クラシックおっかけ日記

指揮者アダム・フィッシャーのおっかけ記録、音楽の話、海外生活など

小澤征爾がタングルウッドをキャンセル

日本では既に報道されているけれど、小澤征爾が体調不良で夏のタングルウッド音楽祭出演をキャンセルしたというニュースはドイツ語や英語のメディアでも報道されている。

小澤征爾はベルリンフィルに客演後、若手の演奏家を集めたスイス国際アカデミーのパリ公演に同行していた。でも過労がたたって発熱し、帰国後も体調が思わしくないので大事を取って夏のタングルウッド音楽祭はキャンセルし、セイジ・オザワ松本フェスティバルの出演も回数を減らすということ。小澤征爾はボストン響の指揮者を長く続けていたから、タングルウッドのキャンセルはボストンのファンや関係者にとっては残念だろう。

小澤征爾はここ数年病気で活動できなかったが、ベルリンフィルへの復帰はドイツのクラシック音楽業界でも話題になった。それでも80歳だから、以前のように活発に活動することを期待しているわけではないが、時々ベルリンフィルなどへの客演を望むファンは多い。

日本人指揮者でキャンセルが海外でも報道される人というのは残念ながら小澤を除くとほとんどいない。佐渡裕や大野和士あたらは多少名前を聞くことはあるけれど、将来小澤征爾クラスのスターになるかどうかはわからない。最近は日本人ソリストも内田光子やみどりに続くような国際的なスターが出ていないのは残念。

ニコラス・アルトシュテットがベートーベン・リングを受賞

若手のチェリスト、ニコラス・アルトシュテットがボンの文化協会からベートーベン・リングを授与された。ベートーベン誕生の地であるボンは毎年ペートーペン・フェスティバルを開いているが、この音楽祭に参加した若手の音楽家の中からベートーベンの優秀な演奏者に対して指環を送っている。アルトシュテットは授賞式でバッハなどを演奏して感謝したそうだ。

1982年ハイデルベルグベルグで生まれたニコラス・アルトシュテットは、ベルリンなどでチェロを学び、2010年にルツェルン音楽祭でヤング・アーティスト賞を受賞した。その後グスタヴォ・ドゥダメルの指揮でウィーンフィルとも共演している。以降国際的なオーケストラと共演していて都響の演奏会にも出演している。

2012年からはロッケンハウスの室内楽フェスティバルを主宰し、昨年からはアダム・フィッシャーを引き継いで、オーストリア・ハンガリー・ハイドンフィルハーモニーの芸術監督に就任している。

5月始めの発表によれば、今後ハイドンフィルはエステルハーツィー基金が支援し、ハイドンザールを本拠地として活動する。オーケストラの公式名称も、ハイドンフィルハーモニー・アイゼンシュタット・エステルハーツィー城レジデンス・オーケストラに変更する。新生ハイドンフィルは来年以降アルトシュテットの指揮で定期演奏会と9月のエステルハーツィー基金主催のフェスティバルへの出演合わせて8回の演奏会をハイドンザールで開く予定。

新生ハイドンフィルハーモニーはオーケストラの理事会とマネージャーは従来と同じなのだけれど、実際に演奏するメンバーは現行とは大幅に変わる。現在のメンバーはアダムと同世代のベテラン勢も多いし、基本的にアダム・フィッシャーとハイドンを演奏したい人の集まりだから、GMD交代の影響は大きい。

アダムはオーケストラの創立者として名前は連ねるが、後部座席から運転手に指示するようなことはしたくないので、今年のハイドンターゲを以降ハイドンフィルの指揮台に立つことは当分無い。

バイロイト祝祭歌劇場の南ファザードの改装完了

昨年のフェスティバル終了後に始まった、バイロイト祝祭歌劇場の南側のファザード改装工事がこのほど完了した。この部分のコストは280万ユーロ。昨年の音楽祭が終った直後から工事が始まり、冬の間も休むことなく工事を続けたようだ。バイロイトは冬はかなり寒く野外の作業は困難が伴うのだが、この冬は通常よりも暖かかったので工事には支障が出なかったとの事。工費も期間も計画の範囲内だったそうだ。

この工事は予算総額3000万ユーロの改装工事の第一段で、今年の音楽祭が終るとすぐに第二段の工事が始まる。これはファザードの南側の下部分と西側、東側、北側。その後は劇場の内装やリハーサル用の建物と、7年間に渡って改装する予定。

改装の費用は主にドイツ連邦とバイエルン州が中心になって負担している。バイロイト祝祭歌劇場は文化遺産としても重要だから費用の補助はある程度当然でしょう。でも音楽祭の経営担当によれば、見積もりはあくまで目安であって、今後の状況次第では費用の増加も考えられるとのこと。ハンブルグのエルブフィルハーモニーやベルリンの国立歌劇場のように費用と工期が当初計画の数倍になるなんて事にならないことを祈っている。

ドイツ人とサッカー

会社の上司からメールが届いた。内容は'Euro prediction gameに参加したい人は以下のサイトに登録しろ。'なんて書いてある。Euro prediction gameとは何のことだかわからないし、指定のサイトを見ても登録しないと何の情報も得られない。不思議におもっていたら登録した同僚が「これはサッカーのヨーロッパ選手権の予想ゲームですよ」と教えてくれた。どうやら事業部の誰かが発案してゲームサイトを用意したらしい。全試合の得点を予め予想し、正解だとポイントがつくシステムらしい。決勝戦まで予想し、ポイントの高い人が勝つ。同じ部署が対象みたいだけど、賞品などはなく単なる楽しみだけみたい。

時を同じくして今度は総務部からのメールがあった。こちらもヨーロッパ選手権のトトカルチョで、グループリーグの順位と決勝トーナメントの勝敗を予想するタイプ。こちらは事業所全体が対象なので少しリッチで、会社のマーケティング・グッズが賞品らしい。

ドイツ人はとにかくサッカーが好きで、プレーしない人でもくじを楽しみにする人もいれば、キッカーとよばれる卓上サッカーゲームを楽しむ人もいる。(キッカーはやった事はあるけど意外に難しくて手首が痛くなった。)どこの職場でも状況は同じだから、当然オーケストラでもサッカー好きはたくさんいるのだろう。このほどベルリンのオーケストラの間でサッカーの試合があり、フィルハーモニーがドイツ交響楽団とドイツオペラ・オーケストラをペナルティ・キックで降して優勝したのだとか。

ウィーンフィルにもサッカー・チームがあり、来日する度に日本の雑誌社チームと試合をするという話を聞いたことがあるが、ベルリンフィルのサッカーチームの方が熱心なような気がする。

アダム・フィッシャーのインタビュー記事日本語訳

アダム・フィッシャーが11月にウィーン国立歌劇場と一緒に来日するためか、最近この日記のアクセスが少しずつ増えている。チケットは既に一部発売されているみたいだけど、まもなく一般販売になるようなので、雑誌の記事にもアダムをとりあげる機会も増えてくるだろう。チケットの値段も高額だから、宣伝にもかなり力が入るのではないかと期待。

チケット発売前のプロモーションなのか、ぶらあぼのサイトにアダム・フィッシャーのインタビューの日本語訳が掲載されている。

アダム・フィッシャーのインタビュー(1)
アダム・フィッシャーのインタビュー(2)
アダム・フィッシャーのインタビュー(3)

このインタビューは昨年12月に開かれた指揮者ワークショップで話した内容が元になっている。これはウイーン国立歌劇場のテアター・マガジンにも掲載された。ドイツ語の原文はこちら

原文を読むとジークフリートを例にとって、指揮者が歌とオーケストラのバランスをいかにして取るのか説明しているのだが、日本ではワルキューレしかやらないから翻訳からカットされている。他にもいろいろとおもしろい事を言っているのだけれど、ちょっと残念。

それでも日本語に訳すと大分雰囲気が変わってしまう。「知性」と「感情」を対比する場合はドイツ語だと「頭」と「おなか」だけど、日本語だったら「頭」と「心」でしょう。原文の単語に忠実に訳そうとすると日本語として変な文章になってしまうのが問題。

No.342、 2016年5月22日、デンマーク室内管、ベートーベン、マーラー、ハイドン

昨日の日曜日は約2ヶ月ぶりの日帰りおっかけでコペンハーゲンに行った。このパターンだと朝7時前に自宅を出てショーネフェルドからコペンハーゲンへ飛び、ゲネプロの後半を聴くことができる。その後コンサートまで3時間くらい時間があるが、寒い冬と違って昨日は天気も良く、散歩も心地よかった。

Danish Chamber Orchestra
Conducto: Adam Fischer
Soprano: Inger Dam-Jensen

Ludwig van Beethoven, Egmont Ouverture, op. 64
Ludwig van Beethoven, Ah! Perfido. Koncertarie, op. 65
Gustav Mahler, Adagietto, Symfoni nr. 5
Joseph Haydn, Symfoni nr. 103


前半のベートーベンにはオーケストラも大分慣れてきた様子が感じられる。エグモント序曲は以前にも演奏しているし、10月に予定されているロンドン公演のプログラムに入っているから、この日のプログラムにも入れた模様。ソプラノのアリアも悪くないけど、世界のトップクラスと比べるわけには行かない。

ちょっと驚いたのがマーラーのアダージェット。過激なモーツァルトやベートーベンと異なり、弦楽器の音に厚みがありとても美しい。よく見るとデンマーク放送響からの助っ人もちらほらいて、いつものメンバーよりはパワーアップされていた。

後半はハイドンの「太鼓連打」。ハイドンフィルとは異なり、デンマーク室内管はそれほどハイドンは演奏しない。だからハイドンフィルほどの安定はなくところどころ乱れてしまう。でもこれはハイドン専門オケとの比較だからかわいそうかもしれない。この曲は途中に弦楽四重奏のようなソロがあるのだけれど、首席クラスの能力はハイドンフィルの方が高そうだ。

終演後はお客さんが立ち上がっての大喝采。それに応えてオーケストラはモーツァルトのプラハ交響曲の第4楽章をリピートなしで演奏。この曲の第4楽章はモーツァルトの中でもとても難しいのだけれど、ロンドンでのメイン・プログラムになっているので、練習も兼ねてアンコールに入れた。かなりテンポが速くてオーケストラも大変そうだったけれど、モーツァルトは慣れているので大丈夫。

アンコールの後もアダムは何度も呼び出させてお客さんに挨拶していたが、実は時間が無くて焦っていた。演奏会の後は飛行機でハンブルグに戻る予定だったのだが、なんと唯一の直行便であるSASがキャンセルになった。だから電車でハンブルグに戻るしかない。発車時刻までは45分しかないし、途中に3回も乗り換えがあるけど、アダムはコンサート終了後にコペンハーゲン中央駅にダッシュして、なんとか列車には間に合った。ただし無事にハンブルグの自宅に着いたかどうかは不明。

ミヒャエル・ザンデルリンクを巡る訴訟

クラシック愛好家は指揮者に関心のある方も多く、ネットの掲示板などでも話題になる。でも話題の多くは音楽やレコーディング、オーケストラとのポスト等で、職業としての指揮者が話題になることは滅多に無い。指揮者だって仙人のように霞を食べて生活しているわけではなく、収入に対して税金を払うし、社会保険や健康保険等とも無縁ではない。ドレスデンの新聞によれば、ミヒャエル・ザンデルリンクとドレスデン・フィルハーモニーの契約を巡って、指揮者派フリーランスか従業員かを争う訴訟があったのだそうだ。

ドイツの社会保険局がドレスデン市を訴えた訴訟で、ザンデルリンクは他のオーケストラとは契約していないのだからドレスデン・フィルハーモニーの従業員であると考えられるので、社会保険と失業保険の支払い義務があると主張していた。これに対してドレスデン市は、ザンデルリンクはフリーランスで従業員ではないので、社会保険の支払い義務は無いと反論していた。

ドレスデンの社会法廷で審理が開かれたのだが、判決が出る前に口頭で和解し、社会保険局が提訴を取り下げた。これによりドレスデン市とザンデルリンクは社会保険費用を追徴されないことが確定した。

国際的に活躍する指揮者はフリーランスとして活動する場合が多いけど、団体によってはGMDは公務員(つまり公的機関に雇用される)扱いになることもある。ただし公務員の定年である65歳以上の人や外国人は公務員待遇には制限がある。公務員になると健康保険や社会保障が充実していてメリットも多いのだが、実際の契約の内容にも違いが出てくる。公務員は公的業務を優先させる義務があるから、客演指揮者がキャンセルしたらGMDが自身の仕事をキャンセルして穴埋めしなければならない。そんな事をしたら国際的なキャリアは成り立たない。

愛好家からは見えないけれど、職業として指揮者はとても複雑で大変そう。


ニコラ・ルイゾッティがサンフランシスコ・オペラを辞任

アメリカのサンフランシスコ・オペラのGMDであるニコラ・ルイゾッティが2018年に辞任すると発表した。ルイゾッティは11年間サンフランシスコのGMDを務めていて、地元では評判が高い。現在55歳だから、ティーレマンやウェルザーメスト、ガッティあたりと同じ年代か。これらの人々ほど騒がれないけれど、アメリカでは評価が高い。だからルイゾッティの辞任はサンフランシスコ・オペラの支配人にとってはショックのようだ。

ちょうどメトロポリタンオペラのGMDが空席になったから、ルイゾッティも候補に挙がっても不思議ではない。メトに関してはフィラデルフィアのGMDのヤニック・ネゼ=セガンという噂も出ているけようだけれど、この人はどちらかと言えばコンサート指揮者だから、オペラはどうなのだろう。

劇場のセキュリティ

アダム・フィッシャーのおっかけを長年続けているから、リハーサルに潜り込むことは何度もやっている。その経験から言えば、日本やアメリカは劇場やコンサートホールのセキュリティは厳しいがヨーロッパでは意外に緩い。

日本やアメリカでもリハーサルを見学したことはあるが、正式に手続きしてバックステージ・パスを発行してもらうのが普通。メトロポリタンオペラは出演者が事前に申請しないと入れてくれない。その代わり手続きがしてあれば楽屋口の警備員にその旨伝えれば入れてくれる。それは客席から楽屋を訪ねる時も同様。

ヨーロッパの場合はそこまで徹底していない。楽屋口には警備員がいるけれど、顔見知りの人などノーチェックだ。さすがに東洋系の部外者は中には入れてくれないけれど、出演者と一緒だと特に手続き無しで入れてくれる場合が多い。

コンサートホールもオペラ座も客席から楽屋を訪ねる方法はある。ただし多くの劇場はわかりにくい作りになっているし、強面の係員が立ちはだかってお客さんを阻止する事もある。ウイーン国立歌劇場の場合ホワイエと楽屋を仕切る扉にはカギがかかっていて、専用のキーカードがないと通り抜けできない。

そのウィーン国立歌劇場で日曜日に楽屋泥棒があったらしい。なんでも楽屋のセイフティボックス53個が破られて、お金や電話などの貴重品が盗まれた。幸い楽器類は無事だったが劇場が通報したので警察が現場を捜査した。

オペラやオーケストラの演奏会は出演者が多いので、どうしても劇場のセキュリティは甘くなる。だからオーケストラのメンバーなど楽屋に貴重品を置かずに舞台まで持っていく人もいる。ただし携帯電話を舞台上に持っていくと鳴り出す危険があるけど。

ベルリンのシンフォニック・モブ

ベルリンにはたくさんのショッピングモールがあるが、数年前にポツダム広場とライブツッヒ通りの近くにモール・オブ・ベルリンというモールが出来た。すぐ近くにはユニクロのベルリン2号店があるし、モールの中には無印良品を扱うMujiという店もある。

そのモール・オブ・ベルリンで、ベルリン交響楽団のメンバーやアマチュアのオーケストラ奏者と合唱団が1000人以上集まり、突発的なコンサートを行った。フラッシュ・モブのシンフォニック版で、ケント・ナガノの指揮の下、ヴェルディやワーグナーの曲を演奏したそうだ。なにしろ1000人だから指揮は大変だろうけれど、ナガノはドイツ語でテレビのインタビューに答えていた。

携帯電話のメッセージを利用して人を集め、突発的に開くイベントのフラッシュ・モブは比較的簡単に企画できるイベントだ。2年前のデンマーク国立室内管の解散騒動では反対する人々が中央駅や文化省に集まって演奏したし、ショッピング・センターで開かれたフラッシュ・モブはアダムが指揮をした。その時はクリスマス前だったのでデンマークのクリスマス・ソングとベートーベンの第9の歓喜の歌を取り上げたのだけれど、なにしろ人数が多いし場所も広いので音を合わせるのに悪戦苦闘していて、「あれは指揮者がいないとうまくいかないよ」なんてアダムは話していた。

ベルリンのシンフォニック・モブのニュース映像はこちら

インターナショナル・オペラ・アワード発表

数年前にイギリスで創設されたインターナショナル・オペラ・アワード2016の受賞者が発表された。イギリスはクラシックの作曲家も少ないし、オペラ業界てヨーロッパからみるとレベルはそれほど高いとは認識されていない。だからこの賞も業界内で最も重視されるというわけではないけれど、BBCで放送されたようなので話題にはなるでしょう。その受賞者は以下の通り。

Accessibility: The Opera Platform
CD Complete Opera: Les Martyrs (Opera Rara)
CD Operatic Recital: Ann Hallenberg: Agrippina (DHM)
Chorus: English National Opera
Conductor: Gianandrea Noseda
Designer: Vicki Mortimer
Director: Laurent Pelly
DVD: The Tsar's Bride (Bel Air)
Female Singer: Mariella Devia
Festival: Glyndebourne
Lifetime Achievement: Brigitte Fassbaender
Male Singer: Gregory Kunde
New Production: Peter Grimes (Theater an der Wien)
Opera Company: Dutch National Opera
Philanthropists: Bill & Judy Bollinger, Christine Collins:
Rediscovered Work: Le Roi Carotte (Opera de Lyon)
World Premiere: Cold Mountain (Santa Fe Opera)
Young Conductor: Giacomo Sagripanti
Young Director: Fabio Ceresa
Young Female Singer: Asmik Grigorian
Young Male Singer: Stanislas de Barbeyrac
Readers' Award Winner: Ermonela Jaho

ムーティーのスカラ座帰還

指揮者リッカルド・ムーティーは長年ミラノ・スカラ座のGMD)を務めていたわけだけれど、2005年に辞任した。当時ムーティは支配人と対立していて、理事会はムーティーを支持して支配人を解任したのだけれど、従業員代表は支配人を支持し、解任の撤回とムーティーに対する不信任を提出した。ムーティーはそれに嫌気か差して辞任したという背景がある。だからムーティーがスカラ座に戻ることは無いと噂されていた。

辞任騒動から12年を経た2017年1月20日と21日に、ムーティーがスカラ座の舞台に立つことが話題になっている。さすがに不信任決議をしたスカラ座のオーケストラではなく、シカゴ響を率いての客演コンサート。でもオペラのピット復帰の第一歩かもしれない。

そのムーティーが日本とイタリアの友好に貢献したという事で、日本政府から"Order of the Rising Sun"を受賞したことがヨーロッパでは話題になっている。でも日本の記事ではふれていないから、きっとムーティーが来日した3月ごろに決まった話で、日本では既に古い情報なのかもしれない。ヨーロッパから見ると日本は遠いし興味も薄いから、情報が伝わるのも時間がかかる。

雄牛の出演に動物愛護協会が抗議

マドリッドのテアトロ・レアルでは5月24日からシェーンベルグのオペラ「モーセとアロン」のシリーズを上演するが、この演出に動物愛護団体から文句がついたらしい。

この演出には雄牛裸の女性とともに15分ほど舞台に登場するらしい。スペインの動物愛護団体は「動物のエンターテイメントでの利用は侮辱で残酷、かつ不必要である。したがってスペイン文化相とマドリッド市長に対して、この生きた動物を利用しないように嘆願する。」としてしている。この嘆願書は4万人以上の署名を集めてたそうだ。

スペインは闘牛の国だから雄牛ということが問題になったのかもしれないけれど、もしエンターテイメントへの動物利用ができなくなったら、業界は困ってしまうだろう。日本には猿回しという伝統芸能があるけれど、猛獣や馬をつかったサーカスや、ロシアのネコの曲芸など世界各地で動物たちは活躍している。動物の虐待は問題だけど、興行へ出演まで規制が必要なのだろうか。

そういえば、数年前にバイエルン国立歌劇場が制作したドボルザークの「ルサルカ」は、当初の演出だと公演ごとに1頭ずつ牡鹿を殺すことになっていたが、動物愛護団体の抗議により変更された。これには理解できるけど、舞台に連れてきて特に虐めるわけでもないのに問題になるとは。

この「モーセとアロン」はパリ・オペラとの共同制作らしい。マドリッドにパリで上演した時には動物愛護協会からの抗議はそれほど大きくなかったらしいが、雄牛の体重が重いので舞台の強度を補強しなければならなかったとか。雄牛の所有者には1公演に付き5000ユーロ支払われるのだそうだが、パリでの上演はキャストのメンバーが、牛の方が出演料が高いと怒ったなどの問題はあったとか。

サッカーのファンとオーケストラのファン

イギリスのプレミアリーグでは弱小クラブのレスターが優勝した。ドイツのブンデスリーガはどうなっているかと言えば、例年同様スター軍団バイエルン・ミュンヘンが独走している。ベルリンはそこそこの成績だが、過去に私が住んだシュトゥットガルトとハノーファーはどちらも低迷していて、2部リーグ降格が濃厚だ。

1部から2部に降格すると集客力が落ちてチームの財政が苦しくなるから、高額の有名選手は雇えないかもしれない。となると2部に落ちると選手は大幅に変わる可能性がある。その場合サッカーのファンというのはチームのファンであり、選手についていくわけではなさそう。ドイツのサッカーチームはその街の代表みたいなものだから、ハノーファーもシュトゥットガルトも、有名選手が去ってもファンは残る。

それではオーケストラのファンはどうだろうか。普通のオーケストラなら団員が一挙に辞めるということはない。でもベルリンフィルみたいにソリストとして活躍する奏者の多い団体は、名物奏者が辞めるとファンが減ることは無いとは言えない。でもオーケストラのファンはその団体の愛好家の場合がほとんどだから、楽員異動がファンの数には与える影響は少ないだろう。

ハイドンフィルハーモニーの問題点はここにある。過去30年近くアイゼンシュタットで演奏会を開いているが、多くのお客さんはアダム・フィッシャーの演奏会を聴きに来るのであって、ハイドンフィルが目当てと言う人は少ない。その責任はオーケストラ側にあって、過去の理事会はアダム以外の指揮者との演奏会に積極的ではなかったし、個々のメンバーも別の客演指揮者との演奏会を喜ばなかった。

来年以降ニコラス・アルトシュテットが中心になって活動するから、多くのメンバーはリタイアしてほとんど入れ替わってしまう。オーケストラのファンならそれでもオーケストラを応援すべきかもしれない。でもさすがにステージに乗っているのは知らない人ばかりだったら同じオーケストラとはいえないようにも思う。

今までハイドンフィルハーモニーも応援してきたが、オーケストラとの関係を見直す必要が出てきた。さしあたってファンクラブサイトをどうするかが問題。haydnphil.orgというアドレスは保持するけど、アダム・フィッシャーのファンサイトとして特化しようかと考えている。

ハイドンフィルハーモニーの今後

本日ウィーンでプレス・コンファレンスがあり、オーストリア・ハンガリー・ハイドンフィルハーモニーがエステルハーツィー家の所有するハイドンザールのレジデンス・オーケストラとして活動する事が発表された。2017年からは年間4回の演奏会シリーズと秋の音楽祭で4公演に出演する。レジデント・オーケストラの契約は当面2020年までだが、延長する可能性はある。

ハイドンフィルハーモニーは1987年にアダム・フィッシャーが創立し、過去に2回来日している。オーストリアとハンガリーのトップレベルの演奏家を集めてハイドンの交響曲全集を録音したし、毎年9月に開かれるハイドンターゲでも主役を務めている。音楽祭の主催者ハイドンフェストシュピーレはブルゲンランド州が支援しているのだが、ハイドンフィルの定期演奏会シリーズには否定的だった。今回の契約によりハイドンフィルが正式にハイドンザールのレジデント・オーケストラになり、定期演奏会も開けるようになったのはオーケストラにとっては良い事だ。

ただしエンテルハーツィー家とハイドンフィルの関係が長続きするかどうかは不明。もともとハイドンザールを含むエステルハーツィー城は個人の持ち物なのだが、保守をする代わりに無料でブルゲンランド州に貸与されていた。ところが2010年以降エステルハーツィー家がコンサート・ビジネスとハイドンザールのレンタルに乗り出したので、ハイドンフェストシュピーレは使用料を払って音楽祭の期間中ハイドンザールをレンタルしていた。昔はリハーサルも優先的に使えたハイドンフィルも、最近は独自にウィーンのスタジオを借りてリハーサルするようになり、アイゼンシュタットとの関係は薄くなっていた。

さらにエステルハーツィー家はハイドンザールのレンタル契約更新を拒否したため、来年以降ハイドンザールで音楽祭を開く事が出来なくなった。毎年9月に10日間、ハイドンが演奏したハイドンザールでの音楽祭を開くというのが売りだったハイドンターゲには大きな打撃だけど、それでも市内の教会などを利用するなど新しいスタイルを模索している。

ところが今日の発表によれば、エステルハーツィー家は2017年9月8日から17日まで、ハイドンザールを中心にした音楽祭を開く事を発表した。ハイドンフィルとニコラス・アルトシュテットは音楽祭の期間中に4回の演奏会がある。つまりエステルハーツィー家は過去30年近く続いていてる音楽祭を潰して、同じ期間に自前の音楽祭を開くという事。結局のところ有名な音楽祭の主催者としてのエステルハーツィー家という名声が欲しいだけで、真に芸術に寄与する気はなさそうだ。ハイドンフィルがそういう主催者に頼るというのはとても危ないような気もするが、オーケストラが選んだ道だから仕方が無い。

アルトシュテットが音楽監督になり、オーケストラのベテラン奏者が参加しなくなったこともあり、名前は同じでも私にとっては別のオーケストラになってしまった。だから来年のエステルハーツィー家主催の音楽祭には行かないと思う。過去25年間毎年9月にアイゼンシュタットに行っていたが、今年が最後になりそう。

GMDジェームス・レヴァインの最後のステージ

先週の土曜日のマチネー公演は今シーズンのメトロポリタンオペラのラジオ放送の最終日であるとともに、音楽監督としてのジェームス・レヴァインの最後のピットだった。

レヴァインは長年メトロポリタンオペラの音楽監督を務めてきたが、ここ数年健康状態が悪く数年前はキャンセルが相次いだ。レヴァイン側は続投の希望があり、改善の見込みがあるという医者の診断書を提出したが、最終的には理事会がGMD引退を決めた。

この日の公演の終了後、カーテンコールでは出演者は自身が拍手を受けるよりもレヴァインに対して拍手するほうが多かったとか。レヴァインはここ数年ピットから車椅子に乗って指揮しているためカーテンコールで舞台には登場できなかったが、ピットからの挨拶では盛大なスタンディング・オペーションが沸き起こったそうだ。

レヴァインとメトロポリタンオペラの関係は今後も続き、今月末にはカーネギー・ホールでワーグナーのリング抜粋の演奏会を指揮するし、来シーズンも名誉指揮者として何回かピットに立つ予定。

メトロポリタンオペラの時期監督探しは今後本格化するでしょう。

ヘルベルト・ブロムシュテットとドレスデン

シュターツカペレ・ドレスデンはヘルベルト・ブロムシュテットを名誉指揮者に任命した。ブロムシュテットは1969年に初めてシュターツカペレと共演し、1975年には当時の東ドイツ政府の反対にもかかわらず、首席指揮者に任命された。10年間の任期中にベートーベンの交響曲全集を含む150以上の録音を行った。首席指揮者の任期満了後も客演指揮者として度々シュターツカペレの指揮台に立ち、演奏会は300公演以上になる。

日本ではブロムシュテットといえばNHK交響楽団との関係で知られているけれど、ドイツではシュターツカペレ・
ドレスデンをはじめバンベルグ響など伝統的な交響楽団との演奏の印象が強い。ベルリンフィルにも度々客演していて、来年の1月にも3回の演奏会がある。プログラムはバルトークのピアノ協奏曲第3番(ピアノ、アンドラーシュ・シフ)とブラームスの1番。

ベルリンフィルとの演奏会を聴いたことがあるが、80年代のオーケストラみたいな音を出していてびっくりした。他の指揮者だともっと現代風になるオーケストラなんだけど、ブロムシュテットが指揮台に立つと伝統のドイツ音楽が聞こえてきた。

ブロムシュテットは1927年生まれだから、来年で90歳。ブーレーズやマズア、アーノンクールら同世代の指揮者が他界したが、末永くに現役でがんばって欲しいひとだ。


ベルリンフィルのシーズンプログラムが送られてきた

郵便受けを見たら分厚い冊子が送られてきた。それは毎年この時期に送ってくるベルリンフィルのシーズンプログラム。全176ページでラトルはじめマネージメントのあいさつ文から始まり、メンバーの氏名がかいてある。その後にはコンサートホールとしてのベルリン・フィルハーモニーのスケジュールがある。

分厚い冊子の間には年間カレンダーとシリーズ券の一覧表が挟まっている。ネットで検索すれば出てくる情報だけど、手元にあるのは簡単に調べられるのでありがたい。それを眺めながら、今年はどのシリーズにするかを検討している。当初はベテラン指揮者が沢山登場するMシリーズにしようかと思ったのだが、これは全部金曜日なので考えなおした。

シリーズのプログラムをざっと見たところ、ベルリンフィルは大きなオーケストラだから、ロマン派から20世紀にかけての大編成の作品がたくさん取り上げられている。マーラーは7番と大地の歌があるしブルックナーは8番と8番。新シーズンはバルトークが多くて、定番の弦チェレとオーケストラのための協奏曲以外にも、中国の不思議な役人の組曲と、青髭公の城のコンサート形式がある。青髭公はちょっと興味があるのだけれど、指揮はラトルだからオペラというよりオーケストラ曲という演奏になりそうで、ちょっと違和感がありそう。

後はジョン・アダムスの自作自演やリゲティのグラン・マカブルなどの現代曲もある。逆にウィーン・クラシックは少なくて、ハイドンなんてベルリンフィルは全く演奏しない。

最近ウィーン古典派は古楽団体や室内オーケストラのレパートリーになってしまい、フルサイズのオーケストラは演奏回数が減ってしまった。ウィーン交響楽団やウィーンフィルにはモーツァルトやハイドンのレパートリーを取り返そうという動きもあるらしいのだが、ベルリンフィルはそういう意見は少ないようだ。GMDがラトルからペトレンコに代わると方針が変わる可能性はある。

グスタヴォ・ドゥダメルのウイーン国立歌劇場デビュー

昨日書いたアダム・フィッシャーの来シーズンのスケジュールだけど、本人に確認したらまだ公式発表されていない演奏会が4回抜けているとのこと。とするとコンサートが29でオペラが34だから合計63公演。

メトロポリタンオペラのシーズンはもう終わりだけど、ヨーロッパの劇場のシーズンはまだ続く。今頃は最後の山場というところ。ウィーンでは人気若手指揮者グスタヴォ・ドゥダメルのデビュー公演のプッチーニ「トゥーランドット」新制作プレミアがあった。

驚いたことに、ドイツ語の記事よりもスペイン語などの記事の方が沢山みつかった。それだけドゥダメルの人気が高いという事でしょう。スペイン語は読めないのでドイツ語の記事をいくつか読んだのだが、この「トゥーランドット」は現代演出で、クイズショーなんだそうだ。合唱団はテレビスタジオの観客だとか。物語は中国が舞台ではあるけれど、プッチーニが作曲した時点で実際の歴史や伝統は別次元のものになっているのだから、テレビのクイズショーでも問題ない。

地元のプレッセやクーリエによれば、演出は意外に好評でセットデザイナーや衣装には拍手もたくさんあったそうだ。歌手はヨハン・ボータの代役を務めたYusif Eyvazov にはブラボーもあったようだ。タイトルロールのライゼ・リンドストロームは最後の30分だけよかったと手厳しい。

一番の問題は指揮のドゥダメルだそうで、音が大きくて歌手には負担が大きかった模様。公演の最後にはドゥダメルに対してブーイングがたくさんあったそうで、クーリエ紙はそれに対しても「正当化できる」と酷評している。

ウィーン国立歌劇場オーケストラはウィーンフィルとしても活躍しているわけで、忙しいので新制作でもオーケストラとのリハーサルはそれほど多くは無い。それにオペラ座のステージを使えるのは限られるから、本番と同じ条件でオーケストラを指揮できるのはほんの数回だ。だから経験の無い指揮者だと音のバランスなど上手く行かない。

昔は歌手コーチとして下積みから始めるのがオペラ指揮者への道だったから、指揮台を任される時にはある程度の経験があった。でも今はコンサートで人気が出た人を呼んでくることも多いので、オペラの現実に慣れていないことも多い。それに30代半ばの無名指揮者なら失敗してもそれほど叩かれないが、同じ年代でも世界的に名前が知られている若手はとても厳しい反応が返ってくる。以前ハーディングが指揮したオペラを観た時に感じたのだが、ドゥダメルもそういう点で可哀想。

アダム・フィッシャーの2016‐17シーズン

ウィーンフィルも発表されたので、アダム・フィッシャーの来シーズンのスケジュールがほぼ出揃った。一応スケジュールの概略は聞いているのだけれど、オーケストラやオペラ座の公式サイトで発表されるまでネット上では公表しないという約束になっているので、本日ファンクラブのサイトもスケジュールを更新した。もしかしたらデンマーク室内管の演奏会など若干抜けがあるかもしれないけれど、その都度修正するつもり。

今年の7月1日から来年の6月30日までをシーズンとすると、この間コンサートは25回でオペラが34回、合計59公演が予定されている。コンサートはハイドンフィル、デュッセルドルフ響、デンマーク室内管の3つに加えてカッセルとデンマーク放送響でマーラーがあり、ザルツブルグのモーツァルテウム管とカメラータ・ザルツブルグでモーツァルトがある。元旦恒例の「天地創造」は来年はエンライトメント管。さらにウィーンフィルは定期演奏会とモーツァルト週間合わせて3回。

オペラは9月にスカラ座の「魔笛」新制作のシリーズがたくさんある。それからウィーン国立歌劇場は「ワルキューレ」の日本公演以外には「ドン・ジョバンニ」「フィガロの結婚」「魔笛」の3作。来年の6月のワーグナー・イン・ブダペストでは4日間のリングと「パルジファル」が2回。

このうち行けそうな公演はカッセルのマーラー5番、ミラノの「魔笛」、ハイドンターゲ4公演、デンマーク室内管、デュッセルドルフ響、ウイーンの「魔笛」と新年の「天地創造」、ブダペストのリングあたりか。デンマーク放送響のマーラー6番は興味はあるけれど平日なのでいまのところ不明。ウィーンフィルは週末だから、チケットが入手できたら行きたい。東京はチケットが高いからいまのところ思案中。

東京のワルキューレとデンマーク放送響を除くと16公演ある。実際にどれに行けるかは検討の余地ありだけど。


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