けてしまうので余韻が無いと、手厳しい批評がドイツの新聞には掲載されている。やっぱりオペラの指揮は現場の経験が物を言う。
livedoor プロフィール
Archives
Recent Comments
BlogRoll
  • ライブドアブログ