読書な毎日

お気に入りの本の感想です。

「孤独の歌声」天童荒太

孤独の歌声 (新潮文庫)
孤独の歌声 (新潮文庫) [文庫]

読んでいる間、過去にも読んだことがあるような、特に猟奇的な描写は既視感が否めなかったのですが、のちの「家族狩り」につながる初期の作品であることを考えれば、納得です。

都会の一人暮らしの女性を次々と誘拐し監禁してしまう犯人。
一人暮らしの人間が誘拐されても、そのことに気づいてくれる人は少ない・・・もしかして誰も気づいてくれないかもしれない・・・・そんな孤独感がひしひしと伝わってくる本でした。
主人公の刑事の過去のトラウマも切なかったです。
最後は、それまでの息苦しさと閉塞感を打ち破るような、スリリングな展開の末、一件落着。
予想はしていても、ドキドキしてしまいます。
救いのない物語のように見えて、決して後ろ向きに終わらないところに、作者の真摯な生き様を見た気がします。

「恋歌」 朝井まかて

恋歌 (講談社文庫)
恋歌 (講談社文庫) [文庫]

こんなにも感動できる歴史小説がまだあったのかと、今まで知らずにいたことが悔やまれるような作品でした。

「恋歌」というタイトルから、淡い恋を描いた時代小説なのかと思って読み進めていくと、終盤は読むのがつらくなるほどの、過酷な牢獄の生活が書かれ、その中でも誇りを失わず気丈に振る舞おうとしたした武家の妻たちに、深い感銘を受けました。

序章で、維新後の明治の欧米化された時代背景のなか、花圃の歌の師匠である中島歌子の手記を見つける。
そして舞台は、幕末の江戸へ。
水戸藩の定宿であった池田屋の娘登世は、水戸藩天狗党の武士にひとめぼれし、水戸に嫁ぐことに。
思えば、それが過酷な運命の始まりだったのです。

幕末と言えば、薩摩や長州の話の中に水戸藩がちょっと出てくる程度で、歴史的に見ても、脇役のイメージがあったのですが、なぜそのような立場となったのか・・・・そこには水戸藩士同士の内紛があったから。
いやいや、その内紛の根底には、徳川光圀の時代にさかのぼって、他藩より膨大な年貢を取り立てられていた人々の貧しさがあったのかと、歴史小説の観点から見ても、目から鱗の物語でした。

しかし、この話はやはりタイトルどおり、儚い恋愛小説なのだと、ラストまで読んで納得しました。
牢獄から釈放されたのち、彼女がなぜ歌を学ぼうと思ったのか? 
「歌はもう、命懸けで詠むものではないのだろうか。」
登世こと、中島歌子が記したこの言葉の意味は、あまりにも重く、切ない。
残された手記と遺書により、絶えることのない憎しみの連鎖に、彼女なりに終止符を打った姿は、あっぱっれでした。

蛇足ですが、武家の妻達が牢獄での悲惨な生活の中でも、武士の妻としての矜持を忘れない暮らしぶりに、日本人のルーツを見た気持ちがしました。
今日でも、大災害のおりにも、日本人の礼を忘れない振る舞いが、海外から称賛されることがあります。
同じ日本人として、誇りに思います。

「地下街の雨」宮部みゆき

地下街の雨 (集英社文庫)
地下街の雨 (集英社文庫) [文庫]

表題を含めて、7つの短編集です。
帯に「作家としての私の青春時代でした」と書いてあるように、宮部みゆきの初期の作品で、後々の大作につながるようなネタがたくさん入っていました。
短編集でありながら、一つひとつの話は短さを感じさせず、読みごたえがありました。

「地下街の雨」は、精神的に崩壊してしまった女性の怖い話かな?と思ったら、意外にほのぼのとした結末。
「不文律」は、あの「理由」を思わせる手法で、取材された人々の語りだけで物語が構成されており、終盤が不気味でした。
「さよならキリハラさん」では、ファンタジーなのか?と思っていたら、そうでもなくて、笑える要素もありつつ、辛口のラストでした。
音のない世界の不自由さが書かれていたのですが、携帯のない時代の話だったので、現代だったら、ラインとか音がなくても、コミュニケーションの不自由はないのかも・・・と、時代の流れを感じました。
livedoor プロフィール
カテゴリ別アーカイブ
タグクラウド
QRコード
QRコード
記事検索
  • ライブドアブログ