クラシックおっかけ日記

指揮者アダム・フィッシャーのおっかけ記録、音楽の話、海外生活など

イギリスの国民投票とユーロ2016

本日はイギリスのEU残留か脱退かを決める国民投票だ。さすがにドイツのニュースも今日はこの話題が中心。若い世代はEU残留派が多いけれど、年配の人か脱退を主張しているとか。もし脱退派が勝てばスコットランドは独立してEU残留を選択する可能性もあり、大英帝国が崩壊するという予測も出ているが、どうなるか。投票は締め切られ、開票作業がまもなく始まる。

サッカーのヨーロッパ選手権は一次リーグが終了し、トーナメントに進む16チームが出揃った。もともと24チームしかないから落ちたのは8チームしか無いわけだが、ヨーロッパ大陸でないチームは全部勝ち残った。ところがトーナメント1回戦の組み合わせを見ると、ウェールズ対北アイルランド、イングランド対アイスランドと潰しあってしまう。アイルランドは地元フランスと対戦。因みにアイスランドはヨーロッパ選手権初出場なんだけど、最後の試合の残り時間わずかのところで1点を入れてトーナメント進出を決めた。この時のテレビのアナウンサーの興奮が凄かったらしい。南米の派手なアナウンサーよりももっと絶叫していて、ドイツのテレビ局が驚きながら紹介していた。

次のドイツの試合は日曜日でスロバキアと対戦。それよりも問題は同じ日曜日にハンガリー対ベルギーの試合がある。この週末にはブダペストに行き、日曜日にはマイスタージンガーを観る予定なんだけどちょっと心配。公演は午後4時に始まるが、ワーグナーの中でも一番長いオペラだから10時半くらいまではかかるだろう。多分第3幕はハンガリーの試合と重なるから、オーケストラの集中力という問題もありそうだ。アダムには「もしベルギー戦でハンガリーが勝ったら大騒ぎで多分交通はストップしちゃうよ。どこのホテルに泊まるの?」と心配された。幸い芸術宮殿からはそれほど遠くないので、最悪歩く事になっても30分もあれば大丈夫。

アメリカのオーケストラのGMDの報酬

クラシック音楽は芸術ではあるけれど、演奏する事により賃金を得ている職業音楽家にとっては給料などの待遇はとても重要だ。でも演奏家の給料の話が表に出る事は少ない。でもオープンな国アメリカではオーケストラは税金申告が必要だから、その情報から色々な事が伺える。こちらのブログに、オーケストラの税金申告書に記載された音楽監督への報酬をまとめた情報がある。

この情報はオーケストラの税金申告書IRS Form 990.に記載されている情報から抜粋した。このサイトには全米の主要プロオケの2013‐14シーズンの総支出と音楽監督への報酬が示されている。

平均ではオーケストラの総支出は約2千万ドルで、音楽監督への報酬は60万ドル。日本円にすると支出が21億円で監督への報酬は6千2百万円。

音楽監督への報酬が高いオーケストラのトップ10は、

1. Dallas Symphony: $5,110,538
2. Chicago Symphony: $2,309,837
3. National Symphony: $2,274,151
4. San Francisco Symphony: $2,105,920
5. New York Philharmonic: $1,751,570
6. Los Angeles Philharmonic: $1,661,493
7. Saint Louis Symphony: $1,043,3138.
8. Cleveland Orchestra: $977,496
9. Baltimore Symphony: $914,747
10. Detroit Symphony: $800,957

例えばシカゴ響の監督であるムーティーへの報酬は2,309,837ドル、日本円にすると2億4千百万円。今日の毎日新聞に日立製作所の会長の報酬は1億6千百万円と書いてあったから、それよりもずっと多い。もちろんこの金額にはシカゴ響以外への客演は含まれていない。

因みにヨーロッパのオーケストラはもっと予算が少ないから、ブランド・オケでも音楽監督にこんな金額は払えない。

イギリスの国民投票まであとわずか

EU残留か脱退かを決めるイギリスの国民投票が木曜日に行われる。イギリスが脱退すればEUの打撃は大きくドイツの経済にも深刻な影響があると予想されているだけに、ドイツのテレビも連日報道している。今日はキャメロン首相が首相官邸前でEU残留を訴えた。脱退すれば経済は著しく低下するとか、安全保障の観点からもEU残留が好ましいなど、少々脅しじみてはいる。

これに対して脱退派は移民政策に反対している。結局外国人が増えて職を奪われたりするのが嫌なのではないか。でも歴史的に見ればイギリスは世界各地に植民地を持った時代もある。さらに技術の発展等でグローバル化しており、EUを脱退したところで他国からのの影響は避けられない。

ドイツから見るとEU脱退はイギリスにとってダメージが大きいように見える。もちろんドイツ人の大多数がイギリスの残留を望んでいるが、いつも特別扱いを要求して物事を複雑にするので、いっそのこといなくなった方がEUのためになる、と言う意見もある。実はフランスやイタリアなどは、イギリスの脱退を支持する人もかなりの割合になるのだそうだ。

現在の職場にはイギリス国籍の人も多いのだが、イギリスがEUを脱退したとしても、長年EU圏内に住んでいる人には特例措置が与えられるだろうから、仕事への影響は少ないと予想している。現時点での予測は残留と脱退が均衡しているが、「スコットランドの独立投票みたいに直前になって変化を好まない人が増えるから、多分残留派が勝つと思う。」というのがその同僚の意見。

ベルリンの首都制定から25年

イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票がまもなく行われる。ドイツでも色々話題になっているが、実は25年前の今日、ドイツでとても重要な投票が行われた。それはドイツの首都を決める国会投票。

歴史的に見ればベルリンはプロイセンの首都だったわけだし、第2次大戦前は首都として栄えていた。でもナチや共産主義時代の秘密警察など負の遺産も多かったし、分断されていたから東側はインフラストラクチャーも整備されていなかった。そこで西ドイツの首都はボンをそのままドイツ連邦の首都にするか、ベルリンに移すかの討議が行われ、その後で投票となった。

ボンは小さな街だけど戦後は首都として十分な機能を果たしてきたし、文化的にも豊かだから変更する必要はないと考えるひとが多くく、55対45くらいでボンが優勢と伝えられていた。その流れを変えたのが当時内務大臣だったウォルフガング・ショイブレ。「統一したドイツの首都は、統一の象徴である街が適している」と演説して風向きを変えた。投票の結果は僅差でボンが320票、ベルリンが338票だった。

それ以降ベルリンは首都としてドイツの政治の中心になった。金融の中心のフランクフルト、産業の中心であるミュンヘンに比べるとまだまだだけど、25年を経て首都としての体面を整えつつある。でも大陸間の国際便が発着できる空港が無いのが問題。開港は来年という話だけど、空港マネージメントは未だに正確なことを言わない。「今年の10月頃までには来年開港できるか見通しを立てたい」のだそうだ。

2016年6月17日、イヴァン・フィッシャー指揮コンツェルトハウス・オーケストラ、シューマン、バーンスタイン他

金曜日にはコンツェルトハウス管のEシリーズ最後の演奏会に行った。

Konzerthausorchester Berlin
Ivan Fischer´Dirigent
Steven Isserlis Violoncello

Robert Schumann Ouverture zu Lord Byrons Dramatischem Gedicht „Manfred“ es-Moll op. 115
Robert Schumann Konzert fur Violoncello und Orchester a-Moll op. 129
Rodion Schtschedrin „Naughty Limericks“ - Konzert fur Orchester Nr. 1
Leonard Bernstein Sinfonische Tanze aus dem Musical „West Side Story“


前半はイギリスの人気チェロ奏者、スティーヴン・イッサーリスのソロのシューマンの協奏曲が中心。まずマンフレット序曲でシューマンの雰囲気にした後にソリスト登場。ガット弦での演奏でも有名だけど、美しい音なんだけどどうしても音が小さい。最前列では十分だけど、響きが良くないホールだから後ろの方は音が小さかったかもしれない。オーケストラの弦楽器は音が大きいからソロをかき消してしまう。イヴァン・フィッシャーは伴奏はあまり上手くない。

この日の演奏会は後半の方が断然おもしろかった。Rodion Schtschedrinはロシア生まれの作曲家。、ジャズのリズムが出てきてオーケストラにするとかなり大変そう。ところどころにソロも多いし、弦楽器が弓で譜面台を叩いたりして、意外性がある。終った後にお客さんが驚愕の声を上げるほど。

その後はバーンスタイン有名なシンフォニック・ダンス。冒頭からオーケストラが指を鳴らすし、途中の「マンボ」の掛け声もしっかり出していた。でもドイツ人だからちょっと恥ずかしそう。細かい事を言えばジャズやスイングのリズムが上手くないのだけれど、ドイツのオーケストラとしてはがんばっていた。

エンターテイナーのイヴァン・フィッシャーらしい演奏会で、後半はとても楽しかった。

ヨハン・ボータの復活

数ヶ月前から病気のために活動を中止していた南アフリカ出身の人気テノール、ヨハン・ボータが復活した。

ボータはウイーンでも人気のヘルデン・テノールで、パルジファルなどのワーグナーなどで評価が高い。エージェントの発表ではボータの病気はかなり重症ということで、ウイーン国立歌劇場ではトゥーランドッドの新制作のカラフ役など、多くの公演をキャンセルしていた。この秋のウィーン国立歌劇場来日公演では、ナクソス島のアリアドネでバッカス役を歌う事になっていて、日本でも心配されているファンの方も多いだろう。そのボータがワーグナー・イン・ブダペストのワルキューレでジークムント役を歌って復活した。クーリエの記事によれば、病気になる前と同様の素晴らしい歌だったそうだ。

指揮は歌手に優しいので有名なアダム・フィッシャーだし、この演出は演技はあるが負担になるような衣装はつけない。会場はコンサートホールだから音響が良く、無理に大声を出す必要が無い。そういう点でカムバックには良い環境だったのかもしれない。

もちろん病気が治ってからもトレーニングは欠かせないしリハーサルにも参加したと思うのだが、歌手に限らず舞台芸術の出演者は本番をこなす事で本番でのペース配分などの実際を学ぶ事が多いから、しばらく出演がないと本番のカンが鈍ってしまう。久々の出演には緊張もあったたろう。

次回のボータの出演は7月のミュンヘン・オペラ祭で、夏休みのあとにウィーンでトゥーランドットとアイーダが予定されている。

ウィーン少年合唱団のアジア分校

音楽の都ウイーンには音楽団体がたくさんあるが、ウィーン少年合唱団もそのひとつ。合唱団印の少年たちはウイーン少年合唱団ギムナジウムにの生徒として通常の教科を勉強するとともに、特別に音楽のクラスもある。ギムナジウムに所属したコンサートホールでの演奏会をはじめ、コンサートツアーや王宮礼拝堂でのミサなど、なかなか忙しい。1960年代はとても人気があったのだが、カリキュラムが厳しいこともあって最近は受験者数は定員の2‐3倍程度だそうだ。

その状況を改善するためなのか、合唱団の歴史始まって以来初の海外分校を設立すると発表があった。場所は香港で、インターナショナル・スクールとしての通常の科目を勉強し、卒業後は国際大学の受験資格も得られる。さらにウィーンと同様の音楽教育をうける機会がある。

本校の生徒たちのように世界各国への演奏会ツアーがあるかどうかは不明だが、ウィーン少年合唱団はアジアでも人気が高いので入学希望者は多いと理事会は考えている模様。正式開校は2018年だが、来年から試験的に生徒の募集を始めるかもしれない。現在は校舎の候補を絞っているとのこと。

アジアに分校を開校するなら、日本からも入学希望者があるかもしれない。でも東京ではなく香港というのは、最近の中国重視の風潮の影響か。

ベルリン国立歌劇場スキャンダルの解析

現在ベルリン国立歌劇場はシャルロッテンブルグのシラー劇場で「ニーベルングの指環」を公演中だけど、2017年の10月にはウンター・デン・リンデンに戻る予定だ。劇場の改装工事費用は当初予算の2億3千9百万ユーロから4億ユーロ、工事期間は予定の3年から7年と延長されたプロジェクトの監査結果が報告された。

当初は設計コンペティションの結果選ばれたものにすると発表したが、その後東西ベルリンの中産階級が反対し、結局伝統的なネオロココ・スタイルを保持するということで、見積もりを再計算するために工事の計画を中断すべきだった。

ところがそれは行われなかった。市長や政治家への気遣いかもしれないし、シラー劇場への引越し期間を短くしたいバレンボイムへの配慮だったかもしれない。劇場の改築に関して部分的な認可を受けただけで、劇場建物の細かい調査をしないうちに改装工事が始まった。だから予想以上に建物の状態が悪く、工事が進むに連れて技術担当者を驚かせる事実が判明した。

専門家の警告は政治家の声にかき消されてしまった。追加費用を認可しないとプロジェクト全体が失敗するため、悪い情報はいつも直前にならないとこ公表されなかった。これはベルリンの大型プロジェクトでよく見られる手法。ベルリンの空港や地下鉄の建設など終らない公共工事はそこら中にある。

来年の秋のウンター・デン・リンデンの劇場が再開したときには、「これにのどこに4億ユーロもかかったの?」という声が聞こえてきそうだ。


指揮者のキャンセル情報

国際的に活躍する指揮者のスケジュールは何年も先まで一杯だから、コンサートでも指揮者がキャンセルすると事務局は大騒ぎになる。ところが偶然にも複数の有名指揮者が演奏会をキャンセルした。

ひとつはウィーンフィルの演奏会。6月21日からのウィーン、パリ、マドリッド、バルセロナでの演奏会を指揮する予定だったダニエレ・ガッティが病気のためキャンセルした。代役はジョナサン・ノット。プログラム変更なしで、ウィーンとパリではベートーベンの「コリオラン」序曲、リヒャルト・シュトラウスの「死と変容」、マーラーの「大地の歌」。マーラーの独唱はヨナス・カウフマン。マドリッドとバルセロナはマーラーの代わりにブラームスの交響曲第1番。

リッカルド・シャイーも病気でゲヴァントハウスでの演奏会をキャンセルした。16日と17日の演奏会は時期シェフのアンドリス・ネルソンスが代役を務めるが、日曜日のシャイーのお別れ演奏会は中止になったそうだ。ライプツィヒの人は残念だろう。

ワーグナー・イン・ブダペスト10周年

アダム・フィッシャーの主導で2006年にワーグナー・イン・ブダペスト音楽祭が始まってから10年が経った。11回目の今年はニーベルングの指環とニュールンベルグのマイスタージンガー2公演。

リングは例年通り木曜日から日曜日にかけての4連続公演。主なキャストはウォータンがヨハン・ロイター、さまよい人はトーマス・コニーチェニ、ジークムントはヨハン・ボータ、ジークリンデはアンヤ・カンペ、ブリュンヒルデはエヴィリン・ヘルリツィウスとエリザベト・ストリッド、ジークフリートはダニエル・ブレンナとクリスチャン・フランツ、ミーメはゲルハルト・ジーゲル、フンディングはワルター・フィンク。その他ハンガリーの実力派が固める。

リングの後にはマイスタージンガーが2公演。イギリス人の若手ジェームス・ラザフォードがハンス・ザックス、芸達者のボー・スコーフスがベックメッサー、アネット・ダッシュがエヴァを歌う。

ハンガリー以外からもお客さんを呼べる国際的なイベントで、ウィーンやドイツ各地からもワーグナー協会がツアーを組んで観に来る。詳しくはこちら

来年は4日間のニーベルングの指環の翌日にセバスチャン・ヴァイグレの指揮でリエンツィ、さらにその2日後にはパルジファルがある。だから6月15日から22日までの1週間ブダペストに滞在すればワーグナーを6公演体験できる。11月の「ワルキューレ」来日公演を楽しんだ方は来年6月のブダペストはいかがですか?

ニューヨークのクルト・マズアの名前を冠した地名

クルト・マズアは長年ライプツィヒでの活躍が有名だけど、1991年から2002年までニューヨーク・フィルハーモニーの監督も務めていた。マズア一家はニューヨークのホワイト・プレーンズ市に住んでいるのだが、マズアの家のある通りを「マズア・ドライブ」と改名することを決定したそうだ。

この家にはマズアの未亡人であるトモコ・マズアさんと息子のケン・デーヴィドさんが住んでいるそうで、二人は市長とともに改名セレモニーに参加したのだとか。

ライプツィヒもマズアを称える記念碑か道の名前の改名を検討している。ただヨーロッパの議会は色々な手続きがあるのでこちらは少し時間がかかりそう。

騒がしい季節の到来

サッカーのヨーロッパ選手権が始まった。それでもワールドカップと合わせると2年に1度は騒がしい季節がやってくるわけで、「またか」という印象が強い。

たしか4年前はイングランドが出場できなかったので、「ヨーロッパ大陸の選手権」という感じだったのだけれど、今回の参加チームはバラエティーに富んでいるみたい。ワールドカップ常連のイングランドとアイルランドははもちろん出場するけど、それ以外にもウェールズと北アイルランド、さらにアイスランドも出場する。

大陸の国でもアルバニアが出場するし、オーストリアとハンガリーも出る。予選リーグの組み合わせを見るとイングランド対ウェールズ、オーストリア対ハンガリーなんていう歴史的にも関係のあるお隣同士の試合がある。こういう時は当事者にしてみると気合が入りそうだ。

珍しいチームが参加するかわりに、出場できなかった常連を探してみたら、なんとオランダがいない。10年前のドイツのワールドカップではオレンジ色のTシャツを着たオランダのサポーターが大挙してやって来たけど、今回フランスはオレンジ色無し。

ドイツチームはまず日曜日にウクライナとの試合がある。それ以外ではポーランドと北アイルランドが同じグループに入っている。ドイツとポーランドは頻繁に試合をしているような気がするんだけど、今回も同じグループだ。

ブランデンブルグ門から戦勝記念塔までは大会期間中は車両通行止めになっていて、パブリック・ビューイングの準備は万端。セキュリティ・チェックは厳しいけれど、試合開始の数時間前までは歩行者の通行は可能だそうだ。

ハイドンターゲの今後

6月の始めにブルゲンランド州やアイゼンシュタット市の役員が構成する理事総会が開かれて、1990年から毎年9月にアイゼンシュタットで開かれている国際ハイドンターゲは、ハイドン生誕の地ローラウやリストの故郷レディングなどの近辺の街に会場を移し、音楽祭を継続することを決定した。将来的には国境を越えたハンガリーのフェルトードにあるエステルハーザ城なども会場に含めて、広域的な音楽祭にすることを目標にするそうだ。

ハイドンターゲのルーツはアダム・フィッシャーが1987年に創設した、アイゼンシュタットのエステルハーツィー城とフェルトードのエステルハーザ城(有名な「告別交響曲」が初演されたところ)を舞台にしたハイドン音楽祭。当時国境で分断されていたオーストリアとハンガリーをハイドンの作品で結びつけるために、オーストリア・ハンガリー・ハイドンフィルハーモニーを創設し、ハイドン全集を録音するとともに音楽祭の主役として活動を始めた。

その2年後にブルゲンランド州やアイゼンシュタット市は音楽祭を企画するハイドンフェストシュピーレを設立し、ワルター・ライヒャーをインテンダントに任命した。ライヒャーは音楽祭の規模を拡大し国際的にも有名な音楽家を招待するハイドンターゲとして拡充し、ハイドンの作品の演奏でオーストリアでも有数の音楽祭として成功させた。

音楽祭の主会場であるエステルハーツィー城はハイドンが実際に演奏した由緒のある建物なのだが、現在もエステルハーツィー家が所有している。音楽祭が始まった当初は城の保守をする代わりに無償でアイゼンシュタット市に貸与する契約で、アイゼンシュタットの町興しには音楽祭は最適だった。

エステルハーツィー公は1970年代に死去し、スイスに住んでいた未亡人メリンダが当主として引き継いでいたが、子供がいないのでその財産は甥でスイスの銀行家であるステファン・オットルバイを跡継ぎ指定していた。そのオットルバイはエステルハーツィー・エステートという企業グループを設立し、その会長に就任。この企業グループはワイナリーの経営などを行ってきたが、文化事業にも拡張し、2014年からはオペラ・フェスティバルを開催しているしハイドンザールでも演奏会も開いている。つまりハイドンフェストシュピーレとは同業のライバルになったわけだ。

もともとブルゲンランド州とはビジネスの認可などで対立していたこともあり、エステルハーツィー家はハイドンザールのリース契約を更新しないことを決めたので、ハイドンターゲは来年以降新しい会場を探す必要に迫られた。音楽祭の存続も疑問視されたいたのだが、今回の決定で音楽祭自体は継続する。でもどの会場でどんな演奏会を行うのかは不明。

エステルハーツィー家はアダムからニコラス・アルトシュテットに代替わりしたハイドンフィルのスポンサーとして契約し、ハイドンフィルが主役を務める独自の音楽祭をハイドンザールで2017年から開くことを発表した。その期間は本来ならハイドンターゲが開かれる9月中旬。つまり長年音楽祭を企画してきた人々を追い出し、その評判を利用して独自の音楽祭を始めるというわけ。これには関係者のみならず、ウィーンの新聞などでも批判が多い。

オーストリアの田舎のばかばかしい主導権争いなんだけど、アダムは巻き込まれてとても苦労している。今後2つの音楽祭の時期がどいうなるのかなど未定のことも多いけれど、今までの形式の音楽祭は今年の9月で終了する。アダムとハイドンフィルは約30年にわたって関わってきたわけだけれど、今年の9月18日で最後になりそう。

バイロイト音楽祭が「ニーベルングの指環」を生中継

6月に入りバイロイト音楽祭の話題が紙面を飾るようになって来た。本日発表されたところによれば、7月21日から運営が開始される新しい有料テレビ局Sky Arts HDにより、バイロイト音楽祭の「ニーベルングの指環」が生中継されるとのこと。

放送日は「ラインの黄金」7月26日、「ワルキューレ」7月27日、「ジークフリート」7月29日、「神々の黄昏」が7月31日。Sky Arts HDによればバイロイト音楽祭のリング全作生中継は音楽祭の歴史初。Sky Arts HDはドイツ、オーストリア、英国で聴取可能。でも日本はどうかはわからない。

昔はチケットの入手難でごく一部の人を対象にした音楽祭という印象だったけど、カタリナ・ワーグナーが主導権を握るようになってからはインターネットによるチケット販売など、より多くの人が観ることができるようにマーケティングに力を入れているようだ。ただ公演の質という点では必ずしも評価が高いとは言えず、現行のリングは演出の評判は良くない。この辺をどうするかが今後のカギかも。

ライナー・キュッヒルのコンサートマスターとしての最後公演

ウィーン国立歌劇場管弦楽団のコンサート・マスターのライナー・キュッヒルは日本でもとても有名だ。なにしろ日本語を上手に話すし、難しい漢字の読み書きが趣味だったりするほどの日本通だから、毎年のように来日して演奏を披露した。そのキュッヒルもいよいよ定年を迎え、今週の木曜日の「薔薇の騎士」がウイーン国立歌劇場のコンマスとしての最後の演奏になる。指揮はもちろんアダム・フィッシャー。

音楽の友のインタビューにも載っていたけれど、アダム・フィッシャーとキュッヒルは年も近いし付き合いはとても長い。キュッヒルは若い頃からコンマスとしてオーケストラを率いてきたし、アダムはコレペティとして20代前半からオペラ座で働いていた。アダムがハイドンフィルを創設した当時には、キュッヒルはコンマスとして参加していた。ハイドンフィルの創設は1987年の5月だから29年前になる。その最初のコンサートの写真がある。

1987-1ハイドンザールでの演奏会


1987-2当時のライナー・キュッヒル


1987-3こちらは当時のアダム・フィッシャー



ウイーン国立歌劇場からは引退しても室内アンサンブルなどで活動は続けるだろうし、オペラでもエキストラとしてキュッヒルが演奏することはあるのではないかと思う。

デュッセルドルフ交響楽団とのマーラー

アダム・フィッシャーは昨年の秋からデュッセルドルフ交響楽団の首席指揮者として活躍している。このオーケストラは国際的な知名度は高くないけれど、ドイツ・ラインオペラのオーケストラとしてオペラを演奏していて、オペラ・オーケストラとしてはドイツでもレベルが高い。アダム・フィッシャーとは2020年までにマーラーの交響曲全集を録音することで合意している。これにはドイツのラジオ局、ドイチュランドフンクが共同制作として名を連ねていて、本日その放送があった。プログラムは昨年収録したマーラーの7番。6月13日まではオンデマンドで聴くことが出来る。リンクはこちら

さすがにラジオ局が参加しているだけあって、デュッセルドルフ・トーンハレも広告に力を入れているらしい。こちらにその紹介ビデオがある。


偶然だけど日本のデジタルラジオ、ミュージックバードでもアダム・フィッシャー指揮バンベルグ交響楽団のマーラー7番の放送がある。放送日は6月18日だそうだ。これはオーストリア放送提供のものらしく、ほぼ1年前のライブ録音。夏休み直前だし地元ではなくてオーストリアまで出張していることもあり、オーケストラの集中力は今ひとつの演奏だから、演奏の質としてはデュッセルドルフ響の方が良いと思われる。

興味のある方は両方聞き比べてみては。

クラシック・デイズ・ベルリン2016

ドイツ人には車好きが多いけれど、毎年6月の最初の週末にはベルリンの目抜き通り、クーダムを通行止めにしてクラシックカーを展示するクラシック・デイズ・ベルリンが開かれる。今年は昨日は晴天だったけれど、今日は午後から時々雨がふる天気だったが、家族ずれなどたくさんの人で賑わった。

クーダムというのは旧西ベルリン随一のショッピング・ストリート。統一後街の中心が東にうつった今も高級ブランド店の立ち並び、観光客もたくさん訪れる。高級ブティックに並んでBMWのショールームやポルシェ・デザインショップなどもある。

今日はその両側と中央の分離帯にクラシックカーが止められてた。まだ現役の車も多く、展示車がゆっくりとパレードしたりする。

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これはレトロにキャンピングをしているような車と持ち主一行。

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こちらはベントレー・モータースのモデル。ベントレーは今はフォルクスワーゲン・グループに属する。

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こんな感じでエンジンを展示している車も多い。

主催者によれば、2000台ものクラシック・カーが集まったそうだ。

メトロポリタンオペラの将来

ヤニック・ネゼ=セガンが次期メトロポリタンオペラ音楽監督に決定したのニュースは、大々的に報道された模様。メトロポリタンオペラの記者会見にはフィラデルフィア管の来日公演に同行しているネゼ=セガンご本人がネット経由で抱負を述べたらしい。さすがにメトロポリタンオペラの支配人ピーター・ゲルプはマーケティングの人だから、プレスリリースの演出はお手の物でニュースはアメリカのみならずヨーロッパでも報道された。

でもアメリカやイギリスの評論を見ていると、疑問視するものも多い。そのひとつは正式に監督に就任するのが2020年からで、その間芸術的なリーダーシップは実質ゲルプ支配人が握るという事。マーケティングは重要だけど、実質が伴わないと物事は成功しない。ピーター・ゲルプが成功例として挙げるライブの映画館での上映だけど、確かにメトの名前を知らしめるには役立ったけれど、統計を見ると本来劇場に来ていた人が自宅近くの映画館ですませるようになり、実演の観客数の減少を招いているという。とりわけマンハッタン近郊に住むオペラ愛好家が劇場に来なくなったのが影響している。それならマンハッタン近郊の映画館には配信しないという戦略もあるが、映画配給会社との契約によりそうもいかない。だから最近のメトの集客は平均で7割、ひどいときには半分が空席なんていう事もあるそうだ。

業績回復のカギは新しい聴衆の開拓だけど、そのためには現代作品の上演や上演機会の少ない演目に注目するなどの芸術的な指導力が必要だ。ネゼ=セガンは過去にヴェルディとドボルザーク、さらに近い将来ワーグナーの「さまよえるオランダ人」が予定されているけれど、オペラの王道レパートリーで現代オペラや埋もれている作品に関しては全く未知数だ。

レヴァインの長期政権の後では誰がGMDになっても批判は免れないと思うけど、メトの将来はばら色とはいえない。

ヤニック・ネゼ=セガンがメトロポリタンオペラの次期音楽監督に決定

大方の予想通り、ヤニック・ネゼ=セガンがメトロポリタンオペラの次期音楽監督に決定した。メトロポリタンオペラは過去40年以上にわたってジェームス・レヴァインが音楽監督として率いてきた。数年前にレヴァインが病気で休養したときはファビオ・ルイジを首席指揮者に任命して凌いだけれど、その後レヴァインが復帰したのでルイジとの関係が悪化した。

今年になってレヴァインの症状が悪化し演奏にも影響が出るようになったので、支配人のピーター・ゲルプとレヴァインは何度も会談したが、レヴァインは続投を臨んでいた。でも結局理事会が今シーズン末で引退を決めた。

ヤニック・ネゼ=セガンは現在フィラデルフィア管とモントリオール・メトロポリタン・オーケストラの監督を務めているが、他の予定もすでに決まっているため、次のメトロポリタンオペラの出演は2020‐21シーズンまで待たなければならない。つまりGMD不在が4年間もあるわけで、これはチケット・セールス等経営的にも影響がでそう。もともとレヴァインの人気が高かったし、最近のメトはチケットセールスが悪化しているから、今後4年間は支配人には厳しいだろう。

ネゼ=セガンはフィラデルフィア管との契約を2026年まで延長したそうで、メトの監督就任後もその活動は限定的かもしれない。4年間あれば他の候補者を客演に呼んで慎重に選ぶ事も出来たのに、あえて忙しいネゼ=セガンを選んだということは、理事が相当気に入ったということだろう。アメリカ人のレヴァインがメトの監督に就任したのが32歳だったからメトは長期的なことを考えて、若手で北米出身の指揮者を探したのかもしれない。

ウイーン国立歌劇場のチケット

アダム・フィッシャーは現在ウイーンで「薔薇の騎士」のリハーサル。シリーズの初日は3日の金曜日なんだけど、昨日電話で話した時にはオックス役のキャンセルしたとの事。代役はクルト・リドル。この人は何度もウイーンでオックス男爵を歌っているから問題なしだと思った、アダムは「他のキャストと共演した事が無いからちょっと問題なんだけど、まあ何とかなるかな。」だそうだ。オペラはアンサンブルが大切だから、共演者のことを良く知っているかどうかもポイントらしい。今回の元帥夫人はドロテア・ロッシュマンでオクタヴィアンは元マンハイムのダニエラ・シンドラム。

ウイーン国立歌劇場のシーズンは6月30日まで続き、7月と8月はお休み。新シーズンは9月4日のトゥーランドットから。今シーズンの新制作プレミアはドゥダメルの指揮だったけど、9月4日はマルコ・アルミリアートの指揮。アダム・フィッシャーは10月15日、18日、21日にフィガロの結婚があり、その後ロンドンでデンマーク室内管のコンサートがあって10月末に来日部隊に合流する予定。

ところでそのウイーン国立歌劇場に来日公演だけど、そろそろ全部のチケットが発売になったはず。なにしろ高額だから、歌舞伎みたいに幕見チケットがあれば喜ばれるかも。ワルキューレの1幕はコンサートの演目にもなるから、1幕だけでも十分と言う人もいるかもしれない。

ネットで探してみたら、viagogoというサイトで日本ツアーのチケットを扱っている。これは一体どういう組織なのかはしらないが、11月10日のムーティー指揮のフィガロの結婚のチケットは1624ユーロなんていう値段がついている。日本円に換算すると20万円!日本のチケットは高いし手数料がかかることは確かだけど、いくらなんでもこの値段は無いでしょう。
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