読書な毎日

お気に入りの本の感想です。

2014年10月

「神様」 川上弘美


前回読んだ川上作品「蛇を踏む」に比べると、おなじ「うそ話」でも、だいぶゆるい感じで、大人のおとぎ話のようで、まったりとした読書が楽しめました。

表題神様のほか、九つの短編集ですが、初めのくまとの散歩に始まり、くまとのお別れで終わり、登場人物も、重なっているので、連作として読めます。

一人暮らしの作者の前に、次々と現れる生き物たち。
花を活けようと、壺をこすったら現れた「コスミスミコ」という女性の登場には、アラジンの魔法のランプみたいで笑ってしまいました。
おとぎ話の登場人物なのに、話す内容は、別れた男の話だったり、下世話なところがあって、それゆえに親近感がまして、私のところにも出て来てくれないかなーと、思ってしまいました。

秋の夜長、寂しくなった私たちの心を、ほっこり温めてくれる本です。

「悼む人」下 天童荒太

悼む人〈下〉 (文春文庫)
悼む人〈下〉 (文春文庫) [文庫]

自分の死後、現世に一番望むことは何だろうか。
多くの人の心の中にずっと生きていたいということ?
けれどもそれは、簡単なようでいて難しく、人はいつの間にか、亡き人のことを忘れてしまう。
だからこそ、人は「悼む人」を必要としているのかもしれない。

「死」というものを深く感じさせられる本でした。
前半展開された、自分の不幸な生い立ちに生き悩む人たちは、後半、静人の亡くなった人への差別のない「悼み」の行為に触発され、心穏やかな人になっていきました。

静人と母、巡子との再会を気にしながら読み進めていったのですが、私の想像をはるかに超える終わり方だったなーと、思います。
巡子の死と引き換えのように新しく生まれ出る命。
人が生きて死ぬということは当たり前のことなのに、それは受け入れがたい事実でもあります。
巡子は懸命に生きて当たり前の事実を了解して死を迎える。
最期は、とても象徴的なシーンでした。
プロフィール

葉月

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