読書な毎日

お気に入りの本の感想です。

「永い言い訳」西川美和

永い言い訳 (文春文庫)
永い言い訳 (文春文庫) [文庫]

映画監督として知られている西川美和。
過去に「ゆれる」「デイアドクター」を見て、今でも記憶に残る映画として私の脳裏に刻み込まれていますが、果たして、小説家としてはどうなんだろう?と、懐疑的な気分で読み始めたのですが・・・・。
映画監督ならではの、映像が浮かんでくるような詳細な描写が見事で、人間臭さがにじみ出ていました。

人気作家津村啓こと衣笠幸夫は、10年間の下積み生活を支えてくれていた妻を、突然の事故で失ってしまう。
物語はその妻への深い愛情の物語なのか?と思いきや、実は夫婦の関係は冷え切っていて、愛人との浮気の最中に事故を知り、妻の葬儀にも涙を流すこともできない幸夫。
しかも、妻の携帯には「もう愛していない。ひとかけらも」という言葉が残されていた。
ここまで書いてしまうと、衣笠という男がとても酷い男に思えてしまうのですが、同じく妻を亡くした男の子供の世話を引きうけるあたりから、その印象は変わっていきます。
人気者の作家なのに実は小心もので、その心の葛藤が滑稽でもあり、共感できるエピソードがたくさん出てきて、楽しめました。
この人は、いつ、永い言い訳をするのかな?と思いつつ、読み進めていきましたが、最後妻への手紙を読む頃には、すっかり感情移入してしまっていたので、電車で本を読んでいて、号泣する予感がしたので、思わず本を閉じてしまいました。

人は誰でも、身近な人を亡くした時、なぜ自分はその人に対してあんなことを言ってしまったんだろうかとか、もっと優しくしてやればよかったのにとか、悔恨の日々をおくり、でもあの時は仕方なかったのだと、永遠の言い訳をしながら生きていくものなのかも。
残された人は、こんなにももがき苦しむものなのだ、だから安易に死んではいけないよ、そう言われた気がしました。

「模倣犯」3.4.5 宮部みゆき

模倣犯〈5〉 (新潮文庫) [文庫]

ついに読破しました。
思った以上に重厚で、作者のこの作品に対する思い入れがひしひしと伝わって来ました。

ドラマで見た時、首謀者であるピースこと、網川がどうしてこんな人間に育ったのか、原作はもっと詳細に描いているのでは?という私の期待は、いい意味で裏切られました。
確かに、二人の父親に自分の子として認められなかったという不幸な生い立ちではありましたが、栗橋の生い立ちを詳細に語っているのと対照的に、さらりとかわした感じで、それだからこそ、リアリテイーが生まれているのではないかと思いました。
現実で起こっている同様の事件も、犯人の決定的な動機はなく、いまだに納得のいく説明が得られないままなんじゃないだろうか・・・・
時代が生んだモンスターなのか、生まれながらの「悪」なのか?
作者は、登場人物の生い立ちや心情を詳細に語ることで、読者があの栗橋にさえ同情を抱けるよう、哀れな側面を描いているのに、網川に関しては、最後まで謎を残したまま・・・・・・固有の人格を与えないまま、容疑者Xとしての扱いに終始したように思いました。

犯人の側から見た殺伐とした世の中と、これでもかと襲い掛かる困難に立ち向かおうとしている被害者たちのヒューマニズムが対照的に書かれていて、それがなければ、残酷過ぎて最後まで読めなかったかもしれません。
塚田君や、有馬さんの言葉に救われながら読みました。
そして、前畑さん、離婚しなくて良かった!!

「模倣犯」1・2 宮部みゆき


文庫本で、1と2を読み終わりました。
早く先を読みたいと思わせる内容ですが、それぞれの状況、登場人物の生い立ちなど、詳細に語られているため、なかなか前に進めません。
当然のことながら、ドラマでやっていたことは、ほんの一部だったんだなーと、実感します。

第一部では、事件の概要と、被害者の一人鞠子の家族、特に祖父を中心に語られ、この祖父がキーパーソンになるのかな?と予感させられます。
ルポライター前畑滋子がこの事件にかかわることになったきっかけ。
第一発見者、塚田真一の過去。
そして、犯人と思しき二人が事故で死んでしまうところで、第一部は終わり、第2部はこの二人の生い立ちから始まり、いよいよ、ピースの登場ということになるのですが・・・・・。
犯人とされる栗橋浩美の壊れっぷりが、読んでいて気持ちが悪くなりました。
こんな風な人間が育つものなんだろうか?と疑問に思いながら読んでいると、2巻の最後、犯人じゃないかという情報提供の電話で、怪しい人がたくさん出てきて、壊れているのは、栗橋浩美だけではないのかと、空恐ろしくなりました。
時系列がいったりきたりすることで、一巻の話の謎解きが効果的に行われていて、さすがだなと思っています。

3巻は、どんな展開になるのか、楽しみです。


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