先週はコンサート、オペラ、レコーディングそれぞれについて指揮者の仕事を考えてみた。簡単に言えば、コンサートは1つのプログラムに付きリハーサルが数日で本番が多くて3回程度の短期戦。(ツアーは除く)オペラはリハーサルも長く、公演回数も多い長期戦。レコーディングは物理的な制約を超越した世界。指揮者に要求される音楽性はレコーディング、コンサート、オペラの順に高く、必要な経験はオペラ、コンサート、レコーディングの順になる。

昔は指揮者といえばオペラが振れる人だったけれど、今はコンサートに専門に近い人も多く、オペラ指揮者は減りつつあるような気がする。その理由を考えてみよう。

まず考えられるのは交通手段の発達。だいたい昔はジェット機で世界を回ることなんて出来なかったから、指揮者の活動する地域も限定されていた。コンサートは公演数が少ないから、限定された地域のなかでコンサート専門指揮者として活動しようと思っても、仕事の数が少ない。第一経験の無い新人指揮者にコンサートを振る機会など簡単に降って来ない。だから指揮者を目指すなら、まずオペラ座のコレペティトァになるのが第一歩だった。ピアノ伴奏をしながら歌手の呼吸に合わせる術を身に付けたり、雑用をこなしながらオペラの制作の現場をじっくり経験する事が出来た。

指揮コンクールが始まってから、状況が変わってきた。コンクールに入賞するとコンサートを指揮する機会に恵まれるし、名前も売れる。だからオペラ座の下積みを経験しなくても、指揮者としての仕事が出来る。それに交通手段が発達したから、毎週別のオーケストラに客演することだって可能だ。だから下積みを経験しないで指揮者として成功することが出来る。小澤征爾なんてこのパターンの先駆者だろう。

それに最近のオペラは演出の時代とも言われ、演出家の要求が強くなった。中には音楽に悪影響のある演出もあり、オペラで音楽性を追求するのは困難になりつつある。それに比べるとコンサートでは指揮者が中心だから、コンサートをやりたがる指揮者が増えても不思議ではない。だから昔のように劇場で経験を積んでいる指揮者が少なくなったのだろう。

ただ、それ以外にも指揮者の所属するエージェントの経済的理由もあるかも知れない。それについては明日にでも。