クラシックおっかけ日記

指揮者アダム・フィッシャーのおっかけ記録、音楽の話、海外生活など

英国のEU離脱通告

昨年6月末の国民投票から9ヶ月を経て、イギリス政府がEUに対して離脱を通告した。これにより正式に離脱交渉がはじまる。交渉期間は2年間だけど、その間に決めなければ成らない事はたくさんある。離脱通告を受けてEUの代表は喜ぶ人はいないけれど、交渉に関してはEU市民やビジネス、安全保障を第一に考えると明言しているから。

メイ首相は離脱交渉と並行して今後の新しい関係の条件を決めたいという希望なのだが、これには早々メルケル首相らEU諸国の首脳が反対している。まず離脱交渉でイギリス国内のEU市民の扱いなどを確定させないかぎり、将来の交渉には応じられないとの事。イギリス側は「悪い合意よりは合意しない方がよい」という強気の態度なんだけど、EU側はそれに対しても不快感を表明している。合意が無ければ皆が傷つくが、イギリスの被害が一番大きいといっている。

交渉期間は2年間だけど、その間にたくさんのことを決めなければ成らない。それに現実的には2年もかけていられない問題もある。その一例としては国際線の空路に関する協定。ヨーロッパ内はオープン・スカイという条約があり、ヨーロッパ内なら政府の個別許可を受けることなく航空会社が自由に飛行機を飛ばす事ができる。さらにEUとアメリカも同様の協定に合意しているから、ヨーロッパとアメリカの都市の間の航空便も政府の認可は必要ない。でもイギリスがEUから離脱すればオープンスカイ協定からも離脱することになり、政府の認可がないと飛行機を飛ばせない。

理論上は同様の協定を2年間の間に合意すればよいわけだけれど、実際はそれでは遅すぎる。航空会社は1年くらい先まで飛行機のスケジュールを発表していて、そのためには各地の空港と航空会社の交渉は1年半くらい前に行われる。もし政府の認可が必要となれば航空会社はそれ以前に申請しなければならないから、2年後の状況は今わかっていないと実際に航空機のスケジュールが決定できない。

その他の分野でも似たような事は起きるから、いろいろな面で問題が出てくると思われる。もちろんEU側もダメージは受けるけれど、一番被害が大きいのはイギリスのような気はする。

2017年3月21日、ミュージカル「オペラ座の怪人」

ロンドンでの最後の日はレスター・スクエァのディスカウント・チケット売り場に出かけて当日券を探した。当初はイングリッシュ・ナショナル・オペラを観ようかと思ったのだが、残念ながらチケットは一番安くても150ポンドなので諦めた。プースの人の勧めで「オペラ座の怪人」を観る事にした。チケット代は47ポンド。

私は過去にミュージカルは数回しか観た事がない。前回は20年以上前のロンドンだから、ほとんど覚えていない。「オペラ座の怪人」は30年以上同じ劇場で上演されているヒット作だから、良く知らなくても楽しめるだろう。

ハー・マジェスティ劇場はピカデリー・サーカスのすぐ近くにあるのだが、やはりオペラ座に比べると規模が小さい。座席も少し小さいし幕間休憩のラウンジも小さめだ。比べてみるとオペラ座の豪華さがよくわかる。

「オペラ座の怪人」とはオペラ座の地下に住む醜い天才音楽家とソプラノ歌手の物語で、鏡の中に連れ去ったりシャンデリアが落下したりと舞台装置の豪華さでは定評がある。常設の劇場で30年以上やっているとなれば確かに舞台上の効果は素晴らしく、オペラ座の地下の湖のシーン等は本当に幻想的。場面転換も素早くてその点では見る価値がある。

音楽面では出演者は拡声器を使っているし、伴奏も録音済みのもの。一部オーケストラの生の演奏もあるが、弦楽器の数も少なくて音に厚みがない。世界でもトップレベルのミュージカルだが音楽面ではオペラとは比較にならない。客層もほぼ観光客ばかりで地元の人が観に来ているようにも見えない。もっとも30年間もやっていたら地元の人は見に行かないだろうけど。

それにしてもバルコニー席で57ポンドというのはかなり高い。ベルリンのコーミッシェ・オーパーなら音楽的にはもっと高度なミュージカルが20ユーロくらいから観ることが出来る。劇場もずっと豪華だし、コストパフォーマンスははるかに高い。

No.357、 2017年3月20日、エンライトメント管、ハイドン、モーツァルト、ベートーベン

ロンドン行きのメインはアダム・フィッシャー指揮のオーケストラ・オブ・エイジ・オブ・エンライトメントとの演奏会。

Orchestra of Age of Enlightment
Adam Fischer conductor
Steven Isserlis cello

Haydn La fedelta premiata
Haydn Cello Concerto in C
Beethoven Symphony No 7

1曲目はハイドンフィルのアンコールナンバー、「報いられた真心」序曲。ガット弦を使った弦楽器の音色にビックリ。ロイヤル・フェスティバル・ホールは必ずしも音響の良いホールではないけれど、まるでハイドンザールで聴いているかのような暖かい音色が出てくる。音はスティール弦よりも小さいけれど、ガット弦の音色は捨てがたい。

この曲はホルンのソロが何回かでてくるけれど、もちろんナチュラルホルン。それも狩のホルンを意味するから二人のホルン奏者は舞台裏や2階席、さらには客席後方など色々なところから演奏する。音程のコントロールが大変なのに、タイミングもピッタリでお客さんは大喝采。でもこの曲はアンコール・ピースでコンサートのオープニングを飾るのはもったいない。曲が終った後、ホルン奏者が舞台の上に戻ってこられなくてソロボウに間に合わなかった。だから次の曲の編成になった後にホルン奏者二人が舞台に登場し、その時拍手が出た。なんだかちょっと不思議な雰囲気。

2曲目はスティーブン・イッサリースのソロでハイドンのチェロ協奏曲第2番。イッサリースもガット弦で演奏したからどうしても音が小さい。だからオーケストラの編成も小さいし、チェロのソロを引き立てるために伴奏の音をぐっと控える部分が多かった。でもその小さい音が美しく緊迫感に満ちているからお客さんも思わず聞き入ってしまう。

イッサリースも現代楽器ならヴィルトゾーオ風に弾き飛ばしてしまうかもしれないが、音の出にくい楽器だから始終丁寧に演奏し、ワールドクラスの実力を発揮した。喝采に応えてのアンコールは全曲ピチカートでまるでギターのような演奏だった。

休憩の後はベートーベンの交響曲第7番。ハイドンフィルやデンマーク室内管ならコントラバスは3本だけど、エンライトメント管は5本。全体的に弦楽器の編成が大きく室内オケというよりはフルサイズのオーケストラに近い。やっぱり音が小さいガット弦のオーケストラだからだと思うけど、なぜ現代でもベートーベンはフルサイズオケのレパートリーなのか理解できた。スティール弦なら音量的には少人数でも問題ないけど、ガット弦の頃の人数をそのまま踏襲しているのではないかと思う。

さすがに人数が多いと合わせるのが難しくなるから、デンマーク室内管やハイドンフィルみたいなルバートを多用した演奏は出来ない、でもフルートやホルンの名手がソロをばっちり決める。そして第4楽章はかなり速めのテンポでオーケストラがすごい集中力で付いて行く。聴いているお客さんも段々前のめりになって圧倒された。演奏が終ると数秒の沈黙があり、ワーという大歓声。立ち上がって拍手する人もたくさんいて、クラシックそれも古楽団体の演奏会という感じがしない。

エンライトメント管はアダム・フィッシャーにもっとたくさん指揮して欲しいらしいのだが、アダムは時間が取れないので2年に1度くらいしか客演できないのが残念。

2017年3月19日、アントニオ・パッパーノ指揮ロイヤルオペラ「ニュルンベルグのマイスタージンガー」

3月19日にはロイヤルオペラの立見で「ニュルンベルグのマイスタージンガー」を観た。

Royal Opera Die Meistersinger von Nurnberg
Director: Kasper Holten
Set designer: Mia Stensgaard
Costume designer: Anja Vang Kragh
Lighting designer: Jesper Kongshaug

Conductor: Antonio Pappano
Hans Sachs: Bryn Terfel
Sixtus Beckmesser: Johannes Martin Kranzle
Walther von Stolzing: Gwyn Hughes Jones
Eva: Rachel Willis-Sorensen
Veit Pogner: Stephen Milling
David: Allan Clayton
Magdalene: Hanna Hipp
Fritz Kothner: Sebastian Holecek


このマイスタージンガーは新制作で数日前にプレミアを迎えたばかり。演出は今シーズンが最後のインテンダント、カスパー・ホルテンで最後の新制作だそうだ。プログラムに寄れば北京とオーストラリアとの共同制作という事で、衣装もセットも豪華で大規模。でもストーリーを表現するというよりは混乱させるばかりで演出の評判は悪い。

まず第1幕の設定からして問題が多い。マイスタージンガーというのはドイツの職人たちの物語だ。場所はニュルンベルグである必要はないかもしれないけれど、登場人物の職業は変えられない。でも演出のカスパー・ホルテンはなんと1920年代のイギリスのジェントルマンズ・クラブみたいな場所で物語が展開する。マイスターたちはリッチな会員で弟子というのは召使。第一幕はクラブの夕食会での出来事という設定で放浪の騎士ワルターはまるでロック歌手のような格好で登場する。

第1幕はそれほど違和感は無いのだが、第2幕になると矛盾が出てくる。ここではハンス・ザックスは工房で靴を修理することが必須だけど、舞台装置はジェントルマンズ・クラブのダイニングルームのまま。盛装をしたハンス・ザックスがディナーテーブルで靴を修理するし、ボグナー家の窓際にエヴァのふりをして立つはずのマグダレーナはダイニングルームを歩き回る。最後の乱闘シーンではザックスの悪夢が出てきて大混乱。舞台の後ろでは床が回転して天上になり、人が宙吊りになっている。このシーンはわずか数分だけどそのためにステージの機構は相当お金をかけたはず。

第3幕では回り舞台が回転して裏も見せるのだが、前半はまるで工場の中で物語が進んでいるようだ。その後最後の歌合戦のシーンでは再びダイニングルームに戻る。物語をきちんと理解していないと何でそうなるかは全くわからない。でもところどころに笑いが出るのは演出ではなくて英語による翻訳のため。ニューヨークでも感じたのだが、英語圏のオペラ上演では翻訳はとても重要だ。

歌手はやはりハンス・ザックス役のブリン・ターフェルが一番よかった。でもなんとなくザックスというよりはウォータンみたいだけど、ワルター役のグイン・ジーンズもウェールズの人らしいけど、リリカルな声でワルターとしては悪くない。でも容姿は騎士には見えないけど。エヴァ役のレイチェル・ウィルス=ソーレンセンは悪くは無いけど少女らしさに欠けてまるでイゾルデみたい。その他の歌手もイギリス国内のトップレベル。オーケストラも途中のファンファーレでは音を合わせるのに苦労していたけど、全体としては迫力のある演奏だった。

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でもこの演出を中国に持って行って、お客さんは物語を理解するかは疑問。

2017年3月18日、コーエン・ケッセルス指揮ロイヤルバレエ

18日にはコヴェントガーデンでロイヤルバレエの鑑賞。コヴェント・ガーデンの劇場はオペラよりもむしろバレエの方が有名だからこの日も満員。プログラムは"The Human Seasons", "After the Rain", "Flight Pattern!"の3作。私が過去に観たバレエと言えば「ジゼル」と「くるみ割り人形」だけなので、新作バレエは初めて。

最初の2作は昨シーズンに初演されていて、上演回数は9回から10回くらいあるのだけれど、"Flight Pattern"は今年の新作でこの日が3回目の上演だった。バレエは踊る場所が必要だから、オペラと違ってステージセットは無い。最初の2作は何も無い空間でダンサーたちが踊る。"The Human Seasons"は13人のダンサーがそれぞれ踊る。衣装はレオタード姿で特別なものではない。

"After the Rain"は男女3人ずつ。途中にヴァイオリン、ヴィオラ、ピアノのソロがあり、オーケストラの奏者がクレジットされていた。カーテンコールはダンサーと共にソリストも舞台に登場して挨拶。

最後の"Flight Pattern"はヘンリク・ゴレツキの交響曲第3番の一部に振付けた作品で、たくさんの踊り子が出てくる。"Flight Pattern"は難民の逃亡を描いた作品で、最初は黙々と歩く難民の集団が色々な苦難にあう。踊り子たちは最初はコートを着ているのだが、途中でコートを脱ぎ、両腕で抱えてまるで病で死んだ子供のように見せる。最後には雪が降ってきても難民たちは何とか進もうとする。最後に残された二人のダンサーが人生の非情を問う。

途中にソプラノのソロはあるものの、セリフなしでもとてもエモーショナルな作品になっている。振り付けはクリスタル・ピーテ。

ロンドンから帰還

昨日の夕方の飛行機でロンドンから帰って来ました。昨日は雨も降っていたし午前中は友人宅でゆっくり過ごした。友人夫妻は午後4時半開始のロイヤルオペラの「ニュルンベルグのマイスタージンガー」に行くというので、すこししっかりした昼食を一緒にご馳走になった。その後午後1時過ぎに友人宅を出てヴィクトリア駅へ。

フライトはロンドン・ガトウィックからだったので、ヴィクトリア駅からは空港直行のエクスプレスがある。でも値段は19ポンドもする。時間があるのでヴィクトリア駅からのバスの便を調べたところ、14時半発のバスがある。電車だと30分でもバスは1時間半もかかる。でも値段は半分以下の9ポンド。天気も良くないし荷物を抱えて街を歩くのも嫌だったので、特に急がずバスに乗ることにした。ガトウィック到着は午後4時ごろだから、フライトまでは2時間ある。これなら大丈夫でしょう。

バスは定刻に発車したが、ロンドンの交通事情は良くないのでなかなか進まない。ヴィクトリアのバスターミナルからテムズ河沿いを走り、ウェストミンスター橋の二つ南の橋を渡ってヴァックスホール駅まで来るのに20分くらいかかった。その間パトカーがサイレンを鳴らしながらバスを追い越していく。さすがに大都市ロンドンは渋滞が酷いし事故も多いのだろう。

バスはそのあとも渋滞に巻き込まれなかなか進まない。結局空港に到着した時は30分以上遅れていた。お客さんの中にはフライトが迫っていてバスを降りるとすぐに走り出す人もいたが、私はまだ1時間半もあるから大丈夫。

ガトウィックの空港はかなり広く、大きなサテライトが設けてある。イージージェットはゲートが45分前にならないと決まらないので、セキュリティ・チェックを通った後にロビーを歩いてみた。ニューススタンドで飲み物を買おうと思ったら、店員がいない。セルフサービスのレジで支払うのが普通らしい。このロビーからサテライトにあるゲートまでがまた遠くて、歩いて5分くらいはかかる。もしゲートを間違えたら結構大変そうだ。時間に余裕を持って行動したのだけれど、ほとんど一息つく暇も無く登場が始まった。

フライトは午後6時発でロンドンとベルリン間は約2時間。だから8時ごろには到着するだろうと思ったら、時差があるから予定時間は午後9時。実際は30分近く早かったのだが、入国審査があるので時間がかかって空港から出てきたのは夜9時近かった。

空港から自宅に戻る間にロンドンでテロ事件があったことを知った。あの渋滞とパトカーのサイレンはテロ事件の影響だったのか。

ロンドンの写真

今日の午後の便でベルリンに帰る予定。あまり時間がないのでロンドンの観光フォトをアップ。

まずは定番のビッグベン。
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それから衛兵交代式。まだ寒いので兵士はコートを着ている。
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それからナショナル・ギャラリーの風景。この絵は印象派画家スーラの「アニエールの水浴」。
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ついでにBBCの人気ドラマ「シャーロック」でベーカー・ストリートのシャーロックのアパートの1階となっているスピーディーズ・カフェ。これはベーカー・ストリートではありません。中にはロケの写真もさりげなく飾られているけれど、特に変わったこともない普通のカフェ。大学が近いこともあり、値段はかなり安め。
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ロンドンの5日間

土曜日から水曜日までのロンドン滞在5日間は、普段とは変わって舞台芸術三昧。滞在させてもらっている友人が大のオペラ・クラシックファンなので、チケットをいろいろ手配してくれた。

まず初日はロンドン到着後にテムズ川の河岸を散策し街を散策し、夜にはコベントガーデンでバレエを観た。その翌日の日曜日は友人宅近くにある美術館を訪ねて、それからアダム・フィッシャーとちょっと話をしてからロイヤル・オペラに行く。午後3時から「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を立ち見で観た。今まで立ち見で一番長いのは「ばらの騎士」か「フィガロの結婚」だったんだけど、これで立ち見最長記録を更新か。ただ昔アメリカに住んだいた時に土曜日に立見席のチケット購入で並び、そのまま「アンドレア・シェニェ」と「フィガロ」を観たことがあったけど。

月曜日には観光客らしくバッキンガム宮殿の衛兵交代を見てから大英博物館へ。夜はアダム指揮のエンライトメント管の演奏会。
今日は何をするかはまだ決めていないが、友人夫妻はシェークスピアの演劇を見に行くので、夜は何は何か別のものに行った方が良いという事で、レスター・スクエアの当日チケット割引ブースに行ってみようかと思う。

ロンドン訪問

土曜日からロンドンに来ている。ベルリンからは格安航空会社が飛んでいるのだが、イージージェットが最も安い。ベルリンのショーネフェルド空港からロンドンのガトウィックまで往復で55ユーロ。空港からはゆっくりとバスに乗って市内までいける。時間はかかるけど値段は安く往復で5ポンド。だから市内まで70ユーロほどで往復できる。

イギリスのEU離脱鉄続きの関係でポンドは最も安く、おかげで物の値段も高くない。前回来たときはポンド高でなんでも高くて買う気がしなかったのだが、今は安くてなんでもありがたい。

ただ駅の荷物預かりサービスは別。セキュリティ・チェックなども厳しいので3時間で6ポンド。それ以上だと初日が12.5ポンドで後は1日ごとに8.5ポンド加算される。大きな荷物なら別だけど、機内に持ち込める程度のバッグでも同じ値段だから、これはとても高い。ただロンドンでは知人宅にお世話になっているのでホテル代は節約できるのが吉。

本日はアダム指揮のエンライトメント管の演奏会があり、ドイツに戻るのは水曜日の予定。

オランダの国政選挙

昨日はオランダの国政選挙が行われた。投票前は極右政党が第一党になるのではないかと心配されたが、結果は極右の自由党は議席を増やしたものの、前評判ほどではなく第二党に留まった。

改選前の連立与党の自由民主党と労働党はどちらもかなり議席を減らしているのだが、その他の党が勢力を増やしている。オランダは数多くの政党が乱立していて、連立交渉が終らないとどこが与党になるかわからないのだが、極右の自由党と連立する政党はないので、極右が政権を握る事にはならない。

ヨーロッパ内では安堵する声が大きいけれど、これで問題が解決したというわけではない。ドイツのメディアはトルコのエルドワン大統領に感謝すべきという皮肉な見方もある。トルコは大統領に権力を集中させる国民投票が予定されている。ドイツをはじめヨーロッパにはトルコの選挙権を持つ人も多いので、トルコの閣僚がEU諸国で選挙キャンペーンを行うのが問題になっている。

オランダにも選挙の直前にトルコの閣僚が入国を希望したのだが、現首相は入国を却下した。これに怒ったエルドワン大統領はオランダをナチに例えて批判したのだが、これに対しては多くのEU市民が反感を持った。だから強行姿勢の現首相の票が増えたというのがドイツメディアの分析。

4月と5月にはフランスの選挙がある。次はフランスがどういう選択をするかが注目される。

ウィーン国立歌劇場次期支配人に対する疑惑

ウィーン国立歌劇場の現支配人のドミニク・メイヤーは2020年に退任し、次期監督にはオーストリアの文化大臣が推薦しているボグダン・ロスチッチが決定している。この人は元ソニー・クラシカルの社長で、劇場の運営経験は無い。だからウィーン国立歌劇場を心配する声も大きいのだが、ここに来てスキャンダルが発覚した。

ロスチッチはウィーン大学で哲学を専攻したが、その論文の導入部で他人の論文を参照している。しかしながらその事は論文に明記されていない。論文を捏造したとは言わないが、他人の論文を断りもなく自分の物として発表したことになる。

これは30年以上前でロスチッチが大学生だった頃の話で、今となっては昔話だ。まあ学生がコピー&ペーストで論文を仕上げるなんて良くある。でも30年後にその当人を文化大臣が野党の反対を押し切ってウィーン国立歌劇場の支配人に決定したとなると、状況は変ってくる。

ウィーン大学はその事実の連絡を受けたそうで、事実関係の究明に動き出した。文化大臣も、速やかに事実を明らかにするようにロスチッチに通達を出したそうだ。ただ30年以上前の事だし、調査には時間がかかりそう。まあロスチッチの就任までにはまだ3年半もあるけど。

ベルリン空港のストライキ

新空港がオープンしないので日本からベルリンまでの直行便は存在しない。だから日本からベルリンに来る方は電車を使う方も多いかもしれない。念のためにお知らせすると、現在ベルリンのテーゲル空港とショーネフェルド空港の両方で、地上係員のストライキが行われている。月曜日の朝4時から水曜日の朝5時までの予定で、機能は670便がキャンセルされたそうだ。

ベルリンの新空港は何年も前にオープンしているはずなのに、未だに開港の予定も発表できないでいる。その間も首都ベルリンは拡大し、空港の需要は大きくなるばかり。だから現存するテーゲルとショーネフェルドの二つの空港は大忙しだ。ところが双方とも新空港がオープンすると閉鎖される計画なので、地上職員の数はそれほど増えない。だから待遇を改善するためにストライキを実施した。

組合の要求は時給にして1ユーロ増やすというもの。フルタイムの労働者だと月給を2万円くらい上げることを要求している。労組ヴェルディは今後もストを実行するが、経営側に考える猶予を与えるために週末まではストは実施しないという。

実は週末にはショーネフェルドからロンドンに行くのだけれど、行きは土曜日だからストにはかからない。ただし帰って来るのが水曜日なので、来週月曜日にストが再開されると帰ってこられない可能性はある。

デュッセルドルフのラーメン屋に行った

デュッセルドルフには日本人がたくさん住んでいる。毎年5月にはライン河での花火を含めた日本のフェスティバルが開かれるし、中央駅に近いインマーマン通り周辺には日本人街も出来ている。ここには日本風のスーパーマーケットが何件かあり、日本の食材を買うことが出来る。もちろん日本に比べれば割高だけど、普段なかなか手に入らない食材を買うことが出来るのはデュッセルドルフならでは。

残念ながら日曜日は休みなので食材を仕入れることは出来なかったけど、日本人街には日本レストランも何件かある。それも高級なレストランはもちろんだけど、ラーメン屋も何件かあるのでコンサートが終った後に匠ラーメン2号店に行ってみた。

近くにナニワ・ラーメンという店があり、店の外に列が出来ていた。わざわざ並ぶ気がしなかったので空いている匠ラーメンに入ってみた。中は小さなテーブル席がいくつかとカウンター席。ここは豚骨ラーメンが主体らしく、麺の種類もいろいろあるみたい。昨日は豚骨味噌ラーメンを注文した。

出てきたラーメンの麺は固めでもう少し煮込んだほうが好みかもしれない。スープは確かに豚骨と味噌らしいのだが、こってりしていて味がよくわからない。確かに日本風のラーメンなんだけど、日本なら800円くらいでもここでは11.8ユーロ。値段としてはかなり高い。日本なら常識のお水のサービスもなく、ミネラルウォーターを別に頼まないと飲み物は出てこないから、その点はドイツ風。それからスープの温度が日本ほど熱くない。

ハンガリー人は具のたくさん入ったスープが好きなので、アダムもラーメンは大好きだ。だから去年の11月にアダムが来日した時、ホテル近くのラーメン屋に連れて行ったのだが、この時出てきたラーメンのスープはとても熱く、アダムは食べるのに四苦八苦していた。デュッセルドルフのラーメン屋はその点ドイツ人が食べやすいようにスープの温度を下げているようだ。

No.356、 2017年3月12日、デュッセルドルフ交響楽団、モーツァルトミサ曲他

本日は飛行機を使ってデュッセルドルフ日帰り。朝5時半に出るとデュッセルドルフに到着するのが8時過ぎ。それからゆっくり市内に向かって11時からの演奏会を聴き、ライン河沿いを散歩して19時ごろの飛行機に乗ると自宅に戻るのが21時ごろ。

Dusseldorfer Symphoniker
Yeree Suh Sopran
Sophie Harmsen Mezzosopran
Krystian Adam Tenor
Thomas Laske Bass
Chor des Stadtischen Musikvereins zu Dusseldorf
Marieddy Rossetto Einstudierung
Adam Fischer Dirigent

Mozart: Symphonie Nr. 38 D-Dur KV 504 "Prager Symphonie"
Mozart: Messe c-Moll KV 427


この演奏会は本来はネヴィル・マリナーが指揮するはずだったのだが、去年死去したのでアダムが代役を引き受た。だからアダムは3月はまとまった休みが取れなくてとても忙しい。

1曲目はモーツァルトのプラハ交響曲。これはとても好きな曲で、今までにアダムの指揮でモーストリー・モーツァルト・フェスティバルやバンベルグ響、カメラータ・ザルツブルグ、もちろんデンマーク室内管とハイドンフィルなどのオーケストラを聴いている。デュッセルドルフ響もがんばってはいたけれど、どうも弦楽器のリズム感が良くない。後打ちのシンコペーションになるとセクション間でちょっとずれる。普段は大型の編成だけど、今回は室内オケ・サイズだから勝手が違うのかも。最終楽章はいつもの通り高速だけど、管楽器、特にフルートとオーボエのソロはとても上手くて、速いテンポでもあわてずにしっかりキープしていたのは良かった。

因みにプラハ交響曲は来月のウィーンフィルの定期演奏会のプログラムにも入っている。残念ながらチケットは手に入りそうに無いが、日曜日のマチネーはORFで放送されるので聴くことはできそうだ。

後半はモーツァルトのハ短調ミサ曲。予定されていたソプラノが急にキャンセルし、韓国人の若手に交代した。暖かい声で高い音もキンキンしないのが良い。でもボリュームは少し小さい。いきなり水曜日のゲネプロに呼ばれて、普通のリハーサルもなく金曜日の本番という状態だから緊張するのは当然で、やっぱり硬さは見られた。アジア人歌手にありがちな、音程は正確なんだけど表現陸に欠けるみたいな部分はあった。

合唱団はデュッセルドルフ市民によるアマチュア団体。人数は多いけどハンガリーのプロの合唱団に比べるとちょっと劣勢か。この団体はマーラー・シリーズでも歌う事になってるんだけど、大丈夫かなぁ。

2017年3月9日、ズビン・メータ指揮ベルリンフィル、エルガーとチャイコフスキー

3月9日にはベルリンフィルの定期演奏会4公演目にでかけた。

Berliner Philharmoniker
Zubin Mehta Dirigent
Pinchas Zukerman Violine

Edward Elgar: Konzert fur Violine und Orchester h-Moll op. 61
Peter Tschaikowsky: Symphonie Nr. 5 e-Moll op. 64

前半はエルガーのヴァイオリン協奏曲。ソリストはベテランのピンカス・ツッカーマン。ソリストは楽譜を見ながらの演奏だったけど、さすがに経験豊かで難しい作品も問題なし。ただツッカーマンに限らないと思うけど、ヴァイオリンのソロだけだと大きなフィルハーモニーザールには少し厳しい。ソロを盛り立てるためにオーケストラも音量を控えるから、天上桟敷で聴くとどうも迫力にかける。もっと舞台に近い席なら楽しめたと思うけど、チケット代が安いからその辺は我慢するしかない。

後半はチャイコフスキーの交響曲第5番。天下のベルリンフィルがこれまた超有名な交響曲を演奏するわけで、失敗するはずが無い。でもやっぱりメータはお年のようで、舞台へ出てくる時も足元が少し不安。指揮も特別な事をするわけではなく、テンポはゆっくり目。弦楽器の厚い音にところどころ出てくる管楽器のソロで味付けしたみたいな演奏だった。

終演後はメータがソロで活躍した管楽器奏者を順に立たせる度に大歓声が上がる、ベルリンフィル特有の光景が続いた。何しろソリスト級の奏者が揃っている楽団だし、実際ソロ活動で知られている奏者も多いから、お客さんも良く知っている。

デュッセルドルフ・トーンハレの2017‐18シーズン

3月くらいになると音楽団体が来シーズンのスケジュールを発表する。デュッセルドルフ交響楽団の本拠地であるトーンハレも水曜日にスケジュールを発表した。

アダム・フィッシャーの首席指揮者就任3シーズン目なんだけど、なんとこの2年で定期会員が倍増したのだそうだ。それも若い人が増えたとか。だからシーズンプログラム発表会見ではインテンダントのミヒャエル・ベッカー氏はニコニコ顔だったそうだ。アダムの指揮姿をフィーチャーしたポスターが街の広告ポストに貼られていて、積極的にマーケティングを行っていることもあるけれど、オーケストラの評価も上がりつつあるしお客さんも満足しているようだ。

2017‐18シーズンの柱はやっぱりアダムの指揮するマーラー・シリーズ。デュッセルドルフ響の定期演奏会は同一プログラムで金曜日の夜、日曜日の昼、月曜日の夜の3公演があるのだが、11月の10日・12日・13日がはマーラー3番。1月12日・14日・15日がハイドンの交響曲104番とマーラーの「大地の歌」。ソロはアンナ・ラーソンとスチュアート・スケルトン。3つ目のプログラムは7月6日・8日・9日でマーラーの8番。さすがに千人の交響曲はオーケストラの編成も大きいから、オペラが一段落した夏場でないと難しいのか。

さらにもう1公演、人権擁護コンサートがあるはずだけど、これはまだ詳細は発表されていない。

詳しい情報はこちらをどうぞ。

3月の予定

3月はアダム・フィッシャーはとても忙しい。最初のプロジェクトはウイーン国立歌劇場での「ドン・ジョバンニ」。今シーズンのモーツァルトのプログラムを一手に引き受けているアダムだけれど、1月に続く公演はキャストが若手に変更されている。既に2回の公演は終っていて、最終公演は木曜日。

忙しくなった理由はデュッセルドルフ響の定期が増えたから。ネヴィル・マリナーが指揮するはずだったモーツァルトの交響曲38番とミサ曲の公演を引き受けたから。本番は金曜日から月曜日までの3回なんだけど、木曜日にはウイーンで公演があるので、ゲネプロは水曜日の夜。火曜日の夜に電話で話したところ、なんとソプラノが病気でキャンセルだそうだ。ソリストのキャンセルは影響が大きい。

その翌週はロンドンでエンライトメント管との演奏会。プログラムはハイドンの「報いられた真心」序曲とチェロ協奏曲、ベートーベンの交響曲第7番。ソリストはスティーブン・イッサリースでザルツブルグのモーツァルト週間でも共演している。

そのあとはすぐにコペンハーゲンに飛び、デンマーク室内管との演奏会。ハイドンの交響曲第92番とモーツァルトのシンフォニア・コンチェルタンテ、シューベルトの4番。

3月末から4月初旬にはデュッセルドルフ響とのマーラー5番の定期演奏会がある。4月の第2週にはウィーンフィルの定期演奏会がある。

ウィーンフィルはチケットが無いのだけれど、デュッセルドルフとコペンハーゲンは日曜日帰りが可能なので行く予定。さらに今月中に取らないとなくなってしまう有給休暇を消化するためにロンドンにも行く予定。3月はおっかけも忙しい。

ベルリン・ブランデンブルグ空港のトラブルは続く

ほとんどのベルリン市民はあきれ果ててジョークのネタにしかならないベルリン・ブランデンブルグ空港だけど、このほどまた社長が交代した。工事が始まって10年近いけど、相次ぐトラブルで開港は何度も延期されている。あちらしい社長は現状を把握した上で夏までに開港予定をはっきりさせるという話なのだが、早くても2018年だからまだ当分先だ。

ところがシュピーゲルの記事によれば、また新たな問題が発生した。これは空港のハードウェアではなくて人材の話。空港には当然のことながら管制官が必要だ。管制官の研修は3年間にもおよび、そう簡単には育成できない。開港が延期させた結果、ベルリン・ブランデンブルグ空港所属の管制官は定年を延長してなんとか凌いでいるのだが、多くの人が2018年の終わりまでに定年を迎えて退職する。不足の管制官を補う若手の育成が欠かせないが、いつ開港するかわからないから新しい人を雇えない。雇った後も3年間の研修があるから、即戦力にはならない。

新社長が2018年秋に開港する計画を立てたとしても、ベテラン管制官は定年退職し若手はまだ研修中という事態になる。だから空港の施設が整っても実際に開港できるのは2020年以降ではないかと心配されている。

本当にもう一難去ってまた一難というベルリン・ブランデンブルグ空港だけど、それでも工事はまだ続いている。

デンマークの文化大臣の考え

2年半前に当時デンマーク放送は所属していたデンマーク室内管を解散させるというニュースが飛び交った時、デンマークのクラシック関係者の間では「終わりの始まり」という説も出ていた。実際去年はオペラ座のオーケストラである王立フィルハーモニーの人員削減が発表され、全員が給料削減を受け入れる代わりに解雇はしないという協定が結ばれたばかり。

そこにきて、就任100日を経過した文化大臣の方針が発表された。その文化大臣の考えでは、デンマーク放送はコンサートの企画から撤退し、テレビとラジオのニュースやドキュメンタリー番組の制作に専念すべきだそうだ。デンマーク放送の所有するコンサートホールは売却し、オーケストラや合唱団などのデンマーク放送所属の団体は新しい別組織か王立劇場の傘下に移すというもの。さらにコペンハーゲン市がサポートするコペンハーゲンフィルを縮小する反面、地方のオーケストラの楽員を増やすということらしい。

この意見に関してはデンマークの音楽関係者だけでなくデンマーク放送の関係者の多くが反対している。デンマーク放送はコンサートホールを所有し演奏会を主催する事でイメージを向上させているので、ホールの売却楽団の移転は失うものが大きいというのが理由。

デンマーク放送は公共放送だけど、言論の自由を保障するために政治とは一定の距離を保つ事が法律で定められている。だから文化大臣の意見とはいえデンマーク放送が従うとは限らない。でも政治の圧力が強まればデンマークの音楽関係者にとっても状況は厳しくなりそう。

アダム率いるデンマーク室内管の状況は厳しいものの、音楽文化削減の最初だったので注目を集めたし、その結果いち早くプライベートな基金からの支援を受けることが出来た。この先数年は安定しているものの、他の団体からの支援が受けられなくなって、こちらも状況が厳しくなりつつある。

デンマークはとても豊かな国なんだけど、音楽文化に対する支援はどんどん減っているのが現状だ。

ドイツとトルコの関係悪化

最近ドイツとトルコの関係が悪化している。もともとトルコは政教分離を原則としEUへの加盟を求めていた。ところがイスラム教色の強いエルドワン大統領が誕生し、報道の自由などを政権した。これに反対した軍部が昨年夏にクーデターを起したが失敗。その粛清としてエルドワン大統領は多くの軍人を拘束しただけでなく、何万人もの公務員、教師、科学者などの反対勢力を解雇し、一部を拘束した。

もちろんドイツ始めEU諸国は独裁政権化するトルコに反対している。いまでもEU加盟交渉は続いているはずなのだが、現実的に今の状態では不可能だ。ただトルコがアフリカからの難民取締りを強化したからバルカン諸国からトルコを通りギリシャに到着する難民が減ったのは事実なので、EU諸国もトルコに対して強行な反対はしていない。

ところがこのところトルコ政権とドイツの間がさらに悪化してしまった。昨年夏にZDFの番組でコメディアンがエルドワン大統領を馬鹿にする詩を放送した。これに怒ったエルドワン大統領は「外国の元首に対する侮辱」を理由にドイツを非難しコメディアンをドイツの法廷に提訴した。ドイツ国内では言論の自由を主張する人が多かったが、難民対策の危機になりかねないのでドイツの法廷はコメディアンに対して有罪の判決を下した。

それ以降複数のドイツの新聞のアンカラの特派員がスパイ容疑で逮捕され、中にはテロリストと名指しされている人もいる。トルコは大統領に更なる権力を集中させるため、憲法改正の国民投票を予定しているのだが、ドイツ国内に住むトルコ人はトルコの選挙権を持つ人も多いため、ドイツで国内で選挙運動を繰り広げている。これに対してはドイツだけでなくオーストリアの首相も反対していて、EUとしてトルコに抗議すべきだとしている。

エルドワン大統領は今日の国民投票のキャンペーンの演説で、「ドイツは民主主義がわかっていない。まるでナチのように高圧的だ」と批判。さすがにドイツの政治家の多くがこの発言に怒りを感じて、日曜日のテレビ番組で発言していた。

メルケル首相はじめベルリンは週明けに対応を検討する必要に迫られている。
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