1泊2日でブリュッセルまで行き、モネ劇場の「ルサルカ」を見てきた。最近注目の演出家シュテファン・ヘアハイムがメルヘンを取り上げるということで、プレミアには世界各地から評論家がやって来て、批評として取り上げたもの。「ブリュッセルまで行く価値がある」とドイツ語の批評は絶賛していたが、イギリスの批評家は「メルヘンを犯罪ストーリーにしたやりすぎ演出」と厳しい反応だった。実際観てその理由は良く分かった。まずは公演データから。

A. Dvorak: "Rusalka"

Muzikale leiding: Adam Fischer
Regie: Stefan Herheim
Decor: Heike Scheele
Kostuums: Gesine Völlm
Dramaturgie: Wolfgang Willaschek
Koorleider: Piers Maxim
Video: fettFilm Berlin

Rusalka: Olga Guryakova
Prins: Burkhard Fritz
Vreemde prinses: Stepanie Friede
Vodnik: Willard White
Jezibaba:Livia Budai
Jager & Priester: Julian Hubbard
Eerste bosnimf: Olesya Golovneva
Tweede bosnimf: Young Hee Kim
Derde bosnimf: Nona Javakhidze
Slager: Andre Gregoire
Agent: Marc Coulon


ドボルザークの「ルサルカ」は今まで聞いたことがなかったのだが、先入観を持つのも良くないと思いあえて予習はしなかった。あらすじは読んだものの、基本的には有名な人魚姫ストーリーだから、わざわざリブレットを読むこともしなかった。英語の字幕くらいは出るだろうと考えていたのが間違いの元。字幕は公用語のワロン語とフラマン語だけだから全然読めないし、歌はチェコ語で内容的にはチンプンカンプン。そんな悪条件にもかかわらず、はっきり言って時間を忘れるほど熱中してしまった。

「パルジファル」を心理劇に仕立てたヘアハイムたから、人魚姫のメルヘンをそのまま演出するはずは無い。登場人物も人魚だの水の精霊ではなくて普通の人間。ルサルカや他の水の精霊は男を誘惑する娼婦たち。水の精霊ヴォドニクは初老の男。王子は水兵で実はヴォドニク自身の若かりし頃。外国の王女は初老の男の妻という設定。この演出は映画の「エンジェル・ハート」とか「ジェイコブス・ラダー」等のサイコ・スリラーと言った方が正しい。ヴォドニクの見る幻想と狂気、そして破滅がテーマで舞台の上で現実と幻想が交差する。別々に撮影したシーンを繋ぎ合わせる映画では、幻想と現実を連続させることは簡単だけれど、舞台で実現するのはものすごく大変だ。でも舞台装置のデザインが素晴らしく、一見ごく普通の街並が音も無く幻想の世界に変わる。その分舞台のオペレーションも複雑で、舞台の裏方さんもブラボーもの。この演出はDVDで観ても凄さはわからないと思う。

原作とはまったく別の物語なのだけれど、ルサルカが月に向かって歌うシーンではバラボラアンテナが月に代わりだったり、街の広告塔に人魚の絵がでていたりして、リブレットの内容をパロディ化しているところもある。指揮のアダムにこの演出について聞いた所、「音楽がピアノのところは演出も静かだし、フォルテのところはドラマチックと音楽に連動してるでしょ。僕にとってはそういう事の方が、人魚や水の精霊が出てくる事などよりずっと重要なんだよね。でも僕はドボルザークに拘りがないから受け入れられるけど、モーツァルトだと彼(シュテファン・ヘアハイム)と一緒にやろうとは思わないなぁ。」だそうです。

明日はより詳しい演出について。