読書な毎日

お気に入りの本の感想です。

「平成猿蟹合戦図」吉田修一

平成猿蟹合戦図 (朝日文庫)
平成猿蟹合戦図 (朝日文庫) [文庫]

なんの先入観も持たず、タイトルの意味も深く考えずに読み始めました。
水商売の若い子たちが出てきて、軽いノリで話が進んでいくのかと思いきや、ひき逃げを目撃した純平(この男が主人公?)が、ゆすりをたくらんだり、ひき逃げのはずが実は復讐だったり、話はどんどん重く、湿っぽくなるはず・・・・。
なのに、最後までからっとした爽快な終末でした。

そういえば、猿蟹合戦という昔話は、親の仇を子供が討つという、仇討ちの話でした。
仇討ちと言えば、時代劇なんかでやると、お涙頂戴の重たい話になってしまいますが、おとぎ話はそうでもなかったような。
このおとぎ話のノリを、平成の世の中に置きかえてやるとしたら、確かにこんな話になるのかもしれません。
始め読んでいたときは、まさか選挙戦になるなんて思いもよらず、意外性もあり、終盤は実はもう一つの復讐劇が絡んでいたことがわかったり、一ひねりされているところも、面白かったです。

「裁判長!ここは4年でどうすか」 北尾トロ

裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫)
裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫) [文庫]


「事実は小説より奇なり」という言葉があるように、ドラマよりも現実のほうが波乱に満ちているんだなーというのが、正直な感想です。
ただドラマは見ている人が感情移入できるように、人間性を深く追及するわけだけれど、この本はもっと淡泊に作者の興味本位に書かれているので、薄っぺらい気がするけど、そのほうがより現実味を帯びているようにも思いました。
この本のレビューを読むと、興味本位だけで裁判を傍聴するのは、傍聴される側にとってはどうなのか?傍聴マニアって人としてどうよ?という、批判の声もあるわけですが、そうやって批判しながら最後まで読んだあなたはどうなのよ?と、問いかけてみたい気もします。

本書は被告人と被害者だけではなく、裁判にかかわる裁判官や検事、弁護士等々の観察日記でもあります。
最後の傍聴マニアと呼ばれる人たちとの対談も興味深く、一般的には検事よりも弁護士のほうが人気があるけれど、本当に正義感をもって戦っているのは、検事ではないかというくだりは、説得力がありました。





「マシアス・ギリの失脚」 池澤夏樹

マシアス・ギリの失脚 (新潮文庫)
マシアス・ギリの失脚 (新潮文庫) [文庫]


やっと読破できました。
内容がてんこ盛りで、話がどんどん寄り道してしまうし、なかなか最後までたどりつけませんでした。
でも、終盤物語がやっと動き始めたあたりからは、意外性もあって読んだ甲斐があったと思います。

舞台は南洋の架空の島なのですが、日本との政治的な取引もあり、実在するどこかの島をモデルにしているのか?とも思いましたが、結局これは架空のお話だというとが、日本人の慰霊団を乗せたバスが行方不明になるところあたりから、わかってきます。
主人公ギリがそんなに悪い人でもなさそうだし、なぜ失脚するのかという興味に引っ張られて読みすすんでいくわけですが、そんな理由なのか?という驚きもありました。

おしゃべりな亡霊リー・ボーと、ギリの会話が印象的でした。
テレビや新聞もなく情報を得ることが難しい島民たちが、井戸端会議で情報を交換する際の、軽妙な語りが楽しかったです。

話自体は結構深刻なのに、どこかのんびりしていて、結局人間なんてどんなにもがいてみても、神様が作ったおとぎ話の一つにしか過ぎないのかもしれません。
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