クラシックおっかけ日記

指揮者アダム・フィッシャーのおっかけ記録、音楽の話、海外生活など

デンマーク国立室内管騒動

デンマークの文化大臣の考え

2年半前に当時デンマーク放送は所属していたデンマーク室内管を解散させるというニュースが飛び交った時、デンマークのクラシック関係者の間では「終わりの始まり」という説も出ていた。実際去年はオペラ座のオーケストラである王立フィルハーモニーの人員削減が発表され、全員が給料削減を受け入れる代わりに解雇はしないという協定が結ばれたばかり。

そこにきて、就任100日を経過した文化大臣の方針が発表された。その文化大臣の考えでは、デンマーク放送はコンサートの企画から撤退し、テレビとラジオのニュースやドキュメンタリー番組の制作に専念すべきだそうだ。デンマーク放送の所有するコンサートホールは売却し、オーケストラや合唱団などのデンマーク放送所属の団体は新しい別組織か王立劇場の傘下に移すというもの。さらにコペンハーゲン市がサポートするコペンハーゲンフィルを縮小する反面、地方のオーケストラの楽員を増やすということらしい。

この意見に関してはデンマークの音楽関係者だけでなくデンマーク放送の関係者の多くが反対している。デンマーク放送はコンサートホールを所有し演奏会を主催する事でイメージを向上させているので、ホールの売却楽団の移転は失うものが大きいというのが理由。

デンマーク放送は公共放送だけど、言論の自由を保障するために政治とは一定の距離を保つ事が法律で定められている。だから文化大臣の意見とはいえデンマーク放送が従うとは限らない。でも政治の圧力が強まればデンマークの音楽関係者にとっても状況は厳しくなりそう。

アダム率いるデンマーク室内管の状況は厳しいものの、音楽文化削減の最初だったので注目を集めたし、その結果いち早くプライベートな基金からの支援を受けることが出来た。この先数年は安定しているものの、他の団体からの支援が受けられなくなって、こちらも状況が厳しくなりつつある。

デンマークはとても豊かな国なんだけど、音楽文化に対する支援はどんどん減っているのが現状だ。

デンマーク室内管の存続決定

約10日間の休暇も明けて、通常モードに戻りつつある。再開後最初の日記はうれしいお知らせ。アダム・フィッシャーが過去18年音楽監督として活動を続けていたデンマーク室内管の存続が決定した。

この団体はもともとデンマーク放送に所属するオーケストラだったけれど、デンマーク放送のコストカットの一環として、2014年末で閉鎖されてしまった。その時の反対運動はこの日記でも報告したけれど、政治家も巻き込んでデンマーク国内でも大議論を引き起こした。国会でも正式に反対する決議が可決されたが、文化大臣はそれを無視してデンマーク放送のコストカット案に同意し、2014年の12月中旬にオーケストラの解散が正式に決定された。

その後1年間はクラウド・ファンディングなどで凌いで演奏活動を行ってきたが、同時にプライベートなプロジェクト・オーケストラとして活動出来るようにスポンサーを探していた。昨年12月の段階ではまだ不確定だったし、デンマークのオペラ・オーケストラの規模縮小などのニュースもあったので、先行きは困難にも思えた。

2月9日に公式に発表されたところによれば、デンマーク国内の3つの基金の支援によりデンマーク室内管は2018年までプロジェクト・オーケストラとして活動できる。支援の対象はアダム・フィッシャーとのベートーベン・プロジェクトで、12回の演奏会とCD録音を行う。

デンマーク室内管はアダムとのモーツァルト交響曲全集の評判が高い。その後ベートーベンの交響曲全集も録音したのだが、完成する前に解散騒ぎになったので資材は全てお蔵入りしてしまった。3つの基金の支援により再録音する事が出来るとともに、デンマーク放送のその他の団体とも共演する。その結果録音スタジオなどが利用できそうだ。

デンマーク放送のトップは室内管の解散を決めたけれど、従業員の多くはその決定に賛成していないので、何とか室内管を支援したいと思っている人も多い。ただし支援するにはそれなりの理由が必要なので、デンマーク放送合唱団の演奏会との共演するとともに、アダムがデンマーク放送交響楽団に客演することも条件だった。だからアダムは来年の5月に放送交響楽団を指揮してマーラー6番を演奏する。デンマーク室内管では人数的に演奏できない曲だから、競合することは無い。

プロジェクト・オーケストラだから、団員たちはフリーランスとして働き口を見つけるなど困難を伴うけれど、演奏会毎の自転車操業から脱して、少しは長期的な計画が出来るようになったのはプラスだ。

デンマーク室内管の理事会選出

デンマークの文化大臣とデンマーク放送の間のメディア合意の結果、昨年末で解散したデンマーク国立室内管だけど、その後同じメンバーでプライベートの楽団として再開するため、クラウド・ファンディングを行って当面の資金は確保した。それにより年内の公演の目処はたったのだけれど、長期的に活動するなら組織もきちんとしたもので無ければならない。オーケストラの経営責任者は既に任命されているのだけれど、この月曜日には理事を選出した。

理事会はオーケストラの活動方針を決定するし、必要な資金を集める責任がある。理事に選ばれたのはデンマークの経済、文化の重要人物で、理事長のHans Gammeltoft-Hansenは政府のオンブズマンとして知られている。その他の理事はデンマーク企業の社長や劇場の元支配人など。

理事長の意見では、芸術的には妥協せず国際的にも高い知名度を保つとともに、普段オーケストラに接する事の少ない地方でもポップス・コンサートを開く予定らしい。計画としては年間1千万クローネ(日本円だと約1億9千万円)で、最低でもこの先2年間活動できるように資金を調達することが目標。これにより、途中で中断してしまったベートーベン全集の録音を続けるとともに、コンサートでもベートーベンを演奏するのだそうだ。

ベートーベンの録音状況をアダムに聞いたところ、大部分は既に録音済みだけど、残りの交響曲の録音のために2セッションほど必要だそうだ。ただ既に録音したテープはデンマーク放送が所有しているため、オーケストラ側はどうしようもない。理事会が発足して楽団としての体制が整わないとデンマーク放送との交渉は出来ないから、このステップは大きい。

ただ現時点でも資金確保の道筋があるわけではない。一応年内の演奏会は確認されているけれど、来年以降はまだ決定ではなく、アダムとしても少々困っている。

デンマーク室内管のその後

国会決議を含むデンマーク人の大多数の反対にも関わらず、昨年暮れでデンマーク国立室内管は解散させられてしまったけれど、楽団員たちはクラウドファンディングやスポンサーからの支援によって独立オーケストラを立ち上げて活動を始めた。2月、3月、5月にアダム・フィッシャーの指揮で演奏会を開き、8月には恒例のビートルズ・ナンバーを演奏するポップス・コンサートが予定されている。でも今後の状況はかなり厳しい。

デンマーク室内管がフルタイムで活動するためには、年間2千万クローネ(日本円だと3億7千万弱)必要だ。だから夏までにスポンサーを見つけて活動費を集めることを目標にしていたが、寄付が期待したほど集まらない。そこで目標を変更し、年末までにこの先2年間の活動費2千万クローネを集めることにした。もし集まらなかったら、来年以降演奏会は行わない。

現時点の予算ではあと8回くらいしか演奏会が開けない。楽員の中のベテラン勢は公務員待遇で、3年間は給料が支給されているから当面は大丈夫だけど、新しい職場を探して国外の団体に移ってしまった若手もいる。だから元の状態には戻らない。オーケストラのスタイルを作るのは何年もかかるけど、わずか数ヶ月で壊れてしまう。

デンマーク室内管の件がアダムに与えた影響はとても大きい。17年間かけて国際的にも認められる高いレベルになったオーケストラを失ったという事実はもちろんだけど、クラシック音楽の将来に関しても悲観的になった。アダムはウイーン音大から教授のタイトルを受けているのだけれど、若手に指揮を教える気は無いそうだ。「僕らがやった事を実行しても、今の時代指揮者になれないから。」だとか。

デンマーク室内管の行方

本日はウイーンでユーロビジョン・ソングコンテストが開かれている。ヨーロッパのみならず、参加しないアジアにも放送される世界でも有数のイベントだけど、ヨーロッパの放送局が持ちまわりで開催するため、競争で年々開催コストが増加する傾向にある。去年はコペンハーゲンで開催したけれど、会場設営の不手際などでかかった費用は予算の10倍近くに膨れ上がった。スキャンダル発覚後デンマーク国会はデンマーク放送に対して予算削減と自己改革を求めたが、デンマーク放送は費用削減のためにデンマーク国立室内管を解散させた。それに対しては大反対が起こり、存続を願う国会決議も可決されたのに、文化大臣と放送局長の合意によりオーケストラは今年の1月1日をもって解散した。

それから5ヶ月経ってどうなったのか。デンマークでは今年9月までに国会の選挙があり、政権が交代する可能性もある。もしオーケストラの存続に投票した野党が政権を取れば、国からの正式な支援が得られるかもしれない。でもこれは選挙が終ってからでないとなんともわからない。

オーケストラの解散に反対する人々がサポートする形で資金を集め、私立のデンマーク室内管として再出発した。アダムの指揮による演奏会を3回開いたし、8月にはポップス・コンサートも予定されている。理事長と芸術アドバイザーが決定して、楽団としての体制は整ってきたし、に寄付したファンをまとめるサポート組織も出来た。少しずつ前進はしているものの、このままでは前途は厳しいように思う。

オーケストラの解散に伴い、デンマーク国立室内管に所属していた演奏家は職場を失った。兄弟分にあたるデンマーク放送響やコペンハーゲンフィルに移った人も何人かいるし、ベテラン勢は公務員待遇なので3年分の給与が支給される。だからプロジェクト・オーケストラとして活動に参加できる人は何人かいる。でも若手を中心に国外の団体に移る人が出てきて、時間が経つにつれて演奏会のために楽員を集める事が難しくなる。

また、オーケストラがデンマーク放送に所属していた時は、ライブラリアンやステージ・マネージャー、宣伝とマーケティングなどの裏方業務はデンマーク放送に依存していた。この裏方さんたちはデンマーク放送所属の他の団体の面倒もみていたから室内管と運命をともにしたわけではない。新生室内管の演奏会にはこれらに人々はボランティアとして手伝っているのだが、いつまでもそれに依存するわけにはいかない。独立団体となるなら裏方業務に対する予算は不可欠なのだが、運営の中心になっているのはオーケストラの団員だから裏方に対する認識が不足している。

私が最も危機感を抱くのは、オーケストの新生執行部の活動方針。このオーケストラがとデンマーク放送に所属していた時は、ビートルズなどのポップス・コンサートとアダムの指揮するウイーン・クラシックの二つが活動の中心で対象とする聴衆も異なっていた。だから独立団体として活動するためにはポップスコンサートも企画しないと聴衆を失ってしまう。ところがオーケストラの執行部はウイーン・クラシックに集中して芸術性を高めるという。

「芸術性を高める」というのは言葉としては説得力がありそうだけど、実際には「アダム・フィッシャーが指揮しない演奏会は企画しない」と言っているようなものだ。オーケストラ執行部は経済的な限られた予算をポップス演奏会に使うのは無駄と考えているみたい。でもアダムは年間4公演くらいしか付き合えないから、それだけでは寄せ集め団体でオーケストラとはいえない。

このままでは年間数回元団員が集まって演奏する同窓会オーケストラになってしまうのではないかと危惧している。

デンマーク室内管のニュースレター

デンマーク放送から独立して活動を始めたデンマーク室内管からメールでニュースレターが届いた。残念ながらデンマーク語なので読めないけれど、グーグルの翻訳を使うとそれなりに理解できる英語に訳してくれる。

そのニュースレターによれば、春から夏にかけて3回の演奏会が決まっている。まず5月3日にはアダム・フィッシャーの指揮でシューベルトのロザムンデから序曲、間奏曲、バレエの3曲とモーツァルトのレクイエム。アダムは今後シューベルトをやりたいそうで、まずはロザムンデが最初。因みにハイドンフィルとは今年の9月にシューベルトを集中的に演奏する。

それから5月27日にはヴィヴァルディの「四季」。その後夏には人気プログラムの「ブートレッグ・ビートルズ」。これはビートルズナンバーを演奏するポップス・コンサート。まだまだ常設団体として活動するには厳しいけれど、支援者がたくさんいるので少しずつ前進している模様。

それから、デンマークのヴィルヘルム・ハンセン基金からアダム・フィッシャーに名誉賞を送ると発表があった。この団体はデンマークの音楽支援組織で、作曲家や演奏家への奨学金や教育プロジェクトなどを行っている。賞金として15万クローネ(日本円にすると約250万円)をアダムに送るのだが、アダムは全額オーケストラに寄付したそうだ。

明日は新生デンマーク室内管のコンサート

明日は新生デンマーク室内管の2回目の演奏会。デンマーク放送所属だったデンマーク国立室内管は放送局の方針により昨年末で解散されてしまった。デンマーク国内では大スキャンダルで、オーケストラの存続を願う国会決議まで採決されたほど。それにもかかわらず文化大臣がデンマーク放送に同意したため、オーケストラの団員はデンマーク放送から解雇された。

それでも楽団員たちはあきらめなかった。アダム・フィッシャーを中心に支援者を募り、独立のプロジェクト・オーケストラとして演奏活動を続けることにした。その資金はクラウドファンディングで調達すべく、専門サイトのキックスタートを利用して目標額3千万クローネを集めるべく運動した。

一般市民からは1千万クローネが集まったし、大口の匿名の支援者からはそれぞれ1千万クローネの寄付があり、合計では目標金額は達成することができた。ところがキックスタートはひとつのパソコンからは2万クローネ以上は受け付けないため、匿名の寄付がカウントされない。そこでファンディング・マネージャーはキックスタートのプロジェクトをキャンセルし、独自のサイトを立ち上げて再度こちらに寄付するように呼びかけている。でも思わしくなく、当初集まった一般の寄付の7割くらいしか集まっていない。

それでもオーケストラは寄付を募っているので、是非ともご協力を。ペイパルを通じて簡単に支払えます。新生デンマーク室内管のサイトからDonate nowをクリックするとペイパルのログインサイトに移動するので、アカウントのある人は簡単に寄付ができます。

明日の演奏会のプログラムはモーツァルトの「プラハ」とアダム・フィッシャーの伴奏によるアリア、さらに後半はベートーベンの7番。ラジオの放送があるかどうかは不明。放送局所属の時は毎回放送があったけれど、独立のオーケストラとなれば放送が無い事も考えられる。

それもあって明日は日帰りでコペンハーゲンへ。朝9時の飛行機に乗って、帰りは夜9時半発なので滞在時間は12時間弱。イージージェットは安いので、往復の航空券の料金を含めても、かかるお金は来日オケの演奏会のS席のチケットより安い。

という事で、明日の更新はありません。

コペンハーゲン便り

昨日の日曜日は日帰りのおっかけ。朝9時過ぎの便で飛び、帰りは21時30分発の便で戻ってきた。イージージェットは荷物が無いならかなり安い料金でチケットが買える。ただしベルリンの空港はちょっと遠方のショーネフェルドだけど。それでも1時間で行けるので、東京から成田に行くよりはずっと近い。

朝7時前にSバーンで空港に向かったのだが、途中の中央駅では警官がたくさんいてちょっと驚いた。そういえばテロの標的になっているという情報があったはず。日曜日の朝早くからご苦労な事だ。

飛行機は定刻よりも若干早めの10時25分にコペンハーゲンに到着した。ゲネプロは10時からだから間に合わない事はわかっていたのだが、空港から王立音楽院まではメトロで30分くらいなので、11時過ぎにはホールに到着。ホールに入った時にはハフナーの第2楽章をやっていた。

デンマーク国立室内管は昨年末をもって解散したけれど、新しくデンマーク室内管弦楽団、デンマーク語の名前はDenmarks Underholdningsorkesterとして活動を始めた。常設団体ではなく、プロジェクト・オーケストラというスタイルで当面は活動するらしいけれど、ハイドンフィルに比べると裏方の人数が多くて恵まれている感じはした。

新生デンマーク室内管のメンバーは解散前とほとんど同じ。従来の演奏会では病気や休暇などでいない人がいたけれど、今回の演奏会は皆参加したがったので以前の演奏会より参加率が高いとアダムは言っていた。それでも外国の楽団に移った人も何人かいて、コントラバスの首席とファゴットの首席が不参加だった。次回以降に参加する可能性はあるみたいだけど。

コンサートの日程が発表になったのが1月20日。わずか10日しかなかったから入りが良くないのではないかと心配したのだが、全くの杞憂だった。ホールが小さいことは確かだけど、ほぼ満員で熱狂的なお客さんがたくさんいた。オーケストラのマネージャーの話だと、政治家もたくさん来ていたのだとか。去年の9月からの4ヶ月間は政治的駆け引きに振り回されてしまったけれど、今年は新しいオーケストラは基盤づくりに忙しそう。

コペンハーゲンへ日帰り

昨年末に解散したデンマーク国立室内管は、当初の計画していた3百万クローネが集まったので当面はデンマーク室内管として活動する。でも3百万クローネでは長期的な活動は不可能なので、支援者は大口の企業スポンサーを募っている。年間の活動費は3千万クローネだったから、スポンサー探しも簡単ではない。

それでもまず活動しない事には未来は開けない。そこで明日には新生デンマーク室内管の第1回演奏会が開かれる。この演奏会はチャリティで、出演者は全てボランティア。チケットの売り上げは全てオーケストラの今後の活動費に使われる。会場はコペンハーゲンの王立音楽院ホール。プログラムはモーツァルトの25番とソプラノのアリア、後半がハフナー。

ベルリンとコペンハーゲンは格安航空会社のイージージェットが運航していて、日曜日は朝9時ベルリン発で21時コペンハーゲン発で日帰りが可能。コンサートは16時からなので十分余裕がある。だからオーケストラの支援も含めて日帰りのおっかけをする事にした。

去年まではデンマーク放送がラジオ生中継をしたけれど、新生デンマーク室内管はネットラジオでも放送が無い。でもリハーサルの様子のビデオがアップされている。



それから去年の11月14日の「最後のモーツァルト」演奏会は2月14日にデンマーク放送のテレビ、DR-Kで放送される模様。時間は現地の10時5分から11時5分。日本時間だと18時5分から。

デンマーク室内管の復活

先週は用事があってあまり更新できなかったけれど、今週から通常通り更新の予定。

今日はデンマーク国立室内管のニュースから。昨年末でデンマーク放送は楽団の解散を決めたけれど、支援者はクラウド・ファンディングを立ち上げた。目標は3千万クローネだけれど、インターネット・サイトのキックスタートでの支援は1千万クローネしか集まらなかった。でも大口の二つの団体がそれぞれ1千万クローネずつ寄付を決めて、合わせて目標額は集まった。ただしキックスタートは大口の寄付は扱わないのでクラウドファンディングは期限を待たずにキャンセルということになった。

オーケストラの支援者とDRの協議の結果、デンマーク国立室内管はデンマーク室内管の名前で活動を再開することになった。その最初のコンサートは2月1日の午後4時から、開場はコペンハーゲンの王立音楽院のホール。アダム・フィッシャーの指揮でモーツァルトの交響曲25番とソプラノのアリア、さらに交響曲35番。出演者は全てボランティアで、チケットの売り上げはオーケストラの今後の活動に用いられる。

この演奏会はデンマーク室内管の新しいスタートだけでなく、ICMAの受賞も祝うものになるとの事。

デンマーク室内管のクラウドファンディング途中経過

クリスマス直前に始めたデンマーク室内管のクラウド・ファンディングだけど、現時点で1682人が合計822269クローネ(約1560万円)集まっている。通常のクラウド・ファンディングは期間のラストになると支援が増すのだけれど、中盤に入っているのにまだ3割弱というのはちょっと不安。年末にはデンマーク国内ではあれほど話題になっていたのに。

その状況を受けて、コペンハーゲン市議会議員が室内管の支援に乗り出した。一最大勢力の社会民主党は反対しているけれど、その他の党はデンマークの文化大臣が所属する革新党も含めて賛成していて、議会の多数は確保できそう。市長も支援に積極的で、「コペンハーゲン室内管として市の文化へ貢献し、毎年ニューイヤー・コンサートと学校訪問などのアウトリーチで活躍してもらいたい。」とのコメントを出している。

ただし問題になるのがその金額。議員たちは年間50万クローネを支援すると言っているのだけれど、これだと1千万円にも満たない。そんなお金でオーケストラが運営できるわけはない。だからクラウドファンディング担当者は「もちろんコペンハーゲン市の支援は大歓迎だけど、その他の都市の支援もお願いしたい」と呼びかけている。

しかしデンマークの政治家というのはクラシック音楽の実態を理解していない。基本的に1千万円程度で42人のトップレベルの演奏者を雇えるわけが無い。ヨーロッパの大都市はフルサイズのオーケストラを支援しているところは多く、人口52万人のコペンハーゲンよりも少し大きい人口60万人のシュトゥットガルトでもシュトゥットガルト・フィルハーモニーがある。この団体は2012年に州と市を合わせて合計860万ユーロの支援を受けている。そのうちの390万ユーロが州からだから、市からの支援は470万ユーロ。コペンハーゲン市の言う50万クローネは6万7千ユーロだから、シュトゥットガルトのわずか1.5パーセントにしかならない。「コペンハーゲン・オーケストラとして市の文化に貢献を」なんていうなら、せめてその10倍は支援する必要があるんじゃないか?

クラウドファンディングとオーケストラ

テレビ番組「アダム・フィッシャーと音楽」でアダムが語っていたことの紹介を続けようと思ったら、新しいニュースが飛び込んできた。

クラウド・ファンディングといえば、インターネットを通じて多数の一般市民から、小額の寄付を集める手法。オバマ大統領が最初に当選した時にこの手法を使って資金を集めて注目された。もともとアメリカは寄付に対する税金控除があるから、非営利団体は一般からの寄付を募って運営費に充てることは良くあるけれど、インターネットの利用で比較的容易に幅広い人々からの寄付を集める事が可能になった。私がアメリカに住んでいた時は、オーケストラからの寄付の依頼の手紙や電話を受けることは度々あったが、今なら寄付サイトと勧誘メールのキャンペーンという事になるのだろう。

これに対してヨーロッパのオーケストラは従来通り公的補助金が頼り。市や州からの支援か、受信料により運営される放送局に所属する事により存在している。だから一般市民から直接寄付を募るクラウド・ファンディングはほとんど縁が無かった。

でもあと1週間で正式に消滅するデンマーク国立室内管を再生させようと、デンマークの音楽プロデューサーや作曲家が集まってクラウド・ファンディングを実施することになった。その支援サイトはこちら。まずデンマーク国立室内管を支援する基金を立ち上げて、将来的にはその基金と企業スポンサー、さらにオーケストラ自身の収益により運営しようというもの。興味を示すスポンサーも多いけど、それには時間がかかるし、オーケストラには誠実なファンが付いている事を示そうというのが目的らしい。

このオーケストラは75年の歴史があるし、ポップス歌手の伴奏やビートルズ・ナンバーのカバーも演奏する反面、アダムとのコンビのモーツァルトは世界的にも評価されていて、全集CDはインターナショナル・クラシック・ミュージック・アワードのベスト・コレクション2015も受賞している。首席指揮者のアダムはもちろん、過去25年にわたって首席客演指揮者としてポップス・コンサートを担当しているイギリス人指揮者デヴィッド・フィルマンも、新しい形でのオーケストラの復活を支持している。

まず初期の資金として必要な金額3百万クローネ(日本円で6千万円)を1月31日までに集める事を目標にし、クラウド・ファンディングをスタートさせた。寄付にはクレジットカードが必要だけど請求されるのは1月末。もし寄付が目標金額に届かなかった場合はファンドレイジング失敗という事で、オーケストラは復活できないので寄付も引き落とされない。寄付の金額は5クローネ(100円)以上ならいくらでもOKだけど、100クローネ(約2000円)以上だとニュースレターがもらえる。500クローネ以上だと1年間サポート会員として扱われるし、1000クローネ以上だと夏のレセプションに招待されるとか。

この日記を書いている間にも寄付は順調に増えていて、現時点では370人が合計236075クローネ寄付をしている。小額でも寄付をすると「私のオーケストラ」という愛着が沸くし、その他の団体よりもずっと関心が高くなる。室内管のモーツァルトを愛聴されている方、100クローネ(約2千円)くらいの寄付はいかがですか?

デンマーク・クラシック音楽の終わりの始まり

クリスマスも間近でヨーロッパはどこでもストレスで一杯だけど、この週末から早めの休暇に入る人が多く、仕事関係はほとんどストップしている。だからデンマークでも室内管の騒動は既に過去の話になりつつある。オーケストラのメンバーはけなげにクリスマスのビデオ・メッセージをフェイスブックに投稿しているけれど、世の中は冷たい。

そんな中、デンマークではもうひとつの音楽団体が存続の危機に面している。それは王宮を警備する護衛兵の音楽隊16人。こちらも予算削減のため全員解雇という噂が出ている。政府寄りの野党ひとつリベラル連合は反対しているみたいだけど、国際的な賞を受賞するオーケストラでも潰されちゃうんだから、こちらも見込みは厳しそう。デンマークの楽団は今後も減少していくのだろう。


アダム・フィッシャーと室内管の最後の演奏会の「メサイア」は、デンマーク放送のビデオで見ることができる。ただし期限は来年1月中旬まで。その他ユーチューブなどを探すと、モーツァルトの交響曲28番から31番、ジュピター、とアイネ・クライネ・ナハトムジークの一部、ハイドンの告別、ベートーベンの英雄、さらにハイドンのオペラ「哲学者の魂」のコンチェルタンテが見つかった。ネット上のビデオはいつ消去されるかわからないので、今のうちにダウンロードしてDVDに保存しておいた。

デンマーク放送は11月14日の最後のモーツァルトも、21日のペートーペンもリハーサル、本番共に映像を収録したのだけれど、こちらは未放送。デンマーク放送にとって、室内管関連の番組を放送するとせっかく落ち着きつつある世論に火をつけることになるから、放送されるかどうかわからない。アダムもぜひ欲しがっているのだけれど、どうなるのかは不明。進行中だったベートーベン全集もどうなる事やら。一説によれば1番から8番までは既にスタジオ録音が完了していて、9番だけは最後のコンサートのライブを収録して全集にするという噂もある。でも基本的に著作権はデンマーク放送のものなので、アダムはコントロールできないのが問題。

文化大臣とデンマーク放送の新しい契約が成立

本日、文化大臣とデンマーク放送の間の公共放送契約が締結され、デンマーク放送理事会でも承認されました。これにより、1月1日に室内管を解散するというデンマーク放送の決定を覆す手段は完全に消滅いたしました。残念な結果に終りましたが、嘆願書の署名にご協力いただいた方や、この日記に付き合っていただいた多くの皆様に深くお礼を申し上げます。

ワーグナー・ファンさんからの情報によれば、テレビ朝日系のモーニング・バードという番組で、デンマーク室内管のことが取り上げられたとか。もちろん例のチリ・ビデオの紹介だけど、解散のことにも触れたらしい。「デンマークは裕福な国なのに・・・」という発言もあったとか。

ユーロ危機以降ギリシャはもちろんイタリア、スペインなど国々が財政難になり、文化予算削減の影響を受けて解散に追い込まれるオーケストラが増えている。でもデンマーク国立室内管の解散はこれらとは事情が異なる。デンマークはヨーロッパでも有数の裕福な国で、払いすぎていたEUへの拠出金が数百万ユーロ戻ってくるほど。だから国の財政難で解散するわけではない。国立室内管は実際にはデンマーク放送所属の放送オケだから、解散はデンマーク放送の決定。

デンマーク放送は国民から受信料として年間35億クローネ(約690億円)を受けていて、経営は安定している。実際デンマーク放送が制作した豪華大河ドラマの制作費はあまりに高く、室内管の一年間の活動費なんて一話分にも及ばない。スキャンダルになったユーロビジョン・コンテストの予算超過分があれば、オーケストラは5年間活動できた。無駄遣いに怒った政治家が2パーセントの経費削減を義務付けると、デンマーク放送は財政を改善するという名目で要求された以上の削減を発表し、その手段として芸術的、興行的にも成功している室内管を解散させた。

だから解散の原因は予算不足ではなく、デンマーク放送が決めた優先順位による。本日締結された公共放送契約によれば、デンマーク放送は若者向けのプログラムを強化すると明記されているが、それはロックバンドやポップスであり、オーケストラではない。デンマーク放送は管弦楽の需要は少ないと判断したからオーケストラを潰したのだ。だから室内管の解散劇はクラシック関係者には特にショックが大きい。

デンマークにはフルサイズのオーケストラは放送交響楽団とオペラを演奏する王立管弦楽団の二つしかない。残りのオーケストラはポップス主体の小さなオーケストラで、クラシック専門ではない。そんな状態なのに世界的にも評価の高い室内管を潰してしまうのだから、管弦楽の需要は少なくなってしまったのだろう。放送交響楽団をはじめ、デンマーク放送所属の他の音楽団体の前途も厳しいと思われる。

衝撃の発表から1週間

文化大臣の室内管に関する最終決定が出てから1週間経った。これにより3ヶ月に渡ってデンマーク国内で話題の的になっていた室内管存続問題も決着し、今日になってデンマーク国内のメディアで冷静なコメントや意見が出てきた。

当事者であるデンマーク放送の記者も意見を出していて、この件は政治茶番劇だと断じている。文化大臣は野党の多数はを吹き飛ばしたけれど、オーケストラを潰した責任はDRにあるとしているし、野党側も大臣にある程度の傷を負わせた。特に与党に属しながら法案に賛成したリベラル連合はキーマンとしての存在を示すことができた。でも潰されたオーケストラのことは忘れ去られてしまったと、政治家たちを厳しく批判している。さすがに自分の会社のことは批判できない。

それに対して、デンマーク主要紙のひとつポリティーケンはデンマーク放送と文化大臣に対する批判が厳しい。文化大臣に対しては、「文化の危機なのに何もしなかった文化大臣」という批判が主力。デンマーク放送が現行の公共放送契約に反して室内管を閉鎖する事を知りながら、その団体がどんな状態なのかを専門家に検討させた形跡がない。それどころか国内外から室内管の業績を評価して存続を訴える声が出ても全く無視している。これでは文化大臣失格だ。ある記者は「実力を評価され、人気も高く、経営的にも最も成功している団体がいとも簡単に潰されるなら、存続する文化などありえない。」とデンマークの文化政策を批判している。

それ以上に批判されているのがデンマーク放送の経営陣。今回の事件は6月に政府がデンマーク放送の予算を2パーセント削減することを決めた事が発端だ。それに対するデンマーク放送の答えは、「予算削減に応じる代わりに市民に愛される団体を潰す」というもの。オーケストラを人質にとって予算削減を撤回させようとしているという批判は当初からあった。

それに室内管を潰す代わりに放送響に投資するという事にも批判が多い。「室内管を潰したのは、次期主任指揮者ファビオ・ルイジを擁して放送響を世界レベルにするという野心のためではないのか、もしそうなら現実を直視すべきだ。」とか「元々AチームとBチームの二つだったのに、BチームがAチームを抜いてしまったから解散させたのではないか。」とか厳しい指摘も出ている。放送響は首席指揮者のデ・ブルゴスが最近亡くなって2017年までシェフが不在だ。デ・ブルゴスはベートーベンの交響曲の映像を製作したけれど、室内管の過激なベートーベンの影に隠れてあまり注目されていない。こういう意見は今まで出なかったけど、なんとなく的を得ていそう。

当のアダムとオーケストラはどう考えているか。1週間前に電話した時は声も暗くてとても心配したのだが、昨日はすこし明るくなっていた。現在ブダペストにいるのだけれど、土曜日の最後のコンサートは自費でコペンハーゲンに飛び、オーケストラのお別れコンサートに行った。その演奏会は本当に盛り上がったのだとか。

オーケストラのメンバーはこの3ヶ月精神的に大変だったけれど、市民や同僚音楽家からのたくさんの支持を受けて自信を持ったらしい。それにアダムと一緒に演奏する事を強く望んでいる。来年の選挙で親オーケストラ政党が勝てばオーケストラの再雇用も考えられるから、選挙までは独立のオーケストラとして毎月1回でも演奏会を続けようという話も出てきた。

ポイントはアダムが指揮できるかどうかにかかっているのだが、1月、3月、5月の演奏会は引き受けたのだとか。「希望的観測かもしれないけど、存続できるなら手伝わないとね。」との事で、出演料はオーケストラに寄付するつもり。団員たちは既に就職が決まっている人も含めてやる気満々だけど、マネージメント役がいないので会場の手配などの問題がある。でももしかしたら不死鳥のごとく蘇るかもしれない。

アダム・フィッシャーの見たデンマーク国立室内管

デンマーク国立室内管の最後のコンサートが13日の土曜日に終了した。デンマーク放送主催のクリスマス・コンサートで、オーケストラには長い喝采が続いたそうだ。コンサートホールはデンマーク放送の本社の一部なのだけれど、オーケストラの支持者はこの日ろうそくを持ち寄り、ホールの入り口からデンマーク放送を取り巻くようにろうそくで飾った。

アダム・フィッシャーとデンマーク国立室内管の関係は17年に及ぶけれど、アダム自身はこのオーケストラをどのように考えていたか。首席指揮者に就任した当時はそれほど期待はしていなかった。モーツァルトのレコーディングと年間4公演を引き受けたのだが、オーケストラの技術も音楽性もハイドンフィルには及ばなかった。

この楽団はマイクをつけてポップスを演奏する事もあり、クラシック専門のオーケストラほど上手いわけではない。それに普段クラシックを演奏する機会が少ないから、ベートーベンの交響曲でさえ演奏した事が無い人もいる。指示は忠実に守るけれど、その理由はわかっていない人も多いのだとか。それでも楽員は例外なく熱心で、リハーサルの合間に別の仕事でコペンハーゲンを離れて戻ってくると、楽員たちはそれぞれアダムの音楽を実現しようとしっかり練習しているのだそうだ。それに評判が上がってくるにつれて優秀な若手が入団し、レベルも徐々に上がってきた。

アダム曰く、「このオーケストラはウイーンで例えるとフォルクスオーパーなんだよね。フォルクスオーパーも最近は『マイスタージンガー』や『トスカ』もやるよね。本来はオペレッタの劇場だからそんなにたくさんは出来ないけど、彼らにとってオペラの演奏する事は仕事じゃなくて特典なんだ。だから意欲があるし素晴らしい演奏をする。デンマーク国立室内管もポップスが主体だから、楽員はウイーン・クラシックを楽しみにしてるんだよ。」

アダムはよく指揮者とオーケストラのことを親子のように例える。どのオーケストラもそれぞれ特徴があり、どこが一番など選べるものではないとか。だからアダムは大切な子供が失ったのと同じくらいのショックを受けている。

デンマーク室内管のモーツァルト全集がインターナショナル・クラシック・ミュージック・アワードを受賞

インターナショナル・クラシック・ミュージック・アワード(ICMA)は前年の10月末までの1年間の活動のうち、録音13部門、映像2部門の合わせて15部門と特別表彰6部門を対象とし、各国の音楽雑誌の編集長や評論家が審査員を務める由緒ある賞だ。そのICMAが最優秀コレクションとして、アダム・フィッシャー指揮デンマーク国立室内管のモーツァルト交響曲全集を選定した。

本来ならすべての部門が同時に毎年1月末に発表されるのだが、室内管の現状を考えて特別に最優秀コレクション部門だけ今日発表された。審査委員長曰く、「この録音はアダム・フィッシャーの爽快な解釈とともにオーケストラの素晴らしい演奏を示しています。このボックスは壮大で抗い難いほどの楽しい演奏です。オーケストラが存在の危機に直面し年末の解散から救うための最後の努力が続く中、ICMAはこの部門を最優先し1月の公式発表に先駆けて発表しました。ICMAはデンマーク放送とデンマーク文化大臣がオーケストラを救うべく、可能な限りの手段を尽くすように要請します。2015年3月28日にアンカラでビルケント交響楽団のホストにより授賞式が開かれるとき、オーケストラが活動していることを私たちは強く願っています。」コメントの内容や発表のタイミングを考えると、審査委員の多くが成り行きを心配していたのだろう。

最優秀コレクションのノミネートにはデッカやソニークラシックなどのメジャーもたくさん含まれていて、レヴァイン指揮のMETオーケストラやガードナー指揮のロンドン交響楽団などを抑えての受賞となった。このニュースはもちろんデンマーク国内でも報道されているけれど、肝心の文化大臣とデンマーク放送に届いたかどうかは不明。


オーケストラのお葬式

12月11日木曜日の午前9時から、デンマークの音楽家がコペンハーゲンの文化省の中庭に集まって、国立室内管の解散に抗議する最後のデモを開催した。これはデンマーク放送交響楽団のメンバーが呼びかけたもので、集まった人々はリースやろうそくを持ち寄り、デンマークでよく歌われる賛美歌を歌った。

デンマーク国内では文化大臣に対する批判が大きい。政治家も含めてこれだけ多数が存続を求めたのに、デンマーク放送の言いなりで何も対策を施さず、最終的にオーケストラの消滅を宣言したのだから印象が悪くなるのも当然だ。ただインタビューでは「何も後悔する事はしていない。」と強気だけど。「ほとんどの文化大臣は任期が終ると忘れられてしまうが、イェルヴェドは室内管を潰した大臣として記憶に残るだろう」と新聞は書いている。

室内管は12日と13日に2回ずつ、恒例のクリスマス・ポップスコンサートに出演してその使命を終える。楽員たちは7人が放送響に移り、で3人がコペンハーゲン・フィルへ、さらに1人が外国のオーケストラに移ることが決まっている。残りの人々の今後は未定。コペンハーゲンの音大教授の試算によれば、室内管が解散することにより、デンマーク国内のオーケストラの職場は7パーセント減少するという事だから、新しい職場はなかなか見つからない。

アダム・フィッシャーは1998年の3月にレコーディングで共演したのが最初で、1999年から首席指揮者として活動してきた。コペンハーゲン以外にはブダペスト、ウイーン、マンハイムなどのツアーに同行し、合計89回の演奏会を指揮した。この間にモーツァルトのオペラや交響曲のCDをリリースしている。ベートーベンの交響曲はまだ録音の途中で、リリースされるかどうかは不明。

最後の演奏会は先週行われたヘンデルの「メサイア」。これはネットのライブ映像がこちらにある。この時は国会の決議が出た直後で希望があったから、アダムもオーケストラもこれが最後とは思っていなかった。長年付き合った楽員と別れの挨拶も出来なかったわけで、本当にかわいそう。

室内管の解散報道

文化大臣が解散を決めたというニュースは、室内管のメンバーはクリスマスコンサートのリハーサルで知ったそうだ。最後の演奏会になるのだけれど、クリスマスを祝う気分ではないとガッカリしている。アダム・フィッシャーは現在ウイーンで「魔笛」のリハーサル中。先週の「メサイア」が最後になってしまった。この演奏会は18日にネットラジオで放送される。

衝撃のニュースから一夜明けて、デンマークのメディアは解説の記事がたくさん出ている。「デンマーク放送が勝ち、音楽が負けた」というタイトルの記事もあるほど、芸術関係の記事は残念がっている。これに対して政治関係の記事は文化大臣の今後や野党4党の対応などが中心。解散により職を失うメンバーの話は全く出てこない。

無視された野党4党のうちの国民党だけは文化大臣に対する不信任を提出するとも言っているが、残りの3党は同調しないので、文化大臣は多数の国会決議を無視してもその地位に変動はなさそう。ただ政治的な影響力には変化があるかもしれない。

野党4党のうち、国民党、保守党とヴェンストレ(左翼等)はオーケストラを救うために、個人や企業の資金を呼びかけている。残りのリベラル連合は資金の公募には賛成だが、現実的ではないとして呼びかけには参加していない。呼びかけによれば、6千万クローネあれば今後4年間の活動が出来るとして、この金額を目標にしている。オーケストラは年間3千万クローネかかるけれど、解散に必要なコストが5千5百万クローネだから、これと合わせれば4年間活動できる。この間には選挙もあるし公共放送契約を再締結する機会もあるから、その後は室内管が存続できるような契約を作るとしている。太っ腹な支援者がクリスマス・プレゼントをしてくれると良いのだけれど。

さよならデンマーク国立室内管

正式な国会決議で過半数がデンマーク国立室内管の存続の交渉を文化大臣に要請する決議に賛成し、文化大臣は少数派であることが明確になったし、超過ライセンス料をデンマーク放送に支払うことにより、オーケストラの予算を捻出するという現実的な案も提案された。だからほとんどの人はオーケストラの将来は安定したと考えていた。

それをうけて文化大臣は野党の文化委員と今日の11時から会合を召集した。各党代表は文化大臣が対案を出すと考えていたのだが、大臣は会議の開始2分後には交渉打ち切りと、デンマーク放送との公共放送契約は室内管を除外して締結する事を明言した。これにより2015年以降デンマーク放送は室内管の保持を義務付けられない。残る可能性はデンマーク放送の理事が解散の決定を覆すことだけど、それはまず考えられないから、国立室内管は1月1日には存在しなくなることがほぼ決定した。

もちろんオーケストラ支持の国会議員は怒っている。それでも選挙も近いこともあり、文化大臣に対する不信任案提出という話は出ない。この辺が少数野党の集まりの弱いところで、オーケストラの支援という点では一致していても、それをどうやって実現するか、また実現しなかった時にどうするかという点では意見が一致しない。

評論家に言わせればこの騒動は全てが敗者だとか。オーケストラや支援した政治家やファンはもちろんだけど、最大の敗者は文化大臣。大臣とデンマーク放送は全然妥協せず、計画通りオーケストラを解散に追い込んだわけだけれど、国会決議で少数派となっても決議を無視する強情な政治家ということなった。今後選挙までは厳しい立場に立たされることは確実。選挙結果にも影響は必至だ。

デンマーク放送にもデメリットが大きい。国民はデンマーク放送にお金を払うが、全くコントロールできない事がわかってしまった。だから次回のメディア合意交渉は厳しくなるだろうし、大きすぎるデンマーク放送はコントロールできないので解体すべき、という意見も出てきている。

最終的には4万人を超える署名や、過半数の国会議員の決議、また3百万近いアクセスを記録したチリのビデオも文化大臣とデンマーク放送のマネージメントの意見を変えることは出来なかった。選ばれた政治家が民意を実現するのが民主主義だけど、選ばれてしまうと民意を聞く必要はなくなってしまうのが現実だ。日本ではまもなく選挙があるけど、気づいた時はもう手遅れという状態にならないように、じっくり検討すべきでしょう。

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この写真はさよならをするアダムと国立室内管。昨日電話した時には「オーケストラはなんとか存続できそうな気がする」と期待していたのに一転。今日は声も暗くて痛々しいほど。オーケストラのメンバーとは話したらしく、数ヵ月後の選挙で保守が勝てばオーケストラを再結成させるという話もある。でもそれには時間がかかるし、実現できたとしても全てのメンバーが戻ってくるわけではない。アダムにとってはもう戦いは終わり。まだオーケストラのマネージメントとは話はしていないそうだけど、明日連絡して今後どうなるか確認するとか。でも仮にデンマーク交響楽団と一緒にウイーン・クラシックを続けて欲しいなんていう提案があっても、アダムには受けて欲しくない。デンマーク放送はあまりに勝手だし、政治家の都合で振り回されて過去15年の成果を壊されたのだから信用できない。少なくとも私は反対する。
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