クラシックおっかけ日記

指揮者アダム・フィッシャーのおっかけ記録、音楽の話、海外生活など

ロイヤルオペラの厳重警備

マンチェスターのコンサートでの爆弾テロ事件を受けて、イギリス国内の警戒レベルが引き上げられたことに伴い、劇場の警備のあり方も見直しがされている。ロンドンのロイヤルオペラも例外ではなく、警備員を増強するとともに、入場の際の持ち物検査も行うとの事。

ロイヤルオペラは入場に際しては極力バッグを持ち込まないように呼びかけている。持ってきたとしてもハンドバッグサイズで、もちろん中をチェックするので、時間の余裕を十分とって劇場に来るようにというプレス・リリースを発表した。

ロイヤルオペラ以外の劇場、例えばロイヤル・フェスティバル・ホールなどはどうなるかはわからない。今年の3月に行った時は、ロイヤルオペラはバッグの中身を確認したけれどフェスティバルホールはそれはなかった。ロンドンの劇場はクロークが有料なのでコート等を中に持ち込む人は多く、その点の改善は必要かもしれない。

テロへの対応というのはわかるけれど、せっかくの公演の前にバッグを調べられたりして雰囲気を台無しにされたくないと思う人は多いかもしれない。家で映画を見ればいちいちチェックされる心配はないし。

今のところベルリンでは劇場でのチェックはそれほど厳しくない。もちろんサッカーの試合やブランデンブルグ門前のイベントなど数万人の集まるイベントでは大型のバッグは持ち込み不可で中身のチェックは行うが、観客がせいぜい千人から2千人のクラシックのイベントではチケットのチェックのみ。安全は重要だから仕方がないが、やっぱり娯楽の前の物々しい警備は雰囲気を壊すので好ましくない。

3Dプリンタによるストラディヴァリ

技術の進歩は人々の生活を大幅に変えるけれど、新しい技術により過去の工芸品を復活させようという動きもある。3Dプリンティング技術のスペシャリストで工業デザイナーのギリシャ人、ハリス・マツァンディス氏は、ストラディヴァリのヴァイオリンを3Dプリンタを使って複製した。これはヴァイオリン・デジタルプロジェクトの一環で、1677年製の「日の出」と呼ばれるストラディヴァリをモデルにした。

ヴァイオリンは40の部品から構成され制作には9ヶ月かかった。部品の一部は木製フィラメントという、3Dプリンタのための木製繊維素材を用い、フィンガーポードなどには本物の木製だそうだ。もちろん実際のストラディヴァリに近いものらしい。

マツァンディス氏によれば、一番難しいことは制作された部品を弦の張力に耐えうるように組み立てて、なおかつプラスチックのような音ではなく、ストラディヴァリの持つ自然で豊かな響きを再現することだそうだ。

EUからイギリスへの移民が減少

EUの27カ国は物資、資金、サービス、人の移動の自由をモットーにしている。イギリスはシェンゲン条約には加入していないから入国する時にパスポートはチェックするが、EU市民はイギリス国民と同様の権利が保障され、入国は自由だしイギリス国内で就労もできる。でも国民投票後、EUからの移民は激減し、逆に帰国する人が増加したそうだ。

ポーランドやスロバキアなど旧東欧諸国がEUに加盟て以来、これらの国からイギリスへ移民が増ので、これを問題視した人々が゜国民投票でEU離脱に投票した。だからメイ首相はEUから離脱した暁には、EU内外を問わず、移民の総数を年間数万人にすると公約している。

その影響もあってか、2015年には18万4千人いたEUからの移民が、昨年は13万3千人と5万人も減った。さらにイギリスから国外に移ったEUからの外国人の数は2015年は8万6千人だったのに昨年は11万7千人に増加した。つまりEUからのイギリスへの移民は1年間で8万人も減少したことになる。

イギリス国内からEUに移住した人は3百万人という話だが、イギリス政府は統計を取っていないので実際の人数は把握していない。でも国民投票後、イギリスの永住権を申請する人が激増した。でもこれも簡単ではないらしい。

イギリスの永住権を取得するためにはまず85ページにも及ぶ申請書を提出しなければならない。これにはイギリスに最初に入国した時から国外に出た記録が必要。長年イギリスに住んでいる人はその記録を調べるのだって大変だ。それにイギリス人と結婚しているというだけでは永住権はもらえない。長年働いて税金を支払っているなど、自身がイギリスに貢献していることを証明しないといけない。

イギリス人と結婚して20年以上働き子供二人を含めた家族でロンドン郊外に住んでいたオランダ国籍の女性が、国民投票後永住権を申請した。申請にはパスポートの原本が必要なのだが、提出すると数ヶ月かかる審査の間にイギリス国内から出られない。でも仕事の関係でヨーロッパには頻繁に出張があるから、公証人の証明の入ったコピーを提出し、さらに必要な場合は移民局に原本を持参するという手紙を同封して申請した。でも
その3ヵ月後に移民局から届いた知らせは、パスポートの原本が無いので申請は却下。その通知には「滞在を許可する理由が無いから即刻国外に退去せよ」とも書いてあったそうだ。

その人は弁護士を立てて争って結局永住権を勝ち取ったらしいのだが、イギリスの移民局の対応が悪く、申請した人の10パーセント以上は拒否されている。それに増加する永住権の申請を処理するだけの人員がいない。もし300万人いるEUからの移民が永住権の申請が必要になれば、現在の移民局の能力では処理するのに11年以上かかる。それでは大混乱に陥ってしまう。

その実情を心配する人も多く、イギリスへの移民に二の足を踏む外国人も多い。ハイテク産業ではEUのみならず、インドやパキスタンなどからの移民も激減し、求人に応募する人が半分近くに減ったそうだ。その他医療や介護業務やホテル・レストラン業界は外国人の移民に頼っているため、今後の人手不足が深刻になるという予測もある。

Kirchentagとドイツの父の日

明日はドイツでは明日はキリスト昇天祭の祭日。2年に1度この時期にドイツ国内のプロテスタント教会の統一イベントが開かれるのだが、今年はマルティン・ルターの宗教改革から500年という事で、ベルリンとルターが教会の扉に95か条の論題を打ちつけたヴィッテンベルグも会場になる。

このイベントにはドイツ各地からたくさんのお客さんがやってきて、色々なイベントに参加する。オバマ前大統領もブランデンブルグ門の前で演説をするらしい。ベルリンの中心部にはイベントの内容を示す案内板が色々なところに立っているし、ブランデンブルグ門の周辺はセキュリティ・エリアになっていてイベント参加者のみ。マンチェスターの事件の後だから、入場チェックはかなり厳しそうだ。

キリスト昇天祭はドイツでは父の日とも呼ばれている。日本では父の日は6月の第三日曜日だけど、これはアメリカの影響か。フィンランドでは秋らしいし、どうやら国によって異なるらしい。

ドイツの父の日は「男性の日」とも呼ばれていて、この日に男性が連れ立ってピクニックに行き、昼間からビールを飲んで騒ぐのだとか。ドイツ人というのは周期的に同じ行事をする事が好きな民族らしく、「毎年この日には河でボートに乗ってバーベキューをする」などと、イベントの内容まで決めている人もいる。どうやら天気は良さそうだけど、ベルリン市内はKirchentagで人が多そう。

ドイツで好まれるドラマ

ドイツで人気のあるテレビ番組は何と言っても刑事物。有名なものではTartort(日本語に訳すと「犯行現場」)というシリーズがあって、長年続いている。日本の場合は制作会社が首都圏に集中している関係でドラマの舞台も東京が多いが、ドイツの場合は刑事物でもその土地の雰囲気を出したドラマを作る。ハンブルグだと港の風景が映るし、シュトゥットガルトなら登場人物がシュワーベンのアクセントで話すなど、同じシリーズでも主要キャストが交代する。

なぜドイツ人が刑事物が好きかと言えば、1時間で事件が解決するしドラマのテンポもそれほど早くないのでお年寄りでもストーリーについていけるからだという記事を読んだことがある。日本でいうなら時代劇みたいな安心感があるのかも。

そういう点で007シリーズの映画もドイツでは人気が高い。街の電気屋ではよく007シリーズのDVDを特価で売っているし、新作が発表されるといつも話題になる。これも途中にアクションがあり、最期は007が勝つことになっているから安心して見ていられるのかも知れない。それに1960年から70年代は東西に分断されていたドイツはスパイ戦の舞台だったから、007の物語にもドイツは良く出てきた。その関係もあるのかもしれない。

だからロジャー・ムーアの死去のニュースはテレビや新聞で大々的に取り上げられている。午後8時からのニュースでも東西ベルリンの接点だったチェックポイント・チャーリーでのロケの映像をニュースで放送して、死を悼んでいた。

サイモン・ラトルのインタビュー

サイモン・ラトルは来シーズンがベルリンフィルの監督としては最後で、同時にロンドンとの契約もスタートする。そのラトルがベルリンナー・モルゲンポスト紙のインタビューに答えている。

ラトルはシラー劇場で「ファウストの劫罰」に出演中。このインタビューでラトルはドイツ語の勉強のために、オリジナルのシラーの戯曲をテキストにしたのだとか。オペラの音楽監督にならなかった理由を問われて、「タイミングが悪かった」と答えている。話しが来なかったわけではないのだが、ヴェルディなどのイタリア・オペラの経験も少ないし、監督としてオペラ座を率いる事は自分には難しいと感じているみたい。

ラトルはロンドンにロンドン響の新しいホールを作ることに賛成しているが、これはロンドン響との契約には関係ないそうだ。オーケストラはずっと以前から計画していて、ラトルは助ける立場。このホールは国からの支援は無いが、ロンドン市や財界などから寄付を募っているとのこと。税金で支援してもらうと、国民のためのプログラムにするなど後で注文がつくから、かえって良かったと言っている。

でもイギリスのEU離脱に関しては「自傷行為」とかなり厳しい。過去11ヶ月にロンドン今日はヨーロッパからのオーディションの受験者が減ったそうで、芸術にとってはBREXITの打撃は大きそう。

イギリスにおける外国語教育

イギリスのEU離脱に関するニュースほど英語とドイツ語の論調が異なるテーマほ少ない。Brexitは確かに重要なテーマではあるが、EUには他にもたくさんの案件がある。現時点ではイギリス国内の選挙があって実質の交渉は始まっていないし、ニュースの割合はそれほど多くは無い。でも多くの人は英語の新聞記事も読んでいる。

英語のニュースでは選挙の関係もあって強気の発言がたくさん。Brexit担当相はEUが分担金の支払いを要求するなら交渉の場を立ち去ると言っている。EU側が何度も離脱協議の目処が立たないと将来の貿易関係の交渉には応じられないと言っているのに、政治家たちは全く無視だし、それを追求するメディアも少ない。これは多分英語以外の情報が入ってこないからではないかと想像する。

意外かもしれないけれどハイドンはイギリスで人気が高く、毎年9月のハイドンターゲにはイギリスからの観光客が多数訪れる。そのほとんどは観光バスによる団体ツアー客なのだが、バスに同乗してアイゼンシュタットからハンガリー側のフェルトード旅したことがある。途中ハンガリーの地方都市のショプロンで街の観光とわずかな自由行動があったので、ツアーの音楽ガイド役を務めるジャーナリストと一緒に小さなカフェに入ったのだが、このジャーナリストはハンガリーのフォリントも所有していない。それに「英語は世界中で通じて当たり前だ」と注文を理解してもらえないことにとても腹を立てていた。

ショプロンなんて人口6万人にも満たない小都市で、ブダペストまでは200キロ近くはなれている。それに入ったカフェは地元の人向けで観光客などほとんど行かない。そんなところで英語が通じわけが無い。結局その場は私がハンガリーのフォリントを持っていたし片言のハンガリー語で対処したが、イギリスである程度名前の知れたジャーナリストらしいけれど、そんな事も想像できないなんてとても驚いた。

もちろんたった一人を例に国民全体を語るわけには行かないけれど、イギリスにおいて外国語教育が盛んでないのは想像できる。20年以上昔、アダムはロイヤルオペラでの仕事がたくさんあったので、家族とともにロンドンに引っ越したことがあった。子供たちは中学生くらいだったので語学教育に熱心な奥さんも英語教育のためにも良いと同意したのだそうだ。でも本来は2年の予定だったのだけれど、1年であわててドイツに戻ってしまった。その理由は外国語教育のレペルが低く、子供たちは当時勉強中だったフランス語をすっかり忘れてしまったのだそうだ。

Brexitなどイギリスの現状を見ると、語学のみならず外国に対する興味の薄さに驚いてしまう。

マーラー4番のCDまもなく発売

アダム・フィッシャーとデュッセルドルフ響のマーラー交響曲全集の第2段として、交響曲第4番のCDがまもなく発売される。ソプラノ・ソロはハンナ・エリザベス・ミュラー。

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デュッセルドルフの地元Westdeutsche Zeitungによれは、まずデュッセルドルフのトーンハレで先行発売し、その後世界中のマーケットにも出回る予定。7番のCDと同様、日本ではタワーレコードやHMVが輸入するのではないかと期待している。でもトーンハレで買ったほうがずっと安いので、出張などでデュッセルドルフに行く機会があるなら、演奏会を聴いたついでに購入するのがよいかもしれない。

音質もなかなか良いらしく、コンサートホールの良い席で演奏を聴いてるような感じだそうだ。

デンマーク放送響との久々の競演

デンマーク放送響のラジオ生中継が先ほど終了した。お客さんの反応は熱狂的でドラマチックな演奏だった。デンマーク放送響は1990年代に客演しているが、室内管の監督になった1999年以降は縁がない。だからアダムはデンマークではモーツァルトやベートーベンなどウィーン古典派の専門家で、室内オーケストラの指揮者として有名で、マーラーというのは意外なのかもしれない。

デンマーク室内管は2014年までは放送局に所属していたから、格下のミニオーケストラのように扱われていた。デンマーク放送響がN響だとすれば、デンマーク室内管は紅白歌合戦の伴奏をする東京放送交響楽団みたいな位置づけ。滅多にないクラシックの演奏会ではモーツァルトに力を入れようとアダムを招いたのが始まりで、20年に間に室内管は実力をつけて国際的にも知られる団体になった。でも放送局のトップと文化大臣の合意により室内管は放送局から解雇された経緯もあり、室内管のメンバーの中にはデンマーク放送全体を敵視する雰囲気もあった。

室内管と放送局が和解する条件としてアダムがデンマーク放送響に客演することになった次第。アダムとしては室内管と競合する演目は避けたいので、編成の大きなマーラー6番を選んだのだけれど、良く考えたらこのオーケストラは良く知らない。それにマーラー6番も10年ぶりという事で大分プレッシャーがかかったらしい。アダムにとってマーラー6番のイメージは疫病が流行する不毛な風景らしく、20年前に都響で演奏した時も本番の前には鬱状態に近かった。今回も同様みたい。

ただ10年ぶりのマーラー6番という事で演奏は大分変った。第一楽章のテンポは以前よりも速くなったし、スケルツォとアンダンテの順序を入れ替えた。この辺はまだ実験段階だそうで、デュッセルドルフのレコーディングでどうするかは不明。ハンマーは3回は以前と同様。

本番終了後、放送時間が余ったのでデンマーク放送のアナウンサーはアダムにインタビューしていた。たぶんへとへとで頭もよく回らないらしく、英語のインタビューは大変そう。よくわからない答えをしていたのだが、意訳すると「とてもエモーショナルな作品で一部音楽に流されそうになりましたが、それでは指揮ができないので何とか客観的でいられたと思います。」というような内容だったと思う。マーラー6番の終演直後に指揮者にインタビューするのは酷でしょう。

アダム・フィッシャーとマーラー6番

デンマーク室内管はデンマーク放送から解雇されてしまったから、一時期デンマーク放送とは関係が悪化してしまい、去年と一昨年のコンサートはラジオの収録はなかった。でも放送局の内部には何とか室内管を助けようと考える人も多数いて、今年からはラジオ収録も復活し、合唱団の費用の負担やベートーベンの録音のスタジオ提供など、いろいろな面で協力することになった。その条件の一つがアダムのデンマーク放送響への客演。室内管の演奏会とダブらないように、室内管では絶対に演奏できない大編成のマーラー6番ということになった。明日はその演奏会の生中継。

マーラーのリハーサルは月曜日の朝からだったのだが、その進行をどうするか悩んでいた。「マーラー6番は長いから金管楽器大変で、本番の直前にゲネプロをやるわけには行かないんだよ。前日に通すようにすると1回分リハーサルが少なくなっちゃう。でも弦楽器などは出来るだけ時間を使いたいから、オーケストラの内部で対立しちゃう。とにかく明日のリハーサルの最初の30分で、リハーサルが1回少なくても弦楽器が大丈夫かどうか、判断しなくちゃいけない。」と緊張気味。そういえば都響とマーラー6番をやった時も同じ問題があって、本番直前のゲネプロは難しいところを合わせるだけで、通して演奏したのはその前日だけだった。

「マーラー6番は2〜3回演奏してるかなぁ、でもここ10年はやってないから。」と少し不安そう。「私が聴いただけで6つの異なるオーケストラで演奏しているよ。」と指摘すると、「そんなにやっていたかなぁ。最初がカッセルなんだよね。それから東京でもやったね。あとはマンハイムとハンガリー放送響かな。」

それ以外にはウィーン響とバンベルグ響、バイエルン国立歌劇場オーケストラと演奏しているし、再来年にはデュッセルドルフ響との録音プロジェクトもある。


No.361、 2017年5月14日、デンマーク室内管、ベートーベン・モーツァルト・シューベルト

日曜日に聴いたデンマーク室内管の演奏会はベートーベンとモーツァルト、シューベルトというウィーン古典派のプログラム。

Danmarks UnderholdningsOrkester
DR VokalEnsemblet
Dirigent: Adam Fischer
Klaver Karine Gislinge

Beethoven: Leonora ouverture nr. 3.
Mozart: Klaverkoncert nr. 9, Jeunehomme.
Schubert: Messe, Es-dur


1曲目のレオノーレ3番はオーケストラのショーピース。1週間前のウィーン英雄広場のコンサートでも演奏している。その時は野外だったし風が強くてオーケストラは大変そうだったけれど、この演奏会はオーケストラが実力を発揮してよい演奏だった。でもやっぱりウィーン国立歌劇場オーケストラの演奏ほどではないかな。やっぱりこの曲はオペラのフィナーレの前に演奏された方が盛り上がる。今回の演奏会の他のプログラムはオーケストラは伴奏に回るので、オーケストラの希望で1曲目の序曲をレオノーレ3番にしたのだとか。序曲にしてはちょっと長いけど。

2曲目はモーツァルトのピアノ協奏曲第9番。ソロは地元デンマークのカリネ・ギースリンゲ。この曲はモーツァルトの協奏曲としては長く、45分くらい。軽快な第1楽章はよかったけど、第2楽章になると少々退屈。第3楽章はオーケストラとの掛け合いも良く合っていた。すごいと思わせるほどではないけれど、心地よいソロだった。

後半はシューベルトのミサ曲。この曲は合唱ばかりでソリストが歌うのは1曲しかない。その時は合唱団の中から3人が舞台左手奥に出てきて歌った。歌曲の王といわれるシューベルトのミサ曲だから、美しいメロディでとても良かった。合唱団もアンサンブルが素晴らしく、上々の出来。この作品はもっと演奏されても良いとも思うけど、合唱団が主役でオーケストラの演奏会には向かないのかもしれない。演奏時間も55分と長めだし。

演奏会全体としてプログラムが長く、20分の休憩をはさんで終了したのは午後6時10分くらい。この演奏会はヨーロッパ時間で17日の午後7時20分から、日本時間だと18日の午前2時20分からデンマークP2で放送される。

コペンハーゲン旅模様

昨日の日曜日はデンマーク室内管の演奏会を聴きにコペンハーゲンまで日帰り。言葉も通貨も違う街への日帰りなんて日本ではやる方は少ないだろうけど、ベルリンとコペンハーゲンはそれほど離れていないし、格安航空会社がたくさん飛んでいるドイツでは簡単にできる。でも格安航空会社は便数が限られるから、適当な時間にあるとは限らないけど。

ベルリンのショーネフェルド空港からコペンハーゲンまではイージージェットが飛んでいる。去年まではベルリン発が日曜日の午前9時だったので、朝7時前に家を出ればコペンハーゲン空港には10時半頃に到着していた。年が明けてからはベルリン発の時間が早くなり午前7時20分。これだと朝5時に出ることになるが、コペンハーゲンの空港には8時半頃に到着する。コンサートは16時始まりなのでこれだけだと少し早すぎるのだが、本番前のリハーサルが朝10時からあるので、余裕でリハーサル見学ができるようになった。

デンマーク室内管のメンバーともだいぶ顔なじみになったのだが、昨日の演奏会は第2ヴァイオリンの準首席のクリスチャンがなぜか第一ヴァイオリンにすわっている。ポジションが変ったのかと思ったのだが、「リハーサルの始まる前にパキスタンで演奏会があってね。あわてて戻って来たんだけどコペンハーゲンに着いたのが金曜日の夜で、最初のリハーサルには間に合わなかったんだ。アダムがは全部のリハーサルに出る人が優先というのであきらめたんだけど、第一ヴァイオリンの一人が急病になったので代役ででたわけ。」

デンマーク室内管がデンマーク放送所属に所属していた頃は、ポップスの演奏会もたくさんあったしテレビドラマの録音もあってメンバーはフルタイムで忙しかった。でも放送局から独立した今は年間数回のプロジェクトしかない。ベテラン勢は年金ももらえるから楽器を教えたり小さなアンサンブルの演奏会に参加する等しているが、若手はエキストラとして他の楽団に参加するなどとても忙しそう。他にもロンドンの楽団に参加しながらアダムとの演奏会にはコペンハーゲンに戻ってくる人や、やはりアジアでの演奏旅行から帰国して、空港からリハーサルに直行してマーラー4番を演奏した人など、オーケストラのメンバーは旅が多くて忙しそうだ。

EUとUKのギャップ

イギリスのメイ首相は3月末に正式にEU離脱を通告したが、選挙を前倒ししたことにより実質の交渉ほとんど行われていない。選挙があると政治家は色々な事を主張するわけだが、とりわけイギリスの政治家並びにメディアは嘘が激しい。国民投票の時も離脱派のトップだったボリス・ジョンソン現外相は、「イギリスはEUに毎週3億5千万ユーロ支払っている。これを資金難の紺民健康保険に使おう」とキャンペーンして回った。ところが投票が終ると、「毎週3億5千万ユーロというのはイギリスからEUに向けた支払いだが、農業補助金などイギリスはEUから支払いを受けているので、国民健康保険の資金を毎週3億5千万ユーロ増加させるのは不可能」と開き直っている。

そのボリス・ジョンソン外相は「EUの主張する脱退金に対する交渉には応じられない。それどころか、イギリスがEUに加盟していた間にEUが取得した資産はイギリスにも権利があり、EUはその資産分を支払う義務がある」などと言っている。これはとんでもないレトリック。ゴルフクラブから脱退する人が、「私が会員だった間に拡張したクラブの資産の一部は私のものだ」と主張しているようなもの。クラブが自主的に解散するならその資産は会員に分割することはあるかもしれないが、勝手に脱退するのにその理論は無いでしょう。

イギリス国内の世論というのはヨーロッパから見ると本当に他の宇宙での論争みたいなのだが、EU市民に対するイギリスのEU離脱についてのアンケートの結果が発表された。これはEU内の9カ国の市民を対象にしたもので、その9割以上が「交渉に当たってはEU市民の利益を最優先すべき」という意見に賛成している。その他「イギリス内在住のEU市民の権利を優先して交渉すべき」には8割が賛成しているが、「イギリス経済の健全性も考えて交渉する。」という項目はわずか55パーセントしか賛成していない。

つまりほとんどのEU市民はEUの交渉方針に対して賛成していて、経済的将来の関係の合意のない「ハード・ブレクジット」を望んでいる。メイ首相はじめイギリスの政府は「悪い合意より、合意が無いほうがよい」と主張しているので、このままでは合意なしのハード・ブレクジットの可能性が高い。

グスタヴォ・ドゥダメルとベネズエラ

グスタヴォ・ドゥダメルはベネズエラの音楽教育「エル・システマ」の寵児で、シモン・ボリバル・オーケストラを率いて世界中を回り、ベネズエラの音楽教育の素晴らしさの宣伝に一役買っている。でも最近のベネズエラは独裁が強まり、反対する市民のデモが毎日のように繰り返されている。そこでドゥダメルは政府を批判する声明を発表したのだけれど、その反応はあまりよくなかった。

ベネズエラと言えば、ウゴス・チャペス大統領が作った共産主義国家というイメージが強く、アメリカのブッシュ大統領を悪魔扱いしたりして国際的には話題になっていた。そのチャベス大統領を引き継いだマドゥロ大統領の政策が悪く、さらには原油価格の落ち込みで国の収入が激減したこともあって、国民は貧困に喘いでいる。その政府は国会の決定を廃止し独裁性を強めていて、最近は2012年の大統領選挙の野党候補に15年間政治活動を禁止させた。それに反対した市民がデモを繰り返し、警察隊との衝突で何人もの人が亡くなっている。

ドゥダメルとシモン・ボリバル・オーケストラはもちろん政府の支援によって音楽を学んだわけで、ベネズエラ政府の広告塔としての性格もある。だから政府に反対する人々にとってはドゥダメルは政府側と見られていて、いままで表立った政府批判はしてこなかった。

ところが最近、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラの18歳のメンバーが反政府でもに参加したところ、政府を支援する人物により射殺しれた。さすがに黙っているわけには行かなくなり、ドゥダメルは政府を批判する声明を発表した。ところが今までベネズエラ政府側の人間と見られていただけに、その反応はかなり冷たかったみたい。

政府側から見れば今まで支援していたのに寝返った裏切り者だし、反政府側にしてみればToo little Too lateという事になる。ドゥダメルは何年も前からベネズエラ政府寄りの姿勢が批判されてきたし、ヨーロッパやアメリカでの名声もベネズエラ政府の資金的な支援が無ければ難しいという見方もある。というのもドゥダメルとシモン・ボリバル・オーケストラはクラシック界のスターメイカーといわれる広告エージェントと契約している。その広告代理店の判断なのか、ドゥダメルはキャリアの初期にローマ法王のための演奏会や野外でのコンサートなど、テレビ中継されて注目を浴びる演奏会に多数出演し、クラシックファン以外にも知名度を上げて活動の場を増やしてきた。

ドゥダメルにとっては意を決した政府批判なんだろうけど、ヨーロッパのメディアの反応はほとんど無く、取り上げる新聞も少ない。音楽業界内部から見るとドゥダメルはゲルギエフと並んで独裁政権に親しく好意的な人物。ベネズエラはヨーロッパからは遠く関心も低いため、ヨーロッパの音楽業界ではこの声明は話題にならないし、今回もマーケティング目当てのポーズのみと批判する人もいる。

フルトヴェングラーなど時の政権に近く広告塔として活躍した指揮者も多い。支援があればキャリア形成には有利だけど、その政権の評判が落ちると指揮者にも影響が大きいから、ドゥダメルの将来にも影響があるかもしれない。

オーストリア解放記念日のコンサート

5月8日はオーストリアのナチからの解放記念日。この日を祝ってウィーンの英雄広場では無料の野外コンサートが開かれる。主催はマウトハウゼン委員会でオーケストラはウィーン響。過去にはドホナーニやフィリップ・ジョルダンが指揮したこともあるけれど、今年はアダム・フィッシャー。プログラムはウィーンの若手をソリストに迎えたメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲やベートーベンの序曲等。休憩は無いけれど、終戦を経験した時代証人のスピーチも途中に挟んだ演奏会。

あいにく天候が悪く、小雨に気温が低くて途中で帰るお客さんもいたけれど、後方の立見席の人も含めて4000人以上が集まったらしい。この模様はORF3で生中継されたけど、残念ながらオーストリア国外では観られない。ネットでのオンデマンドも同じ。そのうちにドイツの3satあたりて放送する事を期待。

アダムの次のプロジェクトはコペンハーゲンで、日曜日にデンマーク室内管との演奏会があり、その後すぐ来週にはデンマーク放送響とのマーラー6番がある。昨日と今日はお休みのはずだけど、なぜか電話がかかってきて案件を頼まれた。

実は1年前アダムの友人が60歳を迎えるので、プレゼント用にハイドンの交響曲60番のCD制作を頼まれた。それがすごく喜ばれたらしく今年は61番を送りたいという。他にも60歳になる人がいるので60番も必要だし、さらに「実は僕の昔のドイツ語の先生が演奏会に来てくれてね。その人は今年103歳になるから103番もお願い。」と頼まれてしまった。確かに104歳以下の人ならだれでも対応できる万能プレゼントではある。

2017年5月5日、サイモン・ラトル指揮ベルリンフィル、ブルックナー8番他

5日にはベルリンフィルの演奏会に行った。これはシリーズの5回目の演奏会。

Berliner Philharmoniker
Sir Simon Rattle Dirigent

Simon Holt: Surcos Auftragswerk der Stiftung Berliner Philharmoniker Urauffuhrung
Anton Bruckner: Symphonie Nr. 8 c-Moll (Fassung von Robert Haas)

サイモン・ラトルの登場も今シーズン数回と来シーズンを残すのみとなり、立見席や舞台上のポディウムプラッツも満席の演奏会。

最初の曲は新作初演で演奏時間は比較的短く5‐6分。新作だからよくわからないのだが、10分以下なら不思議な作品でも耐えられる。それにベルリンフィルは音色が明るいのでオーケストラの実力を試すのはよい作品かもしれない。

その後は休憩無しでブルックナーの8番。私はどうもブルックナーは苦手なのだが、他にも集中を切らせたお客さんもいて、後半には頭を動かす人が多数見受けられた。金管楽器が強奏したり、さすがにベルリンフィルならではの美しいハーモニーはところどころで聴こえるのだけれど、音が小さい部分では緊張が緩みがち。

やっぱりブルックナーは好きではない。

FAZの記事とその後

昨日はフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングのメイ首相とユンケルEU委員長の大失敗夕食会の話を書いた。これは明らかに委員長周辺が漏らしたものだ。多分EU側のリークの意図はメイ首相周辺に事の重大さを理解してもらい、イギリス国民にしっかり説明して欲しいからと考えられる。ところがイギリス側はその意図を全く理解していないようだ。

FAZの記事について質問されたメイ首相は「ブリュッセルのゴシップ」と記事を無視した。数日後にはフランスの選挙があり、こんな記事など放っておけばニュースからはずされ忘れ去られてしまう。ところがメイ首相はEUの選挙に対する不当な干渉だと、EU首脳や交渉代表さらには各国の政府まで含めて大々的に批判した。メイ首相の対抗馬である労働党だってEU離脱に賛成していたわけだし、EUが労働党が政権を取るように画策するなど冗談でしかないのだが、イギリスのメディアはこぞってEUが選挙に干渉しようとしていると批判している。

さらに何を根拠にしたのか、EUは脱退金として一千億ユーロ要求しているなどという記事を新聞が掲載し、反EUの雰囲気を煽っている。EUが選挙に干渉しているのではなく、メイ首相がFAZの記事を利用してEUとの対立構造を煽っているように見える。これは保守党にとっては選挙戦を勝ち抜く素晴らしい戦略だけど、その後に控えている離脱交渉については問題だ。EUにとっては交渉相手の政治基盤が強ければ譲歩を国民に向けて説明できるので都合がよい。でも現実が見えていない強行派が支持の中心となれば、交渉に必要な妥協が出来なくて決裂する可能性が高くなる。

それにこの態度はイギリスの立場を悪くしている。EUはイギリスが払う分担金の金額は交渉で決めるとしてあえて金額を指定していない。ところがイギリスのメディアが一千億ユーロなどととんでもない金額を報道しているので、それを否定するためにはEU内で概算を算出するしかない。でも一度EU側の金額が出てしまうと、それを覆すのは27カ国の首脳を説得する合理的な理由が必要だ。「イギリスが払いたくないと言っているから」なんていう理由で金額を減らすなら反対が出てEU側が合意できない。メイ首相対EU27カ国という対立構造を打ち立てて選挙を有利に進めても、実際の交渉ではそれが仇になる。

イギリスの頑なな態度をみて、ヨーロッパのメディアもイギリス批判を強めている。メイ首相の交渉戦略には誤算がたくさんあるしリスクが高いというのが主流で、中には「メイ首相はドナルド・トランプやマリーヌ・ルペンと同じポヒュリスト」と厳しく評価する新聞もある。トランプ政権にはトランプ本人の意向に関わらず前大統領が盗聴したなどと証拠もなしに糾弾するのは好ましくないと考える人がいるし、NATOやロシアとの関係などはトランプ大統領を教え諭す人が周囲にいる。でもメイ首相とイギリス政府は揃ってEU離脱に関して勝手な幻想を抱いているから手に負えない、とまで言い切るメディアもある。

たしかにフランスの大統領選挙についても、極右のルペンを表立って応援することはイギリスのメディアでもなかったが、マカロンが勝利するとイギリスにとっては厳しくなると否定的な記事はたくさん出ている。あくまで自国中心主義で、40年EUに加盟しているのに理念など理解していないらしい。今後始まるイギリスのEU離脱交渉はとても厳しい交渉になると思われる。

メイ首相の大失敗夕食会続き

昨日に続いてロンドンの首相官邸で開かれたメイ首相とユンケルEU委員会長の会食に関するフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングの報道。メイ首相とユンケル委員長の意見は全てに関して平行線だったのだけれど、以下のやり取りがあったそうだ。

まずメイ首相は離脱交渉は合意締結まで非公開とすることを主張している。でもEU側は27カ国の政府の承認が必要だから情報は交渉途中でも速やかに公開する義務がある。それからイギリス側は離脱交渉よりも将来EUとイギリスこの関係つまり通商交渉を優先したいのだが、EU側はずっと以前から離脱の交渉の目処が付いてから出ないと将来の話はしないと明言している。この件については報道はもちろんだけど、夕食会の前にも伝えている。

でもメイ首相は「UKの離脱を成功されましょう」とEU側の意向など全く無視。そこでユンケル議長が「イギリスは第三国扱いになるので、(トルコなど)通商条約を締結している国よりも下になる。離脱が成功するわけは無いでしょう」と否定した。するとメイ首相は今始めて聞いたというようにビックリしたらしい。

それ以外の大きな問題はEUの分担金。イギリスのメディアは離婚になぞらえて「慰謝料」とか「脱退金」などと言っているがそれは間違い。組織が大きいEUは長期的な予算が必要で、7年先までの予算を決定する。現行の予算は2020年までをカバーし、その交渉は2012年に行われた。その時は脱退するなどと思っていなかったので、イギリス政府は2020年までの分担金の支払いを約束した。EU側はこの約束の遵守を求めているだけで、別に脱退のための罰金を払えといっているわけではない。

ところがイギリス側は脱退するのだから支払いの義務は無いと主張。離脱してしまえばヨーロッパ中央裁判所の決める法律に従う義務は無いから支払い義務も無いということらしい。それに対してユンケル委員長の主張は、ヨーロッパ中央裁判所の裁定に従って、EU離脱条件はEU委員会が代表して交渉し、各国政府の多数決により承認される。でもイギリスがヨーロッパ中央裁判所を否定するなら、全27カ国の議会の承認が必要になり、離脱手続きははるかに複雑になる。それで困るのはイギリス側だという主張。

そんな状態で議論は全くかみ合わず、ユンケル委員長は「来た時よりも10倍懐疑的になった」というコメントを残して首相官邸を後にした。その後すぐにメルケル首相に電話をし、「メイ首相は別の宇宙に住んでいる」といったと言う。それを受けてメルケル首相は翌日のドイツ国会でのスピーチで、「イギリスの政治家には未だに国民投票の結果に酔っていて、現実が見えていないひとがいる。」との文面を入れたのだとか。

以上がFAZに掲載されたメイ首相の大失敗夕食会の内幕。

メイ首相の大失敗夕食会

ヨーロッパに関する日本のニュースは英語経由だから、イギリスのEU離脱に関するニュースのほとんどはイギリス側に立っている。だからEU側がどう考えているかは日本には伝わらない。イギリスが選挙を前倒しにしたとか、メイ首相が権力強化を図ると交渉をスムーズる事が出来ると好評しているが、実際はそんなに簡単ではない。EUの残り27国がイギリスの離脱交渉のガイドラインをわずか4分で採択した当日にも既に多難な前途を予想される一件があった。

この日イギリスのメイ首相はユンケルEU委員長とEUの首席交渉担当を首相官邸での夕食会に招待した。夕食会の後の双方ともに「建設的な会談だった」というコメントを残したのだが、ドイツの新聞FAZが4日後に詳細を報道したところによれば、イギリスとEUの差は天と地以上にありそう。

FAZの記事に対してイギリスのメディアは大反対して色々と話題になったのだが、英語に要約されたものを読んでもEU側の苛立ちはわからない。そこでドイツ語の元の記事を読んでみたのだが、メイ首相がEUの基本姿勢を理解するどころか、交渉の難しさの現実についても理解していないことが明らか。

この夕食会の前にメイ首相は2回EU首脳と会っている。その時にEU側の基本方針は伝えているし、メディアも報道している。ところが全然理解していないようで、イギリスの言い分が正しいというような態度だったそうだ。

まずEUとして重視しているのはイギリス国内にいるEU市民の扱い。EUとしては既に入国してイギリスに税金も払っているのだから、従来通りイギリス人と同様の権利を保障すべきと主張している。これに対してメイ首相の意見では、この問題は6月末に解決できるという。選挙の後わずか2週間でどうやって解決するのかユンケル委員長が質問すると、メイ首相はEU市民は第三国からの移民と同等に扱うという。つまり新たに永住権を申請して許可されないとイギリス内に滞在できない。それはEUとしては受け入れられないし、他にも色々な問題がある。EU内の健康保険はイギリスでも有効だし、イギリス人がヨーロッパを旅行した時もイギリスの保険でヨーロッパ内はカバーされる。EUを第三国と扱うならイギリス人旅行者も特典を失うわけで、そんなに簡単に決められない。それ以外にも外国人の年金の問題等決定しなければ鳴らない事は山ほどあり、2週間で決着できるほど単純な問題ではない。

FAZの記事によれば、ユンケル委員長はEUとカナダの貿易条約とクロアチアのEU加入条約の文書を持参してメイ首相に見せたそうだ。どちらも交渉期間は10年近くに及び文書はそれぞれ2000ページ以上、重さにすると6キロだとか。イギリスの離脱と今後の関係の条約は二つをあわせた以上に複雑になりそうだ。これを2年間で完了するなんて、双方が危機感を持って望まない限り不可能だ。とにかく時間が足りない。

ところがメイ首相が議会を解散したため、交渉の準備すらストップしてしまった。明らかにイギリス政府は事の緊急性を理解していない。それどころかイギリスの脱退意外のEUの通常業務も選挙を理由に遅延されていて、EU側はかなり苛立っている。

長くなるのでFAZの記事によるメイ首相の大失敗夕食会の話はまた次回にでも。

ベルリンフィルの来シーズンのスケジュール

ベルリンフィルの新シーズンのスケジュールが発表された。毎年分厚い年間スケジュールを送ってくるのだが、まだ届いていない。そこでネットで参照しながらどのシリーズを申し込むか検討中。

来シーズンはラトルの最後のシーズンとなるので、色々なプログラムが並んでいる。意外なのは「パルジファル」や「賢い雌狐の物語」などオペラの演奏会形式が多い事。ラトルはそれ以外にシューマンの「楽園とペリ」も演奏する。交響曲ではマーラーの6番やブルックナーがあったはず。

客演指揮者では小澤征爾の名前があるのが注目される。演奏会は1月19日と21日で、プログラムは前半がモーツァルトのヴァイオリン協奏曲とサンサーンスのヴァイオリンとオーケストラのロンドなど。後半がラベルの「子供と魔法」のシーンからとなっている。小澤征爾は最近どこかで指揮しているのだろうか。次期監督のキリル・ペトレンコも客演として登場するし、メータやティーレマンなどの常連は健在。

毎年ベルリンフィルのどのシリーズを選ぶかは悩みどころなんだけど、来シーズンはKかHのどちらかにしようと思う。この二つは5公演のプログラムが同じ。それはガッティ指揮のヒンデミットとブラームス、コープマン指揮のバッハミサ曲、イヴァン・フィッシャー指揮のバルトークとメンデルスゾーン「真夏の夜の夢」、ラトル指揮公演が2回あり、ドボルザークやバルトーク等ともうひとつはマーラー6番。

異なるプログラムはHがハーディングのオール・モーツァルト・プログラムでKがパーヴォ・ヤルヴィ指揮のシベリウスとショスタコーヴィッチ。どちらにするかはまだ検討中。

その前に明日はラトルの指揮でブルックナーを聴く。
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